7月21日、民主党の岡田幹事長は記者会見で、2009年衆院選の民主党マニフェストについて、「政策の必要性と実現の見通しについて検討が不十分だった。見通しの甘さを国民に率直におわびしたい」とした文書を発表し、公式の場で初めて謝罪した。
これは、国会で、現在審議中の特例公債法案の成立に向けて、自公の協力を得るための秘策だという見方が出ているようだけれど、秘策もなにも、ねじれ国会の現状で、どうしても法案を通したいのであれば、野党と折衝し、場合によっては野党案を丸飲みでもしなければどうにもならない時だって当然ある。
昨年の9月に、民主党代表選が行われたけれど、当時、菅・小沢両候補の公開討論会で、小沢氏はねじれ国会への対応について、「主張、政治的な考え方の違う問題についてはまったく動かない。リーダーとしては打開策をきちんと考えておく必要がある」と指摘していた。
今、正にその問題に直面して、民主党は自らの主張を引っ込ませざるを得なくなっている。
当時の公開討論会で、「ねじれ国会の政権運営にいたっては、真摯に話し合えば上手くいく」などと寝言を言っていた、菅首相は、7月22日の参院予算委員会で、先の衆院選マニフェストについて「財源にやや見通しの甘い部分もあった。国民におわびを申し上げたい」と陳謝することになった。
だけど、確か、民主党のマニフェストで、子ども手当とか高速道路無料化等々の新規政策での必要財源は17兆円くらいだったかと記憶しているけれど、総選挙から2年たって、実現できたのは、農家個別補償の0.9兆円と、高校無償化の0.4兆円、その他合わせて4.7兆円くらい。
マニフェストで見積もっていた額の1/3以下の財源しか確保できなかったことの、一体何処が「やや甘い」見通しだったのか。見通しという言葉を使うこと自体がおかしい、まったく見えていなかったというべきだろうし、これでは詐欺フェストといわれても仕方ない。
民主党の岡田幹事長は、22日に、子ども手当に関する実務者協議を急遽設定して、「所得制限1800万円」から大幅譲歩した案を自公両党に提示したようだけれど、自民党内には今国会の会期延長を巡って、3党合意が反故にされた不信感も残っていて、合意できるかどうかはまだ不透明。
今のところ、菅首相の退陣3条件とされる、「2次補正」「特例公債法案」「再生エネルギー特別措置法案」のうち成立したのは、2次補正だけ。今回の子ども手当見直しで「特例公債法案」が通せるかどうかというところ。そして、再生エネルギー法案に至っては、自民党は「結論を急がない」と静観している。
だから、退陣云々をめぐる民主党内の内ゲバも、今延長国会の会期一杯まで行なわれると思われる。
民主党内では、野党の協力を得るために、菅首相が党代表だけを辞任して、新代表が野党との交渉を進める「総代分離」論まで出ているというけれど、まぁ手段としては姑息に過ぎるし、原発再稼働をめぐってのゴタゴタをみれば分かるように、閣僚が一生懸命話を纏めようと奔走しても、自身の保身と思いつきで、ちゃぶ台返しをする、ネジが少々切れた宰相殿が今の地位にいる限り、いくら総代分離で交渉を進めても、それが守られる保障はない。
それ以前に、この「総代分離」論は菅首相の了解を得ているわけでもなく、菅降ろしもさっぱりの状況では、精々ただの打ち上げ花火くらいにしかならないだろう。
ということで、現状での民主党内での菅おろしは手詰まりの状態で、もしも何らかの動きがあるとするならば、やはり小沢、鳩山両氏が人数を集めて、不信任案などを可決して、法的に引きずり降ろすくらいしかない。
菅首相は、先日、ペルーのリマで28日にあるウマラ次期大統領就任式典の特使を、鳩山氏に依頼したそうなのだけれど、その際、鳩山氏から「私にお願いしたということは、分かっていますよね?」と暗に辞任を促され、「分かっています」と答えたという。
まぁ、ルーピーと嘘つきの会話だから、話半分、いや十分の一くらいに考えていて丁度よいかもしれないけれど、退陣3条件が整って、なお菅首相が辞めない場合には、やはり、何らかの動きはあると思う。
少なくとも今月はこのまま、ダラダラいくのだろう。8月下旬に一波乱あるか注目したい。


菅直人首相は22日の参院予算委員会で、民主党の09年衆院選マニフェスト(政権公約)について「財源にやや見通しの甘い部分もあった。国民におわびを申し上げたい」と陳謝した。総額16・8兆円に達するマニフェストの新規政策は、民主党政権の発足当初から行き詰まっていたが、東日本大震災への対応を理由にようやく破綻を認めた形だ。首相の陳謝を受け、民主党は子ども手当の修正を巡り自民、公明両党に譲歩するなど、懸案の特例公債法案の早期成立に向け環境整備を加速させたが、自民党内には今国会の会期延長を巡り3党合意がほごにされた不信感も残り、合意が整うかどうかはなお見通せない。
「予算委員会で首相が『マニフェストは正しかった』と言ったら崩れてしまう」。自民党の石原伸晃幹事長は22日の3党幹事長会談で、民主党の岡田克也幹事長に懸念を示した。だが同じころ、首相は参院予算委で「基本的な認識は岡田幹事長と一致している」と答弁。岡田氏は事前に首相に根回ししていた。
首相の退陣をにらみ民主、自民、公明3党は再び接近し始めた。民主党は22日、子ども手当に関する実務者協議を急きょ設定。同党幹部は「新たな案を提示する。できれば今日中にまとめる」と意気込んだ。協議では「所得制限1800万円」から大幅譲歩した案を自公両党に提示。22日は合意に至らなかったが、民主党は妥結への自信を深めている。
自民党は大島理森副総裁と石原氏のラインが民主党との連携に動いた。大島氏は21日、岡田氏が首相に先立ちマニフェストについて陳謝したのを受け「現状を客観的に考えた意見」と評価。大島氏は同日、11年度第2次補正予算案の成立が25日にずれ込むことを報告した参院自民党幹部に「原子力損害賠償支援機構法案などの審議に影響しなければ構わない」と、民主党に配慮を見せた。子ども手当の譲歩案が自民党に伝わったのも幹事長ルートだった。
だが党内には、民主党との協調に前のめりな石原氏らへの不満も根強い。石破茂政調会長は22日、実務者協議を前に「紙で持ってこないと判断しようがない」と「蚊帳の外」の不満を漏らした。「民主党はまた党内がまとまらないと言い出すかもしれない」(中堅議員)と疑問視する声もある。首相に近い北沢俊美防衛相は22日の会見で「原理主義者が急に『謝罪主義者』になっても、なかなか成果は上がらない」と岡田氏批判を展開した。【大場伸也、念佛明奈】
◇小沢元代表と対立、背景に--公約破綻陳謝
09年マニフェストに関し、菅首相と岡田氏が「見通しの甘さ」を認めた背景には、基本政策を巡る小沢一郎元代表との路線対立がある。岡田氏に近い中堅議員は陳謝について「(小沢路線の)店じまい」と話すが、「とっくの昔に破綻している」(財務省幹部)マニフェストで有権者に過大な期待を振りまいた責任が問われそうだ。
民主党は09年衆院選で、5・3兆円規模の子ども手当をはじめ、高速道路無料化やガソリン暫定税率の廃止など家計を直接支援する制度をぶち上げた。これらを主導したのが、06年に代表に就任した小沢元代表だ。月額1万6000円だった子ども手当を2万6000円に引き上げるなど、主要政策の財源を拡充し、それ以前に菅首相や岡田氏らが築いた政策体系を「バラマキ型」に変更。財源は「無駄遣いの根絶」「埋蔵金の活用」で確保できると主張した。
小沢元代表は、年金目的消費税の導入など国民負担を増やす政策も削除。当時党代表代行だった首相は「残しておけばいい」と不満を漏らした。岡田氏も、09年衆院選マニフェストの策定の際、ガソリン税の暫定税率を10年度から廃止する方針について「11年度の環境税創設と並行実施すべきだ」と財源確保の観点から抵抗した。
元代表の主導で策定されたマニフェストで政権交代を実現した民主党だが、政権を取った途端に財源確保に苦しんだ。無駄削減のために実施した「事業仕分け」などで捻出できたのは、10年度予算で3・3兆円。ガソリン税の暫定税率廃止も早々に断念。11年度も特別会計の事業仕分けなどを行ったが6000億円しか捻出できず、子ども手当の満額支給も実現できなかった。
首相と岡田氏による今回の陳謝には、野党時代からのこうした経緯がある。ただ、方針転換は党の機関決定を経たものではない。元代表に近い鳩山由紀夫前首相は22日「特例公債法案のために野党にすり寄ったのでは」と首相らを批判。鳩山グループの川内博史氏らも岡田氏に発言撤回を申し入れた。党内対立が激化するのは確実だ。
22日の民主、自民、公明3党の幹事長会談では井上義久公明党幹事長が「党内のコンセンサスはどうなってるのか」と追及。岡田氏が「幹事長の私の発言が民主党の立場だ」と強調する場面もあった。【田中成之、坂井隆之】
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/kannaikaku/news/20110723ddm002010051000c.html

平成23年度第2次補正予算案の成立が確実になったことで、菅直人首相の「退陣3条件」の1つがクリアされた。残るは特例公債法案と再生エネルギー特別措置法案。民主党執行部は野党の協力を得るため、首相交代に向けて外堀から埋めようと躍起だが、肝心の本丸に落城の気配はない。
自民党の石原伸晃幹事長は20日、ニッポン放送番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」で、民主党の岡田克也幹事長から聞いたという話を暴露した。
「この前、岡田さんから『8月7日に代表選をやりますから』といきなり言われました」
石原氏は「首相は辞めない。8月になると、ものを言いそうな日がポンポンポンと来るからだ」とつけ加え、広島、長崎の「原爆の日」や8月15日の終戦の日にあわせて、首相が政権延命を図る発言を行うとの見方を示した。
岡田氏は石原氏の発言を否定しているが、執行部の一人は「8月上旬に代表選をやる目標は変わっていない」と語る。首相退陣の前提となる3案を8月上旬までに仕上げ、即座に両院議員総会を開いて新代表を選ぶ-という想定だ。
しかし、民主党が自民、公明両党を特例公債法案の賛成に引き込むため行っている子ども手当制度の見直し協議では、野党側が態度を硬化させている。再生エネルギー特措法案に関しても自民党は「結論を急がない」とする。8月上旬に3条件を整えるのは今や風前のともしびだ。
そこで、民主党内で奇策が持ち上がった。菅首相(内閣総理大臣)が党代表だけを辞任し、新代表が野党との交渉を進める「総代分離」論だ。岡田氏は20日の党常任幹事会で、出席者から総代分離の可能性を問われ、「できないことはない」と答えた。
「8・7代表選」説も「総代分離」論も、退陣しようとしない首相を、民主党代表の座から引きずり降ろすことによって、なんとか野党の理解を得ようという苦肉の策だ。
もっとも、首相が承諾しているわけではなく、自民党も公明党も真に受けていない。小沢一郎元代表や鳩山由紀夫前首相のグループも、岡田氏や仙谷由人官房副長官らこれまで首相を支えてきた面々への不信感から「お手並み拝見」を決め込み、「菅降ろし」は盛り上がらない。
「3つの条件を一つ一つこなすことに協力しながら、新しい体制が必ずできると信じようじゃないか。『早く辞めろ』みたいな行動はとるべきではない」
鳩山氏は20日夜、都内の居酒屋で開いたグループ幹部との会合で訴えた。
実は鳩山氏は今週、首相から電話を受けていた。ペルーのリマで28日にあるウマラ次期大統領就任式典の特使を依頼された鳩山氏が「私にお願いしたということは、分かっていますよね?」と暗に辞任を促すと、首相は「分かっています」としおらしく答えた。
だが、首相は20日の衆院予算委員会で「福島第1原発は工程表のステップ1が予定通り完了した。そういう責任をきちんと果たしていくことが私自身の今の基本だ」と意欲を見せた。
執行部の一人は投げやり気味にこう漏らした。
「まずワンアウト! もっとも、『野球はツーアウトから』というから怖いよな…」(加納宏幸)
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110721/plc11072100160001-n1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
だが, 流石は嘘も嘘でないと言いくるめる嘘つき党.
御免と言って後は知らん顔.
謝って済むなら警察はいらん.
とおる
異論・反論がある現実を認識も調整もできず、自らの願望・理想を表明するだけで、現実の政治ができると思った浅はかなマニフェスト・政党だということです。
これは、
(1)鳩山前首相の普天間基地移設で、「国外、最低でも県外」と言ってダメだったこと。
(2)管首相の不信任案否決の直前に、管首相が辞任表明したかの発言を聞いて、辞任表明と勘違いした民主党の国会議員が、後日、管首相が「辞任の考えも無く、辞任という言葉を使ったことが無い」と国会で明言しているにも関わらず、「8月末までには辞任してくれるだろう」と自己満足を表明。
でも似た構造です。
小沢代表が、以前、「民主党には政権担当能力が無い」と記者会見で発言したことがありますが、まさに、民主党には現実を認識し調整するという政治能力・政権担当能力は無いことがあからさまになっています。