5月14日の午前10時ごろから始めた浜岡原発5号機の停止作業が、翌15日の正午過ぎに、冷温停止状態となり、先に停止していた4号機と合わせて全面停止した。
冷却系がきちんと生きていれば、1日あれば冷温停止に持って行けるのだから、福島第一の冷却が未だに進んでいないことがどれほど異常なことかよくわかる。逆にいえば、炉心の冷却系を守るための手立てと対策を行うことが如何に大切なのかということを如実に示してる。
一応津波対策が終わる2年後に再開ということになっているけれど、本当に再開できるかどうかは難しいとの声もある。少なくとも、福島第一の事故原因の調査および対策について十分な説明がなされ、それに対する国民的合意がなされないとやはり難しいのではないかと思われる。
個人的には、津波対策をやりました、とか緊急用の電源を増設しました、とかいった、いわゆる「事故を防ぐための対策」をいくら打ったところで、なかなか納得するところまではいかないのではないか。
これまで、政府も中部電力も想定外の地震だとか津波だとか説明してきたから、どんなに「事故を防ぐための対策」を万全にした、と唱えたところで、住民からは、「では、想定外の事態が起こったらどうするのか」という分かり切った質問がでるに決まっている。
だから、極端なことをいえば、今回のように、建屋が爆発しても放射性物質を飛散させない仕組み、または、すみやかに除染または中和できるような体制まで考慮した安全対策が必要なのではないか。
ただ、そんなところまで、現実に出来るのかどうか分からないけれど、少なくとも、事故原因について、天災の部分と人災の部分、そして責任の所在を明確にしたうえで国民に広く公表して、どこまでならリスクを負えるのかという議論と合意形成が必要ではないかと思う。
5月13日の参院予算委員会で、自民党の江藤議員から、正に、どこまで天災で、どこから人災なのかという質問に対して、独立総合研究所の青山繁治参考人は、地震・津波では原子炉建屋の被害は軽く、今回の事故の大半は津波被害後の判断ミス、操作ミスで引き起こした「人災」である、と発言している。
もしも、本当に人災であるのであれば、それを防ぐ対策をすればよく、その上で、更に「想定外」の事態に備えた対策を考えることが必要と思われる。
ただ、どこまで想定したとしても、リスクをゼロにすることはできないし、そのための費用も時間も莫大になる。どうしてもリスクをゼロにしたいのであれば、原発を完全に諦めるしかない。
まぁ、日本全部が1960年以前の生活に戻れるのであれば、それも可能かもしれないけれど、今日、明日で出来る話ではないし、足りない分を火力で補おうとしても、原油価格なんて1960年当時と比べて今は4倍以上にもなっている。
それに化石燃料に全面依存となると、国家安全保障上問題になるし、ただでさえ、震災でダメージを受けているところ、発電供給の低下による生産の減少、ひいては国力低下を招きかねない。
毎日新聞が14、15日に行った、全国世論調査では、今回の浜岡停止要請については、66%が評価するとする一方、浜岡原発以外の原発について「停止する必要はない」が54%あり、「停止すべきだ」は34%となっているから、大勢としては、原発のリスクを減らす努力を今以上に努めて欲しい反面、国力を低下させるような極端なことまでは望んでいないように思われる。
政府は今のところ、エネルギー政策の一環として、原発保有は継続するというスタンスだけれど、であれば尚更、人災の分と天災の部分を切り分け、その分析と今後の対策について、国民に知らせないといけない。
もしも、今回の事故が、青山参考人の発言のように、その大半が人災なのであれば、現状の設備でも稼働できる可能性があり、それを公表することで、地元の理解を得るよすがになるだろう。
これまでの政府の対応のように、後から避難範囲を広げる、1ヶ月以上経って、SPEEDIによる放射性物質拡散予測を公開して、関東の広い範囲が汚染されています、事故後2か月経って、実は1号機はメルトダウンしていました、なんて、隠蔽を繰り返した挙句、後から後から、都合の悪い真実が発表されるような状態では、国民の理解を得られる筈もない。
それでも、今、児童に対する年間被曝限度20mSvが適切なのかどうか問題になっているように、国民が疑問の声を上げたことで、政府が対応を検討始めた事例もあるように、たとえ、無駄だと思えることでも声を上げ、記録に残していくことが大事だと思う。


毎日新聞は14、15両日、全国世論調査を実施した。菅直人首相の要請を受けて、中部電力が受け入れた浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の運転停止について「評価する」が66%に上り、「評価しない」(25%)を大きく上回った。一方で、浜岡原発以外の原発については「停止する必要はない」が54%に上り、「停止すべきだ」は34%にとどまった。内閣支持率は4月の前回調査比5ポイント増の27%にとどまり、不支持率は前回調査と同じ54%と高止まりしている。
日本の電力の3割を原発でまかなってきた日本のエネルギー政策について引き続き聞いたところ、「原発は減らすべきだ」(47%)が前回より6ポイント増えた。「やむを得ない」は、9ポイント減って31%。東京電力福島第1原発事故の深刻な状況が続く中で、原発縮小を求める回答が拡大している。「原発は全て廃止すべきだ」は12%(前回13%)にとどまった。
浜岡原発の運転停止については、内閣支持層の78%、不支持層でも61%が評価した。支持政党別にみると、民主党支持層の79%が評価したほか、自民党支持層でも58%、公明党支持層でも55%がそれぞれ評価し、与野党の支持層を問わず、一定の評価を得ている。
一方、首相の交代時期については「復興対策が一段落するまで」が前回比3ポイント減の50%で、最も多かった。「できるだけ早くやめてほしい」もほぼ横ばいの25%に上り、首相に対する厳しい評価は変わっていない。内閣不支持の理由では、「指導力に期待できないから」が昨年6月の菅内閣発足以来、最多の54%に上った。
福島第1原発の放射性物質に関する政府の発表については「信用している」が26%と、前回比6ポイント減った。「信用していない」は同6ポイント増えて64%と大きく上回った。復興財源を確保するための増税に「賛成」の回答は前回比10ポイント減の48%、「反対」は41%で同8ポイント増え、拮抗(きっこう)している。
被災地に対する政府の支援や復興の取り組みについては「大いに評価する」(4%)、「ある程度評価する」(46%)と合わせて50%が評価。一方、「あまり評価しない」(33%)、「全く評価しない」(11%)と合わせ、評価しないも44%に上り、判断が割れている。
次期衆院選の時期については、「早く行う必要はない」が47%に上り、震災前の2月調査に比べ11ポイント増。「できるだけ早く行うべきだ」は、2月調査時の60%から今回41%にまで下がり、衆院選先送り論が上回った。【野口武則】
◇ ◇
東日本大震災による被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の一部地域は、今回の調査対象に含まれておりません。
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110516k0000m010095000c.html

民主党の岡田克也幹事長は15日、青森県大間町を訪れ、電源開発が東日本大震災後、建設工事を中止した大間原発を視察し、大地震や津波への備えなど安全対策の現状を確認した。岡田氏はその後、青森市内で記者団に、同原発の工事再開や点検のため運転停止中の原発の再稼働に向け、地元と条件を議論すべきだとの考えを示した。
岡田氏は「原発を全部止めると、全国的に電力が足りないという事態になる。再稼働にあたり、どういうことが満たされないといけないか整理した上で、地元の知事や市町村長と協議していく」と表明。同時に、新規建設に関しては「どんどん増やしていくことは、もう一度きちんと安全性の観点から議論をし直していく必要がある」と慎重な対応が必要との考えを強調した。(2011/05/15-20:33)
URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2011051500091
この記事へのコメント
日比野
>安全対策を公に説明すればするほど原子炉危険説の
>ネタにする論理不在の市民グループがいるために,
>原子炉は安全だと言わざるを得ない.
なるほど。この観点は抜けてました。厄介ですね。
白なまず
クマのプータロー
ちび・むぎ・みみ・はな
取り辛くしてしまった第一が反核原理主義だろう.
技術者であれば, 安全対策は幾らでも考える筈だが,
安全対策を公に説明すればするほど原子炉危険説の
ネタにする論理不在の市民グループがいるために,
原子炉は安全だと言わざるを得ない.
第二の人災が「現在の律令制度」だ. 複雑な法律を
張りめぐらして, その監視役をもって権力を奮う
役所にいる素人が技術改善を妨げてきた.
安全保安院の醜態を見よ.
技術立国を目指すのであれば, 技術に対する信頼と
技術者に対する敬意を育てなければならない.