放射能を放つ母乳 PART3

 
厚生労働省は5月6~16日にかけて、福島、茨城、千葉3県の女性7人の母乳から微量の放射性物質が検出された件についての再調査を行い、すべて検出されなかったと発表した。

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ただし、福島県およびその周辺在住の女性から不安の声が届いているとして、今後も母乳調査の実施を検討しているようだ。

その一方で、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」は4月22日~5月5日にかけて、1都4県の女性41人から母乳の提供を受け、民間の放射線測定会社で分析した結果、5人から微量の放射性物質を検出したことを明らかにしている。

検出された5人のうち、福島県の女性の母乳には1キログラム当たり5・5ベクレルのヨウ素が、福島、茨城、東京の4人からは4・8~10・5ベクレルのセシウムが検出されたそうなのだけれど、厚生労働省が発表している「水道水中の放射性物質検査の結果」によれば、3月17日から24日頃にかけて、ヨウ素131の濃度ピークがあったものの、その後は減少傾向にあり、4月17日以降は、ほぼ1Bq/Kg以下になって落ち着いているし、放射性セシウムも同様に1Bq/Kg以下に落ち着いている。

もちろん、放射性物質を取り込むのは、水道だけとは限らないし、どんな食生活をおくっているかにも左右される。厚生労働省の再検査で不検出になった7人の方にしても、再検査の間に食生活を見直して、放射能汚染された食物を極力避ける生活をしたかもしれないし、「放射能を放つ母乳 PART2」で述べたように、放射性ヨウ素を含む食物を摂取したあと、何時間後の母乳を採取したのかによっても放射性物質濃度は変わる(おおよそ接種後6~10時間後で最大濃度)と思われるから、そのあたりの追跡調査というか、情報がないとなんともいえないところはある。

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それでも、一度、母乳から放射性物質を検出した人が、その後の再調査で不検出になったということは、その後の環境または、生活の変化によって、不検出レベルにまで下がることを意味しているから、その意味では、注意を払うことである程度回避できるものではあると思われる。

ただ、当初検出されていたのはヨウ素131が中心であったのが、今回のは放射性セシウムであることから、放射能汚染も半減期の短いヨウ素131から、半減期の長い放射性セシウムに移行してきている傾向があるとは言える。

セシウムの化学的性質と体内摂取後の挙動は、カリウムと似ていて、体内に入ると、その約10%が速やかに排泄されるけれど、残りの90%は、血液の流れに乗って全身に広がって、カリウムと置き換わって筋肉に蓄積してゆく。やがて、それらも、腎臓を経て体外に排出されるのだけれど、セシウム137の生物学的半減期は約70日で、おおよそ体内には、100日から200日滞留するとされる。

200日といえば、7ヶ月くらいだから、乳児にとってはかなり長い期間だし、母親にとっても自分の母乳に放射性物質が入っているかもしれないとなると、気が気ではないだろう。

事故でセシウム137を摂取してしまった場合、その治療には、放射性セシウム結合剤である、紺青(プルシアンブルー)が使用される。プルシアンブルーは、セシウム等の放射性核種摂取後、早いうちに投与すると消化管からの放射性物質の吸収を抑制すると共に、セシウムの体外排泄を大幅に促進する働きがある。

1987年にブラジルのゴイアニアで発生した放射線事故の際に、セシウム137を取り込んでしまった、患者46人に対して、最長150日間のプルシアンブルー薬「ラディオガルダーゼカプセル」を用いた治療が行われたことがある。

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その治療では、プルシアンブルー投与中と投与中止後のセシウム137の生物学的半減期の調査を行い、投与中の生物学的半減期がおおよそ、25~30日だったのが、投与をやめると40~80日となる結果が得られている。

また、臨床実験として、放射性セシウム、37kBqを経口摂取した健康成人7人に、プルシアンブルー薬を1日3回投与して、放射性セシウムの生物学的半減期の平均値が94日から31日に短縮したことが確認されているから、有効な治療法であることには違いない。

ただ、この薬はセシウムの排出を促すためのものだから、当然のことながら、人体に必要な、カリウムまでも一緒に排出促進してしまうから、治療中には、血液中のカリウム濃度を測定して、必要に応じて補充の必要があるし、また、乳児や小児への使用経験が少ないことから、小児等への安全性は確率されていない。

だから、治療するにしても、小児ではなく、母親側が中心になると思われるけれど、それでも、妊婦への投与には慎重を必要とされているから、簡単に、"ハイ、クスリ"とはいかないようだ。

従って、乳児にほんの僅かでも、母乳から放射性物質を取り込ませたくないのであれば、やはり第一に、なるべく汚染されている食品を避け、定期的な母乳検査を行って、セシウムが含まれていないことを確認することが大切だと思う。




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画像母乳から放射性物質の7人、追加調査では検出せず 2011年5月17日19時23分

 福島、茨城、千葉3県の女性7人の母乳から微量の放射性物質が検出された調査で、厚生労働省は17日、7人の母乳を改めて調べたところ、すべて検出されなかったと発表した。追加の調査は5月6~16日に実施した。厚労省は、福島県やその周辺の県に住む女性から不安の声が届いているとして、今後も母乳調査の実施を検討している。

 最初の調査は、福島県や関東地方に住む女性23人の母乳(4月24、25日採取)を調べた結果、7人から1キロあたり放射性ヨウ素2.2~8.0ベクレル、うち1人は放射性セシウムも2.4ベクレル検出した。

URL:http://www.asahi.com/national/update/0517/TKY201105170457.html?ref=rss



画像母乳から微量の放射性物質、市民団体調査

 市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」は18日、東京都内で記者会見し、1都4県の女性41人から母乳の提供を受け、民間の放射線測定会社で分析した結果、5人から微量の放射性物質を検出したことを明らかにした。

 5人のうち、福島県の女性の母乳には1キログラム当たり5・5ベクレルのヨウ素が含まれていた。福島、茨城、東京の4人からは4・8~10・5ベクレルのセシウムが検出された。5人の母乳の採取時期は4月22日~5月5日。栃木、千葉の母親からは検出されなかった。

 ネットワークは4月にも別の8人の調査結果を公表。その際は、4人から6・4~36・3ベクレルのヨウ素が検出された。「乳児を持つ母親から相談が相次いでいる。自治体は検査が受けられる態勢を整えてほしい」としている。

 厚生労働省は、ヨウ素は100ベクレル、セシウムは200ベクレルを下回れば乳児の健康に影響はないとしている。(共同)

 [2011年5月18日13時5分]

URL:http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20110518-777541.html

この記事へのコメント

  • せみまる

    こういう記事を書いてなお、この記事の書き手は、経済活動の不活発化だの景気後退だのあげく国防だのの理由をかざし、原発稼働停止が電力不足もたらし、だから経済活動の不活発化が生起し、よって、原発は稼働し続けるべきとの「循環論理」(論理が展開しない。非論理的論理。)を示し、さらには、「一番いけないのは、原発が事故を起こしたからって、その中身を検証せずに、丸ごと原発が駄目という発想に国民全体がなってしまうこと。」と浮世離れした危惧を述べつづけるのか。
    2015年08月10日 15:27

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