東京ウォーター
東京都葛飾区の金町浄水場の水道水で、22日午前9時に採取した水から1リットル当たり210ベクレルの放射性ヨウ素131が検出された。
また、23日午前9時に採取した水からも速報値で放射性ヨウ素131が190ベクレルが検出されたという。
これは、暫定乳児基準値の100ベクレルの約2倍にあたり、乳児については飲用を控えるよう求めているのだけれど、都内では早くも、ミネラルウォーターの買い占めなどが起きているようだ。
東京都水道局は、水の確保が難しくなっている、として、金町浄水場の水を使用する東京23区と、武蔵野市、町田市、多摩市、稲城市、三鷹市のうち、乳児がいる家庭に、550mlのペットボトルを1人あたり3本、計24万本を配ることを発表した。
550mlが3本ということは、およそ1650ml。これをすべて、粉ミルクだけにつかったとしても、一日の哺乳量の目安は、体重1kgあたり120~150mlといわれているから、仮に6Kgの乳児がいるとすると、1日あたり、720mlから900mlは消費することになるから、ペットボトル3本、1650mlでは、2日も持たない計算。
だから、これは、本当に当座凌ぎの策であって、恒常的に取れる方法ではないと思われる。
もしも、今後2日程度で都内の水の買占め騒動が収まらなかったら、東京都水道局はまたペットボトルを配るか、2日以内に、放射性物質濃度を暫定基準値以内に抑える何らかの処置を取らなくちゃいけなくなる。
ひとり当たり何本支給とかいうのは、もう事実上の配給状態も同然。
それに、いつ停電するのかしないのか分からない「無計画停電」だってそう。まるで、空襲警報が鳴ったらそれまでの仕事を投げ出して、一斉に防空壕に入って避難するかのような負担を国民に強いている。
だから、もう、これはある意味で戦時下といっていいのではないかとさえ思う。
尤も、都の水道局浄水課の担当者は「久しぶりに雨が降ったことで大気中などの放射性物質が河川に流れ込み、一時的に数値が上昇した可能性がある」としていて、数日の間に数値はいったん落ち着くのではないかとみているようだ。それが本当であれば、確かに、ペットボトル3本の支給で済むかもしれない。
東京都の水源は、ほとんどが河川水からなり、そのうち78%が利根川・荒川水系、19%が多摩川水系から取水している。
今回検査したのは、利根川・江戸川水系の金町浄水場と、埼玉県朝霞市にある荒川水系の朝霞浄水場、そして、東京都羽村市にある、多摩川水系の小作浄水場の3カ所。
この中で、金町浄水場から210ベクレルを検出し、小作浄水場は基準を下回る32ベクレル、そして、朝霞浄水場では検出されなかったのだけれど、今回の原発事故が深刻化する前の3月17日以前の日本の基準値は、ヨウ素131が1リットルあたり10ベクレル、セシウム137も1リットルあたり10ベクレルで、世界保健機関(WHO)が定める、飲料水中の放射性核種のガイダンスレベルの基準だった。
それを、今回の事故後、暫定として、一気に10倍にまで基準値を緩和していることを考え合わせると、実際は、葛飾区の金町浄水場と東京都羽村市の小作浄水場に流れ込む河川のどこかの経路に降った雨の中に相当の放射性物質が混ざっていたと考えるべきなのかもしれない。
一応、今回検査した3ヶ所の位置関係を下記に示す。
Aが金町浄水場、Iが朝霞浄水場、Dが小作浄水場。
これを見る限り、3ヶ所の浄水場は、都の西、中央、東とばらけており、且つ、利根川・江戸川水系、荒川水系、多摩川水系と水系も別だから、取水サンプルとしては適当と思われる。
ただ、青梅にほど近い小作浄水場からも、WHO基準値以上のヨウ素が検出されているところをみると、放射性物質は、おそらく都内全域には散らばっていて、たまたま金町浄水場で検出されただけと考えるべきなのかもしれない。
だとすると、このまま福島原発からの放射性物質が放出された状態で、また、雨が降ったら、今度は別の場所の浄水場から高濃度の放射性物質が検出されてもおかしくない。
まぁ、今回の検査が浄水場での濾過前なのか後なのかよく分からないけれど、各家庭に供給されるまでには、他の浄水場の水系と合流したりするから、必ずしも、家庭の蛇口からいきなり高濃度の放射性物質入りの水が流れ出てくるとは限らない。
文部科学省は、毎日、水道の蛇口から水を採取して、放射性ヨウ素と放射性セシウムの濃度を検査して、HPで公表しているのだけれど、それによれば、 3月22日に、新宿区の水道の蛇口から採取した水道水に含まれる、放射性物質の濃度は、ヨウ素131が1リットルあたり19ベクレル。セシウム137が1リットルあたり0.37ベクレルで、ヨウ素131がWHO基準の倍。セシウム137はWHO基準内という結果が出ている。
だけど、新宿区は、今回の調査で放射性物質が検出されなかった朝霞浄水場から給水を受けている地区。それなのに新宿区でモニタリングしている蛇口から、基準内とはいえ、放射性物質が検出されてしまっている。
だから、現時点では、放射性物質は、どの水系の、どの場所から入り込んでいるのかは、はっきりとは分からないとしかいえないのではないかと思われる。
水は、野菜と違って、何日も取らないでいられる類のものではないから、この問題は早急に解決が求められるのだけれど、せめて、もう少しモニタリングを強化することはできないものだろうか。
浄水場から放射性物質が検出された以上、文部科学省の毎日の蛇口からのモニタリングも1県で1か所だけといった、大ざっぱなものではなくて、取水水系毎や、区ごとといった、もう少し細かいモニタリング結果があれば、少しは安心材料が提供できるのではないかと思う。
しばらくは、水にも一定の注意が必要になる。
首都・東京“水パニック”の恐れ 金町浄水場から放射性ヨウ素 2011.03.23
東京都は23日、葛飾区の金町浄水場の水道水で、1キログラム当たり210ベクレルの放射性ヨウ素131が検出されたと発表した。乳児の基準100ベクレルを超えているとしていて、乳児については飲用を控えるよう求めた。震災の被害を受けた福島第1原発の事故は、首都・東京を“水パニック”に陥れようとしているのか。
金町浄水場は江戸川から取水し、東京23区、武蔵野市、多摩市、町田市、稲城市、三鷹市に水道水を供給している。
東京都によると、水道水の検査は22日に3カ所で実施された。金町浄水場では210ベクレルを検出、小作浄水場(羽村市)は基準を下回る32ベクレル、朝霞浄水場(埼玉県朝霞市)では検出されなかった。
厚生労働省は「乳児が飲んでも直ちに健康に影響を及ぼす値ではない」とした上で、念のため、乳児の飲み水や粉ミルクを溶かす水として利用しないよう呼びかけた。
ただ、東京都は「乳児向けの飲用基準を超えた水道水を数回にわたって飲んでも、健康にはまったく影響がない」とも説明している。
同日午後、緊急会見した石原慎太郎都知事(78)は「直ちに健康に影響はなく、生活用水としては問題はない。1歳未満が水道水を飲むと影響が出る可能性がある。冷静に対処していただきたい」と話した。
都水道局は15~16日、今回基準を超えるヨウ素131が検出された金町浄水場のほか、朝霞浄水場、小作浄水場の水道水を採水。放射能の臨時測定を実施し、この際には「健康に影響がないレベルだった」と発表していた。世界保健機関(WHO)が定めたガイドラインで、一生涯飲み続けても影響あるレベルに達していなかった。
金町浄水場と同じ江戸川水系には三郷浄水場(23区のみ)のほか、埼玉県の新三郷、庄和の各浄水場がある。
庄和は春日部市、越谷市、吉川市を中心とした埼玉県東部エリア。新三郷は三郷、八潮、川口、草加、鳩ヶ谷などの各市が給水エリアとなっている。
江戸川の源流、利根川まで警戒範囲を広げた場合、支流の荒川水系には、東京都の三園、朝霞の各浄水場があり、こちらも給水エリアは23区。埼玉県には大久保、庄和の各浄水場があり、対象エリアはさいたま、上尾、所沢、入間、狭山、東松山、越生などの各市が含まれ、ほぼ埼玉全域に広がることになる。
埼玉県水道業務課は、「これまで荒川水系の調査では問題ありませんでしたが、東京がこういう事態になったので、江戸川水系の値を確認し、分かり次第公表したいと思います」としている。
放射性ヨウ素131とは、放射線を出す放射性物質の一種で、自然界には存在しない。原子力施設の事故では、ウランの核分裂によって放射性ヨウ素などの人工放射性核種が環境中に放出される。
放射性物質が壊れ、半分に減る期間を示す「半減期」は、ヨウ素131は8日間と短いものの、体内では甲状腺に沈着、蓄積し、甲状腺がんの危険性が高まる。あらかじめ非放射性のヨウ素剤を服用しておくと、放射性ヨウ素の沈着を防ぐ効果がある。
福島県飯館村では20日に水道水1キログラム当たり965ベクレルの放射性ヨウ素を検出した。
金町浄水場は1926年に完成。その後、規模を拡大しながら、長く東京都民に水道水を供給し続けている。江戸川の水を取水しているため、水質悪化が深刻だった80年代には「日本一まずい水道水」と評されたこともある。ただ、近年は技術の進歩と江戸川などの水質向上で、水道水の質は改善されている。
URL:http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110323/dms1103231929028-n1.htm
この記事へのコメント
とおる
日比野
>文章からすると東京にはもう人が住めないような雰囲気を感じます。
すみません。そんなことを言ったつもりは更々ないのですが、そういう雰囲気がでているのであれば全然駄目ですね。お詫びします。(反省)
個人的には、積極的な思いを持ち続けることで打開策が見つかる可能性が高まるし(皆の協力が集まるから)、早期に収束できるとも思っていますけれども、同時にリアリズムも忘れてはいけないと考えています。
ただ、こういうときは、リアリズムに見ればみるほど、悲観的になってしまいがちなのは、ある程度は仕方がないと思っています。ただ、震災後のエントリー記事に戴いたコメントを見て、自分も少々それに陥っていたのかも、と気づき反省しています。
そこで、最近は、意識的に、ポジティブ方向に振ったエントリーも入れて、"想念の中和?"を自分なりに図っているのです。昨日の「菜の花とヤザワ作戦」もその一つで、思考をポジティブに振りつつ、現実的に身を護る方法もご紹介するという(微妙?)なエントリーなのです。(そうでもないのかもしれませんけれど)
本当は、今日のエントリーは、
ちび・むぎ・みみ・はな
まず「基準値」がどの様にして決まったかと言う問題
があるが, まあそれはさておいて.
環境基準なんて環境としての基準値, つまり恒常的な
雰囲気の基準値なのだから, 一月位越えたから
どうだと言うのだろうか.
新聞が手柄のように騒ぎ立てているが, もう少し国民を
落ち着かせる方向で議論をしたらどうだ.
もう既に海外では日本のメディアの情報は役に立たないと
いう「定評」ができているようだが, 本当に「バカ」ばかり
がメディアには揃っている.
今必要なのは, 我々がどうしたら良いのか, 本当に危険なのか
を冷静に議論することだ. 国民が関東から大脱出したら
日本が成り立たないのは明らかではないか.
すいません. 新聞で腹が立っているものだから, 本日の
ブログの詳細を誤解している可能性がありますが, 御勘弁を.
白なまず
増刊!たかじんのそこまで言って委員会 #12 「東日本大震災ゲラー&武田両教授緊急提言」
http://himado.in/41947
mony
まあ、それが水の買占めに繋がっているのかと。
あと厚相がミネラルウォーターは乳児へと言ったらしいですが
乳児にミネラルウォーターは良くないです。お腹壊します。
乳児には純水です。
東京から逃げ出す人が続出しそうですね。
mohariza
冷静な科学的、統計的、生物学的な判断、見解が必要と思います。
マスコミ、政府、都庁、(及び、科学者と称する人間)は、人心を不安へ導くだけです・・・。