ケガレが穢れに蓋すると嘯く日

 
「菅総理大臣からは『特別補佐官として助けてくれ』という話だったので、それはお受けした。連立政権を組んでいる立場として、これまで全力で菅政権を支えてきたが、震災対策や日本経済は待ったなしの状況であり、全力を挙げて菅総理大臣を支えていきたい」
亀井静香

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1.「原発推進派と闘う菅直人」を演出する

菅首相の改造人事が続いている。27日、復興担当大臣の新設に伴い、国民新党の亀井代表に副総理として入閣を要請したのだけれど、亀井氏がこれを固辞したため、特別補佐官に就任することとなった。

また、新設した原発事故収束・再発防止担当相に細野首相補佐官を起用。これにより閣僚数が上限の17人になったため、蓮舫行政刷新担当相を外して、行政刷新担当首相補佐官に任命。行政刷新担当相は枝野官房長官、消費者・食品安全担当相は細野氏がそれぞれ兼務。松本復興相が兼務していた環境相は、江田五月法相が兼務することとなった。

更に、自民党の浜田和幸参院議員を復興担当の総務政務官に任命し、浜田氏はこれを受けた。

この、野党議員であった浜田氏を一本釣りして閣内に取り込むやり方は、以前、与謝野氏を閣内に迎え入れたやり方と同じなのだけれど、どうやら、亀井氏や民主党の石井一副代表が以前から、衆参ねじれを解消するために、10名程度の自民党参院議員に接触して、引き抜き工作を行っていたらしく、その結果、浜田氏が釣れたということのようだ。

これで、今後、野党の更なる反発を生むことは確実。

自民党の石原幹事長は「菅直人首相が他人の懐に手を突っ込んでくることがあれば、信頼関係はゼロだ。菅首相の政治手法にあきれるばかりだ」と2次補正の審議にも厳しい姿勢で臨む考えを表明しているし、林芳正政調会長代理も「1人を引き抜いても参院で野党が過半数を占める『ねじれ国会』の状況は変わらない。与野党協力は一層厳しくなる」と反発している。

今の状態で、野党に手を突っ込めば反発を受けることは誰にもわかりそうなものだけれど、一部には、そうと知った上で、わざとやっている、と見る向きもある。

つまり、やはり菅首相には、脱・原発を争点とした解散総選挙をする腹積もりがあって、与野党対立をより際立たせるために、その捨て駒として浜田氏を使ったのだという見方。

その意味では、これは、菅政権が与野党一体となって震災対応しようという「ポーズ」を取りつつ、それを野党が反対しているという構図づくりの一環なのかもしれない。

ただ、原発の再開については、25日に自民党谷垣総裁が既に、再稼働は必要で、国が安全確認をした上で、順次再開すべきだとの認識を示しているし、当の菅首相だって、浜岡以外の原発の早期再開方針を出しているから、原発再稼働という点では、両者相違点があるわけじゃない。

だから、脱原発を争点にして解散総選挙をするのは、ロジック的にはかなり無理がある。もしも、それをやろうとするのなら、国民に対して、「民主党は原発再開を本当は望んでいないのだ」という"ムード"を作って、それに頼った選挙を行う必要がある。

そのために、あるいは、「官僚や、原発推進派と闘う菅直人」を演出することで、そうしたムードをつくろうとするかもしれない。

だから、脱原発解散総選挙は、かなり「ムード」に頼り、「ムード」を煽った総選挙になる可能性がある。その意味では、政権交代を煽った2009年の総選挙に似ていると言えなくもない。

この脱原発に惹かれるムードが何処からくるのか。もちろん、見えない放射能の恐怖はあると思うし、ドイツやイタリアの脱原発の動きをみてもその通りだろうと思う。

ただ、日本は、それに加えて、日本特有の「穢れ」を嫌う意識も作用するのではないかと思っている。




2.「穢れ」は祓うもの

福島原発事故からはや3か月、放射性物質が東北・関東各地に飛散して、高濃度ではないにせよ、広範囲に汚染されてしまった。

静岡茶から基準値以上のセシウムが検出され、柏など関東の一部で特に放射線量の高いホットスポットの存在も明らかになってきた。東京都でも各地の放射線量を測る動きを始めているし、個人でもガイガーカウンターを購入して線量を測る動きも出てきている。

江戸の町は"穢土"になってしまった。そういう意識が少しづつ広がっているが故にこうした行動が広がっているのではないか。

では、放射能から身を守るにはどうすればよいか。

放射能から身を守るには3つの原則がある。それは、距離と時間と遮蔽。

距離というのは、もちろん、放射性物質や放射線から「距離をとる」こと。要するに遠くに逃げること。

時間というのは、放射性物質や放射線に「当たる時間を短くする」こと。

遮蔽というのは、放射性物質や放射線を「遮蔽物で遮る」こと。

まぁ、当たり前といえば、当たり前のことだけれど、これらが放射能から身を守る3原則とされている。

だけど、これらの原則は、言ってみれば、"縁切り"や"村八分"と殆ど同じ。もっと身も蓋もない言い方をすれば、「エンガチョ」と同じ。

もちろん、現時点では、福島原発起因の放射能で死亡した人はいない。現状の線量では、特に問題ないという見解もあるし、気にしないという人も沢山いる。だけど、同時に僅かの線量であっても気にする人もいることは事実としてある。

だから、現状において、放射能汚染を気にする人にとっては、放射能は「穢れ」であって、できるなら「エンガチョ」したいものと感じている可能性はあると思うし、同時に、線量の高下に関わらず、「穢れ」と感じる人はいると思う。つまり、放射性物質の飛散が左程ないと思われる西日本の人であっても、放射性物質が放出されたことをもって、もう「穢れ」てしまったと感じる人がいるかもしれない、ということ。

「穢れ」は日本人が忌み嫌うもの。

それは、日本人の民族性として深く浸透しているものだから、「放射能をまき散らす危険のある原発は止めよう」という訴えかけは、それなりのインパクトを持って日本人に訴えかける。

菅首相の「脱・原発」がそうした心理まで見越してのものになるのかどうかは分からないけれど、「脱原発」をそれなりのシチュエーションで、たとえば、ヒロシマ・ナガサキで終戦記念日あたりにぶち上げれたりすれば、あるいは世論はぐぐっとそちらに傾くかもしれない。

だけど、ここに一つ落とし穴がある。それは、「穢れ」に対する対処の仕方。

古来より、日本人にとって、「穢れ」とは「祓う」もの。汚れや穢れはきれいに掃き清めるもの。

清めることができれば、穢れは祓われ、その地に居ることができる。穢れはそのままに放置しない。原発も同じ。原発事故によって、福島や江戸が穢土になったのなら、それを「祓え」ばいい。掃き清めればいい。原発収束に全力を上げ、汚染地域を徹底的に「除染」することで、放射能という「穢れを祓う」。

菅首相が狙っているといわれる「脱・原発」はいうなれば、「穢れた」原発には蓋をしてなかったことにしよう、一切近寄らないようにしようというもので、どちらかといえば「臭いものに蓋をする」やり方に近い。要するに、穢れを払う努力を一切やらずにその場から逃げるだけのやり方。

もちろんそれでも、穢れから離れることはできるかもしれないけれど、穢れそのものが無くなるわけじゃない。

だから、もしも、脱原発解散総選挙が行われるとするならば、それに対抗するためには、原発の必要性だけを訴えるのではなくて、原発という「穢れを祓う」公約を盛り込んでおくことが必要ではないかと思う。

つまり、事故原因が何であり、何を持って安全とするのか、どう安全を確保するのか、汚染された地域をどうやって除染して元に戻してゆくのか、同じような事故が再発した場合、どう対応するのか、といった具体的な「穢れの祓い方」を明示しておくことが、一つの鍵になるように思う。




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画像閣僚人事:原発担当相に細野氏、蓮舫氏は退任

 菅直人首相は27日、東日本大震災復興基本法で新設された復興担当相に、松本龍防災担当相(60)を兼務で充てることに伴う閣僚人事を行った。原発事故収束・再発防止担当相も新設し、細野豪志首相補佐官(39)を起用した。閣僚数は上限17人のため、蓮舫行政刷新担当相(43)は閣僚から外し、行政刷新担当首相補佐官に起用した。蓮舫氏が担当していた行政刷新は枝野幸男官房長官(47)、消費者・食品安全は細野氏が兼務。松本氏の環境相兼務も解き、江田五月法相(70)が兼務する。総務政務官に自民党の浜田和幸参院議員(58)=鳥取選挙区=を起用する人事も決定した。

 ◇亀井代表は入閣固辞、首相補佐官に
 首相は国民新党の亀井静香代表に副総理としての入閣を打診したが、亀井氏は固辞し、「内閣の重要政策全般」を担当する首相補佐官に就任した。

 細野氏は今年1月に首相補佐官に起用され、大震災後は東京電力福島第1原発事故の対応を担当してきた。民主党政権では最年少の39歳での入閣。首相は防災相として被災者支援を担当してきた松本氏の復興相起用と併せ、大震災・原発事故対応に最優先で取り組む菅内閣の姿勢をアピールしたい考えだ。

 ただ、退陣表明後の首相が閣僚人事を行うのは異例。首相の8月退陣を前提に自公両党との協力を模索する民主党の岡田克也幹事長ら党執行部は、続投への意欲と受け取られかねない内閣改造には反対してきた。枝野氏は人事発表の記者会見で「内閣改造に伴って開かれる初閣議は招集していない」と述べ、内閣改造とは位置づけない見解を示した。

 ◇浜田起用に自民は不快感
 浜田氏の政務官起用は、民主、自民両党の執行部にとって「寝耳に水」。自民党の大島理森副総裁は「内閣と自民党の信頼、それを許す民主党執行部を含めて信頼は全くなくなる」と特例公債法案や11年度第2次補正予算案の審議に影響する可能性を警告した。公明党の山口那津男代表も「退陣を余儀なくされている中で、復旧・復興を真剣に考えているのか極めて疑問だ」と不快感を示した。

 民主党執行部にとっては、自公両党と合意した通常国会の「50日延長」も首相に蹴られたばかり。首相が欠席した27日の役員会では安住淳国対委員長が「国会を(首相の指示で)70日延長したのに、これでは重要法案が通らなくなる」と首相の対応を批判。子ども手当の見直しをめぐる3党の政調会長協議が再開される直前だっただけに、仙谷由人代表代行も「石破(茂・自民党政調会長)さんの地元・鳥取の議員を引っ張るとは何を考えているんだ」とあきれた。首相の孤立化が加速している。

 自民党議員の引き抜きは、亀井氏が大幅な内閣改造とともに首相に進言してきた。亀井氏は27日、首相官邸での与党党首会談後、「首相が震災復興については与野党を超えて一致協力していきたいと呼びかけたのに自民党が断った」と正当性を強調した。

 亀井氏の首相補佐官起用により、補佐官の定員5人をオーバーしないよう原発事故担当の馬淵澄夫首相補佐官が退任。場当たり人事に振り回された民主党内にはしらけたムードが広がり、特例公債法案や、首相が意欲を燃やす再生可能エネルギー固定価格買い取り法案の審議へ向けた与野党協力の機運がしぼみかけている。

毎日新聞 2011年6月27日 21時46分(最終更新 6月27日 22時14分)

URL:http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110628k0000m010103000c.html



画像混乱必至でも菅ニンマリのワケ…あざとい政務官人事 2011.06.27

 菅直人首相が、復興担当相新設に伴う政務3役人事で、自民党の浜田和幸参院議員(58)=鳥取選挙区=に、復興担当の政務官への起用を打診したことが分かった。国民新党の亀井静香代表らが「衆参ねじれ解消」のために画策していた自民党切り崩し工作の1つとみられる。浜田氏は受諾に傾いている。

 「現在の時点では全くの白紙だ。菅政権の幹部からさまざまな申し出を頂いており、今日中に結論を出したい」

 浜田氏は27日午前の記者会見でこう語った。昨26日夕、枝野幸男官房長官から「復興担当の政務官として加わっていただきたい」と打診を受けたことを明らかにした。

 会見で、浜田氏は「国難の中で、菅政権の足を引っ張っている時間はない」「政治家としての岐路に立っている」「国のために力になるのなら考えたい」とも語り、政務官受諾の可能性を強く示唆した。

 浜田氏は1953年、鳥取県米子市生まれ。東京外国語大学を卒業後、新日本製鉄に入社。その後、ジョージ・ワシントン大学大学院で政治学博士号を取得し、保守系の国際政治学者としてメディアで活躍。昨年夏の参院選で自民党公認で出馬し、初当選した。

 この件には伏線がある。

 「被災地復興」を起用理由にしているが、亀井氏や民主党の石井一副代表が以前から、衆参ねじれを解消するため、10人ほどの自民党参院議員と接触し、「野党のままでいいのか!」と迫っていたのは事実。接触を受けた中には、浜田氏のほか、「行列ができる弁護士」こと丸山和也参院議員もいたという。丸山氏は、亀井氏側の申し出を断ったとされる。

 つまり、自民党参院が切り崩せれば、誰でも良かったのだ。

 加えて、浜田氏が政務官になれば、自民党は民主党に対し、さらに厳しい対応を取らざるを得なくなり、被災地復興が遅れる可能性がある。

 自民党の山本一太政審会長は27日のブログで、「もし浜田政務官が誕生すると、自民党は激しい怒りに包まれる。恐らく、復興担当の浜田新政務官は全ての委員会で、野党の厳しい追及にさらされる。そんな状況下で、政務官としてのまともな仕事ができるわけがない」(抜粋)と、翻意を促している。

 ただ、与野党激突は菅首相にとっては大歓迎との見方もある。

 「菅首相は8月の原爆の日に『脱原発』を世界にアピールして、その勢いで解散総選挙になだれ込む戦略を立てている。そのためには、野党と対立している方が都合がいい。浜田氏は被災地復興のためより、『脱原発』解散を煽る駒に使われた」(永田町事情通)

URL:http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110627/plt1106271601003-n1.htm

この記事へのコメント

  • 2011年3月20日、隠蔽された3号機格納容器内爆発
    http://ishtarist.blogspot.com/2011/06/20113203.html

    今まで、3月20-21日にかけての関東地方のフォールアウトが直前の3号機から放出されたものであるという仮説について、気象やプラントパラメータ、東電・政府の行動など様々な角度から検証してきました。その結果、3号機格納容器内で爆発的事象が発生したことは疑いようがなく、さらにそれが再臨界を伴っていた可能性まで示唆されました。
    2015年08月10日 15:27
  • almanos

    いっそのこと推進派だけで構成されている保安院を一時止めて「IAEAに一時原子力安全管理の査察と管理を委託する! 」くらいぶち上げないと無理でしょう。私見ですが日本国内の期間による発表が信用できないと思っている方が大半に見えます。空き管は原発エンガチョ解散を目論んでいるのなら、自民党など野党がIAEAへの監査の委託等による問題の洗い出しと対策をした上でしっかりと穢れを祓い清める対策を出せば良い。まあ、風見鶏な大勲位すらも見捨てたのです。今が原子力村をばらしてもっとまともな原子力政策を行える体制への転換が必要でしょう。この問題で頭痛いのは推進派、反対派もまず自説ありきで話が出来る状態ではないことにある。外から「お前らええ加減にしろ! 」とはたかないとそこから脱出できない状況に思えますね。推進派は、この状況では適切な情報開示による冷静な議論に持ち込めば感情論の反原発を押さえ込めるのにやらない。かえって自分を危うくする誤魔化し等にかまけている。東電も然り。潔いなら国民も「そこまでするなら」とうまい落とし所に持っていく話が出来るのにやらない。保身とごまかしで推進派と電力各社は首を絞めている。そう
    2015年08月10日 15:27
  • とおる

    脱原発選挙 = 「脱・辞意表明」詐欺選挙
    2015年08月10日 15:27

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