5月24日の記者会見で、枝野官房長官は、福島第一原発1号機への海水注入が一時中断した件について、菅首相が海水注入を実際に指示したとされる午後8時の2時間前、すなわち、午後6時ごろに、『(海水を)入れられるなら早く入れた方がいい』と首相が指示したとされるメモが残っていると発言した。
これを字句どおり受け取ると、首相は午後6時に海水注入の指示を出したあと、首相自ら撤回したか、再臨界の危険性があると官邸で議論していると伝え聞いた東電が注水を停止したかの後で、午後8時に再び首相が注水の指示をしたことになる。だけどこれは、随分と変な話。
午後6時の注水指示のあと、自分で撤回したのなら、また再度注入の指示をするなんて、一体何を考えているんだ、ということになるし、官邸での午後6時からの会議で再臨界の議論を聞いて、東電が注水を止めたというのなら、一度、首相から注水の指示を受けた東電が、勝手に首相指示を無視して注水を止めたことになる。
どちらにしても筋が通らない。
筆者なりに、このメモについて、筋が通るストーリーを推測して組み立てるとしたら、おおよそ次のとおりだろうか。
3/12のストーリー(憶測)
12:08 第3回災害対策本部開催
・福島第一現場から淡水が無くなると連絡。(この時点で無くなることは分かっていた筈)
・東電社長、海水切り替え準備を指示
↓
現場で海水注入切り替え作業準備開始
14:00 原子力安全・保安院中村幸一郎審議官が「炉心溶融が進んでいる可能性がある」と発言
14:50 東電、海水注入実施決定 <-注)追加情報
14:53 福島第一現場、1号機への淡水注入停止
・班目氏、炉心を海水を使ってでも冷やすよう助言(あるいはもっと前からか?)
⇒菅首相、党首会談があるからしばらく待てと預かった?
(海水注入したらメルトダウンがばれるとでも思ったか?)
15:00 菅首相、野党と党首会談、「メルトダウンはない」と言い切る。
(実際はメルトダウンをおこしていた)
15:20 東電、保安院に海水注入予定を保安院にFAX <-注)追加情報
15:36 1号機で水素爆発
・作業員一時退避(当然、海水切替準備作業中断)
・菅首相海水注入を指示/決断できず。
↓
見かねた周囲が、菅首相に内緒で、海水注入の首相指示メモを作成
※官邸は「対応策は政府の指示という形で出すように」と命じていた。 <-注)追加情報
18:04 指示メモを渡された海江田大臣が東電に海水注入の指示文書出す
19:04 福島第一現場、1号機に試験注水始める
↓
・海水注水を聞いた菅首相「俺は聞いてない」と激怒。
↓
・菅首相、「注水を止めさせろ」と指示
19:25 福島第一現場、1号機に試験注水停止
・対策本部:周囲が菅首相に対して、必死で海水注水の必要性を説得
20:05 菅首相の説得に成功し、海水注水の首相指示
と、まぁ、午後6時の時点での指示は、周囲がなんとか事態を収めようと、菅首相に内緒で、メモを作って出して、後で注水の事実を聞いた菅首相が激怒して止めさせたと考えると、一応、筋が通った話になるのではないかと思う。
もちろん、責任を取らない菅政権の人たちがそんなことを独断でする訳がない、ということも十分有り得るのだけれど、そうとでも考えないとどうにもこうにも辻褄が合わない。勿論、官僚がこっそり細工したとも考えられることは考えられるのだけれど、菅政権は、政治主導の名の下に官僚を排除していた人たちの集まりだから、そんなことをしようものなら、たちまちのうちにつるし上げられてしまうから、やはりこっちの線は可能性が低いと思う。
ともあれ、こんな話が、枝野官房長官から漏れること自体、菅首相にとってはダメージ。仮に、憶測通り、菅首相に内緒でメモが作成されていたのだとしても、それを漏らすということは、やはり官邸の指示のミスで事態を悪化させたのではないかと国民に思われることは確実だから。
枝野長官が、それを知っていながら、尚、漏らしたとするならば、これは、形を変えた菅おろしでもあり、裏切りにもなるのではないかと思う。
菅首相がサミットに飛び立っている間にも、与野党内に潜む、震災復興がままならない現状に「そんな自分に腹が立つ!」とばかり、沸き起こる「静かなる衷情」が、菅おろしへと導く「ビッグバン・パンチ」になるかもしれない。


枝野官房長官は24日の記者会見で、東京電力福島第一原子力発電所1号機への海水注入が一時中断したことに関連し、菅首相が海水注入を実際に指示する2時間近く前に、首相が指示を出したとのメモが事前に首相官邸で作成されていたことを明らかにした。
枝野氏によると、メモが作成されたのは、首相や海江田経済産業相らが海水注入の可否を検討していた3月12日午後6時ごろ。枝野氏は「『(海水を)入れられるなら早く入れた方がいい』と(首相が)指示したと受け取られるメモが残っている」と述べた。メモは首相官邸の危機管理センターで関係省庁の担当者らに配布、回覧されたが、誰がメモを作成したかは不明で、官邸の文書管理のあり方が厳しく問われそうだ。
(2011年5月24日21時03分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110524-OYT1T01072.htm?from=tw
この記事へのコメント
mayo5
海水注入は中断していない
ちび・むぎ・みみ・はな
どうだろうか.
日比野庵殿は真面目に種々の可能性を検討して
居られるが, 「どうせでまかせ」としか思えない
者としてはどうでもよろしい. メモなんて幾らでも
偽造できる. 逆に, 時間と発言者の確定できるメモ
があるなら, 会議録がないと言うことはあり得ない.
こんな政権の正当性は認めない.