4月21日の「放射能を放つ母乳」のエントリーの続編です。
4月30日、厚生労働省は福島など1都4県で乳児がいる女性23人の母乳を調査した結果、7人から微量の放射性物質を検出したと発表した。
これは、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」が4月20日に独自調査を行い、千葉県内の女性の母乳から1キログラム当たり36・3ベクレルの放射性ヨウ素を検出したと発表したことを受けて、枝野官房長官が厚労省に調査を指示していたもの。
調査は、福島4人、茨城9人、埼玉1人、千葉2人、東京7人の20~30代を対象に、4月24~25日にかけて産婦人科医などを通じて80~100ccの母乳を採取し、国立保健医療科学院で測定した。
その結果、23人中7人から主にヨウ素131を中心とする放射性物質を検出した。詳細は厚生労働省のHPで公開されているけれど、結果の一部を次に引用する。
実は、検出された7人中5人が茨城県の方で、残り2人は、福島県いわき市(3/11-14は30km圏内に住んでいた)と、千葉県千葉市の方。ただ、採取日が4月24、25日と原発事故から日数が経っていることもあってか、検出量は、水戸市の方の8ベクレル以外は2~3ベクレル程度と、4月20日に市民団体が独自検査した時よりはだいぶ少ない値になっている。
「放射能を放つ母乳」のエントリーでは、個々人の食生活によるものではないかといったけれど、茨城県のサンプルに集中しているのは気にならないでもない。
前回、市民団体による母乳からの放射性物質検出について、東大病院の中川恵一准教授は、2人の女性の母乳から一キログラム当たり30ベクレル以上の放射性ヨウ素が検出されたことについて、先月24日と30日は、水道水から放射性ヨウ素が検出された時期で、ある意味、当然と考えられる、とコメントしているようなのだけれど、今回についてもそうなのかを確認するため、茨城県内の4月11日から25日までの水質モニタリング調査結果から、含有放射性ヨウ素をグラフにしてみると次のとおり。
茨城県の調査では、水道水のモニタリングは毎日測定しているわけではなくて、殆どが隔日で行われているのだけれど、グラフ化するにあたって、便宜上、データの無い日については、前後日の平均の値としている。
グラフでは、水道水の放射性ヨウ素は4月11日から13日が高く、その後は減少していて、母乳を採取した4月25日は、茨城県内のどこでもおおよそ最低の値となっているから、この結果から見る限り、母乳中の放射性ヨウ素の原因が、水道水の影響だとすれば、4月25日なんかより4月11日前後のほうが余程母乳中の放射性ヨウ素が高いことになる。
一般に、ヨウ素131の大量投与の場合の母乳中への移行率は27.9%とされているから、母親が体内に取り込んだ放射性ヨウ素すべてが、母乳に行くわけではないけれど、取り込み後の時間によって、母乳に含まれる放射性ヨウ素の量は変わってくる。
たとえば、産婦人科で出産時の消毒などに、「イソジンクリーム」というヨウ素を含んだクリームを使用することがあるそうなのだけれど、そのクリームのマニュアルには、産褥3日の産婦に適用した時のヨウ素の乳汁中への移行データがあり、それによると、使用して6時間後にヨウ素含有量が最大になって、48時間後には、接種前のレベルにまで低下する。
また、甲状腺の機能検査に使用される薬に「ラジオカップ3.7MBq」というのがあるのだけれど、これは文字通り、放射性医薬品で、そのものズバリ、ヨウ素131(ヨウ化ナトリウム(131I))を含有するカプセル。1カプセル中にヨウ素131が3.7メガベクレル(ヨウ化カリウム2.50μg)入っている。
この「ラジオカップ3.7Mbq」のインタビューフォームには、当然、ヨウ素131を体内に取り込んだときの臨床試験結果等のデータがあり、甲状腺に取り込むまでの時間は、正常な甲状腺では、24時間後に20~30%を摂取し、残りは尿中に排泄されるとしている。
また、ヨウ素131の含有量が1.11メガベクレルのものを経口摂取した場合、母乳中に移行するヨウ素131の推移データもあり、それによると、摂取後8時間後の放射線をピークとして、その後指数関数的に低下する。
グラフではプロットの数が少ないので、あまり細かいところまで読み取れないのだけれど、経口摂取後4時間後の放射線は8時間後の2/3程度であることからみると、やはり「イソジンクリーム」と同じく6~10時間後というのが、母乳中に移行する放射性物質が最大になるとみていいように思われれる。
だとすると、水道水や食事後6~12時間後くらいの授乳を避けて、食事後直ぐとか、起床直後のように食事後12時間以上経っているタイミングでの授乳をすることで、乳児へのヨウ素131の移行はある程度軽減できるのかもしれない。
こうしてみると、やはり普段の食生活での影響があることは避けらないと思われるので、対策としては、料理をするときには、野菜は十分に洗うなり、飲料水は浄水器や蒸留水器などで浄化したものを使うなりして、なるべく放射性物質を体内に取り込まない工夫が一番だと思われる。


厚生労働省は30日、福島など1都4県で乳児がいる女性23人の母乳を調査した結果、7人から微量の放射性物質を検出したと発表した。母乳に含まれる放射線量は安全基準がないが、食品衛生法の牛乳・乳製品の暫定規制値を下回っており、同省は「乳児の健康には影響がない」としている。
23人は、福島第1原発の周辺や、野菜などの出荷を制限されたり、水道の摂取を控えるよう要請されたりした地域に居住、または以前に住んでいた20~30代で、福島4人、茨城9人、埼玉1人、千葉2人、東京7人。4月24~28日に産婦人科医などを通じて80~100ccの母乳を採取し、国立保健医療科学院で測定した。
調査結果によると、3月11~14日の間に原発から30キロ圏内にいた1人から1キログラム当たり放射性ヨウ素3・5ベクレル、放射性セシウム2・4ベクレルを検出。ほかにも現在、茨城県内に住む5人と千葉市の1人から8・0ベクレル~2・2ベクレルの放射性ヨウ素を検出した。
厚労省によると、牛乳・乳製品の暫定規制値は放射性ヨウ素が1キログラム当たり100ベクレル、放射性セシウム200ベクレル。
市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」が4月20日、千葉県内の女性の母乳から1キログラム当たり36・3ベクレルの放射性ヨウ素を検出したとの独自調査の結果を発表。これを受け同21日、枝野幸夫官房長官が厚労省に調査を指示していた。
2011/04/30 20:38 【共同通信】
URL:http://www.47news.jp/CN/201104/CN2011043001000773.html

厚生労働省は30日、福島、茨城など1都4県に住む女性23人の母乳を検査した結果、7人から健康に問題がない程度にごく微量の放射性物質を検出したと発表した。牛乳や水道水の暫定規制値と比べ極めて低く、同省は「乳児への影響はない。母乳は栄養面などで利点が多く、普段通りに育児をしてほしい」と呼びかけている。
検査は4月24~28日、1人当たり80~100ミリリットルの母乳の提供を受けて実施。23人の内訳は福島4人、茨城9人、千葉2人、埼玉1人、東京7人で、首都圏については、出荷制限された野菜などの産地に住んでいたり、水道水が一時摂取制限されたりした自治体に住む人を選んだ。
母乳から放射性ヨウ素が検出されたのは、福島県いわき市、水戸市、茨城県常陸大宮市、下妻市、笠間市(2人)、千葉市に住む計7人。最も高かったのは水戸市の女性の1キログラム当たり8.0ベクレルで、最も低かったのは下妻市女性の2.2ベクレル。放射性セシウムが検出されたのはいわき市女性(同2.4ベクレル)だけだった。
母乳の暫定規制値はないが、牛乳の場合は放射性ヨウ素が1キログラム当たり100ベクレル、放射性セシウムが同200ベクレルで、検査結果は大幅に下回った。
母乳を巡っては、市民団体が独自調査の結果として、千葉県などの女性から3月下旬に放射性物質が検出されたと発表したことなどを機に、厚労省が緊急に検査した。
URL:http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E1E2E2E09E8DE1E2E2E6E0E2E3E39191E3E2E2E2

先月、茨城県と千葉県の女性の母乳から微量の放射性物質が検出されたと、市民団体が21日、記者会見で発表した。一方、厚労省は、母乳の安全性に問題はないとして、冷静な対応を呼びかけている。
これは、市民団体「母乳調査・母子支援ネットワーク」が、福島県や茨城県などの9人の母乳を独自に調査したもの。このうち、千葉・柏市の女性が先月29日と30日に採取した母乳からは、一キログラム当たり36.3ベクレルの放射性ヨウ素が検出され、その後、今月4日には14.8ベクレルに低下したという。
茨城・守谷市の女性の母乳では、先月23日と24日の時点で、放射性ヨウ素が一キログラム当たり31.8ベクレル検出され、先月30日には8.5ベクレルに下がった。
茨城・つくば市の女性2人の母乳では、先月、それぞれ一キログラム当たり8.7ベクレルと6.4ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたが、宮城県、福島県、茨城県の女性計4人では検出されていない。
この市民団体は「政府は、水道水や野菜から規制値を超える放射性物質が検出された時点で、すぐに母乳の調査をすべきだった」と指摘した。
一方、厚労省は「母乳に含まれる放射性物質の規制値はないが、乳児用の水道水を参考にした場合、今回の数値は一キログラム当たり100ベクレルという規制値の半分以下で、母乳の安全性に問題はない」と説明している。
また、枝野官房長官は21日の会見で、「今回出た数値は問題ないと専門家も言っている。安心して普段通りの生活を」と述べた上で、念のため、政府としても一定の調査を行うよう厚労省に指示したことを明らかにした。
母乳から放射性物質が検出されたことについて、放射線医療が専門の東大病院・中川恵一准教授は「今回検出された放射性ヨウ素の量は、水道水で乳児に飲ませてよいと決められた放射性物質の上限、一キログラム当たり100ベクレルより低い値なので、心配はない」と話している。
また、2人の女性の母乳から一キログラム当たり30ベクレル以上の放射性ヨウ素が検出された先月24日と30日は、水道水から放射性ヨウ素が検出された時期なので、「水道水を通して母体に入るとその量の4分の1が母乳に含まれると言われていて、検出はある意味、当然と考えられる」と説明している。
さらに、「今は、水道水には放射性ヨウ素はほとんど含まれなくなっているので安心してよい。また、一度母乳に放射性ヨウ素が含まれたとしても、放射性ヨウ素は8日でその量が半分になる性質があるので、日がたてば量は減っている」として、「現時点で、授乳を続けて問題ない」と話している。
URL:http://www.news24.jp/articles/2011/04/21/07181399.html
この記事へのコメント
誰も責任を取らない日本
東電社員給与20%減、公務員10%減で後は震災増税;国債発行で国民責任に持っていけばいいだけ。
日本は簡単に世間が治まる。