食品と水の放射線暫定規制値緩和へ
国際放射線防護委員会(ICRP)は、21日、福島原発事故で放射性物質の漏洩が続いていることを鑑み、これまで日本が一般人に対して決めていた被曝線量限度値を引き上げる勧告を出した。
これは、原発事故が収束しても、周辺地域に汚染が残ると分析したためで、これまで、一般人が許容される年間被曝量が年1ミリシーベルト以下だったところを、緊急的に年間20~100ミリシーベルトと設定。また、地域住民が故郷を捨てず、住み続けることができるために、年間1~20ミリシーベルト、長期的には1ミリシーベルトを目標とするように勧告したようだ。
おそらく、これを受けての動きだと思われるのだけれど、食品安全委員会は25日に、放射線による健康への安全性の許容範囲を広げる方針を固めている。
また、同時に食品安全委員会は22日から、政府が急遽設定した出荷規制の暫定基準値に関して、食品から摂取する放射線量が健康に与える影響について、科学的な合理性があるかの評価作業をして、1週間をめどに検討結果をまとめるとしているから、この結果も踏まえた上で、許容範囲を拡大するものと思われる。
実際に、どこまで許容範囲を拡大するのかは分からないけれど、逆に言えば、放射能汚染に関しては、国際放射線防護委員会と同じ判断、すなわち、事故収束後も、周辺地域に汚染が残ると国が判断したことを意味してる。
厚生労働省が17日に急遽策定した、暫定基準値は、原子力安全委員会が原子力災害時用に定めた「飲食物摂取制限に関する指標」に従ったもので、ヨウ素131なら、飲料水や牛乳・乳製品は1キログラム当たり300ベクレル、根菜や芋類を除く野菜類は2000ベクレル/Kg。放射性セシウムは牛乳・乳製品が200ベクレル/Kg、野菜類や穀類、肉、卵、魚などが500ベクレル/Kgとなっている。
この「飲食物摂取制限に関する指標」は、災害対策本部等が飲食物の摂取制限措置を検討する目安で、これは、国連世界保健機構(WHO)と国際連合食糧農業機関(FAO)が定める摂取制限レベルに準拠したものではあるのだけれど、FAOの基準値は、最初の1年と2年目以降で、設定値が異なっていて、2年目以降の値は、1年目の5分の1に設定されている。
17日に厚生労働省が設定した暫定基準値は、ちょうどこの1年目の値に相当していて、シーベルト換算では、ヨウ素131なら50ミリシーベルト、セシウム137を5ミリシーベルトになる。もし、国の基準値が、FAOに準拠しているのであれば、来年以降に、基準値は5倍厳しくなると予想される。
ただ、WHOとFAOのこの基準値は、事故発生場所から100km以上離れた地域に一般的に適用する目的で設定されたという前提があり、それも見ておく必要がある。
要するに、福島県の多くの部分が原発から100km圏内に含まれ、かつ農産物の産地であることも考えると、この基準は必ずしも適用されない可能性はあるのではないかということ。
その意味では、国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告した、緊急的に年間20~100ミリシーベルトというのが1つの目安と考えると、最大100ミリシーベルトまで、すなわち、17日に設定された暫定基準値の倍の値まで緩和してくるかもしれない。
少なくとも、緩和される基準値が、シーベルト換算で100ミリシーベルト以下なのか、また、1年経過して、それが5倍に強化、すなわち、20ミリシーベルト以下に設定されるのか、そして、それらを100km圏内、圏外で別の基準値を設けるのかといった部分には注意する必要があると思う。
ただ、こんな緊急時とはいえ、単純に緩和してしまうと、食べ物に敏感な日本の消費者は、かなり敬遠してしまうような気がしないでもない、つまり、今出荷停止や摂取制限の対象になっている、産地の野菜は丸ごと買わないような動きにならないとも限らない。
筆者としては、一定期間、せめて、1年間は、これまでの暫定基準値を変えずに、1年かけて、安全性についての議論と周知徹底をして、1年後に再度考え直すようにしてもいいような気はする。
そうすれば、仮に福島産であっても、安全なものは安全だと逆にアピールできるし、これまで通りの基準を守っているという姿勢自身が、国や食料に対する安心感を生むように思うのだけど。
もし、基準が今の暫定基準値より更に緩和され、それが恒常化するようになるのであれば、昨日のエントリーでも触れたように、野菜工場を普及させ、これまでの放射線基準を余裕でクリアする野菜を生産する方法も考えるべきではないかと思う。
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放射性物質:被ばく限度「引き上げを」 国際組織が勧告
国際放射線防護委員会(ICRP)は、東京電力福島第1原発事故で放射性物質の漏えいが続いていることについて、日本の現在の被ばく線量限度(一般人で年1ミリシーベルト)を引き上げる検討を求める勧告を出したことが判明した。
勧告は21日に出された。それによると、今回の事態を受け、緊急的に一般人の年間被ばく限度を100~20ミリシーベルトの範囲に引き上げることを求めた。また「原発事故が収束したとしても、原発周辺地域に汚染が残る」と分析。地域住民がふるさとを捨てず、住み続けることができるよう、線量限度を20~1ミリシーベルトの範囲で設定し、長期的に1ミリシーベルトを目標とすることを提案した。いずれも現在の限度を大幅に上回る数値だが、「緊急事態と汚染が広がっている地域の将来を考えるうえでの一助にしてほしい」と求めている。ICRPは従来、自然被ばくや医療上の被ばくを除いて職業上の被ばくの限度は5年間で100ミリシーベルト、年50ミリシーベルトとし、一般人は年1ミリシーベルトとすることを勧告している。【永山悦子】
URL:http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110326k0000m040121000c.html
食品暫定基準は適正か 食品安全委が評価作業に着手 2011.3.22 13:53
内閣府の食品安全委員会は22日、農畜産物から放射性物質(放射能)が検出されたことを受け、政府が急遽(きゅうきょ)設定した出荷規制の暫定基準値について、科学的な合理性があるかどうかなどの評価作業を始めた。食品から摂取する放射線量が健康に与える影響について評価を行い、1週間をめどに検討結果をまとめる。
委員会では、厚生労働省の担当者が暫定基準値の設定や、基準値を超えた農畜産物の出荷規制の経緯を説明。放射性物質の専門家を招き、意見を聴くことで合意した。小泉直子委員長は「まずは情報を集める。自治体などからデータをもらい、すみやかにリスク評価を行って取りまとめたい」と話した。
本来は同委員会の評価を経て基準値を設定するが、政府は今回、原発事故を受け、暫定基準値による規制を先行。20日に厚生労働省が暫定基準値について委員会へ諮問し、事後評価を求める形を取った。
URL:http://sankei.jp.msn.com/life/news/110322/trd11032213550007-n1.htm
この記事へのコメント
白なまず
第三の道こそ解決の方向。三が道と申しておろが。
繰り替えしですが、規制強化に賛同する人は有害物質を恐れ、規制緩和に賛同する人は厳しすぎる規制では食品を生産できないので生活できないと恐れる。この相対する考えのみではトレードオフするしか手はないが、それでは、結局生産しても消費されない方向に進む。即ち有害物質を排除して生産する方向でしか解決出来ない問題。戦争か平和かと言う問題も同じですね。戦争を恐れる人の恐怖、妥協では本当の安息は無いと思う恐れ。二つの道の妥協ではなく、根本解決の第三の道を考えるのが八栄の道だと思います。
mony
今回の放射線を浴びてガンを発症する人と、
普段から喫煙をしててガンを発症する人・・・
受動喫煙でガンを発症する人・・・
どちらが多いのだろう・・・
こういったデータを試算してみて仮に
発症確立1位は喫煙でしたなんてなったら
皆どう思うのか。
なんか放射線浴びる=死亡フラグみたいな
報道も多いのでふと思いました。
今月レントゲン2回、CT2回撮ってます。
エントリと関係ないコメですみません。
ふと思ったもので・・・
ちび・むぎ・みみ・はな
> 原発事故で放射性物質の漏洩が続いていることを鑑み、
> これまで日本が一般人に対して決めていた被曝線量限度値
> を引き上げる勧告を出した。
当然だ.
日本は戦争状態にあるも同然なのだから, 全国民が事故の
リスクを背負い, 将来に向かって行かなければならない.
修正しなくとも良いと言う当然の意見もあるが, 日本の劣化
したメディアの存在を考えれば, 換えてしまうのが現在と
将来に渡って国内秩序を保つ最良の政策だ.
事故と脳停止状態の政府と無脳症のメディアという三重苦
にある日本が取れる選択は多くはない.