政府官邸が福島県産農産物の風評被害を食い止めようとキャンペーンを始めている。
4月9日に、蓮舫消費者担当相は、JA農産物直売所を訪れ用意された福島県産イチゴを頬ばって安全性をアピール。そして、12日には、東京・新橋で開かれた福島県いわき市の風評被害対策キャンペーンに参加。いわき市産のトマトやイチゴを試食して、安全なものしか市場に出ていないとアピール。
そして、15日には、とうとう、菅首相にもお鉢が回り、福島産のイチゴとキュウリを報道陣の前で食べて安全性をアピールした。
ついこの間、出荷制限をしたかと思えば、今度は自分自身で食べて安全性をアピールする。何やら自分の撒いた種を刈り取らされている気がしないでもない。
その安全性をアピールする暫定基準値なのだけれど、野菜については、ヨウ素131が2000Bq/Kg、セシウム137は、200Bq/Kgが基準となっているのだけれど、それぞれICRP基準の実効線量(経口摂取)に換算すると、ヨウ素131は、44uSv/Kg(2000*2.2*10e-8)、セシウム137は2.6uSv/Kg(200*1.3e-8)。
仮に、ヨウ素131とセシウム137それぞれが、基準値一杯の値を持った野菜を1年食べたとすると、どれくらいになるかというと、財団法人食生活サービスセンターのデータによると、日本人の野菜消費量は、1日ひとりあたり284.93g。1年では、約104Kgになるから、取り込むヨウ素131とセシウム137は、ヨウ素131が208000Bq、セシウム137は20800Bq。実効線量に換算すると、4816.4uSv(I-131:4546uSv、Cs137:270.4uSv)で、約5mSv/yとなる。
この5mSvという値は、ICRPの1990年勧告で定められた、一般公衆の線量限度である1mSv/yの5倍の値。ただし、これには特別規定があって、「特別の場合、5年平均で1mSvという補助規定を用いる」という補助規定が定められている。
だから、たとえば、今年1年に限って今の暫定規格を適用したとして、来年以降から4年間は基準値ゼロにしてやれば、5年平均で、5mSvになることはなる。
つまり、現在の暫定規格というのは、向こう5年間を先取りした規格であって、2年目以降はゼロに戻さないと駄目な規格だということ。だけど、そもそも基準値ゼロなんて、事実上有り得ない。
もっとも、ヨウ素もセシウムも基準値ギリギリの作物というばかりあるとは思わないけれど、食物に含まれる放射線の核種がヨウ素131やセシウム137だけとは限らないし、野菜好きの人なら日本人平均以上に摂取するだろう。
更には、水道水に含まれる放射性物質もそれに足していく必要があるから、単純に規制値以内だから大丈夫と多寡をくくっていると、気が付くと大きく限度値をオーバーしている可能性だってある。もっと言えば、外気に含まれている放射性物質を吸い込むことによる吸入摂取分も考慮しないといけない。
だから、安全を取るならば、飲料水や野菜類に対して、もう少し厳しめに見て、たとえば、週の2日くらいは西日本産の野菜にするとか、飲み水も週一回くらいはペットボトルや蒸留水にしてみるとか、ちょっとした工夫はいるかもしれない。
ただ、気になるのは、今の暫定規制値がどこまで続くのかという点。
ICRP勧告に従って、5年平均で5mSvにするのなら、今の規制値は1年しか持たない。2年目以降、或いはもっと早い段階でちゃんと規制値を絞ってくれれば、まだ安心できるのだけれど、今の規制値のまま今後もずっと据え置くようであれば、2年目以降の生活をそれなりに見直す必要がある。
ただし、これは年間線量限度を1mSvとして考えた場合の話であって、今の政府のように、20mSv/yの規制値でも問題ないと思う人にとってはその限りではないけれど、ここまでくると、もう個人のリスクの取り方の問題になると思う。


福島県産イチゴを食べて安全をアピールする蓮舫消費者担当相(福島市で) 蓮舫消費者相は9日、福島市のJA農産物直売所を訪れ、農業関係者らから震災被害について要望を聞いた。
用意された福島県産イチゴを食べるパフォーマンスも見せ、「市場に出回っているものは食べて大丈夫」と、安全性をアピールした。
直売所では、生産者らが「原発事故による風評被害を払拭してほしい」「福島の農産物は安全だと全国に伝えてほしい」などと要望。蓮舫消費者相は「放射性物質が基準値を超えた場合は出荷制限している」と述べ、流通している農産物の安全性を強調した。
(2011年4月9日20時35分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20110409-OYT1T00620.htm

枝野官房長官は12日、東京電力福島第一原子力発電所事故の風評被害を防ごうと、東京・新橋で開かれた福島県いわき市の風評被害対策キャンペーンに参加し、同市産のトマトやイチゴを試食した。
枝野氏は「町に出ている食べ物は安全なものしかない。精魂込めて作ったおいしい食べ物を、ぜひ消費していただくことで応援してほしい」と安全性を強調した。
(2011年4月12日17時42分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110412-OYT1T00764.htm

菅首相は15日、東京電力福島第一原子力発電所の事故で風評被害が出ている福島県の農産物を報道陣の前で食べ、安全性をアピールした。
首相が食べたのは同県産のイチゴとキュウリで、JA福島中央会の庄條徳一会長が首相官邸に持参した。庄條氏は「かつて首相は、カイワレ大根を食べて風評被害を飛ばした魔力を持っている」と、首相が厚相時代に病原性大腸菌O157による食中毒の広がりに対応した際のエピソードを持ち出してハッパをかけ、首相もおいしそうにイチゴをほおばった。
また、庄條氏は原発事故の早期収束を求め、首相は「農作物が市場に出せない事態になっていることは大変申し訳ない」と述べた。
URL:http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/yomiuri-20110415-00943/1.htm
この記事へのコメント
クマのプータロー
opera
また、西日本は東日本と比べて、自然放射線量の平均が約2倍であり、微量ながら、西日本に多い黄砂の中には、本来は飛散するはずのない中国の大気中核実験による放射性物質が含まれているとも言われています。
一方、セシウムは、体内に取り込まれ蓄積される可能性が極めて低いため、チェルノブイリから25年以上経った現在でも、セシウムによる放射線被害は医学的には報告されていないとされています。
つまり、何が言いたいのかと言えば、自然放射線量(
ちび・むぎ・みみ・はな
『保身』
責任を問われたくないのが明らか. こんな政府が
あるだけ邪魔だと言う声が強くなってきている.
『急がば倒閣』
放射能については, 政府機関の声明よりは地元民
の真剣さを信じるから, 流通していれば買う.
60歳以上の人なら放射能伝々はおかしいのだから.