SPEEDI公開について

  
「データを出さなかったことで、国民が被曝する状況を隠していたとか、国民の健康を犠牲にしたということはない」
細野豪志首相補佐官

画像


5月4日、テレビ朝日の番組に出演した細野首相補佐官はSPEEDIのデータ公開について「早い段階で公表すべきだった」と公表の遅れを認めた。

放出量などのデータが乏しく、信頼性のある結果となっていなかった、というのが、その理由だそうだけれど、もともと、SPEEDIとは「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」なのだから、緊急時には、迅速に予測値を公表できなければ意味がない。

放出量が乏しくても、風向きの予測には無関係なのだから、少なくとも、どの方向に放射性物質が飛ぶ可能性がある、とだけでも公表しておけば、対象住民もそれに備えて、屋内退避なり何なりできた筈。

細野補佐官は、「国民の健康を犠牲にしたということはない」と言っているけれど、昨日のエントリーで示したように、4月6日の段階で、1歳児を対象にした、内部被曝臓器等価線量の積算線量が100mSvを超えてしまっているところがある。これで、「国民の健康を犠牲にはしなかった」というのなら、これに対してきちんと説明するべきだし、対象住民に対しても避難させるなり適切な対応をすべきだろう。

細野補佐官は、4月30日の、福島原発事故対策統合本部の共同記者会見で、「SPEEDIでの予測から、すでに実測へと移行している」として、SPEEDIを公開してもその意味は薄いと言っているけれど、4月10日の原子力安全委員会の会議で、SPEEDIの予測に関する評価報告があり、実測のモニタリング結果とよく一致していると報告されている。

だから、この時点で高い線量が検出されている地域。すなわち、一歳児に対する内部被曝等価線量で100mSvを超えている地域である、飯舘村、浪江町、葛尾村、川俣町と南相馬市の一部地域には、避難指示が出されていなければならなかった筈。ちっとも国民の健康を守っていない。

とはいえ、意味を成さない状態になってからの公表であっても、実測モニタリングと一致しているのであれば、今後もSPEEDIの予測値は公表すべき。なぜなら、定点観測によるモニタリング結果のほとんどは一覧表でぱっと出されるだけで、どの地域に、積算でどれくらいの線量になっているか分かりにくいからということと、福島第一原発が冷温停止状態になっていない以上、何らかの原因で、また爆発的に放射性物質が放出されないとも限らないから。

もしも、そんなことがあったとして、SPEEDIの予測結果を即時公開して、必要な避難指示をしないのであれば、民主党政権は「国民の被曝状況を隠し、国民の健康を犠牲にした」ということになる。

細野補佐官はSPEEDIのデータ公開を早い段階ですべきだった、と言っているけれど、もしも、小佐古氏が、「SPEEDIを手順通りに運用していない」と、名指しで非難しなければ、果たして、公表したのかどうか。

もし、SPEEDIの公開が小佐古氏の辞任会見に端を発したのだとするならば、それだけでも小佐古氏の辞任は意味があったことになる。



それに、細野補佐官は、福島県内の学校の屋外活動の線量基準である、年間20ミリシーベルトについて、「原発が平常時に戻れば、基準の変更はあり得る」と見直しを示唆する発言をした。

尤も、これは、ICRPの放射線防護の考え方に沿ったもので、むしろ当たり前に属することなのだけれど、これについて、ICRPの文書(ICRP Publ. 111 日本語版・JRIA暫定翻訳版)によれば、非常事態収束後の線量について、次のように勧告されている。該当部分を抜粋引用する。

48項:汚染レベルが持続可能な人間活動を妨げるほど高くはない場合、当局は人々に汚染地域を放棄されるのではなく、人々が汚染地域に住み続けることができるようにするために必要なすべての防護対策を実施しようとするであろう。これらを考慮すれば、適切な参考レベルは、委員会によって提案された1~20mSvの範囲で選ぶべきであることを示唆している。

49項:参考レベルの値を決定するプロセスは、重要なすべての利害関係者の見解を適切に取り入れるように注意深く均衡をとるべきである。

50項:汚染地域内に居住する人々の防護の最適化のための参考レベルは、この被曝状況区分に対処するためにPublication 103(ICRP,2007)で勧告された1~20mSvの範囲の下方部分から選定すべきであることを勧告する。過去の経験により、長期の事故後状況における最適化プロセスを制約するために用いられる代表的な値は1mSv/年であることが示されている。

つまり、今回の小中学校の野外活動線量基準でいえば、原発事故収束後は、「汚染地域で学校活動が出来るために必要なすべての防護対策を当局は実施しようすべきで、それは1~20mSvの範囲で選ぶべき」、「値を決めるときには当事者の意見を適切に取り入れるべき」、「値は1~20mSvの下方から選ぶべきだが、事故が長期に渡った場合の代表的な値は1mSv/年である」とICRPは勧告している。

要するに、ICRPの勧告に従えば、政府は"学校活動が出来るために必要なすべての防護対策"をして、尚且つ"地域住民の意見"をよく聞いた上で、"1~20mSvの下方から選べ"、と言っている。

まだ、事態が収束していないから、なんとも言えないけれど、少なくとも原発が平常時に戻ったあと、これらのことを実施なかったら、政府はICRPの勧告を無視することになる。

いずれにせよ、今後の政府の動きを見ておく必要はあるだろう。


画像 ←人気ブログランキングへ


画像小佐古氏の発言に「SPEEDIでの予測から、すでに実測へと移行している」と細野豪志氏 NCN 4月30日(土)23時37分配信

 細野豪志統合本部事務局長は2011年4月30日18時頃、福島原子力発電所事故対策統合本部の共同記者会見で、29日に内閣官房参与を辞任する意向を明らかにした小佐古敏荘東京大学大学院教授が、「(放射能影響予測のデータを)関東・東北全域で隠さず公開すべき」と発言したとされる新聞報道について、「いま政府が持っているデータはすべて公開した」と語った。

 共同記者会見は細野統合本部事務局長のほか、原子力安全・保安院、原子力安全委員会、文部科学省、東京電力などが出席。ニコニコ動画の七尾功記者から「新聞報道によれば、(内閣官房参与を辞任する意向を明らかにした)小佐古氏が、『SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)が法令に定められている手順通りに運用されていない。甲状腺被ばく、とりわけ小児については(福島原発第1原発から半径)20、30キロのみならず、関東・東北全域で隠さず迅速に数字を公開すべき』と発言されたようだが、これについて見解を聞きたい」との質問がなされると、細野統合本部事務局長は「いま政府が持っているSPEEDIに関するデータは、すべて公開した。その(半径30キロ圏の)外側について、有意の情報があるとは承知していない」と語った。

 続いて、原子力安全委員会の加藤重治内閣府審議官が、「SPEEDIで計算できる拡散予測の範囲は一辺92キロまで。したがって、公開しているものがその最大。(福島第1原子力)発電所を中心とした92キロの正方形の範囲」であると説明した。だが、七尾記者が「(計測する)基点をずらせば、関東や東北全域を計測できるのでは」と問うと、同局の担当者は、「技術的に可能かどうかわからない」とし、現在の計測範囲で「防護措置が適切であることを示せている」との考えを示した。

 細野統合本部事務局長はまた、「小佐古参与からは確かに、SPEEDI(のデータ)を早く公開するようにという話が、再三あった。ただ、(放射性物質の)放出源が明確にならないなか、公開するに足る情報にならないという判断が関係者のなかにあり、なかなか出す状況にならなかった」ことを明らかにした。

 その上で細野事務局長は、「いま『SPEEDIがどうか』というと、おそらく小佐古先生もわかっておられると思うが、すでに実測データがでているので、そちらのほうがより実態そのものを表している。SPEEDIが本来持つべき機能は『予測』で、十分なモニタリングができない時期にそれなりの効果があった。その時期に機能しなかったことにおいて、小佐古先生が厳しく評価をされているのは当然だ。だが、今からこういった公開をすることにどれくらい意味があるのかということについては、率直に言って疑問があるというか、それほど大きな効果のある情報が期待できない」と語った。

URL:http://news.nicovideo.jp/watch/nw58257



画像放射性物質拡散予測データ「早い段階で公表すべきだった」細野補佐官 産経新聞 5月4日(水)14時24分配信

 細野豪志首相補佐官は4日午前のテレビ朝日の番組で、放射性物質の拡散を予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)の未公開データについて「早い段階で公表すべきだった」と述べ、公表の遅れを認めた。ただ、「データを出さなかったことで、国民が被曝(ひばく)する状況を隠していたとか、国民の健康を犠牲にしたということはない」とも述べた。

 SPEEDIは、事故直後から毎時間拡散状況を1キロ四方ごとに計算しているが、内閣府の原子力安全委員会は「放出量などのデータが乏しく、信頼性のある結果となっていない」として、最近まで放射性物質の拡散予測図を公表していなかった。

 細野氏はまた、東電福島第1原発事故に関連し、福島県内にある学校の屋外活動を制限する放射線量基準を年間20ミリシーベルトに設定したことに関して「原発が平常時に戻れば、基準の変更はあり得る」と述べた。

URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110504-00000515-san-pol

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    そりゃ危険性が増えると言うことで線量の限界を
    決めているのだから, 越えたからと言って被害が
    出る訳ではないが, 何だかな~~.

    細野氏か. たしか, 小沢氏と北京詣でをして,
    ブログに北京の汚い空の下での希望を語っていた
    のではなかったかな.

    嘘付党の連中は何で申し訳ありませんでしたの
    一言が言えないのか. 政治家が各々の形で責任を
    きちっととってきた自民党の時代が随分と昔に
    思える.

    昔は良かったな. さんざ悪口を言っても世の中は
    きちんと動いていたからな. 議論もする価値があった.

    昔は良かったな~~.
    2015年08月10日 16:46

この記事へのトラックバック