次の段階に入った福島原発

 
福島原発が次の段階に入った。

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次の段階というのは、メルトダウン(炉心溶融)が起こる(起こった)可能性が高いということ。

原子力安全委員会は30日午後の記者会見で、福島原発1~3号機の圧力容器が損傷しているのは事実だろうとの見解を示した。

圧力容器と格納容器の圧力差が小さいというのがその理由。

通常、燃料棒を収める圧力容器内の運転時の圧力は70気圧で設計耐圧で90気圧あるのだけれど、それに対して、その外側にある格納容器の運転時圧力は1気圧程度で設計耐圧が5気圧程度。

これくらい圧力差があるのであれば、確かに圧力容器と格納容器の圧力を測定することで、容器が破損しているかいないかの推定くらいはできるものと思われる。

東電によると、圧力容器の圧力は、大気圧より高く保てているから、完全に壊れているわけではない、ということらしいのだけれど、圧力容器に穴が開いてしまった以上、炉心溶融に一歩近づいてしまったことには変わりない。

最早、漏れてしまった核燃料が、格納容器内で収まってくれるかどうかという段階になったといえる。

格納容器は3層構造で、一番内側に鍛造材で厚さ3センチの内壁があり、その外側の外壁が鉄筋コンクリート製で厚さ200センチ、そして、その外に、遮蔽外壁と呼ばれる、厚さ100センチの鉄筋コンクリートで覆われている。

万が一、溶融した核燃料が格納容器をも溶かしてしまうようなことがあれば、中の核燃料は剥き出しになって、大量の放射性物質、および放射線が大気に排出されてしまう。

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たしか、24日に、3号機から黒煙が派手に出ていたように思うのだけれど、これについて、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は、黒煙の原因の1つとして、コリウム(炉心溶融物)とよばれる放射性のスラグが格納容器のコンクリートと化学反応した可能性が考えられるとしている。

この炉心溶融のプロセスについては、2006年2月に東芝から出願された特許、「炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法」にて説明されている。以下に該当箇所を引用する。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、炉心溶融物冷却装置、原子炉格納容器および炉心溶融物冷却装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水冷却型原子炉では、原子炉圧力容器内への給水の停止や、原子炉圧力容器に接続された配管の破断による冷却水の喪失によって、原子炉水位が低下し炉心が露出して冷却が不十分になる可能性がある。このような場合を想定して、水位低下の信号により自動的に原子炉は非常停止され、非常用炉心冷却装置(ECCS)による冷却材の注入によって炉心を冠水させて冷却し、炉心溶融事故を未然に防ぐようになっている。
【0003】
しかしながら、極めて低い確率ではあるが、上記非常用炉心冷却装置が作動せず、かつ、その他の炉心への注水装置も利用できない事態も想定され得る。このような場合、原子炉水位の低下により炉心は露出し、十分な冷却が行われなくなり、原子炉停止後も発生し続ける崩壊熱によって燃料棒温度が上昇し、最終的には炉心溶融に至るおそれがある。
【0004】
このような事態に至ると、高温の炉心溶融物(コリウム)が原子炉圧力容器内下部に溶け落ち、さらに原子炉圧力容器下部ヘッドを溶融貫通して、コリウムは原子炉格納容器内の床上に落下する。コリウムは格納容器床に張られたコンクリートを加熱し、接触面が高温状態になるとコンクリートと反応し、二酸化炭素、水素等の非凝縮性ガスを大量に発生させるとともにコンクリートを溶融浸食する。
【0005】
発生した非凝縮性ガスは格納容器内の圧力を高め、原子炉格納容器を破損させる可能性があり、また、コンクリートの溶融浸食により格納容器バウンダリを破損させたり、格納容器構造強度を低下させる可能性がある。結果的に、コリウムとコンクリートの反応が継続すると格納容器破損に至り、格納容器内の放射性物質が外部環境へ放出させるおそれがある。
【0006】
このようなコリウムとコンクリートの反応を抑制するためには、コリウムを冷却し、コリウム底部のコンクリートとの接触面の温度を浸食温度以下(一般的なコンクリートで1500K以下)に冷却するか、コリウムとコンクリートが直接接触しないようにする必要がある。従来は、落下したコリウムの上から注水して冷却することにより、コリウム温度を下げコンクリート浸食反応の抑制が図られてきた(たとえば特許文献1および特許文献2参照)。


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※黒煙を上げる3号機


背景技術の説明項で、「極めて低い確率」として設定している"非常用炉心冷却装置(ECCS)が作動せず、炉心に注水もできない"という状態は、丁度、津波被害後の福島第一原発であり、最終的に炉心溶融に至るおそれがあるというのが、正に今の福島原発の状態だといっていいだろう。

この特許の背景技術の説明を更に読み進むと、次には、「高温の炉心溶融物(コリウム)が原子炉圧力容器内下部に溶け落ち、格納容器の床に張られたコンクリートを加熱・反応して、二酸化炭素、水素などのガスを大量に発生させ、コンクリートを溶融浸食する」とある。

ここが、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)が、3号機の黒煙の原因ではないかと指摘したのと同じことを述べた部分だと思われる。

だから、おそらく、このプロセス自身は、原子力開発関係者であれば、知っていて当然のことで、東電や関係者も無論、承知しているはず。

さらに、この特許では、コリウムとコンクリートとの反応が続いてしまうと格納容器破損に至るとし、その抑制のためには、「落下したコリウムの上から注水して冷却する必要がある」としている。

要するに、圧力容器が破損した可能性が高い号機については、コリウムと格納容器のコンクリート床との反応を進ませないために、これかも注水を継続しなければならないだろうということ。

29日の英紙ガーディアンは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で福島原発建設時に同型炉の安全性の研究責任者を務めた専門家が、福島原発事故について、少なくとも溶融した燃料が圧力容器から「溶岩のように」漏れ、格納容器の底にたまっているようだと説明したと報じている。

だから、圧力容器が損傷していると、原子力安全委員会が認めた1~3号機で、今後「黒煙」が発生するようなことがあれば、コリウムと格納容器のコンクリート床とが反応している、つまり、格納容器の底がダメージを受けていると見るべきだと思われる。

ここへきて、政府は、放射性物質の飛散を防ぐ策として、建屋が吹き飛んだ1、3、4号機に、特殊な布をかぶせることを検討しているというから、あるいは、格納容器が破損して大量に放射性物質が放出される事態に備えだしたのかもしれない。

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画像福島原発1~3号機「圧力容器に損傷」 原子力安全委 2011/3/30 22:33

 原子力安全委員会は30日午後の記者会見で、東京電力福島第1原子力発電所の1~3号機について「圧力容器が損傷しているのは事実だろう」との見解を示した。1~3号機は原子炉に真水を注入するが、不安定な状態が続いている。タービン建屋などにたまった高い濃度の放射性物質を含む汚染水の排水作業も難航している。

 圧力容器は核燃料を入れた原子炉の中心部分で、高圧に耐えるため厚い鋼鉄でできている。安全委の代谷誠治委員は「圧力容器と格納容器の圧力差が小さく、圧力容器が健全に保たれているとは思えない」と説明。具体的な損傷箇所は言及しなかったが、何らかの損傷があることを示唆した。

 圧力容器は簡単にひびが入ったり、割れたりすることはないとされている。ただ燃料棒の真下の部分には核反応を抑える制御棒を出し入れするための穴があり、溶接部は弱い。経済産業省原子力安全・保安院は30日の会見で「制御棒の部分が温度や圧力の変化で弱くなり、圧力容器から(水などが)漏れていることも考えられる」との見解を示した。

 圧力容器自体が損傷すれば、冷却のための水を入れても水位が上がらず十分に燃料を冷やしきれないうえ、タービン建屋地下の汚染水を取り除いて、本来の冷却装置を動かすことができても、十分に冷却水が循環しない恐れもある。

 福島第1原発では原子炉の温度が高い状態が続く。1号機の圧力容器の温度は30日午後2時にセ氏270度。水の注入量を増やした結果、29日より同約52度下がったものの、設計の上限(同302度)に近く依然として高い。2号機も30日午前6時で同170度と前日に比べて17度上昇した。

 熱交換器/async/async.do/ae=P_LK_ILTERM;g=96958A90889DE2E6E3E4E6E5E7E2E3E4E2E1E0E2E3E29BE0E2E2E2E2;dv=pc;sv=NXなど本格的な冷却装置の稼働に向けた作業を急ぐが、1~3号機とも冷却装置を動かすポンプがあるタービン建屋や屋外の坑道(トレンチ)には汚染水がある。抜き出す作業を一部で始めたものの、思うように進んでいない。

URL:http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819595E1E2E2E38B8DE1E2E2E1E0E2E3E39793E3E2E2E2



画像福島2号、核燃料が炉外漏出か 英紙で専門家指摘

 29日の英紙ガーディアン(電子版)は、福島第1原発2号機で、核燃料の一部が溶融して原子炉格納容器の底から漏れ出しているとみられると、複数の専門家が指摘しているとし、現地での大量の放射線放出の恐れが高まっていると報じた。

 2号機では建屋内で高い放射線量のたまり水が見つかった。原子力安全委員会は原子炉圧力容器が破損した可能性があり、溶融した燃料と接触した外側の格納容器内の水が直接流出したとの見方で、燃料自体の漏出までは言及していない。

 同紙によると、福島原発の原子炉を開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社で福島原発建設時に同型炉の安全性の研究責任者を務めた専門家は、少なくとも溶融した燃料が圧力容器から「溶岩のように」漏れ、格納容器の底にたまっているようだと説明。

 その上で同紙は格納容器も爆発で破損し、核燃料が容器外に出ている可能性を示唆した。(共同)

URL:http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011033001000913.html



画像建屋、特殊布で覆う案 内閣、放射性物質の飛散防止に 2011年3月30日3時3分

 東京電力福島第一原発で、建屋が吹き飛んだ1、3、4号機に、特殊な布をかぶせて放射性物質の飛散を防ぐ策を菅内閣が検討している。原子炉を安定して冷却するための電源復旧などに向けた作業環境を確保するためだ。タービン建屋地下に漏れ出した高濃度の放射能を含む汚染水の対策には、汚染水をタンカーで回収する案も出ている。東電の作業は難航しており、より大がかりな計画が必要との認識だ。

 関係者が朝日新聞社の取材に明らかにした。二つの対策は、放射性物質が原子炉から出続けていることで、原子炉の冷却作業がうまく進まなくなったため、急きょ出てきた。自然環境に大量の放射性物質をまき散らせていることへのあせりもある。

 大気への飛散対策では、まず1~4号機の建物内に付着している放射性物質に、特別な塗料を吹き付けて、閉じこめる。

 次に、原子炉建屋の上部を失っている1、3、4号機の壊れた部分を、特殊な布製の仮設建屋で覆う。密閉すると再び水素爆発が起きる危険性が出てくるため、フィルター付きの換気設備を取り付けることも検討している。

 タンカーで回収する方法は、強い放射性物質を含む汚染水の存在が、電線敷設やポンプなど各機器の復旧など、原子炉を冷やすために必要な作業の妨げになっていることや、水量が増え海にあふれ出る危険性が指摘され始めたため、首相官邸を中心に28日に浮上した。

 具体的には、第一原発の港湾部に空のタンカーを横付けし、2号機などに大量にたまっている放射性物質で汚染された水をポンプなどを使って移す案が出された。

 ただし、国土交通省などから、大型のタンカーをつけられる岸壁施設が整備されていない、など慎重な意見が出た。ポンプで水を移す際の作業員の安全が確保できない、といった反対意見も広がった。

 菅内閣はこのほかにも、厳しい放射線環境下で人間が作業することには限界があるため、ロボットを使ったり、機材をリモコンで操作したりするなどの対応も、産業界や米国と連携して考えている。

 第一原発の事故問題などを担当する首相補佐官に任命された馬淵澄夫・前国土交通相が、細野豪志・首相補佐官とともにチームをつくり、対策を練り始めた。

 対策チームには関係省庁や原子力安全委員会などの関係機関、東京電力、原発設備に関係する電機メーカー、ゼネコンなどが入っている。米国からも原子力規制委員会が参加している。

 チームは「遮蔽(しゃへい)」「リモートコントロール」「燃料取り出し・移送」の三つの班に分かれ、検討作業を進めている。

 「燃料取り出し・移送」班は、建屋が倒壊した場合、どうやって破損した燃料を取り出し、どこに運ぶかを検討している。

URL:http://www.asahi.com/national/update/0329/TKY201103290495.html

この記事へのコメント

  • クマのプータロー

    こと事態がここに至っては、放射能封じ込めの方法に関して、素人と自称専門家の意見が大きく異なることはないようですね。かえって「大丈夫か?」と心配が募ります。本物の専門家が居るのなら出てきて欲しいっっ!
    政府がフランスに支援を求めた経緯がよく解りませんが、そこまでアメリカを排除したいのでしょうか?
    アレバが事態を収拾しきったら、国内で相当いろいろな事故があったんだなぁ、と別の疑惑が生まれたりして。コジェマの周辺で起こった生態系への影響はいつの間にか誰も報道しなくなり(最後はかなり前の週刊プレイボーイでした)、光と影は恒に濃いのだと感じます。
    日立、東芝、三菱…メーカーで良いのなら何もアレバでなくても…とおもうのは私だけでしょうか?
    2015年08月10日 16:46

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