日本の自粛ムードが晴れるとき

 
「運よく生き残ったほうは、不幸を嘆いているだけでなく、やっぱり生き残った者の義務として、今回はこっちは頑張らねばならんところだ。・・・そういった気持ちに切り替わっていきつつあるんだと心強く思っております。」
麻生元首相 於:3/24 福島県相馬市 災害対策会議

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日本全国に自粛ムードが流れている。被災地の状況を慮って、派手な行為は慎もうということ。

石原東京都知事は、「同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感ができてくる」と、事実上の花見禁止令をだし、上野恩賜公園では、「うえの桜まつり」の中止を発表。宴会の自粛を呼び掛ける看板を設置したという。

アメリカのニューヨーク・タイムズは28日付の記事で、この日本の自粛ムードを伝え、経済への悪影響の懸念を伝えている。

確かに、都知事の「同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感ができてくる」というのはその通りだし、また、NYタイムズのように、自粛が続けば、経済への悪影響が起こるというのも事実。

なぜ、これほど急速に自粛ムードが広がったのか。

もちろん、自粛ムードが起こった広がった原因は、震災による被害と亡くなられた方への弔意を表しているというのは言うまでもないのだけれど、それ以外には(無)計画停電が大きいのだと思う。

計画停電が始まってからというもの、国民は、本当に停電になるか前日まで分からない無計画ぶり上に混乱している。

節電のために、電車の本数を減らして、間引き運転しているし、駅のエレベータなんかも止まってる。夜になれば、看板のネオンは消え、早めに店じまいするところもあれば、ひっそりと店を開けているところもある。

コンビニにいけば、カップ麺なんかのインスタント食品の棚はスカスカだし、ペットボトルの水はおひとり様2本まで。3月11日以前と以後とですっかり世界が変わってしまった。

3月16日には今上陛下のビデオメッセージを賜った。これを持って昭和天皇の玉音放送になぞらえる人もいるし、筆者もそう思っている。

心理的には、第2の敗戦を迎えたようなもの。陛下は国民の痛みを分かち合おうと、自主的に皇居の停電を続けられていると聞く。これは、ほとんど喪に服しておられるのに等しい。

したがって、陛下が喪に服しておられるのに、国民がどんちゃん騒ぎできる道理もなく、自粛ムードが広がるのは無理もないことのように思える。

だけど、これが長引けば、日本の経済は縮小し、経済的ダメージより深刻になることは確実。

だとすれば、どうすべきなのか。



直ぐに対応できるかどうかは難しいのかもしれないけれど、やはり政治が責任を持って、電力抑制のための強制力を発揮すべきだと思う。たとえば、第1次オイルショックのときのように、電気事業法に基づいて産業界の電力使用制限を行なうとかして、きちんと計画的に停電をして、まず安定して電力を供給できるラインを確保すべき。

軍事的にいうところの兵站をまずきちんと確保する。そして確保した兵站をよりどころにして次に復旧すべき所に優先順位をつけて、順次手をつけてゆくのがセオリーの筈。

兵站とは部隊の移動と支援および活動のことだから、なによりも物流のラインを確保することが最優先。だから、電力でいえば、物流に関わるラインは止めてはいけない。物流のラインが確保されてこそ、継続的な支援が可能になるから。

そうして、被災地や避難所などへの兵站が確保されると、物流が安定して、避難所にいる方も当座の安全が確保される。そうしてようやく今後の身の振り方を考える余裕が生まれる。

被災地への訪問が出来るタイミングはこの辺りからだと思う。

今の自粛ムードが、国民の精神的"喪中"だとするならば、喪が明ける時期は、おそらく、計画停電が一旦の落ち着きを見せ、陛下が自主停電をお止めになるときか、陛下が東北各地を訪問されるタイミングではないかと思う。もちろん本当に陛下が東北各地を訪問されるかどうかは分からないけれど、先日、陛下が都内の避難所にご訪問されたことから考えると実現の可能性はなくはない。

出来るならば、政治の方でも、そのあたりのタイミングを見計らって、合同慰霊祭でもやって、全国的に"喪明け"を宣言すべきだと思うし、そこからの復興には、政治のトップの考え方、ビジョンが非常に大きな影響を及ぼすと思う。

震災から3週間、碌に記者会見もしない菅首相の発信力の弱さがつとに指摘されている。こういってはなんだけど、筆者は、菅首相が心に描いている日本の姿は、非常に"貧しい日本"の姿なのではないかと感じている。

会見では、頑張っている、お約束する、とか言って、いろいろな対策チームばかり立ち上げているのだれど、そのための道筋、タイムスケジュールを一向に示さないものだから、国民にそれが伝わらない。

しかも、後から、そんな話は聞いていないと、閣僚から否定されたりして、内閣や党内で調整すらしていないことが暴露されたりするものだから、ますます不安になる。

4月1日の記者会見で菅首相は、東北のエコタウン構想をブチ上げたけれど、その翌日には早速、「官邸と各省庁、地元被災地で綿密に検討された形跡はない、思いつきだ」と叩かれている。

もしかしたら、ちゃんと調整した上での発言なのかもしれないけれど、それが出来るのであれば、ここまで震災の対応が後手後手になることもないだろうと思う。

自分で調整したり、決定することができないのであれば、せめて、阪神淡路大震災当時の村山首相のように、ただただ、お願いしますと関係閣僚、省庁に真摯に頭を下げることが必要なのではないかと思う。


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画像【東日本大震災】石原知事“花見禁止令” 戦争時の「連帯感は美しい」2011.3.30 20:00

 東京にも桜の季節がやってきた。例年、花見で盛り上がるところだが、石原慎太郎都知事(78)が「待った」をかけた。東日本大震災の被災者、節電への配慮から、今春は自粛すべきというのだ。(夕刊フジ)

 「桜が咲いたからといって、一杯飲んで歓談するような状況じゃない」

 死者・不明者だけで2万7000人を超えた大震災。29日の会見で石原氏は、太平洋戦争を引き合いに「同胞の痛みを分かち合うことで初めて連帯感ができてくる」「戦争の時はみんな自分を抑え、こらえた。戦には敗れたが、あの時の日本人の連帯感は美しい」と、都民に対し、事実上の“花見禁止令”を通達した。

 上野恩賜公園では、すでに「うえの桜まつり」の中止を発表。園内の至るところに宴会の自粛を呼び掛ける看板を設置。恒例のぼんぼりは点灯せず、ごみ置き場や仮設トイレもない。

 上野恩賜公園管理所の渡辺裕チーフは「来園者の反応は、『こういう時だからこそ、盛り上がりたかった』という声と、自粛は当然という意見の半々。例年は朝から場所取りで大にぎわいですが、今朝(30日)は1組だけでした」と話す。

 上野公園をはじめとする都立公園では、飲食を伴う花見自体は禁止しないが、アルコールが入り、過度に盛り上がっている団体には、ガードマンが自粛協力をお願いするという。千鳥ヶ淵緑道のライトアップや、国立劇場や靖国神社などのお花見イベントも中止が決まっている。

URL:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110330/mca1103302006015-n1.htm



画像NY紙「日本は自粛という強迫観念にとらわれている」 2011.3.29 20:09

 【ワシントン=古森義久】米紙ニューヨーク・タイムズは28日付で「津波後の日本は自粛という新たな強迫観念に襲われた」との見出しの記事を掲載し、日本国民の多くが地震や津波の犠牲者への弔意から日常の活動を縮小するようになり、国民経済への悪影響が懸念されると伝えた。

 東京発の同記事は、日本で「地震、津波、原発で何十万という国民が被害を受けたことから、被災地以外でも、少しでもぜいたくにみえる活動はすべて非難されるようになった」とし、日本国民のすべての層が生活面での「自粛」をするようになったと報じた。

 自粛はまず電力の節約という形をとり、日本国民が「電灯、エレベーター、暖房、トイレ座席の暖房まで止めるようになった」とし、安売りカメラ店の客案内の音声やカラオケ店への出入り、桜の花見、高校野球応援、東京都知事選の候補の音声までが自粛されていると指摘した。

 同記事は自粛が過剰になっていることを示唆し、企業や学校の行事のキャンセルが日本の経済全体の60%に及ぶ消費支出を大幅に減らし、「もともと停滞していた日本経済に浸食効果をもたらし、倒産を急増させるだろう」と述べている。

 また「東京都民にとっての自粛は被災地の人々との連帯を示し、自粛をする側を何か良いことをしているという気分にさせる安易な方法だ。しかし、当人たちは実際にどんな効果をもたらすかはあまり考えていないようだ」とも論評した。

URL:http://sankei.jp.msn.com/world/news/110329/amr11032920100008-n1.htm



画像阪神淡路大震災当時、筆者が見た村山富市首相の姿

95年の阪神淡路大震災発生からしばらく経ったある夜、私は当時の村山富市首相に公邸へ呼ばれた。

 首相公邸の会議室に入っていくと、村山首相は頭を抱えて座っていて私に気づかないでいる。ようやく気がつくと頭を上げ、「5000人もの犠牲者を出してしまった」と私に言った。結局、犠牲者は6000人台に達するのだが、その時点ではそこまでに至っていなかった。

 私の頭のどこかに基本的には“天災”という認識があったので、村山首相のすべてが自分の責任であるような「申し訳ない」という言葉には驚いた。そのときの村山首相は目を赤くしているようにも見えた。

 当時、大震災への初動の遅れなどに一部から厳しい批判もあったが、首相はその批判を一身に浴びて決して責任を転嫁することもなかった。


◆政府・与党が一丸となり立ち向かった阪神淡路大震災への対応

 今ふり返ると、あの時少なくとも政府・与党は激しい議論はあっても一糸乱れず、それこそ打って一丸となってこの大震災に立ち向かった。

 首相と河野洋平自民党総裁(外相)と武村正義新党さきがけ代表(蔵相)の結束は固く、文字通り一枚岩であった。自民党の野中広務、亀井静香両氏などのうるさ型も、大の村山ファンで強力に後押ししたし、社会党内で首相と肝胆相照らす仲であった野坂浩賢氏は建設大臣として入閣し、捨て身で難局にある首相を守り抜いていた。

 官邸は特に、石原信雄官房副長官と、園田博之副長官(当時さきがけ、現在たちあがれ日本幹事長)が首相の手足となって大震災に対応した。とりわけ園田氏は首相の信任が厚く、並みの閣僚では足下にも及ばない働きをしていた。

 そして、自民党の小里貞利氏を直ちに震災担当大臣に任命。小里氏は優れた判断力と持ち前の行動力で震災対策の陣頭に立った。この小里担当相に対して、村山首相は、思い切って人事と予算を含めたほぼ全権を任せたのである。


◆菅首相が学ぶべき “控え目な名指揮者”村山首相の姿

 その頃、私は蔵相として入閣していた武村氏に代わって、党の代表を代行。菅直人氏は、政調会長として、与党内の政策調整に当っていた。

 したがって、菅直人首相は、阪神大震災への政権の対応ぶりについて相当程度知っているはずである。

 前回の例えで言えば、村山首相は指揮者で私や菅氏は楽団員と言うことになる。

 村山首相はパフォーマンスと無縁な人だから、身振り手振りで目立つ指揮者ではない。むしろ楽団の影になっているような指揮者であったが、楽団の隅々まで配慮があって、1人ひとりが持てる力を最大限に発揮できるように努めた。控え目な名指揮者と言うべきだろう。

 今回の震災は阪神淡路大震災とは規模が違うし、両首相の性格や手法も違うから同一視することはできないかもしれない。

 しかし、菅首相は村山首相に学ぶところも多いはずだ。

 このところ、政権内に、馬渕、仙谷両氏が入り、体制が充実、強化されてきたのは歓迎すべきだろう。政治家、官僚、専門家が最大の力を発揮できる環境をつくることが最も重要な首相の役割だ。首相がわざわざ存在感を示すことは無用。関係者全員が危機を乗り切り一丸となるよう努めてほしい。

URL:http://diamond.jp/articles/-/11687

この記事へのコメント

  • 白なまず

    ひふみ神示 第01巻  上つ巻 第十九帖
    神の国 ⦿の山に ⦿祭りて呉れよ、祭るとは神にまつらふことぞ、土にまつらふことぞ、人にまつらふことぞ、祭り祭りて嬉し嬉しの世となるのぞ、祭るには先づ掃除せねばならんぞ、掃除すれば誰にでも神かかるやうに、日本の臣民なりて居るぞ、神州清潔の民とは掃除してキレイになった臣民のことぞ。六月二十七日、一二⦿ 。

    江戸(穢土)の仇は長崎で討つ(祓う)
    2015年08月10日 16:46
  • GT.

    東京電力管内でのいわゆる「自粛モード」は
    心情的にはわからんでもないですが、
    関東広域で自粛していても震災復興や被災者支援には
    何の役にも立ちません。
    節電をする唯一の理由は電力事情によるものだからであり、
    災害地のほとんどをまかなっている東北電力とは何の関係もありません。
    しかも、終日節電などを行い、
    電力消費に余裕がある時間帯での節電は、
    会社や家計の動力費削減には貢献しますが、
    (この季節では)身体的に寒いのみならず、
    経済も寒くなり、むしろ復興には悪影響しかありません。

    そのことにみんなが気がついて欲しいのですが、
    東京にいながら、一緒に頑張ろうなどという
    訳解からないことを言う人が後を絶ちません。
    復興を助けるためには
    粛々と従来同様の経済活動を行なえばいいだけです。

                   以上。
    2015年08月10日 16:46
  • とおる

    計画停電は、産業弱体化政策。
    原発の放射性物質の漏洩は、日本人の癌化政策。

    上野などの花見は、場所代を取って(寄付を募って)、地震・津波・原発事故の救済に。
    2015年08月10日 16:46
  • クマのプータロー

    東京キー局のマスコミを大阪キー局にするだけで随分変わると思います。
    しみったれた節約は東京電力管内だけで済ませて頂きたいモノです。
    2015年08月10日 16:46
  • sdi

    自粛ムードが晴れるためには、世間一般の「空気」が明るい、またはポジティブ思考にならないとだめでしょう。
    そういう点でいうと、私は市街地の物理的な「明るさ」というのが結構大きいのではないかとヤシマ作戦が始まってからずっと考えています。私は日本社会から自粛ムードが消えるためには最終的には以下の二点が成立することが必要なのではないですかね。
    ・福島原発が冷却され石棺化のめどがつく
    ・エネルギー事情の好転
    例え自粛ムードが薄れてきたとしても、6月に初夏を迎え、7月後半には梅雨明けして夏になれば間違いなく「節電」「停電」の掛け声だらけになります。
    そんな状況で自粛ムードを払拭できるでしょうか?
    確かに、日本人一人一人の心の持ち様というのは重要ですが、人間心理は物理的な環境に影響されやすいのも確かです。長期戦を覚悟するしかないと考えます。
    2015年08月10日 16:46
  • せみまる

    被災者、計画停電を余儀なくされる関東地方の人々に配慮しての皇室自主停電。天皇は「日本国民統合の象徴」であり、今回の震災で、「日本は強い国」だの、「心を一つに」だのスローガンが乱立する昨今、当然であろう。まぁ、かつては、原発が運転されなくても、なんとかなっていたので、計画停電は、東電の屈折した原発推進キャンペーンであるに違いない。自粛は、特に、関東地方の人たちは大いにするべきだと思う。買占めをせず、物資をなるべく東北地方に回そう、福島第一原発で発電される電気は関東地方の電力需要なので、うかれた宴会、花見は自粛しよう。仮に花見をするのであれば、風評被害の農作物・水産物をあえて求めて食してみよう。福島や北関東の諸県のためである。景気をよくするために自粛をするべきではないとする論者がいるが、愚かしい見解である。地震が来る前から景気はすでに悪い。相も変わらない、「消費による景気拡大論」なのか。経済にいささか無知のようである。自粛しようがしまいが、景気には無関係である。
    2015年08月10日 16:46
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    後半で述べられているように, 政府の対応が信じられない
    のが自粛が広まっている理由でしょう.
    これ以上悪くならないなら, 気分を変えることもできますが,
    菅氏の顔を見ると「なんだかもっと悪くなりそうな気配」がする.

    やはり, 居るべきでない, 或は居る資格のない人達が国民を
    騙して政府に居るのが不安の原因.
    2015年08月10日 16:46

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