海洋と魚の汚染について

 
福島第一原発による海洋汚染が静かに進行している。

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海に流れ出た放射性物質は、外向きの海流に取り込まれ、外洋へ向かって拡散してゆく流れと、沿岸流に取り込まれ、沿岸伝いに拡散していく流れの2通りがあるだけれども、水産庁は、比較的沿岸部の海域について、関東各県と東北の一部の県を対象に、水産物の放射性物質検査を行っている

その結果によると、4月28日には、宮城県の牡鹿沖のスケトウダラからセシウム137が2.34Bq/Kg、4月19日には神奈川県三浦市のヒジキからヨウ素131が9.48Bq/Kg検出されている。

更に、4月28日には、北海道の根室沖のカラフトマスからセシウムが検出され、5月11日に、御前崎市で採取した茶葉とタマネギ及び浜岡原発周辺海域のシラスから、過去の変動幅を上回る放射性物質を検出したそうだから、これは、もう、低濃度とはいえ、北から南までかなり広域に沿岸部は汚染されていると思われる。

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では、この汚染がいつまで続くのかということなのだけれども、文部科学省では、福島第一の海水が今後どのように拡散しているかのシミュレートを行っていて、それによると、5月一杯は広域で汚染基準値の10%の汚染があるものの、6月末には、ほぼ1%以下に薄まるとのシミュレーション結果を公表している。

ただ、ひとつ注意点として、このシミュレーションは、汚染基準値に対して何%の汚染されているかといった、いわゆる指数で表しているから、実際の汚染度は、それぞれの放射性物質の汚染基準値に対して計算する必要がある。

このシミュレーションでの汚染基準値は、ヨウ素131が40Bq/L、セシウム134が60Bq/L、セシウム137が90Bq/Lとなっているから、たとえば、図の水色の領域は指数0.01から0.1なので、そこの海域は、ヨウ素131なら、40Bq/L×0.01~0.1=0.4~4Bq/Lの汚染度となる。

だけど、このシミュレーションは、東電が公表している5月4日までの海岸の海水放射能濃度をもとに、8Km四方に、海岸の1/100の濃度で海表面に拡散したと仮定してのもので、大気中に出ている放射性物質が海面に落ちる分や、海水の深層に沈殿してゆく分は計算にいれていない。だから、それも含めるともっと汚染が広がっている可能性があることはある。

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さて、海に放射性物質が流れ出た場合、それらはまず、小魚やプランクトンに取り込まれ、その後、それらを食べる中型魚や大型魚に取り込まれてゆく。所謂、生物濃縮と呼ばれるもの。

この生物濃縮の度合は、「濃縮係数」と呼ばれる係数で表され、主な水生生物の濃縮係数は次のとおり。

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面白いのは、イカやタコの濃縮係数が9と低いことで、特にタコには、セシウム137に対する防護効果があるといわれているタウリンが豊富に含まれているから、お寿司を食べるときはタコを大目に食べるとよいかもしれない。(笑)

肝心の魚の濃縮係数は100。だから、たとえば、ある海域が100Bq/Lの濃度で汚染されていた場合、そこにいた魚はその100倍の1万ベクレルで汚染されることになる。

150テラベクレルの衝撃と小女子」のエントリーで、3月31日に北茨城市長浜沖の獲れたコウナゴから放射性ヨウ素が1キログラム当たり4080ベクレル検出されたと述べたけれども、この濃縮係数から逆算すると、このコウナゴがいた海域は当時、4080/100=40.8Bq/Lの濃度で汚染されていたことになる。

では、魚の汚染は今後どのようになってゆくのか。

仮に、これ以上福島第一原発から汚染水が放出されなかったとしても、汚染されたプランクトンや小魚を中型魚が食べて、それをまた大型魚が食べるという食物連鎖を考慮しなくてはならない。

ヨウ素131は半減期が短いので、考慮から外すとして、半減期が長いセシウム137で考えてみる。

室内実験で、魚などがセシウム137を体外に排出する時間、いわゆる生物学的半減期は50日とされている。水産庁は、セシウム137の魚への残留について、「食物連鎖を通じて魚体内で濃縮・蓄積せず、魚体内中に入った放射性物質は、体外に排出される」としているけれど、よくよく考えてみれば、いくつか疑問がある。

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まず、生物学的半減期の50日というのは、セシウム137が半分排出される期間であって、50日経ったら、全部無くなるわけじゃない。だから、最初の汚染度にもよるけれど、最初の汚染度の10%以下にまでなる期間でみると、半分の半分の半分のそのまた半分の50日×4回=200日経って、ようやく、6.25%まで少なくなる。

この200日は決して短い期間じゃない。

それに、魚の食物連鎖を考えると、200日も他の魚に食べられずに生き残って、その後で漁師の網にかかるという、"幸運に恵まれた"魚がそんなに多くいるとも思えない。

50日経たずに、他の魚に食べられたり、漁師の網にかかる魚だって多くいる筈。それに他の魚に食べられてしまった場合は、その魚からセシウム137が排出されるまで、また200日待たなくちゃいけない。まるで、トランプの"ババ抜き"みたいに、セシウム137という"ババ"が次から次へと捕食者に移動して、いつまで経っても魚から放射性物質がなくならない可能性の方が高いのではないかと思う。

海洋生物環境研究所は、1987年から1993年にかけて、チェルノブイリ事故による福島海域の表層水への影響と、福島海域で獲れたスズキと宮城・福島海域で獲れたマダラについて、セシウム137の影響を調査したのだけれど、それによると、海水(表層水)でセシウム137が最大濃度で検出されたのは、事故後1ヶ月後、スズキは半年後、マダラは約9ヶ月後となっていて、スズキやマダラからセシウム137の影響が見られなくなるまでに、1年半から2年半かかっている。

だから、海産物への放射性物質の影響が出てくるのは、むしろこれからで、今年の7月~9月くらいにサンマとかスズキなどの中型魚が汚染されて、その後に、マグロとかカツオとかの大型魚に汚染が移っていくものと思われる。

しばらくは、お寿司を楽しむにも注意が必要になるかもしれない。(タコはいいかもれないけれど)

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画像根室沖カラフトマスからセシウム検出 基準値は下回る(04/28 10:05)

 道は26日、日本200カイリ内で操業中の小型サケ・マス漁で水揚げされたカラフトマスの放射能検査の結果、放射性ヨウ素は不検出、放射性セシウムは基準値を大幅に下回り「安全が確認された」と発表した。

 検出されたのはセシウム134が1キログラム当たり4・39ベクレル、セシウム137が同4・91ベクレル。合わせて同9・3ベクレルで、食品衛生法の暫定基準値500ベクレルの50分の1以下だった。

 検体は歯舞漁協所属の漁船が22日、根室市花咲港の南約45キロの太平洋で漁獲した5匹。18日に公表されたシロザケの検査では放射性ヨウ素は不検出、セシウム137は同0・45ベクレルだった。

 道によると文部科学省の委託検査では2007年以降、道周辺で採取したサケに含まれるセシウム137は同0・1ベクレル以下で推移している。

 道水産林務部は「今回は通常よりレベルが高いが、問題のない数値。福島第1原発事故との関連は分からない」としている。

URL:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/agriculture/289078.html



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 静岡県は11日、御前崎市で採取した茶葉とタマネギ、浜岡原発周辺海域のシラスから、過去の変動幅を上回る放射性物質を検出したと発表した。福島第1原発からの放射性物質の影響と考えられ、県はいずれも「健康への影響を心配するレベルではない」としている。

 御前崎市の茶葉1キロからは、通常はほとんど検出されないセシウム134が41・3ベクレル、セシウム137が41・6ベクレル、ヨウ素131が1・51ベクレル検出された。国は茶葉について放射性物質の暫定基準値を定めていないため、野菜類の基準値を準用して「問題ない」と判断した。

 しかし県は「茶葉をそのまま食用にすることはほとんどない」として、茶葉を湯に入れて抽出した飲用茶で追加調査を実施。菊川市内と磐田市内で採取した茶葉を使った飲用茶で検査したところ、いずれも微量の放射性ヨウ素と放射性セシウムを検出した。県は、飲料水の暫定基準値と比較しても「安心して摂取できるレベル」としている。

 しかし、茶葉は本県の特産品であり輸出品でもあることから、県は今月中にも県東部と中部で採取した茶葉で追加調査を行い、放射性物質の検出状況を確認する。

URL:http://sankei.jp.msn.com/region/news/110511/szk11051118450013-n1.htm

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    放射能が危険だと言えば確かに危機は広がって
    いるが, 人間はそんなに簡単に影響を受けない.
    それなら,是非とも, 支那や露国の実験や潜水艦
    処理でどれほどの放射能が海洋に投棄されて
    きたか知りたいもの. 分からないから危険性は
    指摘されてこなかったが, 分かる危機の方が
    危なくない.
    2015年08月10日 15:27

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