6月5日、民主党の岡田幹事長、自民党の石原幹事長は、菅首相退陣後に期間限定の大連立を目指すべきだとの考えを表明した。
これを受けてのことなのか、マスコミでは、何やら、もう大連立が決まったかのような報道で溢れ出している。
ところが大連立といっても、民主と自民が一緒になるという単純なものではなくて、その中身をみれば、3つのラインに分かれている。それは次のとおり。
1)民主党と自民党の長老組のライン
2)民自連のライン
3)復興再生議連のライン
1の長老組同士のラインとは、代表的には小沢氏-森喜朗氏のラインのこと。週間ポストの記事によると、5月中旬に、両者の秘密会談が行われ、救国連立の道筋について話しあわれた。そこでは、菅首相の退陣後に震災復興と原発事故対応に絞った暫定連立政権をつくる最終合意が結ばれ、森氏が自民党執行部に不信任案を出すよう説得したという。
2の民自連のラインとは、5月19日に民主党の樽床氏、自民党の菅義偉氏ら、中堅議員らによる「国難対処のために行動する民主・自民中堅若手議員連合」のことで、民主党87人、自民党22人の衆院議員計109人で結成された超党派の議員連合。呼びかね人らは4月初旬から会合を重ねており、特に、衆院当選5回以下の議員に限って参加を呼び掛けているのが特徴。この議連は明らかに世代交代を意識していて、長老組による大連立に対しては否定的。
そして、3の復興再生議連とは、5月26日に発足した、同じく超党派の「日本の復興と再生を実現する議員連盟」のことで、民主、自民、公明から衆参合わせて、約150人が参加している。呼びかけ人は仙谷官房副長官側近の古川氏と自民党の石破氏に近い鴨下氏、公明党の高木氏ら15人で、原発事故調査委員会の国会設置や被災地の二重ローン解消、放射性物質に関する法整備などについて検討し、政府や各党に提言することを目的としている。
このように既に自民・民主の間で3つの超党派のラインが存在していて、どれが連立の主導権を握るかで今後の政界は変わってゆく。
1の長老組主導での大連立だと、これまで以上に長老の発言力が増し、安定感はあるかもしれないけれども、改革の力は弱い連立になると思われる。それでも、東北の復興ではなく、震災復旧に限るのであれば、それなりに仕事はやってくれると思われる。
次に、2の民自連主導での大連立となると、逆に世代交代が一気に進むから改革の力は期待できるかもしれないけれど、党内を纏めるのに少し難儀する可能性がある。
そして3の復興再生議連についていえば、2と同じく各党の中堅・若手が中心であるものの、民主・自民・公明の3党が加わっていることと、自民党の大島副総裁や石原幹事長、民主党の枝野官房長官や岡田幹事長らもかかわり始めていることから、連立の中心的な動きはこの復興再生議連になるのではないかと見られている。
それでも、長老組や民自連は彼らなりの思惑もあるだろうから、それぞれの党内で、連立に対する調整作業は必要となる。特に民主党は、菅首相サイドと小沢氏グループの対立があるから、党内の調整には難航するのではないかと思う。
特に、現時点で小沢グループは、大連立にも、その条件となる民主党マニフェストの見直しにも大反対していると伝えられているし、小沢グループの中には、両院議員総会を求めるのは、菅首相の首というよりは、岡田幹事長の首を取りにいくのが目的だ、という幹部もいるそうだから、前途多難。
つまり、現状で大連立を模索するにしても、どのラインが主導権を握るかの争いが予想されるために、ある意味、各党の執行部の統率力、政党としての一体感がどれくらいあるかの試しがなされるという面があるように思う。
それに、大連立の前提には、菅首相に退陣してもらわなければいけないから、先の内閣不信任案に際して、大きな影響力を示した小沢氏、鳩山氏とどのように調整して、どのような結論にもってゆくのか。簡単な話じゃない。
それに何より、当の菅首相は、自身の退陣前提で、大連立の枠組みの話が進んでいることに対して、「何で俺が辞めさせられるんだ!辞めさせる手段はあるのか!」と、ものすごい剣幕でブチ切れているそうだから、簡単に首に鈴がつけられるかどうかは分からない。
民主党の中堅議員は、条件闘争をする気ではないかと漏らしている。
鳩菅合意文書には、「復興基本法案の成立」と「第2次補正予算の早期編成のめどをつけること」とは書かれているのだけれど、菅首相は「特例公債法案」と、「税と社会保障の一体改革」の道筋をつけて退きたいと言っているそうだから、確かに条件闘争といえば条件闘争を始めているとは言える。
全く呆れる他ない。
だから、その意味では、菅首相退陣は、不信任案が否決され、辞める気のない首相を、どうやって辞めさせたのかという稀有な前例を作ることにもなる。
どうやら、簡単にはいかなそうだけれど、菅首相の望みどおり、「歴史に名を残せる」可能性は高い。悪名ではあるのだけれど。
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首相退陣後に「期限付き大連立を」民自幹事長
民主党の岡田、自民党の石原両幹事長は5日、東日本大震災の復興政策や、社会保障と税の一体改革の実現などのため、菅首相(民主党代表)の退陣後に期間限定で両党を中心とする大連立を目指すべきだとの考えをそろって表明した。
岡田氏は、新首相は民主党から選ぶべきだとの考えも示した。菅政権との連立を拒否してきた自民党が、菅政権退陣後の新政権への参加方針を示したことで、首相の早期退陣論が拡大し、大連立に向けた民主、自民両党の協議が加速する可能性が出てきた。
岡田氏は東京都内で記者団に、「テーマ、期限を切って与野党が協力する形をつくるのが望ましい。震災(対応)や、税と社会保障の一体改革といった大きな課題を乗り越えるには、期限付きの連立が望ましい」と指摘。大連立の首相については「第1党が出すのが基本だ」と述べ、民主党の新代表を「ポスト菅」の新首相にするべきだとの考えを示した。
これに先立ち、岡田氏はフジテレビの番組で、大連立の期間について「衆院を解散しても、参院で野党が過半数を持っている実態は変わらない。次の参院選まで続けることになるかもしれない」と語り、衆院選挙制度改革などの処理も念頭に1年以上の長期間が望ましいとの考えを示唆した。
民主党の前原誠司前外相も同番組で、「ねじれ(国会)が恒常化している。打開策は、時限的な大連立だと思う」と強調した。新しい党代表の条件については、「党代表が誰になるかが、野党の協力を得やすい環境の一つになるという視点に立つべきだ」と述べ、野党との連携を挙げた。
一方、石原氏は都内で記者団に「まずは民主党に新しいリーダーを決めてもらう」と述べ、首相の退陣が大連立の前提との考えを強調。そのうえで「期限を区切り、目的を決めて、できる時に衆院選を行わなければならない」と語り、大連立を一定期間続けた後に衆院解散・総選挙を行うことも条件に挙げた。
(2011年6月6日06時43分 読売新聞)
URL:
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110605-OYT1T00557.htm
菅粛清へ仙谷暗躍…「枝野首相」「石破副総理」で院政狙い 2011.06.06
★鈴木哲夫の永田町核心リポート
菅直人首相の早期退陣が有力視されてきた。同僚議員をだましてでも、地位にしがみつこうとする卑しさに嫌悪感が充満しているのだ。永田町の焦点は「ポスト菅」と、民主党と自民党の大連立の行方。その絵図を描くのは、小沢一郎元代表の仇敵で、「影の宰相」とよばれた仙谷由人官房副長官だ。意中の人事は「枝野幸男官房長官を首相、自民党の石破茂政調会長を副総理」だという。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏が核心に迫った。
「今月いっぱいには退陣してもらわなければならない。その後の連立や赤字国債発行法案などを考えればリミットだ」
仙谷氏は先週末、周囲にこう漏らした。菅首相のクビを差し出すことに、もはや何の躊躇もない。
東日本大震災の対応のため、官邸に副長官として呼び戻された仙谷氏。だが、菅政権を支える熱意はすでに失せていたという。
「1月の内閣改造前、仙谷さんは菅首相と一対一で、じっくり話した。このとき菅さんは、『更迭なんかしない。このまま突破する』と語り、仙谷さん以外の人事などを話し合った。仙谷さんも『菅さんは一緒にやりましょうと言ってくれた』と安心して話していた。ところが、その数日後、別の人たちから『仙谷を更迭しないと国会は乗り切れない』とアドバイスされ、結局、仙谷さんを切った。前言を平気で翻す信用できない奴だと分かった、と仙谷さんは言っていた」(仙谷氏に近い議員)
このときから、仙谷氏の中には、それまでの「反小沢」に加え「反菅」も確実に加わった。
副長官として官邸に戻った後も、「菅の能力はあんなものだろう」と官邸スタッフらに漏らし、蓮舫行政刷新相や辻元清美補佐官ら子飼い議員に勝手に指示を出した。東京電力の救済スキーム案なども、経産省とすり合わせをした官邸側の代表は仙谷氏だった。菅首相は差し置かれた。
連立についても「菅を抱えている以上無理だ」と早くから判断し、水面下で自民党や公明党幹部と接触していた。もし、野党から「菅降ろし」の動きが出ればうまくそれに乗り、世代交代を図る機会を狙っていたのだ。
5月26日に発足した「復興再生議連」も、仙谷氏が菅首相を切って連立政権を目指す別動隊だ。議連には民主党、自民党、公明党から約90人が参加。世話人は民主党の古川元久元官房副長官と自民党の鴨下一郎元環境相だが、古川氏は仙谷氏の忠実な部下。そして鴨下氏のバックには石破茂政調会長が控えている。
つまり、この議連は、「反小沢」「反菅」「世代交代」で一致し、政策的にも近い仙谷・石破ラインが仕掛けている連立のベースなのである。
「菅を降ろした後の連立は、超党派の動きが3つある。1つは民主党と自民党の長老組。2つめは民主党の松野頼久元官房副長官と、自民党の菅義偉元総務相らの『民自連』。そして3つめが、この『復興再生議連』。だが、『復興-』には自民党の大島理森副総裁や石原伸晃幹事長、民主側は枝野官房長官や岡田克也幹事長らもかかわり始めているから、今後の連立の具体的な中身を詰めていくのはここが中心になっていくだろう。当然、そのナンバーワンは仙谷さんということになる」(自民党幹部)
不信任決議案が採決された2日後には、早くも仙谷氏と大島氏が会っている。この会談は大島氏側が求めたとされる。野党にとって、今後を協議できる与党のカウンターパートは仙谷氏であることを証明したことに他ならない。
また、菅首相がいったん退陣をにおわせた後に居座りを示唆し始めたことに対しても、仙谷氏は枝野、岡田両氏や、安住淳国対委員長らに指示して、「そう遠くない時期」と発言させ包囲網を作った。
仙谷氏は「安住はちょっとはっきりと(時期は夏と)言い過ぎたなあ」と苦笑いするほどの余裕だという。いまや、菅退陣のスケジュールは仙谷氏の手中にあり、そこに「ポスト菅」狙いの面々が集まりつつある。
以前、舛添要一元厚労相は、官邸を「あさま山荘」になぞらえて、その思想や稚拙さを批判したが、小沢氏を粛清した後、今度は菅首相そのものを粛清するということだ。「そのリーダーが仙谷氏」(官邸スタッフ)なのである。
では、菅首相を降ろした後、いったい誰を首相に考えているのか。
仙谷氏に近い議員は「枝野さんが世論調査の人気も高いし、本命と考えている。仙谷さんが本当に首相にしたいのは前原(誠司元外相)さんだが、次の首相は限定の連立政権で政局も不安定なので、前原氏を温存しようと考えている。次の首相はワンポイントで、副総理には水面下で接してきた石破さんあたりを考えているようだ」と解説する。
しかし、こうした仙谷氏の「世代交代論」に対し、民主党では小沢氏と鳩山由紀夫前首相のグループ、自民党では長老組を中心に根強い反発がある。
「世代交代と言って若い奴をうまく乗せ、自分はそれを操る。かつて仙谷は、小沢が御輿を担いでウラで操る手法をさんざん批判したが、結局、同じことをやろうとしている。われわれを排除するというならやってみろ。あんな奴が中心の連立なんか潰してやる」(自民党三役経験者)
「仙谷がやろうとしている連立は、政策的にはわれわれと決定的に違う。離党して新党を作ることも覚悟している」(小沢グループ議員)
仙谷氏のシナリオ通りに事が運ぶかはまだ不透明だ。
■鈴木哲夫(すずき・てつお) 1958年、福岡県生まれ。早大卒。テレビ西日本報道部、フジテレビ政治部、東京MXテレビ編集長などを経て、現在、日本BS放送報道局長。著書に「政党が操る選挙報道」(集英社新書)、「汚れ役」(講談社)など多数。
URL:http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110606/plt1106061637005-n1.htm
“権力亡者”末期菅に処置なし「何で俺が辞めるんだ!」 2011.06.06
与野党内から、菅直人首相に今月中の退陣を求める声が高まっている。しかし、当の本人は1日でも長く官邸に居座るため、あの手この手の延命工作を画策する一方、自らプライドのため、退陣するにしても何らかの果実を得ようと条件闘争に燃えているという。民主党内では「菅首相の姑息な“延命脳”は手の施しようもない」(党内若手)との声もある。
主要閣僚や党幹部が「首相は長くは居座らない」と早期退陣を示唆した4日、菅首相は別の党幹部に全く違う見解を披露していた。
党幹部によると、菅首相はまず、「何で俺が辞めさせられるんだ! 辞めさせる手段はあるのか!」と、ものすごい剣幕でブチ切れた。
そのうえで、復興基本法が通り、2011年度第2次補正予算案編成が終わるとみられる6月中の退陣が求められていることに対し、「この2つが通っても復興ができるわけではない」「がれきも残っているし、誰がやってもできない」「今辞めたら民主党代表選になって政治空白ができる」などと、時には涙を浮かべながら訴えたという。
早期退陣を示唆しているのは、枝野幸男官房長官や民主党の岡田克也幹事長ら周辺だけ。菅首相自身は公の場で「退陣」とは一言も言っていないだけに、小沢一郎元代表や自民党からは「とても信用できない。こちらが隙を見せたら、いくらでも居座る気ではないか」と疑う向きも多い。
確かに、そう思っても仕方ないほど、菅首相の延命・権力維持に向けた執念はすさまじい。
内閣不信任案が否決された2日夜に「原子炉の冷温停止が1つのめど」と、来年1月までの続投を示唆。早期退陣の約束を反故にされた鳩山由紀夫前首相が「ペテン師だ」と猛反発し、6月中の退陣を求める声が強まると、前出のように周辺は「夏まで」とぼんやりとした目安を語ったが、菅首相は親しい知人に、こう語ったとされる。
「復興基本法と2次補正のほか、特例公債法案と、税と社会保障の一体改革の道筋をつけて退きたい」
後半2つは、鳩山氏との確認文書にはまったく触れられていない。
これを漏れ聞いた民主党中堅議員は「条件闘争をする気だろう。歴史に名前を残したいとの思いが強い菅首相らしい」と皮肉った。
ただ、自民、公明両党などは、すでに「菅抜き」での新体制を視野に入れ、民主党との協力を模索し始めている。菅首相がしがみつけば、しがみつくほど反発だけが強まる状況といえる。
「死に体」の菅首相に残された手段は多くなさそうだ。
URL:http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110606/plt1106061613003-n1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
等に書かれているのはリベラル勢力の作戦だろう.
そもそも, 本来の自民党員が民主党中堅議員と意見が
一致して良い筈がない. この様な自民党リベラルの
動きは無視して, 各党の執行部間の協定に基づいた
連立を考えるべきだろう. 勿論, その前提条件は
現在の菅・岡田執行部体制の退場である. 自民党
内部のリベラル勢力の動きには注意が必要だし,
まともな評価を与えて野放しにしてはいけない.
彼ら自民党リベラル勢力は保守に寄生して生き残ろう
としている.
sdi
ちなみに、3.のラインの黒幕が仙谷副官房長官というチラ裏記事がありました。彼の人の目標は自分がトップになるのではなく、キングメーカーとしての決定権を自分が一手に握ることですからありそうなことです。
日比野
どのような手段を取るにせよ、「前例」になってしまいますから。あまり悪しき前例は作らないほうがいいんですが。
確かに、解散強行が結果的には一番よくなる気がしますけれども、状況的にも条件的にも今のところは可能性は少ないですね。あるいはけものへん殿ならもしかして、があるかもしれませんけれども。
almanos