4月20日、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」が、母乳中の放射線を測定した結果、千葉県内居住の女性の母乳から1キログラム当たり36・3ベクレルの微量の放射性ヨウ素を検出したことを明らかにした。
「母乳調査・母子支援ネットワーク」なる市民団体とは、少々聞き慣れないのだけれど
※母乳調査・母子支援ネットワークの連絡先は http://bonyuutyousa.net/
メールお問い合わせは、bonyuu_tyousa@yahoo.co.jp
検査は、母乳を生活協同組合などを通じて呼び掛け、千葉、宮城、福島、茨城県内の女性9人から、3月24日と30日に1人約120〜130ccずつの提供を受け、民間の放射線測定会社で分析したところ、千葉県柏市の産後8カ月の女性から36・3ベクレル、茨城県守谷市の女性から31・8ベクレルを検出。また、茨城県つくば市の女性2人からもそれぞれ8・7ベクレル、6・4ベクレルを検出したようだ。
ただし、放射性セシウムが検出されなかったことと、31・8ベクレルを検出した守谷市の女性については、2回目の検査で8・5ベクレルに低下したというから、一過性のものである可能性はある。
ただ、放射性ヨウ素が数十ベクレル単位で計測されたことが事実であれば、体内に取り込まれたヨウ素は直ぐに母乳に移行するとされていることからも、放射性ヨウ素による内部被曝があったことはほぼ間違いない。
普通、放射性ヨウ素は主に、甲状腺に取り込まれる等と言われるのだけれど、「おつるの秘密日記」さんのブログの4月9日の記事で、札幌医科大学の高田教授が、高濃度汚染を指摘されている、福島県浪江町から二本松市へ避難させられた人たちの中から希望者40名について、甲状腺の放射線量の検査したことを伝えている。
それによると、全員が、喉元ではっきりとした放射性ヨウ素からと考えられる放射線が検出されたそうだ。
高田教授は、放射線量による安全レベルの区分をしており、それは次のとおり。
1)レベルA(4シーベルト以上)・・・・・・・・・致死
2)レベルB(1シーベルト以上)・・・・・・・・・急性放射線、放射線障害、後障害
3)レベルC(0.1シーベルト以上)・・・・・・胎児影響、後障害
4)レベルD(0.01シーベルト以下)・・・・・やや安全
5)レベルE(0.001シーベルト以下)・・・安全
6)レベルF(0.0001シーベルト以下)・・核災害の影響は無視できる
この区分からいけば、福島の方の安全レベルは、"レベルE"だそうなのだけれど、レベルEは1ミリシーベルト以下で、ICRP勧告の、一般人が受けてよい1年間の線量に相当する。ただ、このレベルEの判定が内部被曝をも含めての判定なのかどうかよく分からない。
さて、内部被曝を考えた場合、浪江町と比較して、千葉県柏市や、茨城県守谷市がどの程度の危険なのかは分からないけれど、少なくとも浪江町並みに汚染されていたとは考えにくい。
それでも、母乳から放射性ヨウ素が検出されたということは、まぁ当たり前のことではあるけれど、検査をした方たちそれぞれに、食生活が異なるがゆえに、放射性物質を取り込む量に大きな違いが出たのではないかと思われる。
実際、千葉県柏市の方の母乳から36.3ベクレルの放射性ヨウ素を検出する一方、福島第一原発により近いはずの茨城県つくば市の女性2人からは10ベクレル以下の放射性ヨウ素しか検出されていない。だから、これはもう、普段の生活の差、若しくは個人差や体質によって、放射性物質を取り込んでしまう量に差がついたと考えるほうが自然。
ただ、ヨウ素131を摂取した母親の授乳により乳児が受ける線量は母親の摂取量あたり0.054μSv/Bqとされているから、仮に40ベクレル/Kgの母乳を乳児が飲んだとき、受ける線量は2.16uSv、ただこれも1年続けば0.788mSvになるから、注意は必要だろう。
まぁ、それでも、人間は自然放射線による内部被曝には常に晒されている。たとえば、放射性カリウムなんかがそう。
原子番号19のカリウムは、アルカリ金属元素の一つで、生物にとっての必須元素の一つ。特に、植物の生育に欠かせない元素であるため、肥料3要素の一つにも数えられている。したがって、野菜や穀物などの食品には当たり前のように含まれている。
そのカリウムの同位体で、カリウム40というのがあるのだけれど、これがやや不安定な放射性同位体で、その89%がベータ崩壊をしてカルシウム40に、残りの11%が電子を捕まえてアルゴン40になる。
このカリウム40は、半減期が12.77億年もあり、人間の寿命スケールからみると、その放射能はまったく減らないと考えてよく、普段の生活における自然の内部被曝の主要因の一つ(他には炭素14などがある)になっている。
このカリウム40は、天然のカリウム元素のうち、0.012%、即ち、1万分の1くらい存在していて、たとえば、平成18年度の食品サンプルによる計測では、牛乳1Kgあたり42ベクレル、豚肉1Kgあたり95ベクレルあるそうだ。
だから、放射性ヨウ素による内部被曝とは無関係に、カリウム40による内部被曝は、おそらく悠久の昔からあった筈で、自然放射線レベルの内部被曝は、大きな問題にはならないと思われる。
ただ、母乳で育つ乳児は、ほぼそれだけを摂取するから、母乳中の放射性物質がどれくらいあるかは注意すべきだと思うけれど、厚生省は母乳についての放射性ヨウ素の基準値を定めていないこともあり、「母乳調査・母子支援ネットワーク」の村上代表は「今回の数字が高いとも低いとも判断できない」と曖昧なコメントをしている。
それでも、先に計算したように、1年飲み続ければ、ICRP基準の実効線量でこれこれくらいになるからどうだ、という言い方くらい出来そうな気もするのだけれど、素人考えなのだろうか。
※続編「<放射能を放つ母乳 PART2」はこちらから


市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」は20日、独自に母乳を民間放射線測定会社に送り分析した結果、千葉県内居住の女性の母乳から1キログラム当たり36・3ベクレルの微量の放射性ヨウ素を検出したと明らかにした。放射性セシウムは検出されなかった。
厚生労働省によると、原子力安全委員会は母乳に含まれる放射線量について安全基準の指標を示していない。今回検出された数値は水道水に関する乳児の摂取基準値(1キログラム当たり100ベクレル)を下回っている。
ネットワークの村上喜久子代表は「安全性について判断はまだできないが、母乳は赤ちゃんが口にする。国は早急に広範囲な調査を実施してもらいたい」と訴えている。
検査した母乳は生活協同組合などを通じて呼び掛け、千葉のほか、宮城、福島、茨城県内の女性9人から提供を受けた。
3月24日と30日に1人約120〜130ccずつ採取した母乳を民間の放射線測定会社で分析。
千葉県柏市の産後8カ月の女性から36・3ベクレル、茨城県守谷市の女性から31・8ベクレルを検出した。茨城県つくば市の女性2人からもそれぞれ8・7ベクレル、6・4ベクレルを検出。守谷市の女性は2回目の検査で8・5ベクレルに低下したという。
宮城県白石市、福島市、福島県棚倉町、茨城県つくばみらい市の4人からは検出されなかった。福島県郡山市の女性の母乳は分析中という。
URL:http://www.sakigake.jp/p/special/11/eastjapan_earthquake/news.jsp?nid=2011042001001060

投稿者: saeko2011年3月30日 4:04 AM
福島原発震災.
今、大変重要な取り組みです。
福島県内のお母さんで、赤ちゃんに母乳を与えることに不安を感じている方も多いかと思います。
ご協力くださる方いらっしゃいましたら、ぜひ、連絡をとってください。
以下、村上さんからの呼びかけです。
—————————————-
福島原発の震災事故は、深刻な情況で、地震の被災者の皆さんをさらに追い詰め、苦しめていることに言葉もありません。さらにもっと苦しめてしまうかもしれないお願いをするのは、申し訳ない思いで一杯なのですが、非常に緊急を要していると思いますので、思い切ってメールいたします。
今心配しているのは、母乳の放射能汚染です。 各地で高い牛乳の放射能値が検出されていますが、放牧されているわけでもなく、餌も青草ではなく、梱包されて屋内に保存されている粗飼料か、輸入の配合飼料です。あとは水と空気。牛乳に出るのであれば、母乳は大丈夫なのだろうか?と思います。チェルノブイリでも母乳の汚染は起こりました。 ICRP2007年勧告では、「国内における母乳の実態調査は行われて
おらず、行われるべきであり、その結果に踏まえて防護措置を行うべき」とありますが、今、母乳の調査はどこかで着手されているのか?あまりにも伝わってきません。
日本産婦人科学会が「母乳中に分泌される放射性ヨウ素は、母親の摂取した4分の1程度」と発表し、繰り返し報道されていますが、現在どのような文献に基づいているのか?その根拠がわかりません。 私は市民の手でもデータを持つことが重要ではないかと考え、宮城県の方の協力を得て、母乳を検査に出しているところです。茨城の生協の方にもお願いしました。
茨城県は水や野菜、原料乳にも汚染が検出されている県です。地域によってばらつきがありますが、A つくば市 ホウレンソウ ヨウ素2300ベクレル セシウム105ベクレルB つくばみらい市 トマト 13ベクレル セシウム 2ベクレルC 守谷市 ホウレンソウにヨウ素2,100ベクレル セシウム121ベクレルが検出されています。
母乳の放射能検査結果報告検体の採取地(居住地)A:つくば市 B:つくばみらい市 C:守谷市
測定結果(詳細は別紙)
放射性ヨウ素 A:8.7Bq/kg B:不検出 C:31.8Bq/kg
セシウム134 いずれも不検出
セシウム137 いずれも不検出
本当は赤ちゃんを抱えたお母さんに母乳を提供してもらうのはためらわれたのですが、話してみるとどの方も「私の母乳の検査がしてもらえるなら、ぜひやってほしい」と言って積極的に提供して下さっています。それだけ内心は不安に思っているのだと感じました。
もっとも心配されるのは、福島県内で高濃度の汚染が検出されている飯館村や川俣町、避難・自主避難区域となっている地域の方の母乳です。 本当に母乳の汚染は低いのか?問題のある値はないのか?妊産婦、乳幼児とそのお母さんは、もっと広い範囲で緊急疎開の必要はないのか?データをもって確かめないと後に悔いを残さないでしょうか?
福島県の方のご協力がぜひ必要です。もしご協力いただけるようでしたら、ご連絡を下さい。よろしくお願いします。
以上が検査の目的です。現在、ヨウ素とセシウムの両方が検査できる検査書には全国から膨大な検体が殺到しているので、受けてもらえる検査所が少ないことを懸念しています。母乳を提供していただける方を見つける間、優先的に検査してもらえるところを探したいと考えています。
検査に必要な母乳の量は、最低でも100cc強で、200cc近くあれば十分です。冷凍しながらためて、量がたまったら検査依頼書を付け、クール便で検査所へ送っていただきます。もしご協力いただける方があれば、ご連絡下さい。
村上喜久子(
URL:
mail:bonyuu_tyousa@yahoo.co.jp
この記事へのコメント
おとまい
測定した団体は、最低100cc強あれば測定可能と主張していますので、早野先生の指摘とはずいぶん食い違いがありますね。
測定誤差がどの程度なのかもわからないですし、採取時の条件の管理もされていないようなので、私はこの発表数字については信を置いていません。
opera
ただ、より根本的な問題は、自然放射線の問題を含め、放射線あるいは放射性物質をいわば一種の毒物のように考え、その量に比例して人体に害が生じるとする単純なイメージが妥当なのかどうかという点です。
たとえば、長期的な放射線による影響の具体例として、しばしば広島・長崎の原爆被害者やチェルノブイリの被災者の追跡調査が取り上げられますが、こうした被害者や被災者は、その初期において膨大な放射線を浴びるか、浴びた蓋然性が極めて高かった事例であり、その程度を医学的に用いられる線量率(単位時間当たりの放射線の量)で比較すると、チェルノブイリは福島の約一億倍、原爆に至っては一京倍と言われていますね。こうなるともはや次元が違う話で、上記の追跡調査は、いわば後遺症の発生率と考えた方が良さそうな気もします。CTスキャンですら福島の一千倍だそうですから。 (つづく)
白なまず
また、「世界中の原子力撤廃に、逸早く、踏み切れるかどうか」が差し迫った課題があり、これをクリア出来るかどうかで、今後の流れが変わって来ます。クリア出来ない場合は、地球地表上は、大規模な天変地異に見舞われます。クリア出来た場合は、地球地表上は、当面、小規模で緩やかな天変地異で収まりそうです。
【<特集ワイド>「国策民営」 日本の原子力、戦後史のツケ】
http://news.goo.ne.jp/article/mainichi/life/20110420dde012040004000c.html
「戦後、CIAは正力氏と協力して日本で原子力の平和利用キャンペーンを進めていきました。彼が政財界の有力者とのコネを持っていただけでなく、新聞やテレビを使って宣伝できたからです」。
食と環境の未来ネット
食と環境の未来ネットの電話番号ですので、
そちらも消していただけますよう、お願い申し上げます。