大気中の放射線量低下

 
文部科学省が主導している、都道府県別の放射能水準調査によると、関東各地の大気中の放射線量は減少傾向が続いている。
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原子炉建屋が爆発した後、の3月16日から17日にかけて放射線量が上がって、その後関東各地で雨が降ったあとの21~23日に少し上がったことがあるくらいで、全体としては右肩下がりの傾向が続いていて、4月に入ってから、関東各地の放射線量も0.1uSv/hを下回って、年平均値に近づきつつある。良い傾向。

この原因のひとつには、半減期が8日と短い放射性ヨウ素131の放射線レベルが下がってきていることが考えられるのだけれど、放射性セシウム134などは半減期が30年と長いから、そろそろ、放射性セシウムによる放射線量の影響のほうがより顕著になってくるように思われる。

だから、あと1~2か月くらい経って、各地の放射線量の値から、その場所での年平均の値との差分を取れば、それが放射性セシウムによる放射線の上乗せ分だとみてもいいのかもしれない。

その意味では、現時点での放射線量の差分を見てみると、1993年の国連科学委員会の報告書などによると、日本の自然放射線量は平均0.43mSv/年、最高1.26mSv/年、1時間あたりでは、平均値で0.049uSv/h、最高値で0.144uSv/hとなるから、現時点の放射線量の0.1uSv/hというのは、年平均の倍のレベルで、最高値以下。

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もしも、数か月後の放射線量が今の値からほとんど下がらず、0.1uSv/hのレベルで推移するのなら、各地に散らばった、放射性セシウムによって、0.05uSv/hの放射能が上乗せされたとみるべきなのかもしれないけれど、この程度の放射線レベルにとどまるのであれば、少なくとも、体外被曝という観点からは、ひとまずは許容範囲内だと言っていいのではないかと思う。
※胸部レントゲンの放射線レベルが約0.05mSvだから、毎年の健康診断を一回余分にやったレベル。

これは、また同時に、福島第一原発から新たな放射性物質の放散が抑えられているということでもある。

なぜ、新たな放射性物質の大気中への拡散が抑えられているかといえば、おそらくは、例の大量の放水による炉心の冷却がそれなりの効果を発揮しているのではないかと思われる。

原子炉に対する放水は応急処置にしか過ぎないとは言われているけれど、その応急処置によって、大気中への放射性物質の拡散が抑えられているとするならば、それはそれで、より多くの地域への放射能汚染を防いでいるという意味では良しとすべきであって、放水を続けながら、本来の冷却機能の回復を図るしかない。

もちろん、この大量放水による副作用はある。それは、汚染水の流出。

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これは、タービン建屋外の「トレンチ」と呼ばれる坑道に、高放射線量の汚染水が見つかった問題で、2号機タービン建屋外のトレンチからは、1立方センチ当たり1166万ベクレルという、運転中の原子炉内の水の約4万倍という高濃度の汚染水が漏れ出していて、それが海に直接流出する問題を起こしている。

東京電力は4日、この汚染水は、トレンチの下にある、でこぼこの床面を平らにする目的で敷き詰めている厚さ約20~30センチの「砕石層」と呼ばれる石の層に染み出して、立て坑(ピット)にまで流れ着いて、立て坑の亀裂から流れ出た可能性があると明らかにしている。

この汚染水が海に流出するのを防ぐため、吸水ポリマーやおがくず、新聞紙などを詰め込んでみたものの効果はなかったようなのだけれど、原子力安全保安院は、汚染水拡散を防ぐために、「シルトフェンス」と呼ばれるカーテン状の膜を、取水口付近の海中に設置する考えがあるとコメントしている。

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シルトフェンスとは、細長い浮きの下に錘がぶら下がったカーテンを持つもので、埋立工事や護岸工事などで発生する汚濁の拡散を防止するために使われる。

これによって、ある程度の汚染水の拡散を防止しようということなのだろうけれど、これで汚染水が周りの海と分断できるのであれば、シルトフェンスで囲った中の海水を、ポンプか何かで汲み上げて、そのままタンカーに積んでやればいいように思う。

ともあれ、現在の現場での懸命な処置によって、放射性物質の大気中への放散がある程度抑えられているのは確実で、放射能汚染という意味では、大気への汚染というよりは、海の汚染に比重が移ってきているように思う。

とはいえ、やはり、福島原発周辺の大気中の放射線濃度は依然高いのは事実だから、避難区域の設定を含めて、果断な処置を望みたい。




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画像関東地方の放射線量は低下、ほとんどの地域が平常レベル内に、文部科学省発表 - 11/04/04 | 16:41

 文部科学省がとりまとめている都道府県別環境放射能水準調査によれば、関東各地の放射線量は低下傾向が続いている。

 4月に入ってからは、水戸市を除き、過去の平常時の上限値の0.1マイクロシーベルト/時を下回る水準になってきている。

 水戸市は依然として平常時に比べると高い値だが、直ちに健康に影響を与えるような水準ではまったくない。

 3月15~16日に各地で非常に高い放射線量が計測された後、いったん線量は低下、21~22日の降雨によって南関東各地に放射性物質が降ったため再び値が高まったと見られる。

 その後は、放射線量は各地ともほぼ一貫して低下を続けていることから、15日以降は大気中に新しい放射性物質が大量に放出されてはいないもようだ。

URL:http://www.toyokeizai.net/business/society/detail/AC/b9a9d35eb8f8e81ddb0102796a312966/



画像2号機汚染水の拡散防止に海中にカーテン状の膜

 東京電力福島第一原子力発電所2号機の取水口付近から高濃度の放射性物質を含む汚染水が海に流出している問題で、経済産業省の原子力安全・保安院は4日午前の記者会見で、汚染水拡散を防ぐための「シルトフェンス」と呼ばれるカーテン状の膜を、東電が近く取水口付近の海中に設置する考えであることを明らかにした。

 設置場所は2号機の前面など2か所。

 この他、汚染水の流れる経路とみられた電源用トンネル周囲の土壌に薬剤をまいて固めるなどの措置も検討しているという。

 東電は3日、トンネルに高分子吸水材などを投入して経路をふさごうとしたが、目立った効果は表れていないという。

(2011年4月4日11時26分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20110404-OYT1T00369.htm

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