拡散する放射性物質

 
放射性物質の拡散の影響が徐々に明らかになってきた。

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都道府県が20日採取した水道水の検査結果を集計し、国の基準値を下回っているものの、放射性のヨウ素とセシウムが茨城、栃木、群馬で、ヨウ素が埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨で検出されたと発表されている。また、福島県でも、21日午前8時の採水で、ヨウ素が23ベクレル検出されている。

また、とうとうというか、やはりというべきか周辺自治体の農作物で、厚生労働省が定めた食品安全性基準を上回る放射線量が検出された。

北茨城市の路地栽培のホウレンソウで、放射性ヨウ素が24000Bq/Kg、放射性セシウムが690Bq/Kg。ハウス栽培のホウレンソウでも放射性ヨウ素が11000Bq/Kg、放射性セシウムが586Bq/Kg。

厚生労働省の暫定基準値では、放射性ヨウ素が2000Bq/Kg、放射性セシウムが500Bq/Kg、また、同時期に新潟県産品で行った検査では何れも検出されなかったことから、ほぼ、福島原発の影響とみてよいと思われる。

ベクレル(Bq)というのは、原子核が崩壊して放射線を放つ放射能の量を表す単位で、1秒間に1つ原子核が崩壊するのを1ベクレルという。

ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)の換算については、食品安全委員会の報告書によれば、Kgあたりのベクレル値に1.3を掛けて、100で割れば、マイクロシーベルト(uSv)の値になるとされているから、それに従えば、放射性ヨウ素24000Bq/Kgのホウレンソウは、312uSvの放射線量を持つことになる。

政府発表や報道では、よく、このホウレンソウを1年間毎日食べ続けても、CTスキャン1回分になるとかならないとかいって、だから安全だというけれど、放射性物質を含んだ野菜を食べてしまえば、それらが排出されるまでは、体内で内部被曝を続けることになるから、食べずに済むならそうしたほうがいいと消費者は思うだろう。



それに、政府がホウレンソウやかき菜について、茨城県、栃木県、群馬県、福島県に対して、各県内全域について、出荷を差し控えるよう指示をしているから、内々にはその危険について何らかの知見を持っているのかもしれない。

ヨウ素は食品から色々な形態で摂取される物質で、ヨウ素イオンは胃と小腸でほぼ完全に吸収される。吸収されたヨウ素のほとんどは甲状腺に取り込まれ、甲状腺ホルモンの構成成分として使用されるのだけれど、ヨウ素は成人の体内で13mg程度存在し、そのほとんどである12mgが甲状腺にあるから、仮に放射性ヨウ素を摂取してしまった場合、甲状腺がピンポイントで体内被曝することになる。

甲状腺に取り込まれたヨウ素は、30日程度で半分の量が排出されるようなのだけれど、一度取り込んだ後、全く摂取しなかったとしても、半減期8.5日を考慮しても1か月くらいは放射線の影響を受けるとみたほうがいいように思う。

尤も、茨城県の検査で、基準値を超える放射性物質が検出されたのは、ホウレンソウくらいで、基準値以上のホウレンソウが検出された北茨城市の作物でもキャベツやネギからは殆ど検出されていないし、また、路地栽培ではなくて、高萩市のハウス栽培でのホウレンソウからも基準値以上の放射線が検出されていることを考え合わせると、単純に放射性物質が飛散して野菜についたせいで、放射線が検出されたとは言い切れず、放射性物質がある程度地面に落ちて、それを野菜が吸収した可能性もある。

ともあれ、一度こうした発表をしてしまった以上、たとえ、基準値を超えた野菜は市場に出ないように手配したとしても、風評被害とまではいわないまでも、北関東から東北にかけての野菜類が敬遠される可能性が高い。それは、先の毒餃子事件のあと、スーパーから一斉に冷凍食品が消えたことからみてもほぼ確実と思われる。既に都内のスーパーなどでは、ホウレンソウが大量に売れ残り始めているそうだ。

これは、福島第一原発を停止させ、安全確認がでない限り、ずっと続くことになるだろうから、原発停止がいつになるのかが焦眉の急。

今は、まずとにかく冷やして止めること。廃炉にするしないなどは、そのあとで考えればいい。

現場で必死になって炉心を冷やしている方々には本当に頭が下がる。なんとか、冷やして、安全停止まで持って行ってと祈るばかり。


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この記事へのコメント

  • 日比野

    sdiさん。コメありがとうございます。ご紹介のツイート纏め、どこかで読んだような記憶があります。確かにこのツイートのように、早い時期に原発問題が収束するのであれば、このとおりで、1ヶ月少々様子をみれば、放射性ヨウ素の問題はほぼ無くなりますから、水と食物による内部被曝問題は収束すると思います。(セシウムの問題はありますけれど…それについては、3/23付のエントリーで少し触れています)問題はいつまでも収束せずにだらだら続くことなんですけれども、希望的観測では、今週から来週にかけて収束するとみていますので、多分なんとかなるかと…
    2015年08月10日 16:47
  • mony

    原子炉は地震の段階で停止したはずですが。
    隔週でレントゲンとCTしてる私はかなりの被爆者なのでしょうか。
    2015年08月10日 16:47
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > 内々にはその危険について何らかの知見を持っているのかもしれない。

    ダイオキシン騒動のことを思い起こせば,
    政府が民間の学者以上の知見を持つことは「全く」
    あり得ないと思う. 「かも知れない」運転は確かに
    安全運転だろうが, 「健康に悪影響を与える『かも知れない』」
    位なら支那の食糧よりはよっぽどまし.

    ここで話しが出たかと思うが, 黄砂の放射性物質だってばかに
    ならないのではないか.

    だから, 産地を明記した上で販売すれば良い.
    同じ日本国民だ, 私は真っ先に買う積もりだ.
    2015年08月10日 16:47
  • sdi

    私ごときがアレコレ書くより、以下のツィートまとめを読まれたほうが早いでしょう。是非、一読されることをお勧めします。

    お気に入り東大病院放射線治療チーム( @team_nakagawa )による内部被ばく(水・食物)に関する医学的な解説
    http://togetter.com/li/114782
    2015年08月10日 16:47
  • ス内パー

    冷温停止まで、ってなると通常でも数年単位でがんばらないといけないようですなー。
    通常の冷温停止プロセスに移行するまでがんばってもらいたいところです。
    2015年08月10日 16:47
  • クマのプータロー

    政府が風評被害を煽ってどうするんでしょうね。これに限ってはマスコミは政府発表を報道したに過ぎません。
    2015年08月10日 16:47
  • 白なまず

    これはちょっとひどいですね。

    事故原発は“欠陥品”? 設計担当ら35年ぶり仰天告白
    http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110318/dms1103181534014-n1.htm

    福島第1の原子炉は米ゼネラル・エレクトリック(GE)が開発した。そのGE元社員のデール・ブライデンボー氏はロイター通信の取材に対し、福島第1と同型の原子炉について35年前に安全面での不安を指摘していたと打ち明けたのだ。

     そのうえで同氏は「分析が終わるまで一部の原発は閉鎖されるべきだと思ったが、GE側は応じなかった。そのため、私はGEを辞めた」と、退社した経緯を説明した。
    2015年08月10日 16:47

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