原発再稼働と脱原発解散

 
6月18日、海江田経産相は、原子力安全・保安院が電力会社など11事業者に対して、設計基準を上回る事故対策についての検討実施を指示し、14日に各電力会社から、その報告の確認と、各原発の立ち入り検査を実施した結果、安全対策がなされているとして、現在運転停止中の原発の再稼働は可能との見解を示した。

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重点的に求めた事故対策項目は次の5つ。
(1)原発の中央制御室の作業環境の確保
(2)停電時の原発構内での通信手段の確保
(3)放射線管理のための体制整備
(4)水素爆発の防止対策
(5)がれき撤去の重機配備

まぁ、これだけを見ると今回の福島原発で問題があったことに対する対策だし、原発側でやれる範囲の対策ではあるのだけれど、経産省の声明を見る限り、肝心の部分についての言及がみられない

それは、国としての安全基準の考え方や、事故を起こした時の避難・誘導およびそれらに伴う法整備などなど。要するに、国としてこうします、というのがない。

今回の福島原発の事故にしたって、SPEEDIの結果を隠蔽して避難を遅らせた上に、政府の初動ミスによる被曝の拡大など、政府側で検証して対策を打たなければならない部分について何も触れていない。

それに、浜岡原発の停止要請にしても、浜岡は特別だというだけで、どこがどう危ないのかの説明もない。いくら地震の確率が1%とか10%とかでも起こるときには起こるのだし、87%だとしても、いつまでも起こらないかもしれない。

肝心なことは、原発の安全対策を打つことは勿論のこと、それでも事故が起こった場合に、政府がこういう対応をして、住民の安全確保はこうします、といった国民の生命を守るといった責任の部分への言及であって、いくら原発の安全性を高めたとて、現状でリスクをゼロに持っていくことは難しい。リスクゼロにしようと思えば、それこそ原発を月にでも建設して、レーザーか何かで地球に電力を送るようなSFまがいのことでもないかぎり無理な話。

第一、まだ福島原発事故が収束していない上に、汚染された地域に対する対応も政府は全然できていない。むしろ、地方自治体とか、地域住民が独自に放射線量を測ったり、校庭の表土を剥がしたりなんかして独自に対応している。

こんな状況で、安全だから再稼働をお願いします、なんていってもちょっと虫が良すぎる。

案の定、原発のある地方自治体は、今回の運転再開に反発の意を示している。福井県は、「地震や津波の検証、原発の高経年化(老朽化)対策の新たな基準、浜岡原発以外を安全と判断した根拠を明らかにするよう引き続き求める」とし、国に対して、新たな安全基準の提示を求め、再稼働には同意しない考えを示しているし、福島県の佐藤知事も、福島第一原発5、6号機と同第二原発の今後の運転についても「今の状況の中では当然、再開はありえない」と宣言している。

大阪府の橋本知事に至っては、そんなに安全だというのなら、海江田大臣は原発の周辺に住めばいい、と大激怒している。

政府が何もしないで、ただ地方に責任を押し付ける態度を続ける限り、原発再稼働への道筋は見えてこないだろう。



そんな折、全く、辞任する気配がない菅首相が「原発推進か、脱原発か」を争点にした解散総選挙を考えているとの見方が永田町に広がっているという。

その背景には、5月の浜岡原発停止要請が、有権者から高評価だったということや、6月15日に行なわれた、「再生可能エネルギー促進法」の制定を求める緊急集会に、超党派議員や孫正義社長ら約350人が参加して、法案制定の支持を受けて強気になったという観測もあるようだ。

終いには、解散は8月の広島、長崎の原爆の日にする、なんて噂まで出回っているという。

浜岡原発停止受け入れ直後の5月10日の「反原発キャンペーンと侵略工作」のエントリーで、脱原発で支持率が上がるとみれば、そちらの方向に転ぶのではないか、と指摘したことがある。次に引用する。
特に、マスコミに金を流して、原発推進なら支持率を下げ、脱原発なら支持率を上げさせるように工作をかけてしまえば、今の菅政権だったら、一発で転ぶ危険がある。自らの政権延命のために、それくらい平気でやりかねない。その先に日本沈没があったとしても、その自覚すらできないのではないか。

だから、ここは、何故浜岡を止めるのかの理由について徹底的に追及したほうがいい。それこそ、青山繁晴氏がいうようにアメリカからの圧力だった方が、納得はできなくても、理解はできる。

一番いけないのは、原発が事故を起こしたからって、その中身を検証せずに、丸ごと原発が駄目という発想に国民全体がなってしまうこと。これは、太平洋戦争で負けたから、戦前の日本が全部駄目なんだという発想と同じ構図。

工作する側からみれば、こんなに操りやすい状態はない。

日比野庵本館 2011.5.11 「反原発キャンペーンと侵略工作

このエントリーでは、外部からの工作によって、脱原発に舵を切らせ、日本を危機に陥らせるのではないか、としていたのだけれど、何のことはない、外部からの工作どころか、菅政権は自分達でそれをやろうとしている。

事故の検証と責任の所在の明確化と対策はもちろん、収束させることが第一。

菅首相は、菅の顔だけは見たくないなら、再生可能エネルギー促進法案を早く通した方がいい、なんて嘯いているけれど、話は簡単。貴方が即刻辞めればいいだけ。その日から誰も見なくて済む。

それに、法案を通したら、通したで、あれもやる、これもやる、といって居座るに決まってる。

ペテン師は何度でも人を騙す。


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画像原発再開、福井県は不同意変えぬ考え 経産相の要請に 2011年6月18日15時0分

海江田氏が停止中の原発の運転再開を求めたことについて、福井県幹部は「新しい内容が出てきたわけではない」とし、再開に同意しない姿勢に変わりはないとの考えを示した上で「地震や津波の検証、原発の高経年化(老朽化)対策の新たな基準、浜岡原発以外を安全と判断した根拠を明らかにするよう引き続き求める」と話した。

 福井県はこれまで、福島第一原発事故の知見を踏まえた新たな安全基準を示すよう、国に対して繰り返し要請。西川一誠知事も13日の日本記者クラブの会見で、「立地地域の要請に国から明確な回答がなく、現状ではなお安全の確証が持てない」と指摘している。

URL:http://www.asahi.com/national/update/0618/OSK201106180047.html



画像原発運転の再開「今の状況ではありえない」 福島知事 2011年5月21日2時12分

. 東京電力福島第一原子力発電所1~4号機の廃炉と7、8号機の増設中止の発表を受けて、福島県の佐藤雄平知事は20日、記者団の取材に対し「世界も注視をするような事故で、安全性についての信頼は完全に失われた。当然の結論だ」と述べた。

 また、福島第一原発5、6号機と同第二原発の今後の運転についても「今の状況の中では当然、再開はありえない」と指摘。東電に対し「今の事態を一刻も早く収束させることに尽きる」と改めて求めた。

 佐藤知事はこれまでも「県民の代表として、安全・安心の保てない原子力発電の稼働は今の段階ではありえない」と再稼働に否定的な見解を示してきた。

URL:http://www.asahi.com/politics/update/0521/TKY201105200741.html



画像菅首相の究極の延命策は原発解散&総選挙

 今月2日の退陣表明から2週間経過しても、全く辞任する気配がない菅直人首相が、「原発推進か、脱原発か」を争点にした衆院解散・総選挙を考えているとの見方が広がっている。

 「原発解散」が浮上したのは、菅首相が15日、再生可能エネルギー促進法の成立に強い意欲をみせたのがきっかけ。ソフトバンク孫正義社長ら350人の出席者から、全面支持を取り付け、喜色満面。「本当に私の顔を見たくないのか!」「それならこの法案を早く通した方がいい」と、興奮状態で「反菅勢力」を挑発した。普段は批判ばかり受け、仏頂面が多い首相の高揚感を見た民主党議員からは「原発事故で、世論でも脱原発への支持が広がっている。有権者の支持が見込める『最強カード』と思ったのかもしれない」との声が出た。言い換えれば「究極の延命策」(野党関係者)というわけだ。

 1テーマの解散・総選挙といえば、小泉純一郎元首相が05年に、郵政民営化の是非を国民に問い、自民党圧勝に導いた。政治家としての持論を貫くため、解散に踏み切った小泉氏が念頭にあるのかは不明だが、首相は16日のブログで「自然エネルギー問題は、初当選した約30年前からのテーマ」と記し、思い入れの強さをにじませている。

 「エネルギー政策と郵政民営化は、重みも違う」(関係者)と、慎重意見は根強いが、野党ベテラン議員は「菅さんは戦略力はなくても、謀略力はピカイチだ。可能性はゼロではない」と指摘した。内閣不信任決議案の採決前、「可決なら解散」の情報が流されたことも、首相の出方を警戒する一因になっている。

 菅首相は17日の参院復興特別委員会でも、「どんどん言い訳をつくり、退陣を先延ばししている。総理中毒症状だ」(松田公太議員)と、居座りを批判された。解散権は首相の伝家の宝刀だが、「目的」が有権者に見透かされれば、支持を得るのは難しい。

 [2011年6月18日8時6分 紙面から]

URL:http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp3-20110618-791964.html



画像菅は延命の“大天才”だ!「脱原発で解散」恥知らずシナリオ ★鈴木哲夫の永田町核心リポート 2011.06.17

 官邸周辺から衝撃情報が飛び込んできた。菅直人首相が「脱原発」を争点に解散・総選挙を模索しているというのだ。広島「原爆の日」の8月6日か、長崎「原爆の日」の8月9日に全世界に向けてアピールし、そのまま選挙になだれ込むという計画だ。日本経済に甚大な影響を与える動きだが、パフォーマンスを優先する菅首相が、政権内や関係省庁に熟議させた形跡は見えない。菅首相が退陣時期を明言しない真相について、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が迫った。

 「私の顔を見たくないというなら、この(再生可能エネルギー)法案を通したほうがいい」

 党内外からの「菅降ろし」を挑発するように菅首相があいさつすると、会場から割れんばかりの拍手と声援が飛んだ。退陣間近とは思えない強気な姿勢である。

 この会合は15日に開かれた再生エネルギー促進法案の成立を目指す超党派議連と市民の集まり。400人以上が参加した。

 菅首相は終始上機嫌で、自然エネルギーに関する持論を約20分にわたって展開。ソフトバンクの孫正義社長も「粘り腰で10年やってほしい」とエール。今や菅首相は、脱原発のヒーローかのごとくである。

 ところが、このシーンこそ、まさに菅首相の「大逆転・仰天シナリオ」が進められている証拠だという。それはズバリ、「原発の是非を争点に、自らの手で解散・総選挙に持ち込む」というものだ。

 菅首相と懇意な民間の関係者が明かす。

 「ポイントは8月6日と9日。そこまでは、菅首相は何が何でも首相を続けたいと思っている」

 この両日は、広島と長崎に原爆が投下された日だ。平和祈念式典には現職首相が出席し、唯一の被爆国として全世界にメッセージを発信する。

 「菅首相はそこで『脱原発』を高らかに宣言するつもりらしい。今回の福島第1原発の事故と、唯一の被爆国の立場。このタイミングでの発信は全世界に衝撃を与えるはずです」(同)

 その後、8月から9月にかけて、解散・総選挙を断行するのだ。菅首相の側近が語る。

 「『原発の是非』という争点1本で選挙をやる。菅首相はもちろん『脱原発』を主張する。いわば、国民投票的な総選挙だ。イタリアでも国民投票はノーだった」

 そこには、小泉純一郎元首相の手法がヒントにあると別の側近がいう。

 「小泉さんが『郵政民営化は是か非か』の1本で選挙をやった。あれと同じ。民主党内にも原発推進論者は結構いるが、菅首相の『脱原発』に反対するなら、郵政総選挙と同じように追い出して刺客を立てればいい。世論がこちらを支持していれば、民主党に残って戦う人も多いはず。原発推進の自民党には十分勝てる。その後、菅首相はじっくり政権を立て直せばいい」

 被災地の復旧・復興は遅れており「選挙などできない」という見方もあるが、側近は続ける。

 「延期されていた被災地の地方選挙も8月には実施される。それに原発が争点なら、有権者も納得してくれるはずだ」

 ■「脱原発」熟議された形跡なし 明らかな延命パフォーマンス

 最近、菅首相が自然エネルギーへの転換をことさら強調し、懇談会開催や自然エネルギー庁の設置など、発言を強めている背景がここにある。

 だが、パフォーマンス優先のためか、「脱原発」が政策として政権内や関係省庁で熟議された形跡は見えない。

 「G8で菅首相は『2020年までに自然エネルギー20%』と演説したが、海江田経産相は『聞いていない』というし、政務3役の1人は『無理だ』と断言していた。それにエネルギー問題は、経済や企業活動に直結する。10年先、100年先を見据えて、この国の経済をどう立て直していくかというグランドデザインの中で考えなければならない。菅首相はそこが欠落している。こんな大きなテーマを政権延命に利用するとすれば、ひどい話だ」(自民党閣僚経験者)

 民主党内からは、こんな意見も。

 「自然エネルギーという新たな利権に、あざとい政商らが目を付け、政権に接近している。これでは原発利権が自然エネルギー利権に替わるだけだ」(中間派議員)

 そもそも菅政権は、原発被害の“いま”を何ひとつ解決できていない。

 私が取材した福島原発の周辺自治体はまさにゴーストタウンだった。放射能を浴びたがれきは、こっそりと処分場に集められて、そのまま放置されていた。子どもたちが集う、校庭の土もしかりだ。避難生活がいつまで続くのか見えず、生活資金は届いていない。こんな足元の“いま”に対処することが、菅政権の最優先課題ではないのか。

 菅首相に「脱原発」や未来のエネルギーなど語る資格があるのか。ましてや、それを争点にした解散・総選挙などあり得ないはずだ。

 ■鈴木哲夫(すずき・てつお) 1958年、福岡県生まれ。早大卒。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、東京MXテレビ編集長などを経て、現在、日本BS放送報道局長。著書に「政党が操る選挙報道」(集英社新書)、「汚れ役」(講談社)など多数。

URL:http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110617/plt1106171931004-n1.htm

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    脱原発総選挙は実施しても役立たず菅氏の思い
    通りにはいかないだろう. そもそも, 国民の80%
    が役立たずの顔は見たくないし, 嘘付党も役立たず
    と分かっている. 冷静に考えれば明らかだが,
    やるかも知らんですな.
    2015年08月10日 15:27
  • yutakarlson

    永田町に駆けめぐる首相「原発解散」の噂 自民党に警戒感―【私の論評】これで騙されれば、国民が悪い!!悪いのは菅さんではない!!

    ブログ名:「Funny Restaurant 犬とレストランとイタリア料理」
    http://goo.gl/jyVgE
    こんにちは。国のエネルギー政策に関しては、ただ原発反対と叫ぶだけでは何も解決されません。ましてや、一政治家の権力欲を満たすために、この問題が扱われることは、絶対に許されることではありません。しかし、もし、今回菅さんの手口により、多くの政治家が翻弄されたり、国民が騙されたとしたら、それは、最早菅さん一人が悪いということではすみません。無論、国民が悪い、愚民であるということになると思います。原発を廃止するにしても、存続するにしても、さまざまな問題が山積しており、何も考えずに、原発の稼働を短期のうちにとめてしまえば、私たち国民は間違いなく甚大な悪影響を蒙ることになります。直接的な悪影響だけではなく、デフレで失われた20年が続いた日本が、今度は、30年、いや、50年続くかもしれません。そうなればますます、雇用は減り続けることでしょう。短絡的な判断だけ
    2015年08月10日 15:27
  • とおる

    海江田経産相(原発再稼動担当大臣)が各県知事にお願いに回りながら、管首相が脱原発選挙なんて、支離滅裂内閣の自爆テロ選挙?
    2015年08月10日 15:27

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