太陽光パネル1000万戸設置構想について
菅首相が、5月26日、OECDでの演説で、風力、太陽光などの自然エネルギーの比率を高める考えを表明し、国内一千万戸の屋根への太陽光パネル設置を目指す考えを述べた。
5月27日、海江田経産大臣は、太陽光パネルの件については、聞いてはいなくて、「報道を通じて知ったので、もうすこし詳しく話をお聞きしたい」と述べているから、やはり、事前調整はされていなかった可能性が高い。
尤も、太陽光パネルの設置については、当初の原稿案にはなく、最終段階で菅首相が付け加えたそうだから、事前調整する暇もなかったのかもしれないけれど、国際会議での首相発言は事実上の国際公約になるのだから、尚の事慎重に発言すべきだろう。
大体、こういう問題は事前に関係省庁とよく摺合せをおこなったうえで、実現可能か若しくは、少し超えるくらいの目標に落とし込むのが普通なのに、"おもいつき"での発言なのであれば、後々誰かが尻拭いをすることになる。
先日の浜岡原発の停止要請にしても、海江田大臣と経産省による、中部電力との事前調整があったことが明らかになっている。
浜岡原発停止については、3月末から海江田大臣と経産省で検討が始まり、中部電力下交渉を続けていた。最大の焦点は停止のための理由づけ。
元々、浜岡原発は、国の耐震基準を満たしていて、震災後の緊急安全対策にも対応していたから、ただ止めろというのは理由にはならない。それに菅首相が理由にあげた、今後30年間でマグニチュード8クラスの東海地震が起こる確率が87%というものだって、ぽっと出たものではなくて、昔から公表されてきたこと。
だから、5月5日に海江田大臣が浜岡を視察して、中部電力と摺合せをして、東海地震87%に対しての備えは十分にしているものの、東南海、南海との連動型巨大地震や、想定外の津波に対する備えが万全かどうかについて再度検証するので、それまで一旦停止する、という理由にすることで調整をつけていた。
浜岡停止の発表の段取りと記者会見は経産省で進めていて、海江田大臣は自分で会見する積りだったのだけれど、それを横取りする形で自分で発表したのが菅首相。
そのとき、菅首相は止める理由として「87%の確率」としか言わなかったものだから、却って浜岡の危険性を印象付けることになり、地元では引っ越しを考えている人も増えているという。
他人の手柄は自分のもの。自分の失敗は他人のせい。リーダーのとるべき態度ではない。
現在、太陽光パネルを住宅に設置する場合、1kwあたり、大体70万円くらいかかると言われていて、設置面積だってそれなりに必要になる。
たとえば、こちらの工事例では、5kWの発電システムで、太陽光パネルを24枚設置。パネルの設置面積は約30平方メートルというから、およそ9.3坪使っている。そして、工事費用は380万円。
それに何より、5kWの発電システムといってもいつも、5kW発電してくれるというわけではなくて、パネルに対して、太陽光が直角に当たって、真夏並みに日差しが強い日という条件そろって始めてそれだけ発電してくれる、という話。しかも真夏の太陽に照らされて、太陽光パネルの温度があがると変換効率が落ちてしまうという弱点もある。
もちろん、雨とか雪とか、日差しが強くない冬とかになると、もっと発電効率が落ちる。それらを考慮すると大体年間で、最大発電量の65%くらいがせいぜいだと言われている。
しかも太陽光パネルの寿命は20年程度とされているし、発電システムに使われるパワーコンディショナーの寿命は10年程度。
だから、10年、20年で元が取れるくらいに安くならないと中々一般家庭には普及していかないと思われる。
こちらのサイトでは、太陽光発電システムの設置費用に295万かかったとして、太陽光発電の経済収支のシミュレーションを紹介しているけれど、それによれば、太陽光発電システムを3%ローンで購入すると、30年使っても元はとれず、一括現金購入しても、25年以上使ってようやく元がとれる計算になっている。
今、一般家庭に太陽光発電を設置する場合、国から補助金が出ているのだけれど、1kWあたり4万8千円ぽっち。しかも想定している設置家屋は17万戸で、平成23年度の補助金の予算は349億円。
だから、菅首相の言った、一千万戸の屋根への太陽光パネルを設置する、というのがどれくらいハードルが高いものになるのかよくわかる。
2009年時点で、太陽光パネルを導入した家庭の戸数は約54万戸。国内の戸数は一戸建てが約2745万戸、共同住宅が約2068万戸だそうなのだけれど、共同住宅への太陽光パネル設置は、住民の合意とシェアされる発電量の低さを考慮すると、一戸建てよりも難しいだろうから、普及させるにしても、一戸建てが中心になると思われる。
だけど、今のままでは、一千万戸の屋根への太陽光パネルを設置なんて、国民への一方的負担の押し付けにしか過ぎず、たとえ、補助金を今の水準の倍にしたところで、焼石に水。
もしも、設置費用を全額国が出すとすると、仮に3kWのシステムとして一戸あたりの設置費用が約200万円。それに一千万戸かけて20兆円という莫大な額になるし、補助金を今の水準のままにしたとしても、一千万戸ともなれば、平成23年度予算のおよそ60倍くらい、すなわち、2兆円規模の予算が必要になる。
子ども手当の2兆円すら出せずに見直そうとしている今の政権にそんな甲斐性があるとは思えない。
海江田大臣は、実現できるかどうかについて記者団に問われ、「菅首相がよくお考えになっての発言と思います」と話しているけれど、浜岡の件といい、今回の太陽光パネルの件といい、よっぽど腹に据えかねているのではないか。
立てば国難、座れば人災、歩く姿は風評被害。いい加減にしてほしい。
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太陽光パネル、1000万戸に 菅首相、OECDで表明 2011年5月26日 夕刊
【パリ=小栗康之】菅直人首相は二十五日午後(日本時間二十六日未明)、パリ市内での経済協力開発機構(OECD)の設立五十周年記念行事の演説で、今後のエネルギー政策に関連して、一千万戸の屋根への太陽光パネル設置を目指す考えを表明した。
首相は原子力エネルギーの安全性を高めながら維持する一方、風力、太陽光などの自然エネルギーの比率を高める考えを表明。太陽電池の発電コストを二〇二〇年までに現在の三分の一、三〇年までに六分の一に引き下げる目標も示した上で、太陽光パネルの設置に言及。「日本の設置可能な一千万戸の屋根のすべてに太陽光パネルを設置することを目指す」と明言した。太陽光パネルの部分については当初の原稿案にはなかったが、首相が最終段階で付け加えた。
URL:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011052602000195.html
太陽光パネル公約、経産相「聞いてない」 会見で沈黙も 2011年5月27日22時7分
菅直人首相が主要国首脳会議(G8サミット)で訪れたフランスで国内1千万戸の屋根に太陽光パネルの設置を目指すと話した「国際公約」について、海江田万里経済産業相は27日、「聞いていない」と語った。閣内で意思統一された目標ではないようだ。
海江田氏は27日夕の記者会見で、パネル設置の財源を聞かれ、「報道を通じて知ったので、(首相が)帰ったらもうすこし詳しく話をお聞きしたい」と答えた。エネルギー政策担当の経産相に相談なく決めることがあるのかとの問いには、唇をかみ締めながら7秒間沈黙した。その後、「内閣総理大臣だから自分の思いを発言するのはかまわないと思う」と語った。
1千万戸を設置するには多額の補助金が必要になるとみられる。海江田氏は実現できるかどうかについて「(菅首相が)よくお考えになっての発言と思います」と話した。(福田直之)
URL:http://www.asahi.com/business/update/0527/TKY201105270556.html
菅“卑劣”原発停止は手柄横取り!バカ丸出し会見で尻拭いも ★鈴木哲夫の核心リポート 2011.05.26
東京電力福島第1原発1号機の海水注入を中断させた疑惑が深まっている菅直人首相。その“浅慮”がまた明らかになった。数少ない得点のひとつとされる中部電力浜岡原発の停止要請会見で、事の本質を十分理解しないまま、事実と異なる発表をしていたのだ。浜岡原発停止は経済産業省が事前に綿密な根回しをしていたが、功名心に駆られた菅首相が手柄を横取りするように発表したため、軋轢を生んでいるという。20年以上、永田町や霞が関をウオッチしている政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が核心に迫った。
「分かった。あとはこっちでやるから」
5月6日、海江田万里経産相から浜岡原発停止の報告を受けた菅首相は、そう言って話を引き取ろうとした。
報告した海江田氏は、これまで時間をかけて、この問題の準備を進めていた。すでに自らの会見の文言もできあがりつつあった。不満を込めて言い返した。
「記者会見はこっちで準備しています。私の方でやるのがいいと…」
しかし、菅首相はまったく耳を貸さない。
「こっちでやる」
高揚した菅首相はその日の夜に緊急記者会見を行い、中部電に対して浜岡原発の停止を要請したことを発表した。
原発そのものに不安を抱く世論は、おおむね首相の行動を評価。「これこそ政治主導。しかも支持回復につながった」と首相側近は自画自賛した。
しかし、取材を進めると、そこには、おいしい話にはお構いなしに飛びつく菅首相の相変わらずの「場当たり」ぶりがあった。その証拠が、菅首相が会見で発した「87%の確率」という数字。海江田氏はその尻拭いに追われたが、地震の恐怖はいまだに独り歩きしている。
海江田氏や経産省が浜岡原発停止について検討を始めたのは3月末。福島第1原発の事故対応で後手に回り、批判を受けている所管官庁として、何とかこれを挽回するための手立てだった。
ある経産官僚が経過を明かす。
「大臣から指示され、中部電力側とずっと下交渉を続けてきた。浜岡は国の耐震基準も満たしているし、震災のあとに指示した緊急安全対策にも対応していたから、『ただ止めろ』というのはいくら何でも理由がつかなかった」
そこで、5月5日に海江田氏自らが現地視察し、その後の停止の大義について、次のようなすり合わせをしていたのだ。
「会見では『浜岡原発は東海地震87%の確率に対しての備えは十分ある』と、まず中部電力側の対応を肯定する。そのうえで、『しかし、今回の(東日本大震災の)ような連動型地震による想定外の津波もある。特に、東海地震に東南海、南海地震が連動する事態に対しては想定していない。そこを、もう一度、検証するのでそれまで停止してほしい』という理由づけをすることにしていた。中部電力側も『それなら顔も立つし、止める大義もある』ということになっていた」(同)
■あまりに思慮の浅い行動
ところが、ここぞとばかりに飛びついた菅首相は、こうした複雑なプロセスについて海江田氏や経産省から事情もまともに聞かず、高揚したまま会見に臨んだ。
結果、重要な部分を飛ばして、「浜岡で事故が発生すると日本社会全体に甚大な影響がある」という、浜岡の危険性をいっそう印象づけたのだ。
しかも、「文科省によると30年以内にM8の東海地震が発生する可能性は87%と切迫しているから、その対応が必要」と述べたが、実は87%は以前から公表されていた数字である。中部電にしてみれば、「政府の言う通り、今まで対策は十分やってきていたのに」とメンツを潰された格好になってしまった。
海江田氏が急きょ、同じ日に会見を開いて説明し直したのは、菅首相のこうした理解不足と言葉足らずをフォローするためだったのだ。
「中部電力が臨時取締役会で一度決定を流したのは、菅首相への明らかな抗議。あの首相会見は『浜岡は危険』という認識を植え付けただけで、地元自治体も困惑している。住民は、首相が根拠とした87%という数字に振り回され、引っ越しを考えている人も増えている」(静岡選出国会議員)
トップの思慮があまりにも浅く、メッセージがあまりにも軽いことこそが「未曾有の危機」なのではないだろうか。
■鈴木哲夫(すずき・てつお) 1958年、福岡県生まれ。早大卒。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、東京MXテレビ編集長などを経て、現在、日本BS放送報道局長。著書に「政党が操る選挙報道」(集英社新書)、「汚れ役」(講談社)など多数。
URL:http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110526/plt1105261618004-n1.htm
この記事へのコメント
日比野
後々のメンテナンスまで考えると大変なことがよくわかりました。
屋根が穴だらけになるのであれば、最初から、太陽光パネル設置を前提とした設計にすべきですね。
今後ともよろしくお願いします。
K
さらに保証が10年くらいだそうですね。問題は20,30年後、ちょうど定年になり、年金生活に入った後が心配ですね。
新築住宅をみると、屋根にきれいに設置された太陽光パネルをたくさん見受けられるのですが、あれどうやって、屋根に取り付けられているか気になります。
外観が綺麗に設置されているということは、パネルを直接屋根に固定してあるということなんですね。取り付け金具は有るでしょうが、それを介して屋根に直接釘で止めてあるようです。
瓦屋根の場合だと、瓦に穴をあけ釘で樽木があるあたりに釘で止めているようです。樽気がどこにあるかはよくわからず、また、パネルのピッチも合わず樽気でないところに穴をあけ、雨漏り被害もネットにはでているようです。
樽木であっても、穴が大きくなったりして雨漏りの元になる。
年金生活になって、パネルが寿命になった頃、屋根から撤去する費用もすごいでしょう<なにしろ屋根にあがえうのだから)。
それだけにとどまらず、撤去してみたら、屋根が穴だらけ、ということ
ターマン
ちび・むぎ・みみ・はな
自民党時代の国際公約を何の理由もなく捨てたのだから,
嘘付党の役立たず氏が言うことは気にすることはない.
そもそも, G8の誰も本気にはしていない.
それでも, 獣へん王を何時までも野放しにしておくと危ない.
昔, 太陽熱温水器がはやったことがあるが無くなったような.
屋根においておくと樹脂や金属はすぐに駄目になる.
反ダム、反原子力の連中に習って:
太陽光発電でないといけないのですか?
それでも, 太陽光発電ですか?
k
何でもそうだが外に置いたもの、雨や風や太陽に10年もさらされたものは
劣化してしまいます。まさに屋根に10年以上設置して確実にさらす太陽光パネルも劣化する。
長期間屋根に置くものだから、ピカピカのパネルもいずれゴミになるということは当然考えておくべきでしょう。
太陽光発電は、結構不具合があるようで、 10年以内に太陽光パネルを交換、または修理したものが1割を越えて、約13%もあるといいます。
保証期間はたいてい10年だから、10年過ぎて交換修理する場合はもっと多いはずで総て自己負担です。 1000万軒というけど、20,30年したら誰もいない。誰が責任を負うのでしょうね。
夏は強い日差しを受けて太陽光発電もたくさんの発電をしてくれると思われがちですが、実は高温になると発電量が低下するのはあまり知られていないようです。1年のうちで発電量が一番多いのは、夏ではなく日照時間が長く太陽光パネルも高温にならない5月と言われます。
再生可能エネルギ-の「買取制度」は、「電気料金値上げ」ですべての家庭で負担するという問題のある制度です。
この最大の問題、それは