「・・・自民党側から見ても、まだ60前後ぐらいの、民主党からの賛成者はないから、ま、だいたい、おそらくは20議席ぐらい足りないだろうと。で、それなのにどうして、自民党は、内閣不信任決議案を公明党と一緒に出すのかと。その本当の狙いは、実はこれです・・・小沢グループだけで4~50の賛成者が出る。4~50って大変ですよ。・・・だから、もう事実上民主分裂であって、そうやってその、政局が動いていけば、それでやがて血路が開けるんじゃないかと思ってる。」青山繁晴 於:6/1放送「アンカー」青山繁晴の“ニュースDEズバリ”より
昨日のエントリーでは、自民党が連立に対して様子見を決め込み始めたといったけれど、自民党側からの戦略を考えてみたい。
まず、自民党にとっての"政局"の目標とは、もちろん政権奪取。そのためには、総選挙をして勝たなければならないのだけれど、衆議院の任期満了まであと2年ある。正攻法での政権奪取への道のりは遠い。
それに民主党は衆院で300議席以上を擁しているから、内閣不信任案を出したところで、与党からの大量造反が無い限り可決はしない。だから普通にやるだけでは、到底、民主党政権は倒せない。
それでも、今回、自民党は不信任案を出した。
冒頭に挙げた、青山繁晴氏の解説によると、もともと自民党が内閣不信任案決議を出した目的は、民主伊藤の分裂にあったという。なぜなら、決議案提出前の見込みでは、小沢グループからの40~50人の造反者が見込まれるものの、可決までの数には届かなかった。だけど、それでも4、50人も造反すれば、事実上民主は分裂したも同じだし、300人が250人になれば、衆院過半数を少し越える程度にまで民主党の力は落ちてしまう。その分、政権を倒しやすくなる。その辺りを狙っての提出なのだ、と。
ところが、採決当日の午前までに、小沢氏は不信任案に賛成する議員を90名集め、鳩山氏がその名簿を持って、菅首相に退陣を迫り、合意文書を作成し、辞任の言質を取ったとされている。
不信任案否決後、菅首相は、辞任の約束はしていないと開きなおり、原発の冷温停止までやると言い出した。鳩山氏をペテンにかけた。その後はもう皆さんのよく知るとおり。
だけど、週刊朝日(6月17日号)によると、実際には不信任案に賛成の造反議員は必要な数だけ集まらなかった。小沢氏こそ、70人近くの造反議員を集めたけれど、鳩山氏は自分と川内議員、松野頼久議員の3人しか集められなかった。そこで、鳩山氏は平野元官房長官を使って、例の合意書を作成させた上で、80人以上の賛成者リストをブラフで流して、菅首相を追いつめ、辞任の示唆を引き出したのだという。
これは、6月3日の「お情け宰相」のエントリーで、「鳩山氏が突きつけたという賛成者名簿は何人か水増しされたブラフだった可能性もある」と指摘していたのだけれど、そのとおりだったようだ。
菅首相の辞任示唆発言もそうだけれど、鳩山氏の名簿水増しといい、キツネとタヌキの化かし合いのよう。政局の現実はそんなものなのかもしれない。
ともあれ、菅首相の辞任茶番劇によって、菅首相に対する批難が沸き起こり、一気に退陣から連立への動きが出てきたのだけれど、不信任案提出の狙いが民主の分裂にあったとすると、自民の戦略は次の2段階のものではないかと推測される。
第一段階=民主党の分裂
第二段階=解散総選挙
先程も述べたように、民主は衆院で300以上の議席を持っているから、そうそう簡単に倒せない。だから、まず、民主を分裂させて、力を弱めてから、解散に追い込むというのは理に適っている。
だから、まず、不信任提出で民主の分裂を狙った。もし、採決で小沢氏が集めた70名規模の大量造反があれば、本当に民主党が分裂していた可能性があったし、可決されていた場合は、解散総選挙の目すらあった。だけど、それは、菅首相の狡知によって潰えてしまった。
すると、あとは、民主党内部での分裂、内ゲバを起こさせるしかない。そのために、自民は"連立"という甘い餌をぶら下げたのではないか。つまり、計算ずくでの"連立匂わせ発言"。
というのも、民主党にとって、自民と大連立ができれば、今の窮地はなんとか凌げてしまうから、自民からの条件はどんどん飲んでくれる可能性がある。事実、民主党は、復興基本法案を自公案を丸飲みしている。だから、これを利用して、たとえば、菅首相の早期退陣のみならず、ばらまき4Kの撤回を条件としてつきつければ、民主党執行部とマニフェスト至上主義の小沢グループとの対立は激しくなる。畢竟、民主党が分裂する火種になる。
そして、実際に、自民党は民主党に対して、子ども手当、戸別所得補償、高速無料化、高校無償化の「ばらまき4K」政策の撤回を求めている。
そこまで火をつけたら、しめたもの。あとは、民主でよ~く話し合って決めてください、と一歩引いて高見の見物。民主が割れるのを待てばいい。
それに、「大連立へのハードル」のエントリーで示したように、現在、大連立を模索しているといわれるラインは3つあって、谷垣氏はそれぞれのラインから個別に民主党内部の主導権争いの情報を入手できる立場にある。したがって、民主党に対する工作や対策なども容易に行えるという有利な立場にある。
そして、このタイミングで、自民が連立を口にしたことには、もうひとつ意味がある。それは、民主・公明の連立の阻止。
民主と公明で連立されてしまえば、参院のねじれも解消してしまう。そんなことがあれば、自民の政権奪取なんて遠い夢。なんとかそれを阻止したい。
だから、自民から連立を匂わせた。民自大連立になると、今度は公明やみんなの党など少数政党が、その意味を失う。彼らの意見など耳を貸さなくなる。だから、彼らは大連立には反対するしかない。
そうして彼らに反対させたところで、自民も一歩引いて距離を置く。自民が大連立を匂わせることで、公明やみんなの党に対して、強烈な牽制球を投げた。彼らはもう盗塁できなくなった。
つまり、これは、「連立やるやる詐欺」みたいなもので、大きくみれば、自民の民主分裂工作の一環なのではないか、という気もする。
もちろん、震災復興等があるから、いつまでもゆさぶるわけにはいかず、いくつかの条件と引き換えに閣外協力なりなんなりで折り合いをつけるのだろうけれど、民主党を分裂に追い込むという意味においては、この「連立やるやる詐欺」は有効に働く。
まぁ、一般論として、政局ばかりで政治空白を感心できることではないのだけれど、一度退陣示唆を口にした以上、やがて退陣する人が居座ることが自体が政治空白になるから、やはり早期退陣の圧力はますます強まることになるだろう。
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大連立、自民が次々と条件…党内の慎重論に配慮
民主、自民両党を中心とした大連立をめぐる議論が6日、両党を中心に一段と活発化した。
自民党内からは慎重論が相次ぎ、民主党では執行部と小沢一郎元代表を支持するグループとの主導権争いが激しさを増している。大連立実現までのハードルは高い。
自民党の谷垣総裁は6日、熊本市で講演し、大連立について「民主党で新しい体制が決まっても、マニフェスト(政権公約)や消費税をどう考えるのか分からないのでは、協力のしようがない。まず民主党の体制を注視したい」と述べ、当面は菅首相退陣や民主党の「ポスト菅」選びの動向を見極める考えを示した。
そもそも、表舞台での大連立論議のきっかけをつくったのは、1日の党首討論で「菅抜き大連立」の可能性に言及した谷垣氏だ。これを受け、石原幹事長が民主党の岡田幹事長と5日に歩調を合わせることになった。谷垣氏には「ふがいない民主党政権には任せていられない。一時的ならば、助けてもいい」(周辺)との思いが強いとされる。
にもかかわらず谷垣氏が「連立慎重論」への軌道修正を図ったのは、党内の反発に配慮してのことだ。
(2011年6月7日09時57分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110607-OYT1T00204.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
> 名簿水増しといい、キツネとタヌキの化かし合い
> のよう。政局の現実はそんなものなのかもしれない。
化かし合いにしてはいけませんね.
自民党の重鎭が不信任案提出を執行部に勧めたのは
政治が現在のように不真面目であってはいけない
との思いだろう. 少なくとも, 森元首相の談話からは
その様に感じられた.
だから, 自民党が民主党を分裂させるのを目的としたら,
多分, 旨く行かない. 何故なら, それでは嘘付党と
同じレベルの話だから.
政治家の本当の格の違いは国民生活の明日を自己の
中にどの様に位置付けているかに現れる. 参議院議長の
怒りもその点にある.
周囲の人がどの様に状況を判断するかは自由であるが,
自民党は「明日の国民生活」から離れてはいけない.
だから, 短期的には不利な, 或は, 戦略的でない判断
もあると思うが, それで良い.
その様に自民党執行部が決断できるなら, 民主党には
それを邪魔する正当性の一かけらも無いから, 最終的
には党崩壊にまで行かざるを得ないだろう.
とおる
ペテン師と党代表(首相)を批判しても、容認するかの如く、党の処分は無い。
民主主義・代議制の劣化を正すことができない政権与党(民主党・国民新党)
クマのプータロー