「そういう意味ではですね、実は、この福島第一もそうなんですが、止めたから安心なのかというと、これはもう、原発はそういうものじゃありません。止めても止めてなくても、そこの、あのー、もし、万が一ということに対する備えは同じように必要です。そういったところでは、とめるかどうかではなくて、えー、どんな事態が来ても対応できるということにほんとうになっているのかということ、そしてあらゆる事態に備えたバックアップを作っておくということ、既に実行を始めているところです。」枝野官房長官 於:4/18 NNN「NewsZero」
4月20日、中部電力は、浜岡原発に対する緊急安全対策として、非常時に電源を供給する発電機車のかわりとして、新しく、据え置き型の発電機をすべての原子炉建屋の屋上に設置すると共に、高さ12メートルを超える防波壁や、防水構造の扉の強化といった対策を3年以内にすべて終わらせると静岡県側に示した。
これに対して、県は「訓練の内容が甘く対策も不十分」だと厳しく指摘して、見直しを求めている。
もうすでに、浜岡原発の危険性については、色んな人が指摘しているけれど、まず、浜岡原発が想定される東海地震の震源域の直上にあることや、想定している津波の高さが最大8メートルであること、そして、非常用ディーゼル発電機が福島と同様にタービン建屋の地下にあることなどから、福島原発を襲った高さ14メートルの大津波には耐えられないのではないか、という不安が裏にあるものと思われる。
今回、中部電力が行った安全対策で、即時対策と言えるものは、据え置き型の発電機を原子炉建屋の屋上に設置したくらい。津波による冠水や浸水に対する対策、すなわち、新たな防波壁や、防水構造の扉の強化は、2013年を目標としているから、それまでに、もしも、福島並みの津波が浜岡を襲ったらなんて考えると、なんとも心許ない。静岡県が長期対策ではなく、早急に対策を進めてほしいと要求するのも無理からぬこと。
そんな中、4月18日にテレビ番組に出演した枝野官房長官は、村尾キャスターから、いつ最悪の事態が起こるとも限らないから、止めるべきは止めてチェックしないといけないのではないかと問われ、止めても止めなくても備えは必要と答えている。
こちらのブログでは、このやり取りは浜岡原発を念頭においた発言ではないかという指摘があるのだけど、仮にそうであってもなくても、枝野長官のこの発言の意味は重い。
なぜなら、現在の日本の原発は、稼働する、しないに関わらず、あらゆる事態に備えた体制が出来上がっていない可能性をも意味するから。
今回事故を起こした福島第一原発で想定していた津波高さは、最高約5・7メートルで、建屋は海面10メートルくらいの「ところに建てられていたのに対して、今回の津波でも無事だった女川原発は、津波高さを最高9・1メートルと想定して、海沿いに斜面を設け、海面から14・8メートルの高さに建設していた。
今回は、福島第一原発に14メートルの津波、女川原発には14.8メートルの津波が襲ってきたとみられるのだけれど、それぞれの原発を建設した高さが明暗を分けたことになる。
浜岡の場合はどうかというと、想定津波高さは8メートルで、海から原子炉建屋までの距離は300~100メートルほどで、海面から敷地までの高さは6~8メートルとなっている。ただし、途中に高さ10~15メートルの砂丘があり、これまで中部電力は、津波がきてもこの砂丘で止まるとしていたのだけれど、流石に不安になったのか、高さ12メートル超の防波壁を作るという。
実際のところはどうなのかというと、たとえば、こちらのブログでは、2009年10月8日に接近した台風による高波で、砂丘を超えて海水が砂丘の内陸側に流れ、自転車道を砂で埋めたと報告している。
だから、現状の浜岡原発が、福島第一並みの14メートルの津波が来た時に、水に浸からないとは必ずしも言い切れない。
勿論、水に浸かったからといって、福島第一のように、必ず全ての冷却機能を失うとは限らないのだけれど、起こってしまってからでは、取り返しがつかない。その意味では、NEWS ZEROの村尾キャスターのように、日本の各原発について、優先順位を決めて、総点検および対策を急ぐ必要があると思う。
さしあたっては、砂丘に土嚢を積むなり、砂盛りするなりして、更に高くして欲しいところではあるのだけれど、難しいものなのだろうか。


【「1千ガルに耐える」設計、新たな津波対策も】
福島第一原発事故は、原子力事故などの国際的な評価尺度(INES)で最悪の「レベル7(深刻な事故)」になった。東海地震で浜岡原発(静岡県御前崎市)はどんな影響を受けるのか。
▼▼揺れや津波は?
浜岡1~5号機は東海地震の想定震源域のほぼ中央にある。地震の規模がマグニチュード(M)8だった場合、周辺は震度6強の揺れが想定される。
津波の高さは、6~8メートルと中部電力はみる。海から原子炉建屋までの距離は300~100メートルほどだ。
▼▼中部電力の対策は?
東海と東南海が連動し、この地方で最も被害が大きかったとされる1854年の安政地震(M8・4)を超える揺れを想定。揺れの勢いを示す加速度の基準を最大800ガル(ガルは加速度の単位)に設定し、3~5号機は1千ガルに耐えられるようにしたという。廃炉に向けて停止中の1、2号機は600ガルだ。
ただ福島第一は、東日本大震災で想定外の揺れに襲われた。2号機で観測されたのは550ガルで、想定の438ガルを大きく超えた。
浜岡では2009年8月の駿河湾地震で、5号機だけ1~4号機の倍以上の426ガルを観測。地下構造の違いが原因と考えられるが、今も詳しく分析中だ。
▼▼津波対策は?
浜岡の場合、海面から敷地までの高さ(TP)は6~8メートル、海と施設の間にある砂丘がTP10~15メートルあり、中部電力はこの砂丘で津波を阻めるとみる。また、原子炉建屋の出入り口は防水扉。福島第一でタービン建屋の地下にあり浸水した非常用ディーゼル発電機は、浜岡では原子炉建屋の1階に置く。震災後には、TP15メートル超の防波壁の設置、非常用電源の増設といった対策を打ち出した。
ただ、福島第一では津波も想定外の高さだった。想定は5・7メートルだったが、押し寄せたのは14メートル以上だった。
浜岡をめぐり、住民らが「東海地震の揺れに耐えられず危険だ」として中部電力に運転差し止めを求めた訴訟で、静岡地裁は「耐震安全性は確保している」と住民敗訴の判決を出した。東京高裁で争われている。(川田俊男)
URL:http://mytown.asahi.com/aichi/news.php?k_id=24000811104210001
この記事へのコメント
ス内パー
日比野
>使用済み燃料の保管プールを原子炉建屋の最上階から別の場所、できれば地下に保管する工事を早急にすすめないと。
たしかに・・・。
ちび・むぎ・みみ・はな
のでしょうが, 対策をお日様の下でちゃんと
議論できるようになると良いですな.
私の学生時代は原子炉災害の可能性を
議論するだけで「危険の可能性のあるもの
は反対だ」ということになってました.
これでは, 隠れてやるしかありませんから,
官僚のいいようにされてしまう原因になる.
気が付いたらお役人(としては優秀な人)
ばかりになって, 戦争に突っ込んでいった
海軍みたいになります.
災害はあり得る, 戦争はあり得る, と明示的に
しておくことがお役人の組織浸食を食い止める
鍵です.
クマのプータロー
sdi
原子炉そのものが無傷でも、使用済燃料の保管プールが損壊したらその建屋は放射性物質による汚染の危険をかぶることになる。使用済燃料の容器は無事でも、プールから水が抜けただけでも十分危険です。