漸く、菅首相が党首討論に臨んだ。
党首討論しない最長記録を更新し続けた菅首相が、一体、どういう風の吹き回しなのか。突然、やる気になったのか、追いつめられてやらざるをえなくなったのか、分からないけれど、まぁ、党首討論が行われたことはよいこと。
ただというか、やはりというか、菅首相の話は空っぽだった。
自民党の谷垣総裁との党首討論の前半部分について、少しダイジェスト的に纏めてみると次のとおり。
谷垣 「社会保障と税の一体改革についての、総理のスケジュール感について伺いたい。4月には社会保障の改革案を纏める。6月には税制抜本改革を含んだ案を纏める、そして9月前後にはマニフェストの見直しもする。消費税を上げる前には、解散をして国民に信を問う。それでよいか?」(1:05-2:22)
菅 「大きなスケジュール感を持たなければならない。社会保障と税の一体改革は誰が総理でも避けて通れない。谷垣さんの質問に対しては、仰るとおり4月には社会保障のあるべき姿について提示する。6月には社会保障と税の一体改革の案を提示する。マニフェストについては、やれたもの、実行しているもの、実行が難しいものを分析して、難しいものに関しては、国民にしっかり説明し、理解していただく。」(2:26-6:29)
谷垣 「端的に答えてくれ(以後早口になる)。順序が逆だ。マニフェストが破綻している。これが色んな事の背後にある。この処理を後回しにするのは順序が違う。社会保障と税の一体改革について、わが党の野田たけし議員が予算委員会で、4月に社会保障を纏められなかったら責任を取るのかと聞いて、菅さんは頷いた。野田議員は出来なかったら責任を取って辞めるのかという問いかけただが、如何か?」(6:33-7:47)
菅 「順序が逆だというのは理解できない。我々の団塊の世代前後は社会保障の将来に不安感を持っている。同時に我々の子どもの世代、若い世代は、社会保障が受けられるのかという不信感を持っている。我々がやらなければならないのは、しっかりとした案を出して実行することではないか。4月に社会保障のあるべき姿を提示する。6月には税と一体となった改革案をお示しする。その時には、谷垣総裁、協議に乗っていただけるのかお尋ねしたい。」(7:51-9:35)
谷垣 「責任について答えてないが、何故聞いたかというと、税の問題について参院選で菅さんが提起した。10%の自民党の案を参考だと言ったが、秋になったら、引っ込めた。そしてまた持ち出してきた。我々は総理大臣が本気でこれをやる気があるのかというのを問いたいから聞いたのだ。それに答えないのは残念だ。6月に税の改革を含む案を作るといった。ならば4月の社会保障の案は、積算の根拠になるような詰まったものにならなければならない。当然考えているでしょうね?」(9:39-11:08)
菅 「参議選で出したのはそのとおりだが、秋に引っ込めたというのは間違っている。直ぐにでも消費税を上げるという風に誤解され、参院選で厳しい結果になった責任を感じたから、もう一度党内でしっかりと協議した上で、改めて社会保障の5原則の考え方をまとめ、4月に多くの意見を聞きながらあるべき姿を提示する。6月に税との一体改革を示す。私だけに答えろいうのではなくて、谷垣さんも、案を出したら協議に乗ってくれるのか答えてくれ」(11:12-13:17)
谷垣 「だから、もう少し具体的なスケジュールを聞いてお答えすると言ってるでしょ?菅さんは強弁したけれど、、問題は国民はそう思っていない。参院選で迷走して、そのあと引っ込めたと思ってる。こういうことはトップリーダーがどれだけやる気なのかにかかっている。皆見ている。だから、職を賭してやるのか。きちっとしたものを出すのか、それを聞いたのに、責任については直接答えないし、4月にどういうものを出すのかも答えなかった。非常に曖昧だ。4月には税の積算根拠になるものを出すんですね。そこだけ答えてくれ。」(13:21-14:20)
菅 「国民に分かりやすく伝えた積りだ。4月までに社会保障のあるべき姿を示す。税については、どれだけの財源が必要で、どのような形を取ることが可能かも合わせた案を6月に示すから、そのときには協議にのるのか是非答えていただきたい。」(14:23-15:04)
谷垣 「私が聞いたのは、4月に出す案は税の積算根拠になるような具体的なものになるのかどうかということを聞いたのだ。6月に出すのは聞いた。もう一度4月に何を出すのか答えてくれ」(15:08-15:29)
菅 「何度も同じことを答えるしかない。社会保障のあるべき姿は多岐に渡っている。子ども手当は無駄の削減で行うというのがマニフェストにあったが、子育てという問題は広い意味での福祉にも入っている。雇用についても社会保障に入っている。そういうあるべき姿について4月に提案させていただく。そのための財源については、更に議論を重ねていくと何度も申し上げた。」(15:33-16:56)
谷垣 「もう少し端的に答えてくれ。判りにくかったけれど、要は6月には数字もきちっと纏める。したがって4月の社会保障の改革案も十分そのための叩き台になりうるものを纏める。そういうことでよいね?一応そういう理解として、次に行く…」(17:01-)
纏めるにあたって、菅氏、谷垣氏双方の発言それぞれについて、所要時間を一緒にカウントしてみたのだけれど、気づいたことは、菅首相の発言は所要時間が長い割に中身が薄いということ。
谷垣氏がおおよそ1分半程度でポンポン質問するのに対して、菅首相の発言は2分、3分と使っているにも関わらず、纏めてみると、肝心な部分は驚くほど少ない。谷垣氏に迫っているのは文字数だけで、中身は遠く及ばない。
谷垣氏の発言は、いままでよりは攻撃的になっていて、少し変化があるように感じられた。まぁ、これまでの優しい谷垣氏の発言と、国を預かる責任をちっとも感じていない菅政権を相手にすることを考えると、これは好意的に受け止めるべきなのだろう。
党首討論の前半部分の中で、谷垣氏は4月に出す社会保障の案は、積算の根拠になるような詰まったものにならなければならないと何度も繰り返していたけれど、何故、しつこく繰り返したのかについて、渡邉哲也氏が次のように解説している。一部引用する。
年金や社会保障は、膨大な法令通達で出来上がっており、公務員、社会保険、国民健康保険でも取り扱いが全く違う。
現在、すでに実施されている法令、各種通達をすべて整理した上で、誰に対してはいくら払うか、上積みするかという調整がないと、予算のベースとなる個別の事業計画にたどり着かない。
その為、非常に具体的かつ多面的な実施計画が必要となり、それがないといくら掛かるかまで、たどりつかない。
これまで、自民党ではこの改革のために、検討委員会などを作り、その準備作業を続けてきた訳です。
実は、菅内閣の税と社会保障の一体改革のメンバーは、この時のメンバーがほとんどなのです。その為、やろうと思えば、『すくに計画作成は実施できるはず』という話なのですね。
しかし、民主党内はこれをしてこなかったので、党内どころか閣内でも意見集約すら出来ていない。ですから、どこをやり、どこをやらないという話すら出来ない。また、各分野が連携構造に一つを壊すと、全部壊れる可能性もあるのです。
この内容に従えば、4月の案という段階で、各所への根回しと調整がほとんど済んでいて、ほとんど成案に近いものにまで仕上がっていないといけないということになる。
それを踏まえたうえで、谷垣氏の討論を改めて見直すと、ところどころに地雷というか、要所要所に釘を刺していることが分かる。あれだけ積算の根拠はあるのかと、何度も質問する裏には、根拠のない案では討論できないよという含みがあることは明白で、おそらく、菅政権は、根拠のある案は出せないだろうと見切ったうえでの質問だとみる。
そうした恐ろしい罠が掛けられているにも関わらず、菅首相は、案を出す、出すからには協議に参加すると約束しろと繰り返すばかり。たぶん、罠だとは気付いていないだろう。4月に社会保障の素案を纏めることの本当の大変さも。
万事に甘く考えているのが透けてみえる。どうせ誰かにやらせておけばいいくらいにしか考えていない。そして、いざ4月になって、全然案を纏められていないことを知って周りに当たり散らすだけ。
今日の党首討論を聞く限り、予算関連法案が今国会で通過することはほとんどない、とみた。それほど、菅内閣は、準備が足りてない。それどころか、それに気づいてさえもいないとさえ。
その答えはいずれ、4月に明らかになるけれど、菅政権は、また一つ、外堀が埋められた。
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渡邉哲也 代表戸締役 【菅対谷垣詰将棋対決】
菅代表 4月末までに『在り方』を示したい。
谷垣総裁 『積算』出来るレベルのものなのか?
『この繰り越しがありました。』
年金や社会保障は、膨大な法令通達で出来上がっており、公務員、社会保険、国民健康保険でも取り扱いが全く違う。
現在、すでに実施されている法令、各種通達をすべて整理した上で、誰に対してはいくら払うか、上積みするかという調整がないと、予算のベースとなる個別の事業計画にたどり着かない。
その為、非常に具体的かつ多面的な実施計画が必要となり、それがないといくら掛かるかまで、たどりつかない。
これまで、自民党ではこの改革のために、検討委員会などを作り、その準備作業を続けてきた訳です。
実は、菅内閣の税と社会保障の一体改革のメンバーは、この時のメンバーがほとんどなのです。その為、やろうと思えば、『すくに計画作成は実施できるはず』という話なのですね。
しかし、民主党内はこれをしてこなかったので、党内どころか閣内でも意見集約すら出来ていない。ですから、どこをやり、どこをやらないという話すら出来ない。また、各分野が連携構造に一つを壊すと、全部壊れる可能性もあるのです。
で、つぎの駒を打つ
平成21年の税制改革の附則に、平成23年度、つまり来年の3月までに、消費税を含む抜本改革をすると規定している。民主党は消費税などの改革をする前に総選挙をすると言っている。 だから、来年の3月までに、増税を含むマニフェストを作って、国民に示し、総選挙しないと、論理的に成立しない。
選挙は党で戦うもので、政府提案で年金案を出している政府と各党が戦うのはおかしいということになるのです。
以上解説終わり
URL:http://www.twitlonger.com/show/8n3vrp
党首討論 (9日午後) 2011.2.9 16:33
菅直人首相は9日午後、首相就任後初めて自民党の谷垣禎一総裁との党首討論に臨んだ。詳細は以下の通り。
谷垣氏「菅総理のご就任以来初めて党首討論ですね。この間、内政、外交、この場で議論すべき問題が沢山たまっているわけですね。総理ももっと頻繁に開きたいというご意向を持っているように側聞しております。私もそれは大賛成ですので、今後、頻繁にこの場で総理と議論させていただきたいと思っております。今日はまず第一回、色んな案件がございますが、まず社会保障と税の一体改革というところから議論させていただきたいと思います。予算委員会の議論を聞いておりますと、この問題の取り組み、総理が持っておられるスケジュール感、4月には社会保障の改革案をまとめると、それから6月には税制の抜本改革案も含んだ成案をまとめるんだ、そして9月前後にはマニフェストの見直しもすると、そして消費税率等を上げる前には、解散して国民の信を問うということのように承っておりますがそれでよろしいでしょうか」
菅首相「谷垣総裁から、最初、初めての党首討論ということで、私も野党としては党首討論に出たことがありますが総理としての出席は初めてでございます。ぜひ党首討論は一方的な質問だけではなく、お互いに討論するわけで、まさに熟議の国会にふさわしくその討論を通して色々な議論が深まっていく討論にしていきたいと私自身も思っておりますし、ぜひ谷垣総裁におかれましても、回数も私はもっと開いていいと思っておりますので、ぜひともそういう建設的な討議になるようお互いに努力をさせていただきたいと思っております。その上で、まず私の方から申し上げますと、先月の25日(正しくは24日)に施政方針演説を行いました。私の国造りの理念として、平成の開国、最小不幸社会の実現、不条理な政治を正すということについて申し上げました。今日は谷垣総裁からのご質問にはもちろんお答えすると同時に、私からもこうした国造りの理念についても、谷垣総裁としての意見をぜひ聞かせていただきたいと申し上げておきたいと思います」
「そこで、今、社会保障と税の一体改革についてのスケジュール感について質問をいただきました。私もまず、社会保障と税の一体改革ということ、そのものの大きなスケジュール感を持たなければいけないと思っております。それは、今日の高齢化の進展によって、毎年1兆円のそうした社会保障の費用が自然増という形で増えている。さらには子育てや若者層の雇用という問題が、これまで必ずしも十分に保障されてこなかった。そして、孤立化といった、人々が居場所と出番を持てない、そういう社会にもなっております。そうした意味で、今こそ社会保障と税の一体改革はどの内閣であっても、誰が総理大臣であっても避けては通れない、そういう課題であることをまずスケジュール感として申し上げておかなければならないと思います。その上で、今、谷垣総裁からお話しがありました点ではほぼおっしゃる通りでございまして、4月に向けて社会保障のあるべき姿を今、検討しておりますのでそれを提示をし、そして6月には社会保障と税の一体改革の案を提示させていただきたい。そしてマニフェストの問題は党を中心に検討していただいておりますが、4年間の衆院の任期の中の折り返し点が大体、参りますので、その頃までにはマニフェストについてすでにやれたもの、今実行しているもの、中にはなかなか実行が難しいものを分析をした上で、どうしても難しいものについては国民の皆様にしっかりと説明し、ご理解をいただきたい」
谷垣氏「あの、総理。もう少し端的に答えていただきたいと思います。それで、あの、スケジュール感おっしゃいました。大きなスケジュール感は私も共有しております。それから、あの、4月に案を作り、社会保障ですね。6月に成案を得る。そして見直しをする。こういうスケジュール感、今、お話がありました。私ね、順序が逆なんじゃないかと思うんです。なぜかと言いますと、これは後ほどもう少し詳しく申し上げますが、マニフェストが破綻している。このことがね、いろんなことの背後にある問題です。ですから、この処理を後回しにしようというのはね、私は順序が違うんだと思います」
「で、まずこのことを申し上げて、それから、あの、この社会保障と税の一体改革の議論の中で、この間わが党の野田毅議員が、予算委員会の中で総理に質問して、4月に社会保障まとめられなかったときは責任を取るのかと聞いてですね、菅さんがうなずかれたということがありました。野田さんのおっしゃるのは、それできなかったら責任を取って辞めると言っているのかという問いかけですが、それはいかがでしょうか」
菅直人首相「私はですね、谷垣総裁の言われることではありますけども、順序が逆というのは、私にはまったく理解できません。つまりですね、これはぜひ、最初に私が申し上げた、スケジュール感を申し上げました。今、私と谷垣総裁は、ほぼ同い年に近いところでありまして。この団塊世代の前後にとって、社会保障の将来は、不安感を持ってみておられます。同時に私たちの、ちょうど子供の世代の若い皆さんは、果たして自分たちのときに、今のような社会保障の給付が受けられるのかという、不信感を多く持っておられます」
「そういった意味で、今ですね、私たちがやらなければならない、われわれ世代がやらなければならないのは、この問題を、ある意味では一刻も早くですね、しっかりとした案を作って、そして実行に移すことじゃないでしょうか。そういった意味で、逆に私、お尋ねしたいんですけども、4月に社会保障のあるべき姿を提示いたします。6月に、それと税一体の改革案を皆さんにお示しします。そのときには、そのときには、谷垣総裁も、これまで『案が出ないまま協議をしたいといっても、それはできません』といわれてましたから。案を出した時には、ちゃんと与野党協議に乗っていただけるんでしょうねということを、ぜひお尋ねをさせていただきます」
谷垣氏「総理ね、私最初に、総理のおっしゃった大きなスケジュール感は共有していると申し上げたでしょ。繰り返さないでいただきたいと思うんですよ。それで、そのまあ、今、責任についてはお答えにならなかったですが、私がなぜ、これを聞いたかということを申し上げましょう。それは、この税の問題、昨年、参議院選挙のときに、菅総理、提起されましたね。で、そのときに、10%という自民党の案も一つの参考だとおっしゃる。ところが秋になったらコロッと引っ込められてしまった。で、また持ち出されたと。われわれはね、総理大臣が本気でこれをおやりになる気があるのかどうか。今度は本気でおやりになるんですかということを問いたいから、責任ということをうかがったわけです。それをお答えにならなかったのは非常に残念ですよ」
「それで、もう少し、今、スケジュール、つまり具体的にこの問題をどう進めていくかという菅さんのスケジュールを伺っているわけですが、そのスケジュールを私、聞きながら、われわれの考え方も申し上げたいと思います。そこで、もう一つ確認します。あの、責任のことは逃げられた。もう一つ確認します。6月に、6月にですよ、税の改革を含む成案を得るとおっしゃったわけですね。作るとおっしゃったわけですね。そうしますとね、4月の社会保障の案は、そういう積算の根拠になるような、相当、詰まったものでなければならないはずです。それは当然、そういうことをお考えになっているでしょうね」
首相「えー、先ほどですね、私が参議院選挙で、確かに消費税のことについて、自民党の提起された10%ということを参考にしたいということを申し上げた。それはその通りであります。しかし秋になって、そのことをですね、コロッと引っ込めたというのは、間違っております。つまり、簡単に申し上げますが、いいですか、簡単に申し上げますが、皆さん、お静かにお聞きください」
「私が申し上げたのは、消費税について、それを参考にして与野党で協議をしようということを申し上げたつもりでしたが、私の言い方が、やや唐突であったために、すぐにでも消費税を引き上げるという風に誤解を招いたことを、これは私の責任も含めて、そのことを感じましたので、参議院選挙で厳しい結果をいただいた中で、もう一度、党として、党として、この問題についてしっかりと協議をしてもらいたい。こういう風に申し上げて、そして、この間のいろいろな党内の議論も踏み固めたうえで、改めて今回、今回、この社会保障のですね、考え方を、昨年の暮れには一つの5原則の社会保障の考え方をまとめ、そして、この4月にそうしたものを踏まえて、多くの党や団体の意見もきちっとお聞きしたうえで、あるべき姿を提示しようと。このことを申し上げ、併せて6月には、税との一体改革案をお示しします」
「ですからぜひ、谷垣総裁にもお答えください。私にだけ答えろというのでなくて、谷垣総裁もお答えください。そういう案を、きちっと私たちが出したときには、きちっと与野党協議に乗っていただけるのですかというご質問に、きちっとお答えください。
谷垣氏「だからもう少し具体的にスケジュールを聞いてお答えすると言ってるでしょう。それよりか、菅さんね。問題はですよ、今強弁をされましたけど。国民はそう思ってないと思いますよ。やっぱりあの参議院選挙のときに相当、迷走されて、その後引っ込めてしまわれたと思ってるんです。こういうことはやはりですね、やっぱりトップリーダーがどれだけやる気かっていうことに関わってきますから。そこはね、みんな見てるんですよ」
「だから私は、その、職を賭してまでやるおつもりか、あるいはきちっとしたものをお出しになるのかということを聞いたわけですが、その責任については直接、お答えにならないし、また4月にどういうものを出すのかということもお答えにならなかった。だから非常に曖昧だと思うんですよ。4月に社会保障の案はきちっとですよ、税の積算根拠になるようなものをお出しになるんですね。じゃあそこだけ答えてください」
首相「今ですね、私が分かりやすく国民の皆さんにお伝えしたと思うんです。4月までに社会保障のあるべき姿についてしっかりと議論をして、その姿をお示しします。税については、その社会保障のあるべき姿について、そのことを実行していくためには、どれだけの財源が必要で、そして、それにはどのような形を取ることが可能か、そういうことについて併せた案をお示しをいたしますから。お示しを、6月にお示しをいたしますから。それが出たときには、協議に乗られるのかどうかについても、ぜひお答えをいただきたいと思います」
谷垣氏「私がお聞きしたのは、4月に出す社会保障の改革案が、要するに、その、税の積算の根拠等々になりうるような、具体的なものをお出しになるのかどうかということを聞いたわけですよ。あの、6月におまとめになるというのは先ほど承りました。もう一回、4月に何をなさるのか、お答えいただきたいと思います」
首相「何度もですね、同じことをお尋ねになり、同じことを答えるしかありません。社会保障のあるべき姿ということはですね、かなり多岐にわたっております。もちろん、医療や介護や年金や、あるいは広い意味ではですね、これは議論もありましたけども、子ども手当そのものは、これは無駄の削減による財源で行うというのがマニフェストでありますけれども、子育てという問題については、この、広い意味の福祉にも入っております」
「また、例えば雇用の問題も入っておりますし、孤立した人々を、いかに居場所と出番を、そういうものを確保するかという、そういうことも社会保障に入っております。そういうあるべき姿について、4月にきちっと提案をさせていただきます。しかし、それについての財源的な措置をどうするかということについては、さらに議論を深めて、6月に提示するというのは、これまでも何度も申し上げてきた。施政方針でも申し上げてきたことであって、そのことを、同じ答弁を繰り返すのは、当然じゃないでしょうか」
谷垣禎一自民党総裁「あのー、菅さんねえ、もう少し端的に答えていただきたいんですよ。それで、今伺ったことから、なかなか分かりにくかったけれども、要は6月にきちっと数字もまとめる。従って4月に出す社会保障の改革案はそういったもののたたき台に十分なり得るものを4月にまとめられる、このような理解でよろしいですね?そうしますとね、一応そう理解しまして、次に行きますとね、あのー、平成21年度の税制改正法の附則104条というのがございますね。これは菅総理もこの附則は『尊重しなければならない』と、こういうふうに今までも仰ってこられた。そこで、この104条に従いますと、平成23年度中に消費税を含む税制抜本改革案を国会に出さなければならない、ということを義務付けているわけですね。常識的に考えればこの通常国会中にはお出しにならないんじゃないかと思いますが、秋の臨時国会か、あるいは来年の通常国会にこの法案をお出しにならなければならないということになりますね。そして、今やっておられる年金改革の法案では、24年度にやるんだと。つまり、法案を出すということではなくて、そこまでに財源が実施しなきゃならないということを、つまり年金改革の中では言っているんだろうと思います。そうすると平成24年度以降に実施するということになるわけですが、菅総理は同時にですね、衆院任期後に引き上げるというご答弁もあるんですね。そうすると、そこはどういうふうに理解したらいいんでしょうか?つまり、平成24年度中にやるのか、あるいは25年度になることも、25年になることもあるのか。そこをちょっとお答えください」
菅直人首相「この104条という法案は、もちろんご存じの通り自公政権時代に成立をしているわけでありまして、法律として成立している以上、私たちの内閣も基本的にはこの法律が変わらない限りはこれに沿って進めていきたいと、このように考えております。そういう意味では23年度末までに何らかの、この問題についての法的な対応をしなければならないと思っております。その上で、今、色々な日程のことで実施時期と、あるいは、もしかしたら選挙のことをお尋ねなのかもしれませんけれども、私なり、わが党が申し上げているのは、例えば消費税を含む大きな税制改正を行う、それを実施する場合には、少なくともそれを実施する前には国民の皆さんに判断を仰ぐと、そのことを申し上げてきたわけでありまして、23年度末に案を出して、それが成立したとしても、例えば税と社会保障の共通番号の整備等々、色々なことも予想されますので、実施する段階に至った場合には、それよりも前に必ず国民の皆さんに判断を仰ぐと、このように考えているということはこれまでも明確に申し上げてあります」
谷垣氏「いや、あまり明確に答えておられなかったんですよ。そこのところは要するに、衆院任期後に引き上げるということも仰ったり、かなり曖昧だったんですね。ぼかしておられたんじゃないかと私は正直言って思います。いずれにせよですね、23年度までに法制上の措置を講ずる。これはされるわけですよね?そうしますとね、菅さんたちがお作りになって戦われたマニフェストの基本構造は、消費税をやるという前提にはなっていないと思います。むしろ、色々な無駄を排除することによってできるんであって、消費税はやらないという前提に立っていたはずです。そうしますとね、いずれにせよ任期中に、23年度中におやりになるということはですね、そのままやればこれはマニフェスト違反ですよ。マニフェスト違反をですね、私ね、野党も一緒に協議して片棒を担げと、菅さんが仰っていることはこういうことなんですね。私はね、そういう八百長相撲、一緒にかど番だから立ってくれみたいな話はね、これは私は乗れません。国民との約束違反を手伝えというのは筋違いだと思います。それで、まずは、まずは、消費税率を引き上げるという新しいマニフェストをお作りになって、そして国民の声をお聞きになることが必要じゃないかと思いますよ。それで、私どもも、すでに菅さんご承知の通り、昨年の参議院選挙では当面10%消費税は必要だという案を掲げて選挙致しました。衆院選挙のマニフェストはこれから作りますが、当然それを踏まえたものになります。ですから、菅さんたちもまじめにおやりになればたぶん方向性はそんなに違わないものになるだろうと、私は思っております。だからそうやってきちっと新しいマニフェストをお作りになって、そして国民の声をお聞きになった後、これは菅さんと私の間で全てが一致するわけではないと思いますが、しかし基本的にこの問題は一致したということになったら、選挙の後、勝った方がそれをやって、負けた方も『負けたから腹いせだ』というようなことはやめにする。お互いにきちっと国民の信を得たから、それをやっていこうということができるじゃありませんか。私はね、それが一番のこの問題を解決する近道だと。やはり今、どうも約束したことが全然守られていないという政治不信があるんですよ。その時に税が必要だと言ってお願いをするというのはね、政治の筋道として違うと思います。手順を踏んで、国民になるほどと、これは与野党が両方で頑張らなきゃならない課題じゃないですか」
「それからさらにこのことを申し上げます。今、審議している平成23年度予算。これは財源を集めるのに相当苦労されたでしょう。一応案を作って、今、審議している最中ですね。しかしねえ、来年はなかなか組めないんじゃないかと思いますよ。埋蔵金うんぬんなんて…。だからこそ菅さんはね、税制改革を提起されたということでもあるんだと思うんですよ。野党としてもこの問題はどうしたら乗り越えていけるのか。平成24年度予算、どうして組めるのか真剣に考えなきゃなりません。そのための一番近道がこれなんですね。もう一回きちっと、お互いに正直言って信を問う。そしてその後、お互いに同じ方向なら一緒に協力できることは協力してやっていく。協議、協議と仰るが、その時にそういう形でしっかり協議ができる道も開けるんですよ。私はそれが近道だと思います。もう一つですね、あまり私ばかり言ってもいけませんが、申しあげますと、ちなみに先ほどわれわれ消費税10%掲げたと申しました。これからもそれを踏まえてやっていきますが、今、社会保障と税の問題、いろいろ菅さん取り組んでおられますね。われわれもすでにやってきて、もう成案があるんですよ。結局、審議しているメンバーもほぼ同じですから、似たようなものができると思います、私はね。それに加えて、財政再建健全化法も出しました。だからわれわれの考え方はすでに明確にしておりますので、どうぞわれわれのレベルまで早く追いついていただきたい。このように思います」
菅直人首相「いろいろたくさん言われますので、私も一つ一つ申し上げなきゃなりません。まず今の谷垣総裁の答弁、お話を聞いていると、結局のところはいかに私たちが4月、6月に案を出しても、それでは議論には乗れないと。解散をして、それが終わらなければ乗られないという、こういうお答えのように聞こえましたが、私はそれはですね、先ほど申し上げたように解散をするということは、その後の政局はどうなるかもちろん誰にも分かりません。つまりは、この長年積み残してきたこの課題を、さらに先送りすることになると思うから、この段階できちんと案を出しますから、そうしたらある時には『案がないから議論に乗れない』と仰っていたじゃないですか。案を出した時にも議論に乗れないというのは、私は基本的に言っていることが違ってきていると1点申し上げます。その上で、もう1点申し上げます。私は先の参院の時に自由民主党が提起された10%を参考にすると申し上げました。そして厳しい参院の結果をいただいた上で改めて考えました」
「やはりこの問題は単に税だけの議論を先行させては、国民の理解を得られない。手順が重要だ、順序が重要だと。そのためにはまずあるべき社会保障の姿を、きちんと国民の皆さんに丁寧に提示して、その社会保障の姿を実現する上で、どうした財源がどういう税制の上で必要になるかということを合わせて提案をして、そしてその中でご理解をいただかなければならない。そういうことで4月と6月というこの日程を決めて、皆さんに提案をしているわけです。それなのに、そういう議論もしないまま、『まず解散だ』というのは、国民の利益よりも党の利益を優先されている提案だとしか思えませんが、いかがですか」
谷垣禎一自民党総裁「総理ね。総理ね。『急がば回れ』という言葉はご存じでしょ?あなた手順ということを仰った。菅さんが考えていられる手順は、まず社会保障との一体改革、それをきちんと議論していくことが手順と仰った。しかし、それだけでは足りないんですよ。私はね、菅総理は市民運動からたたき上げてきた運動家としては尊敬していますよ。それから政策に関してはいろいろと取り組んでおられるでしょう。苦労しておられると思いますよ。だけど大事なのは国民との信頼関係だと私は思いますよ。それで、案がないからダメだといわれたけれど、案を出してもだめだというのかと、問いかけがあったけれども、問題はその案が国民との信頼関係から見てどうかということですよ。マニフェストの基礎を踏みにじるようなものだったら、片棒をかつげと。マニフェスト違反の共犯にアンタなってくれ。冗談じゃありません。私のお答えはそういうことであります。菅さん、急がば回れでありますから、ぜひ急がば回れでやってください。それでね、この問題は延々やらなきゃならないかもしれませんが…。え?答えがありますか?じゃあどうぞどうぞ」
首相「実はですね。2009年のマニフェストに。2009年のマニフェストに加えて、2010年の参院の時にもこのマニフェストを提案を致しました。2010年のマニフェストにおいては、ここにちゃんと書いてあります。つまり、早期に結論を得ることを目指して、消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始しますということを書いて、それで皆さんにも提案を致したわけであります。現在のスタンスは消費税に関しては、まずは消費税から始めるのではなくて、社会保障のあるべき姿を皆さんにお示しし、それに必要な財源の中には当然消費税のことも含まれますので、そういうものを含めて協議を致しましょうというのは、すでに参議院の選挙の時の私のマニフェストにきちんと申し上げていることでありまして、そのことが国民に対する何かごまかしだということは、全く当たりませんので、そこだけは明確に申し上げておきます」
谷垣氏「菅さんね、そんな強弁してもダメですよ。国民はそういうふうに思っていないんです。そして、明らかに衆院の時のマニフェストはですね、消費税はやらないというのが大前提だった。そういうことですよ。なぜこういう議論が起こってくるかと、先ほど申し上げたことですが、結局、マニフェストに根本的な欠陥がある。3つ申し上げたいと思うんです。一つはマニフェストの施策は無駄を排除することによってできる、こういう大きな柱があった。できていないですよね。無駄排除でできたのはこの2年間で2・6兆円。2年間で12・6兆、大きな乖(かい)離(り)があるじゃないですか。とても行き着けませんよ。それから2番目。そうやって無駄を探して、財源を見つけても結局バラマキのために使ってしまうから、ぜんぜん財政体質の改善につながらない。だから国債の格付けも落ちるんですよ。それからもう一つの最大の問題点。毎年社会保障1兆増えますね。マニフェストをひっくり返してみても、どうやってこの1兆円増に対応していくかっていうのは何も書いていないですよ。だから、財政がこのままにしておけばですよ、この菅さんたちのマニフェストは『財政破壊のマニフェスト』ですよ。だからこれから見直せと言っておるんですよね」
「もう時間も参りましたから、最後に一つだけお伺いしたい。小沢さんの証人喚問問題です。野党6党は衆院予算委員会の公聴会を設定するまでに、きちっと返事をしてもらいたいと、このように申し上げております。そして、この3年来、3年越しに要求してきたわけです。もういい加減に解決して、こういう問題を乗り越えていきましょうよ。菅さんがリーダーであるならばこの場で自分がきちっと解決すると仰って下さい」
首相「先ほどマニフェストについて、相変わらずバラマキという言葉を使われました。しかし、バラマキではないんです。このマニフェストは従来の政権でできなかった新たな政策を掲げた。そしてその中で現実に進んでいることもいくつもあります。例えば農業政策でもかつては、どちらかといえば価格政策でありましたけれど、欧米は昔から所得政策が中心です。そういった意味で農業の個別所得補償も提示を致しました。子ども手当についても議論はありますけれども、従来は子供に対する手当てが相対的に非常に薄かったですから、それに対してきちんと手当てをしようというのは新しい政策なんです。高校の無償化も実行致しました。ですからそれがバラマキというのは私は当たっていない。つまり、政策選択であって、もっといい政策が何かということをお示しされるべきであって、12月の皆さんの基本方針には、自分たちとしての予算案をお示しすると書いてありますが、残念ながらその後、お示し頂いたという記憶はありません」
「その上で、最後のご質問にお答えを申し上げます。私は谷垣さんが仰った広い意味で「政治とカネ」の問題、あるいは小沢さんを巡る問題も何とか越えていかなければならない大きな課題だと私自身思って、この間もやって参りました。特に党の代表選の折には、クリーンでオープンな政治を掲げて、多数の支持をいただいて、党の運営については、例えば組織活動費をそうした形の不明朗な使い方はやめようと、改めて現在の幹事長と話を致しました。また、企業と団体献金についても法案をまとめておりますので、ぜひとも、それについても与野党協議の中で法案成立に向けてご協力をいただきたいと思っております。その上で、小沢元代表の件については、私も国会での説明は必要だという認識を持っております。しかし、国会についてどのように扱うかということは、これは国会の中でお決めをいただかなければなりません。その上で申し上げますと、今、小沢元代表に私も「もう一度話をしたい」ということを申し入れておりまして、近々、こういった問題についてもきちっと話し合って、方向性を定めていきたいと、このように考えていることをしっかりとこの場で申し上げておきます」
谷垣「ぜひ、小沢さんと話してきちっと解決してください。それからマニフェスト問題は予算委員会でしっかりやりましょう」
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110209/plc11020916330007-n1.htm
この記事へのコメント
とおる
鳩山ルーピー首相との党首討論で、谷垣氏が、辺野古への移設で、腹案の期限を言わせてしまったのと似ていますね。
首相に見えるように地雷を埋め込んで見せて、そこを歩かせるなんて、なかなか。
almanos