「君主政体や専制政体が維持または持続されるためには、誠実さはあまり必要でない。前者においては法律の力が、後者においては君公の常に振り上げられた腕が、万事を規制かつ抑制する。しかし、民衆国家においては、もうひとつのバネが必要であり、それは『徳』である。」モンテスキュー 「法の精神」 第1部第3編第3章より
3月2日、参院予算委員会の審議日程について、与野党間で協議を進めていたのだけれど、民主、自民両党間で質問時間の配分を巡って調整がつかず、3日の審議入りを断念した、と報道されている。
ところが、その内実はどうやら、民主党側が勝手にドタキャンしてお流れになったというのが真相のようだ。
その間のやりとりについては、自民党の世耕議員が自身のHPで述べている。以下に一部引用する。
議長が予算案受け取りを表明したことを受けて、予算委員会の衛藤晟一自民党筆頭理事と民主党森ゆうこ民主党筆頭理事が「筆頭間協議」に入り、明日の予算委員会の具体的内容について詰めの協議を行った。通常は筆頭間協議で質疑時間等を内々に合意して、理事懇談会で了承し、明朝理事会、そして予算委員会と進むことになるのだが、民主党の森理事が昨年の臨時国会よりも自民党の質疑時間を削減することを主張。当然自民党の衛藤理事は拒否し、お互いに党に持ち帰って検討するなどして、夕方まで断続的に折衝が続いていた。
国会において、こういう質疑時間で揉めることはよくある話である。大体前日の夜にはお互いに歩み寄るか、委員長が間に入って決着するものである。
自民党としては、断腸の思いではあるが、一定の歩み寄りをする用意はあった。衆議院が送付してきたら、翌日には審議入りするのが通例であるところが、既に1日遅れてしまっている。30日間の自然成立の期限までの間に、予算案の問題点を追及する時間を十分に確保したいと考えていたからだ。国対委員長間、幹事長間と交渉のレベルも上げて、場合によっては予算委員長に仲裁してもらうことも視野に入れていた。これが国会運営の交渉というものである。
ところが、午後6時半頃になって、民主党側の輿石議員会長、平田参院幹事長ら幹部が自民党側に何の連絡もないまま一斉に国会を離れ、連絡不能となった。また民主党議員に「明日の予算委員会は流れた」との連絡を入れ始めた。
これにはわれわれも呆れかえるとともに、怒りに震えた。参議院民主党幹部に連絡がつかないことに業を煮やした自民党脇参議院国対委員長が官邸の枝野官房長官に直接電話し、「参院民主党幹部は皆帰って連絡がつかない。今日議運で長官が早期の予算成立を訴えたのは何だったのか!」と抗議。枝野官房長官が参議院側と連絡を取ることを約束した。
長官からの働きかけが功を奏したのだろうか、午後7時過ぎに民主党羽田参院国対委員長から脇国対委員長に電話が入り、急遽7時20分から予算委員会理事懇談会がセットされた。脇委員長は衛藤筆頭理事に質問時間については、予算委員長の判断も仰ぎながら、歩み寄るように指示して送り出し、これで一気に明日の予算委員会が開催される方向に動きだした。と思われた。
ところが、理事懇談会スタート直前になって、民主党羽田委員長から脇国対委員長に再び電話が入り、「理事懇談会を開かない」と最後通告。これで明日の予算委員会が開催できないことが確定した。
世耕議員によれば、質問時間の配分で与野党間で揉めるのはよくあることだそうなのだけれど、どんな按配だったかというと、3月2日に行なわれた、自民・公明の緊急記者会見で、自民党の衛藤予算筆頭理事によれば、当初は、民主125分、自民125分、公明35分、みんな18分、共産、その他が12分だったところ、それでは、あんまりだということで交渉して、民主113分、自民113分、公明48分、みんな24分、共産、その他が12分と、前回の補正予算のときと、おおよそ同じ時間で折り合おうとしていた。
それなのに、民主党がいきなりドタキャンして帰ってしまい、お流れとなった。
確かにこれでは、野党側が「与党による審議拒否だ」と憤るのも頷ける。こんな無茶が通じるのであれば、そもそも参院なんてある意味がない。
こうやって、姑息に1日、2日と時間稼ぎをやって、まともに審議する時間を食い潰したところで、その結果野党が益々態度を硬化させるだけ。
民主党は、そんなに予算審議をしたくないのか。どこが"熟慮"の国会なのか。口だけ番長は、前ナントカ大臣だけかと思ったら、そうじゃなかった。
三権分立論で有名なモンテスキューは、その著書「法の精神」で、専制政、君主制、共和政の3つの政体を取り上げ、論じているのだけれど、今の世界の多くの国々で採られている民主制はどうかといえば、モンテスキューは、共和政体について、相対的に広く権利を拡張していく場合には民主主義的共和政となり、より狭く束縛しようとする場合には貴族政治的共和政となると述べているから、現在の民主主義は、この共和政体の範疇に入れて差し支えないと思われる。
モンテスキューは、各々の政体において、その体制を支え、円滑に運用し、また、市民の行動の動機付けとなる「基本原理」がなければならないと説く。
それは何かといえば、専制政体は「恐怖」、君主政体は「名誉」、共和制は「政治的徳」であるという。
「恐怖」とは、支配者が国民にもたらす「恐怖」であり、「名誉」とは、より高い地位や特権を求める欲求であり、「政治的徳」とは、私利私欲より、公益を優先する態度のこと。
モンテスキューは、これらの基本原理が欠けた政体は存続できないと説く。その意味では、今、内戦中のリビアでは、リビアの人々のカダフィ氏に対する不満が、恐怖を上回った結果、反政府運動に繋がったということになる。
確かに、不満が恐怖に打ち勝つくらいになれば、"死なば諸共"とばかり、反政府運動に身を投じてもおかしくは無い。
そうした観点から、今の日本をみると、曲がりなりにも民主制を取っている以上、その基本原理として「政治的徳」がなければならないのだけれど、私利より公を優先するのが「政治的徳」なのであれば、政府与党は、予算審議時間の配分なんかでも、きちんと野党に配慮して速やかに合意に至るべきだということになる。
もちろん、現実の民主党は、それを行なわなかったどころか、議会運営から何から、自分達の都合ばかり優先し、モンテスキューの説く「政治的徳」とは真反対の位置にいる。
共和制の基本原理に欠けた民主党政権は、いつまで存続できるのだろうか。
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11年度予算案:きょうの審議入り断念--参院予算委
与野党は2日、11年度予算案の参院予算委員会での審議日程を協議したが、民主、自民両党間で質問時間の配分を巡って調整がつかず、前田武志予算委員長は3日の審議入りを断念した。与党は4日の審議入りを目指す。
自民、民主両党は2日、3日の審議入りを前提に協議した。しかし2日夕になっても審議の進め方で折り合いが付かず、民主側が協議を打ち切った。自民党の脇雅史参院国対委員長は記者会見で「与党による審議拒否だ」と批判した。【高山祐】
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110303ddm002010093000c.html
与党の参院予算委「審議拒否」に関する自公緊急記者会見 2011/03/03 04:28
参院予算委員会に対する「与党の審議拒否」とでも言うべき異例の事態が生じ、本日に予定されていた予算委員会質疑が吹っ飛びました。これについて参院の自民、公明両党が緊急記者会見を行いましたので、その内容を峯匡孝記者のメモ起こしをもとに紹介します。どうやら輿石東・民主党参院議員会長の判断らしいのですが、これについては本日以降、民主党側の言い訳や反論も含め、国会内外でさまざまな反応があるとみられます。なので、とりあえず何かの参考になればと思います。
■脇雅史・自民国対委員長 驚くべきことが、まさに憲政史上初めてでしょうけど、与党による予算審議の拒否、審議放棄という考えられないことが起こってしまった。
簡単に経緯を申し上げると、本日、予算案を衆院から(参院が)受けて、受け取るかどうかという話があったが、これは議会運営委員会の調整で1時半の段階で西岡武夫参院議長が受け取った。それを受けて、予算委で与野党協議を始めた。ずっと協議をしていたが、十分な審議をするのが熟議国会。われわれは十分な審議時間を野党にいただきたいとお願いをした。
政府与党一体だというから、熟議の国会で与党の質問はあまり長くは必要はないだろうという思いもあり、十分なあまりをお願いした。前例から離れて無理なお願いはできないので、最低限、前臨時国会の予算審議の時間をくださいとお願いし、延々と筆頭間協議を続けたが、協議は整わず、6時以降になり、これ以上遅れると迷惑をかけるので、理事懇を開いて決定をしてほしいと申し上げた。
筆頭間で時間調整できない限り、開けないというのが民主党の意見だった。われわれとしては野党間で協議して、先の臨時国会の時間だけは最低限確保してくださいという野党共通のお願いで前田予算委員長(民主党)に申し入れた。前田委員長の裁きに従うということで提案した。
6時過ぎになって、いきなり7時前に民主党側がみんな帰ったとの情報があり、国対委員長同士で話をしたが、もう辞めたといって話ができない状態になった。
枝野幸男官房長官が参院に陳謝に来て、「この予算をぜひとも通してほしい」と要望もあった。そこで、念のために官邸に電話をして、官房長官に聞いたが、ご存じなかった。政府に相談せずに参院民主党としての判断だった。(枝野氏が)きょう国会で言われた言葉と趣旨が違うのか、政府として国会審議が必要ないと考えるのか。参院の民主党は帰ったという話をしたらびっくりしていた。そういうことではないので、お願いをしたいということで努力するということだったが、その後、連絡はない。
7時20分に、もう一回理事懇を開きたいという要望が羽田雄一郎・民主党参院国対委員長からあり、応じてみんな待っていた。7時20分に委員長室に集まったが、民主党が現れない。7時40分ごろになって、「申し訳ないけどやっぱり止めた」と通知が私のところに国対委員長からあった。
誠に驚くべき経緯だが、辞めた理由はなにも言わないので分からない。「誰の判断か」と聞いたところ、「参院民主党としての判断だ」という。政府との調整はもともとなかったが、この決定についてもなかったのではないかと思う。枝野氏からもその後連絡はないので、全く分からないが、およそ政府が立法府に対して予算の審議をお願いするという中で、自分から放棄して審議しないということなので、理由をひっくるめて全く分からない。
まさに学級崩壊というか、内閣崩壊というか、まったく統治能力がなくなったという意味で大変な状況になった。明日以降どうなるかまったく見当が付かないが、われわれとしては野党国対委員長会談は早々(明朝10時)に開催したい。
いずれにしても、政府与党の予算審議への基本的な考え方を聞かなくては対応のしようもない。開いた口がふさがらないというか、まったく訳が分からない。
■魚住公明国対委員長 脇氏説明の経緯そのもので、誠に遺憾とするしかない。(予算案の)受け取り日についてはいろいろ議論があったが、(予算案の自然成立まで)30日というタイムリミットがある。無為な1日を与党の都合でつぶすのはとんでもない。野党の審議権を否定するような参院民主党であると指摘したい。
■自民・衛藤晟一予算筆頭理事 筆頭同士で相当詰めたが、当初は酷い案だったが、少しずつ詰まっていた。とにかく与党から審議拒否というか、審議をつぶすというのはもう信じられない。まだ野党気分が抜けていないというか、飛んでもない状況でびっくりしている。
■公明・加藤修一理事 憲政史上初ではないかなという話があったが、まさにそういうこと。良識の府と言われている参院で、まさかという思いがする。参院の役割を、自然成立があるが、それを十分果たすことが国民に対する大きな責務だ。どういう考え方でこういうふうに審議拒否するのかまったく不可解で言語道断だ。
■自民・礒崎陽輔理事 国の形が壊れる。このまま日本が進めば日本丸は転覆するしかない。正義が通らない。断固たる措置を考えなくてはいけない。
記者 理由は分からないということだが、民主党側の思惑はどのようなものがあるとみるか
脇氏 憶測で物を申してはいけないので、いろんなことがあると思うが、最後まで努力したが時間切れということではなく、7時前の段階から一度もやらない。そのあとにもう一回、やろうといってまたやらない。そういうことなので全く理由は憶測で言ってもしょうがないので、分からない。理由なんかない。
政府として予算案を国会で審議してくれと。これをしなかったら政府として成り立たない。審議を拒否する。都合の悪いことでもあるのか。予算を参院に送ったんだから、自然成立を待てばいいということなのか、全く分からない。
まさに国会としての役割を放棄したわけだから、許されざることだ。参院の民主党は与党として自覚もなければ、とんでもない間違った行為をした。どうするのか、野党同士で話をしながら、しっかりと問いただしたい。まったく理不尽な話で、われわれの常識では判断ができない。
記者 政府・与党側の説明を聞くのは、どういう場で
脇氏 私は官房長官に電話で経緯を申し上げて、「そんなはずはない」といっていたが、その後まったく音沙汰もないので、政府としてもまったくやる気がないのか。参院民主党としての判断だと言ったが、そのへんもひっくるめて今後きちっと聞いていきたい。とにかくやめるんだという一点張りなので、交渉もできない驚くべき状況になっている。まさに国会崩壊だ。与党自ら国会崩壊を仕掛けた。非常に悪質な話で議員として恥ずかしい思いがする。
記者 羽田氏からは質疑時間で折り合えなかったという説明はあったのか
脇氏 質疑時間はずっと交渉してきたが、筆頭理事間で合意できないから、つまり筆頭間に合意できるだけの余裕を与えられていなかった。お互いに時間調整することができなかったので、われわれの方で私は国対委員長として引き受けて、野党間の合意をいただいて委員長に調整をお願いすることで、委員長も合意してくれたが、その段階で民主党が審議を放棄した。
時間が折り合わなかったからということではないと思っている。われわれはすべて民主党委員長にゆだねたから、途中経過として折り合わなかったのは事実だが、それが原因とは考えられない。たかだか5分とか10分のやりとりの話で審議そのものを放棄するのはあり得ない話だ。とんでもないことだ。われわれもそのことで審議放棄をしようと思わないから、お互いのメンツを保った上で委員長にその裁定をお願いした。
記者 前田委員長の責任は
脇氏 これまた異例だが、前田とも話をして、こんなバカなことで審議できないことはおかしいからと、前田からは非常に前向きな回答をいただいているので、委員長に責任は今の段階ではないだろうと思う。参院民党の判断だというのが国対委員長の話だから、理由は分からないが、判断主体は参院民主党だ。
記者 予算案は30日で自然成立する。審議の時間について
脇氏 先ほど魚住氏の話のように、非常に悪質な野党の審議時間をなくしてしまおうという悪い、極めて議会としてやってはならないやり方だ。このことについては全野党大変な憤りを感じている。
衛藤氏 結果から見ると、与党が審議させないという挙に出ようとしている。前代未聞だ。与党自身が審議拒否というよりも、審議の場をつぶしていこうとしているから。議会制民主主義に対するまさに冒涜だ。与党の参院民主党には猛省を促さなくてはいけない。信じられない行為だ。
記者 理事懇の場には社民、みんなの党の理事もいたのか
衛藤氏 その前の隣の部屋でやったときは全部いらして、来ている途中のところであったので、7時20分で急だったから、少し遅れるかもしれないと待っているところだった。基本的には皆さん待機していた。野党は全部。
記者 野党理事はいつでも理事懇に出席できる状況にスタンバイしていたと
衛藤氏 はい。
礒崎氏 7時20分に招集があったので、行けた人間は行ったが、行き着くぐらいのときに開会時刻が延びるというのが委員部から連絡があったので、全員会館にはいた。
衛藤氏 流れるという連絡が7時40分ぐらい。せっかく待っていたのに流れたという連絡をした。
記者 最終的には、何分の質疑時間の調整で壊れたのか
衛藤氏 最初は前回の補正予算の時が民主101分、自民125分、公明48分、みんな24分、共産12分、日改12分、社民12分。合計334分だったので、ギリギリみんなそれでいけばいいという形で話をしていて、野党は全員そうだと、無理を言わないようにした。
当初出た案は、民主125分、われわれも同じ、公明35分、みんな18分、12分のところを10分にということだったからむちゃくちゃだということで話をしましょうと。最後のところで、どんなことがあっても民主は自民よりも減らさない。113分と113分、小会派は分かった。48分、24分、12分となった。そこのところで、個々まで来て話が付かないなら、よろしくお願いしますというところだった。
民主は筆頭同士で話が付かなければ、開かないと。全理事が筆頭同士で話を付けてくれといったのだから、開かないというから、野党は野党だけで理事会をやって、まとまっているから、開いてくださいと(後略)
脇氏 真摯に国会をやろうとする態度が見えない。総理が熟議の国会といっている意味をどう考えているのか。私自身の思いとしてはこんな政府、国会であれば、意味がないから即座に退陣していただくしかない。民主党政権はもはや統治能力を失っていて、国会審議も開けないような状況であれば、解散していただくしかないと思っている。
そうはいっても、予算そのものを放り投げてというわけにもいかないから、期日があるものをいわゆる日切れ案の処理も、暫定予算でも作って、もはや審議を待たずに解散してしまうしかないという思いすらする。しかしわれわれは、予算委員会で審議はしっかりしたいから、短気を起こして解散すればいいという政局に持って行くのが目的ではないので、そこは我慢しながら必要な審議を尽くしたい。(了)
…まあ、民主党側は、これもみんな野党が悪いと言ってくるのでしょうが、自分たちの不祥事や不手際を追及されるのから逃げた、という印象がありますね。なんか小学生みたいな政権だと感じます。
URL:http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/2178570/
この記事へのコメント
ス内パー
・・・ウチの地元は保守のはずなんですがねぇ。地元紙ですらジミンガーですよ。
almanos