
浜岡原発関連の続きです。
政府から停止の「要請」を受けた中部電力は、5月7日午後に対応を協議したものの、同日中の結論は出せず、8日以降に持越しになったようだ。
もちろん、その理由は、夏の電力不足への懸念は勿論のこと、燃料調達コストの大幅な上昇や、地元自治体や下請け業者への影響、雇用問題など、地元や顧客などへの影響が大きいため。
要請をうけて、中部電力が慌てて対応を協議して、しかも結論が出せないのだから、本当に思い付きで要請したのだと思わざるを得ない。政府が丸投げ姿勢は、こうしたところに現れる。
それでも、菅首相による浜岡原発停止要請について、賛否様々な意見が出ているようだけれど、官邸スタッフの中には、菅首相にしては、今回はじめてまともな事をやったという声があるという。
そして、世論全体としてみても、その後の経済的影響を考えず、また、いつもの根回しもなにもしない行き当たりばったりのやり方に対して、批判はあるものの、停止すること自体に関しては、是とする意見が多いように思われる。
ただ、ひとつ気になるのは、浜岡原発を完全停止に持ち込めたとしても、それで即安全とは言い切れないはずなのに、そのあたりの議論が少なく、止めたからもう大丈夫だ的な声になりかねないこと。
どういうことかというと、炉心を止めても燃料棒は崩壊熱で高温のまま維持されるから、冷却水その他で冷やし続けなくてはならず、再処理まで年単位での冷却を必要とする。
だから、仮に明日、浜岡の4、5号機を止めたとしても、燃料棒そのものは、しばらくは炉心の中にとどまり、その後、取り出されて、燃料プールに保管される。
そこに大きな地震で、燃料プールが破損したり、津波による浸水で、保管している燃料棒が流れ出したりしないのか。
事実、福島第一原発でも、3月15日に、運転停止していた4号機の燃料プールで爆発が起きている。爆発の原因ははっきりとはしていないのだけれど、プールの水位が低下し燃料が露出して過熱。そこから水素が発生し爆発した可能性があるとも言われている。
だから、浜岡でも同じことが起こらないとも限らない。事実、4月18日、報道番組、NEWSZEROに出演した枝野官房長官は、「原子炉をとめても止めなくても危険」と発言している。もちろん、危険の程度に違いはあるかもしれないけれど、少なくとも、危険がゼロにはならないことは確か。
今のところ、福島第一の事故の直接原因は地震ではなくて、その後の津波によって電源系が流されたからだ、ということになっているけれど、実は、地震の段階ですでに壊れていたのではないか、という説もある。
これは、4月8日のNHKの放送によると、震災当日、地震と津波によって、1号機から3号機まで、すべての電源が失われたのだけれど、2号機、3号機は、非常用の装置で原子炉を冷やし、水の高さが4メートル前後に維持されていたのに対して、1号機は、地震発生から7時間近くたった午後9時半に、既に、原子炉の中で核燃料が露出するまでの水の高さが残り45センチとなり、通常の10分の1程度に減っていたそうだ。
ここで、2号機、3号機の水位を保っていた非常用の装置というのは何かについて、明確に示されてはいないのだけれど、全ての電源が失われても、なお作動する非常用の装置というところから、おそらく、原子炉隔離時冷却系(RCIC:Reactor Core Isolation Cooling system)と呼ばれる、炉心冷却装置ではないかと思われる。
RCICは、発電所内の電源と非常用ディーゼル発電機による電源すべてが動かなくなっても対応できるようにしているもので、これは、原子炉が停止した後でも、燃料棒から崩壊熱が出ることを利用して、その熱で発生する蒸気で原子炉のタービンを回すことで自家発電を行う。それによって、ポンプを駆動して、炉心の外側をとりまくドーナツ状の冷却装置からシャワーのように水を吹きかけて炉心を冷却する装置のこと。
確かにこれなら、電源がなくても動く筈なのだけれど、2、3号機はそれが動いて、1号機が働かなかったということは、1号機にはこのRCICが設置されていなかったか、ある場合は、RCICのポンプが壊れてしまったか、又は、RCIC循環系の配管が壊れてしまったかなどが考えられる。
もちろん、RCICのポンプや配管は、地震ではなくて、津波でやられた可能性だってあるのだけれど、実際のところ何が原因なのかははっきりしない。
ただ、3月16日の読売新聞で、1号機棟内にいた男性作業員の証言が報道されているのだけれど、気になる証言がある。
この作業員は、地震当日、稼働していた1号機の建物内で、同僚数人と電機関係の作業をしていたのだけれど、地震後、建物内の電気が消え、非常灯に切り替わった後、天井に敷設されていた金属製の配管の継ぎ目が激しい揺れでずれ、水が勢いよく流れてきたのだとコメントしている。
この"天井に敷設されていた金属製の配管"が一体何なのか分からないけれど、少なくとも地震で配管の継ぎ目から水が漏れるのなら、同じように、RCIC系の配管から冷却水が漏れたっておかしくない。
もしも、RCIC系の配管が破れるなりなんなりして、冷却水が漏れていたとするならば、1号機だけ急速に炉内の水位が下がったとしても辻褄は合う。
そうしてみると、穿った見方をすれば、4月16日にBS朝日に出演した細野補佐官が、事故発生直後の状況について「どん底までいった。ほとんど制御不能のところまでいった」と発言したことなども、それを裏打ちしていないか。
兎も角も、政府がやるべきことは、原子力発電所と国民の安全を確保することであって、停止はその一手段にしか過ぎない。原発を止めるのは目的じゃない。安全確保が目的。それがすり替えられてしまっていないか。
だから、浜岡を止めます、というのはいいけれど、実際どう止めて、その後どう安全を確保してゆくのかの見取り図を示さなくてはいけない筈なのだけれど、それを含めて中部電力に「要請」して、自分達はしらんぷりしている。
国民の安全を、中部電力に丸投げして、政府は何もしないのであれば、税金は中部電力に払うべきだろう。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110408/t10015172911000.html
東京電力、福島第一原子力発電所の事故で、1号機では、先月11日の地震当日の夜までに原子炉の水が核燃料が露出する直前まで減り、安全のために最も大切な「冷やす機能」を十分に保てなかったことが、NHKが入手した資料で分かりました。専門家は「その後さらに水が減り、核燃料が露出したことで、地震の翌日という早い段階で水素爆発が起きたのではないか」と指摘しています。
NHKが入手した資料には、地震当日の先月11日に福島第一原発の1号機から3号機で測定された原子炉の「水の高さ」や「圧力」などの値が示されていますが、東京電力などは、これまで地震の翌日以降の値しか公表してきませんでした。資料によりますと、1号機では、地震発生から7時間近くたった午後9時半に、原子炉の中で核燃料が露出するまでの水の高さが残り45センチとなり、通常の10分の1程度に減っていたことが分かりました。1号機から3号機では、地震と津波によってすべての電源が失われ、2号機と3号機では非常用の装置で原子炉を冷やし、水の高さが4メートル前後に維持されていました。これに対し1号機では、地震当日の夜までに、すでに安全のために最も大切な「冷やす機能」を十分に保てなかったことになります。また核燃料が水から露出するまで、2号機と3号機では、地震から1日半から3日程度かかっているのに対し、1号機では18時間ほどしかありませんでした。東京大学の関村直人教授は「1号機では、『冷やす機能』が維持できなくなったあと、さらに水が減り核燃料が露出したことで、地震の翌日という早い段階で水素爆発が起きたのではないか」と指摘しています。一方、東京電力は「調査はこれからで詳しいことは分からない」と話しています。
URL:http://www.asyura2.com/11/lunchbreak45/msg/695.html

強い横揺れで天井のパイプがずれ、大量の水が漏れてきた――。
東日本巨大地震が発生した11日、東京電力福島第一原子力発電所で、稼働中だった1号機棟内にいた男性作業員の証言から、建物内が激しく損壊した様子が初めて明らかになった。
この作業員は、同原発の整備などを請け負う会社に勤務。昨夏からたびたび同原発で作業しており、地震があった11日は、稼働していた1号機の建物内のうち、放射能汚染の恐れがなく防護服を着用する必要がないエリアで、同僚数人と電機関係の作業をしていた。
「立っていられないほどの強い揺れ。横向きに振り回されている感じだった」。地震発生の午後2時46分。上階で作業用クレーンや照明などの機器がガチャンガチャンと激しくぶつかり合う音も聞こえた。「これは普通じゃない揺れだと直感した」
建物内の電気が消え、非常灯に切り替わった。「その場を動かないように」という指示が聞こえたが、天井に敷設されていた金属製の配管の継ぎ目が激しい揺れでずれ、水が勢いよく流れてきた。「これはやばい水かもしれない。逃げよう」。誰かが言うのと同時に、同僚と出口がある1階に向けて階段を駆け降りた。
建物内で漏水を発見したら、手で触ったりせず必ず報告するのがルール。だが、この時は余震が続いており、放射能に汚染されているかもしれない水の怖さより、このまま原子炉といっしょに、ここに閉じこめられてしまうのでは、という恐怖の方が強かった。
1階は作業員でごった返していた。外に出るには、作業服を着替え、被曝(ひばく)量のチェックを受けなければならないが、測定する機器は一つだけ。細い廊下は長い行列ができていた。
激しい余震はその後もさらに続き、「早くしろ」とあちこちで怒声が上がった。被曝はしていなかったが、「水素爆発した後の1号機の建物の映像をテレビで見た。あそこに閉じ込められていたかもしれないと思うと今でも足がすくむ」。(影本菜穂子)
(2011年3月16日14時37分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110316-OYT1T00550.htm
この記事へのコメント
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mayo5
国が止めたらと言ったのだから、何かあったら中部電力が全部賠償しなさい、「国は面倒見ないよ」と脅しをかけているのと同じ。原子力は国策ではないのか。ビッグサイエンスは企業だけでは無理なんだが。
せみまる
GT.
(むろん取る意思もないんでしょうが)
普通に考えれば、
今回の震災を受けて技術的な観点から安全対策基準の強化を行い、
それに届いていない発電所について改善までの計画を出させ、
それからとめるかどうかを議論するものでしょう。
こうすれば、これに従って停止しても
世間的には納得できるものになるんでしょうに。
このまま止めると、中部電力管内の夏場の電力不足懸念と、
少なからぬ雇用機会喪失(どの程度かはわかりませんが)と、
利益喪失からくる株主訴訟のリスクが、取締役会にかかってきます。
総理の独り言を真に受けて(法的根拠がないのはつぶやきと同じです)、
本当に2000億以上利益が吹っ飛ぶ(しかも半期で?)のであれば、
その金額は、15人いる取締役(社外も含む)で割り勘になるわけです。
政府からの補償を引き出すために、少しは踏ん張っておかない限り、
停止の判断はできないでしょう。
ためしに、
どういう災害が起こった場合、どういうリスクがあるのかどうか、
政府に質問してみたら、どうせ定量的には答えられないんでしょう。
「原
とおる
昨年、尖閣諸島で中国漁船の船長を逮捕した後、那覇地検の判断で釈放した時のように、今回も、法的手続き無しに、首相・内閣の責任を回避して中部電力に責任を転嫁するのは、権限と責任ある国のトップとして、いかがなものか。
グー
浜岡原発の原子炉稼働を停止すること自体は賛否両論が出てくるでしょうね。ただ、自らの発言に責任が及ばぬように伏線を張っているあたりは、流石そもそも人間に問題ありと各所から言われている菅総理。「自分の立場が一番」の政治は揺るぎませんねー。
ちび・むぎ・みみ・はな
> RCIC系の配管から冷却水が漏れたっておかしくない。
恐くない部分の漏れと恐い部分の漏れとでは設計基準
が異なるから, この部分は無理があると思う.
浜岡発電所の場合, 確かに危険なのは本当なので
皆は目を奪われているが,
「真の危険物は首相官邸にいる役立たずだ.」
安全性は重要だが, 福島でも良く分かったように,
原子炉はいきなり爆発するわけではなく, 住民が
避難する時間は十分にあるし, 原子炉が破壊される
ほどの津波で周辺地域が住める状態である筈がない.
いずれにしても避難は必要になろう.
それと, 復興のためには国民経済の余力が必要
であることも忘れてはならない. 切り詰めれば
何とかなるとか言っているのは「バカ」としか
言い様がない.
「官邸の危険(不要)物を早急に除去すべきだろう.」