震災に関する対話

 
今年の初め、特別対談企画として、筆者の知人であるK氏との対談をエントリーしましたけれども、GWに入って、彼と今回の震災について少し話す機会がありましたので、その内容の一部をエントリーしてみたいと思います。

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日比野 こんにちは。震災から1ヶ月たって、まだ落ち着いてないですけど、そちらはどうですか?

K氏  こっちは平気だよ。あなたこそ大丈夫だったかい?

日比野 ええ、なんとか…。ようやく計画停電がなくなりましたけど、夏にむけて電力不足が指摘されてます。私は、風力、水力、海洋温度差などの自然エネルギーを強化していく必要があると思うのですけど、Kさんは電力の問題はどう考えますか?

K氏  まぁ、クリーンエネルギーもいいかもしれないけども、どれにしたって、今年の夏には間に合わないよ。需要と供給のバランスが取れないと停電するしかないわな。だから、当面やるべきは、消費電力を抑える方策と、電流供給量を増やす方策の合わせ技しかないね。スマートグリッドはもう少し時間がかかるだろうけども、「スマート節電」なら間に合うかもしれないね。

日比野 ああ、電力消費量を「見える化」して最適化するというものでしたっけ?

K氏  そうだね。もういくつかの企業でサービスを始めてる筈だよ。要はピーク電力を抑えればいいわけだからね。それに、この機会に家庭も含めて、全体の電力消費のベースを一段省エネにしたいところだよね。たとえば、街中は節電対策で照明を落としたりしてるけども、あれは、点ける電灯を減らしたり、看板のネオンをつけないようにしてるよね。あれをLEDのようにもっと省電力タイプのものに変える。住宅の電球や、家電なんかも省エネタイプに変えてしまう。麻生がやったエコポイントあるだろう。あれを電球とか省エネ家電に適用するんだよ。LED電球なんかは普通のやつの10倍くらい値段がしたかと思うけども、そんなに高いと中々買わないわな。だけど、それをエコポイントで7割とか8割とか戻ってくるってなったら、皆買うようになるよ。いくら自粛ムードといったって、省エネのための消費だったら、後ろめたいことはないはずさ。そうすれば消費も伸びるしね。あとは、一番電力の食う企業には国から補助を出して自家発電装置を・・・まぁ、ディーゼル発電くらいしかないかもしらんけども、それを設置して、ピーク電力に対応できるようにする。とくに生産ラインの電気は止めちゃいけないよ。ああいうのは、ちょっとした温度変化だけでも駄目になっちゃうのがあるからね。あとは、もうやり始めてると思うけども、停止していた火力発電や水力発電を立ち上げる、他から電力を回してもらう。他にもいろいろやり方はあると思うけども、この夏となると、やれるのはそんなとこだろうな。まあでも、供給を増やしてくれるのが経済には一番いいんだけどね。

日比野 被災者の方々の生活支援等々まったく進んでませんけど、これは?

K氏  衣食住でいえば…、う~ん。被災地によってはどれも不足してると思うよ。まぁ食だけは、炊き出しやなんかでなんとかなってるかもしれないけども、いつまでも体育館暮らしはできないよ。あんなとこに1ヶ月も居てごらんよ、まず精神的に参ってしまうし、体の調子だっておかしくなるわな。だから、仮設住宅でも、疎開先でもちゃんと便宜を図って、被災者をまず落ち着かせないといけない。あれだけの災害にあって、生き延びたんだよ。「皆さん、よく生き残ってくださった。政府として、出来るだけことをします。いつ頃までには皆さんが元の町に帰れるようにします。十分な保障をお約束します」ってね、震災からもう1ヶ月半も経ってるんだから、それくらいのこといえなきゃ駄目さ。

日比野 菅さんは、"頑張ろう"だけですからねぇ・・・

K氏  頑張るったって、今の被災者にいうのは酷だよ。頑張るってのは、目標があって始めて出来るものであってね、避難所生活がいつまで続くのか分からない、今後の生活の見通しも立たない、この先どうなるかわからない、そんな状態なのに"頑張れ"ってのは激励でもなんでもないよ。被災者にいう言葉じゃないな。

日比野 被災者の生活支援を急がなくちゃいけませんね。

K氏  うん、まぁ、避難所に暮らしてる人だって、外から見てる分には、可哀想に見えるかもしれんけども、別に彼らは障害を持ってるわけでも、不治の病に冒されているわけでも何でもないんだ。手に職を持った立派な人達なんだよ。だから、彼らにいち早く社会復帰して貰うことを考えなくっちゃいけないよ。あそこには、漁師もいれば、農家の人だっているはずだよね。まぁ、田んぼは多少塩水に浸かったかもしれんけども、畑や海が無くなったわけじゃないんだ。たとえばだね、全国から漁船を少しずつ提供して貰って、被災した漁師に貸して漁に出て貰う。獲れた魚は築地にでもどこでも持って行って直販すればいい。いまでも、福島県産の野菜を応援しようとかキャンペーンとかしてるんだろう。おんなじことをすればいいんだ。まぁ、原発周辺は放射能汚染で敬遠されるだろうから、岩手あたりから北の海でないと難しいかもしれないけどねぇ…。あとは畑や田んぼでもね、国が放射能汚染されてない休耕地を買い上げて、被災者の中から希望者を募って、そいつを貸せばいいと思うんだ。「町から離れてしまうのは申し訳ない、今はここの土地しか用意できませんけど、ここで是非野菜を作ってくれませんか」ってね、お願いするんだよ。福島の原発近くの・・・飯館村だっけ、作付け禁止で、計画避難だっけかなってたよね。折角津波被害もなくて、種まきできるかと思っていたのが、突然作付禁止で避難しろってのは、ショックが大きいよ。あそこの人達にこそね、農作業できる場所を用意しなくっちゃいけないと思うな。

日比野 土壌改良という手もありますね、向日葵とか、菜の花とか・・・

K氏  まぁ、そうした方法もあるかもしれないけども、あまりにも汚染が酷ければ、元に戻るまでに時間がかかるよ。向日葵とか菜の花とか、放射能を吸収するとか言われてるようだけども、向日葵や菜の花だったら、咲いてるのは、春とか夏とかだけだな。1年のうち半分しか浄化してくれないわけだ。それを何サイクルやれば、使えるレベルになるかは分かんないけども、何百十万テラベクレルだか垂れ流してしまったんだろう。1年や2年で元通りになるとは思えないな。菅じゃないけども、それこそ20年かかるかもしれないよ。

日比野 20年はちょっと・・・。菅さんはあの発言は言ってないことになってますけど、あの発言自身は随分批判されてます。なんとかできないものですかね。

K氏  なんといってもまずは、原発からの排出を止めなくちゃ始まらない。だけど、それまで何もしないわけにもいかないから、やれる限りはやらなくちゃいけないよね。まぁ、土を入れ替えるってのもあるかもしれないけども、よそから全然違う土を持ってきたって、今までどおり野菜が採れるとは限らないよ。やっぱり相性があるからね。まぁ、今なら、郡山の学校がやったみたいに、表土だけ何センチか削って、削ったとこにシートか何かを被せて放射能汚染されないようにする。そうしておけば、来年には使えるかもしれない。だけどあんまりモタモタしてると、地中奥深くやられてそれも駄目になる。それにもっと厄介なのは、酪農だよ。早いうちに汚染されてない土地に移すなりなんなりしとかないと、口蹄疫みたいに全部駄目になるぞ。いや、もう危ないのかな。

日比野 それを考えると、随分と政府の動きは鈍いですね。いくら統治能力のない民主党とはいえ、ちょっと…。

K氏  今のまんまだと、民主党の大半は"要らない子"だね。この間、民主党の議員と秘書を被災地のボランティアに派遣したみたいだけども、民主党議員だと分からない服装でやってたんだろう。要するに、議員である必要は全くないってことさ。それなら被災地の知事や市長と交替したほうがいいよ。被災地の状況を知っている知事らと官僚で相談して対策を練って、国会で議論したほうがよっぽど復興は早いはずだよ。

日比野 今国会でも震災対策の法案は殆ど通してないですね。村山政権でも一月に40本くらい法案を通してました。ようやく1次補正が通りそうですけど。

K氏  その1次補正にしたって、災害復旧がメインで、産業界への手当をつけてるわけじゃないからね。そこも早くやらないと駄目だな。このままだと産業界は壊滅的な被害を受けるよ。今でも大打撃なのに、放射能という輸出リスクを抱えたんじゃどうしようもない。早いとこ汚染対策をやらないと生産拠点はみんな海外に行ってしまうよ。

日比野 確かに、報道なんかを見ていると、徐々に海外に生産拠点を移すなんて話も出きています。サントリーが中国でビールを作るとか…。

K氏  まぁ、今は、被災者の手当と企業を潰さないような手当をちゃんとしないといけないけども、本当はね、ここまで震災でやられてしまったら、逆に日本を練り直すチャンスでもあるんだな。今なら、あなたがいうようにクリーンエネルギーに力を入れるとか大胆な投資だってできるし、日本の状況を見れば、世界もあまり無茶な国際貢献は言いにくいだろうからね。今だって、放射能のアレで輸出もしにくくなっている。結果として、半分鎖国に近いような状態になってきてるよね。でも、逆にいえば、これからの日本を考える時間が貰えたとも言えるんだね。

日比野 そのためには、国民が本当に日本のことを考えないといけないということですね。

K氏  そうだね。日本はもう一度、国造りから始める必要があるかもしれないね。






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この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    > 結果として、半分鎖国に近いような状態になってきて
    > るよね。でも、逆にいえば、これからの日本を考える
    > 時間が貰えたとも言えるんだね。

    国内の需要と開発と保守点検をする良い機会.
    少なくとも土木関係から国内産業を立ち上げる.
    TPP だなんて言って国を危うくしようとしている
    経団連の輩は無視!
    2015年08月10日 16:46

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