かわいいは正義

 
アニメやマンガ、ゲームに登場した場所のモデルやロケ地を、実際に訪れる行為を「聖地巡礼」と呼ぶそうな。

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聖地巡礼がどういう経緯から始まったのかは分からないけれど、これが始まったのは1992年放映アニメの「天地無用」が元祖といわれている。

アニメの「天地無用」は、主人公が様々な事情で地球にやってきた宇宙人たちの騒動に巻き込まれていくコメディタッチのSFアニメで、岡山が舞台。

原作者の梶島正樹氏の故郷は岡山県なのだけれど、この作品の初期に登場するキャラクターの名前は、岡山県の地名にちなんでいるものが多いという

それ以来、様々な作品で登場する実際の土地を訪れる「聖地巡礼」がファンの間で静かに広まっている。

「涼宮ハルヒの憂鬱」 の舞台となった兵庫県西宮市や「新世紀エヴァンゲリオン」の箱根なんかは有名だけれど、最近は、「天体戦士サンレッド」の川崎市(特に溝の口)ように、地名を思いっきり全面に出し、主題歌から地名を使っている作品さえ登場するようになった。

特に、「天体戦士サンレッド」に至っては、アニメ放映前に、人気登場キャラクター(ヴァンプ将軍:世界征服を企む悪の組織のリーダーながら地域とのつながりを大事して、地域住民に愛されているキャラクターという設定)のかぶりものをして番宣にきてみたり、区のPR大使として、正式に任命されたりなど、公にタイアップしている



また、浜松を舞台とした、なんてことはない普通の日常に見えて実は目一杯シュールな世界を描いている「苺ましまろ」という萌え系アニメがあるのだけれど、今年の3月には、「苺ましまろ」に登場する美少女のイラストを車体一杯に描いた「萌えタクシー」が登場した。

これは、浜松市に本拠を構えるスタータクシーグループが地元の町おこしを狙うとともに、利用者の減少に悩むタクシー業の活性化として、3月から5月までの3ヶ月間の期間限定で行ったもので、各車それぞれ異なるデザインの3台を運行していた。

ボンネット一杯に美少女キャラが描かれた萌えタクシーは、もう「痛車」そのもので、ドライバー曰く、道行く人の視線も痛いのだそうだ

発案は、このタクシー会社の社長さんで、浜松を題材とした萌えキャラクターがいるという話を聞き、あきたこまち『萌え米』等のヒントに萌えタクシーを思い付き、なんと、乗務員に、事前にコミックやテレビアニメなどを見せて予習させし、ガイドもこなせるように教育したのだそうだ。

ここまでくると、虚構と現実がリンクして、現実が虚構に合わせるようになったといっていい。



最近では、アニメが震災自粛を吹き飛ばした例もある。

現在放映中のアニメに、金沢市の湯涌温泉を舞台にした「花咲くいろは」というのがあるのだけれど、週末には全国から大勢のファンが足を運び、宿泊したり劇中で描かれた場所で記念撮影を楽しんだりしているという。

一時は、震災の影響で、1500人近くのキャンセルが出ていたそうなのだけど、5月のGW直前に予約が殺到して、この地区の全9旅館が満室となったというから、何とも凄い。

それに、作品中に登場する「湯涌サイダー」も飛ぶように売れているというから、下手なCMなんかより全然いい。近年、テレビCMの効果が薄くなってきた、と言われているけれど、テレビCMでは売れ行きが伸びず、アニメ作品中で紹介されるとバカ売れするのが本当なのであれば、おそらくそれは、単なるイメージと、作品の物語性との違いがあるのではないかと思う。

CMでは単に15秒だとか30秒とかの間に広告を詰め込まないといけないから、見た目やインパクト重視のCMがウケるのではないかと思うのだけれど、アニメ作品中に登場する商品は、その舞台でしか買えない希少性も勿論あるにせよ、それ以上に、作品の主人公も含めた、全体のストーリーの一部としての商品、作品の一部としての商品として捉えられているところもあるように思う。

要するに、それだけの、「付加価値」が込められているが故に差別化されているといってもいい。

「花咲くいろは」のお蔭で売れているという「湯涌サイダー」にしても、話の1シーンやEDにチラッと出るだけのもの。それでも、それを見つけて求める客がいる。

グーグル社の広告プラニングシニアマネージャーである、高広伯彦氏は、自身の講演で、「企業が“商品に合った消費者”を探す時代から、消費者が自分に合った商品を探す時代になった」と指摘しているのだけれど、アニメに実物の商品、もしくは、それらをモチーフにした商品を登場させて、それが売れるということ自身が、消費者が自分の好みの商品を求めている証左ではないかと思う。

その意味では、萌えタクシーにしても何にしても、単に「萌えキャラ」を貼り付けておけばいい、というものではなくて、これからは、それから更に、物語性までこめていかないと「付加価値」までには高まらないのかもしれない。

「サザエさん」の磯野家の家電が東芝製なのは有名な話だけれど、アニメが現実を動かしてゆくという、こうした現象が今後も続いていくのであれば、企業もCM宣伝費を、アニメ製作費に回して、お金を出すから、自社商品をアニメに出せというようなやり方がもっと広がるかもしれない。

「かわいいは正義」で回り続ける程、商売は単純じゃない。




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画像《経済》 浜松に“萌え”タクシー スタータクシーが車体に漫画 2011年2月26日

 スタータクシーグループ(浜松市)は3月1日、浜松を舞台にした人気漫画「苺(いちご)ましまろ」のイラストが入ったタクシーの運行を始める。アニメファンに照準を置いた「萌(も)え」ビジネスに注目。地元の町おこしを狙うとともに、利用者の減少に悩むタクシー業の活性化につなげたい考えだ。

 “萌えタクシー”は3台を運行。各車それぞれ異なるデザインを施して、漫画に登場する主要キャラクターを勢ぞろいさせた。漫画には、浜松の施設や風景が多く描かれて、通常の運行に加えて、観光周遊コースを用意した。

 周遊コースは、1時間45分~3時間半の3種類をそろえ、五社神社や浜松城公園などを巡る。料金は1万150円~2万300円。利用者には、作者で浜松市出身のばらスィーさんが書き下ろした乗車記念カードが贈られる。

 「苺ましまろ」はこれまでにコミックが6巻刊行され、販売累計は135万部に達した。アニメも放送されて、ファンを広げている。

 萌えタクシーの運行は5月31日までの3カ月。周遊コースの利用は予約が必要。乗車と予約は、配車センター=(電)053(444)1111。

URL:http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20110226/CK2011022602000116.html



画像アニメファン、湯涌に続々 「花咲くいろは」モデル

 石川の温泉街などを舞台にしたアニメ「花咲くいろは」のファンが、モデルとなった金沢市湯涌温泉に続々と訪れている。週末を中心に全国から大勢の若者が足を運び、宿泊したり劇中で描かれた場所で記念撮影を楽しむ姿が見られる。地元住民との交流にもつながっており、新たな客層が「金沢の奥座敷」に活気を与えている。
 「花咲くいろは」は石川の老舗旅館にやって来た女子高生が、さまざまな壁にぶつかりながらも旅館の仕事を通して成長していく青春ドラマ。南砺市の映像制作会社、ピーエーワークスの10周年記念作品で、4月から金沢ケーブルテレビネットやテレビ金沢をはじめ、国内各地で放送されている。

 劇中には県内の観光地が数多く登場するが、エンディングで湯涌温泉観光協会が「取材協力」として紹介されていることから、主人公が暮らす「湯乃鷺温泉」のモデルが湯涌温泉として知られ、放送開始直後から県外ナンバー車が目立つようになった。

 湯涌温泉観光協会に置かれたノートには、「静かでホッとできる」「今度は温泉宿でのんびりしたい」など東京や大阪、鳥取などから訪れたファンがメッセージを記している。

 「アニメで放送された場所を訪ね歩くのが一番楽しい」とカメラ片手に温泉街を散策するグループが多く、思い思いに物語の世界に浸っているようだ。

 実際、東日本大震災の影響が懸念された5月の大型連休は全9旅館で満室となった。一時は1500人近くのキャンセルが発生したが直前になって予約が殺到したという。

 劇中で紹介された「湯涌サイダー」も飛ぶように売れており、地元関係者は「湯涌の魅力を伝えようという気持ちで接客している」と歓迎している。同協会は「アニメを通して湯涌や金沢、石川を知っていただいたお客様がリピーターとなってくれればうれしい」とさらなるにぎわい創出に期待を寄せた。

URL:http://www.hokkoku.co.jp/subpage/HT20110611401.htm

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