米空母「キティホーク」を買え

 
日本が空母を保有することになるかもしれないという企画がある。

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尤も、これは、ある民間団体から出された案で、あくまでも企画段階の話。

ある民間団体とは、2010年5月に発足した「横須賀・三浦半島を元気にするプロジェクト」という団体で、横須賀・三浦半島の観光の価値向上のために集まった横須賀・三浦半島内の事業者・商店街組合・メディア企業・イベント団体・有識者などで構成されている。

プロジェクトは「情報部会」、「観光資源部会」、「地産地消部会」 の3つの部会を持ち、それぞれ、横須賀・三浦半島における観光コース提案や発信、観光資源の開発、観光ホスピタリティ環境の整備、地場産品や土産物の発掘と販売場所の開拓、横須賀・三浦半島の観光グランドデザインの提言などを行っている。

このプロジェクトが企画中の案のひとつとして、先ごろ退役したアメリカ空母「キティホーク」を横須賀に誘致するという提案書を提出した。

これは、大型の空母キティホークを記念艦として、横須賀に置くことで大型駐車場、観光資源、大型災害救助艦として活用できないかというプランで、費用含めて、結構真剣に議論されているようだ。

空母キティホークは、1960年5月に進水以来、以後2009年1月の退役まで50年近くに渡り活動を続け、ベトナム戦争やソマリア空爆にも参加した戦歴を持っている。1998年には横須賀に配備され、長らく横須賀港のシンボルとなっていた。

キティホークは全長323.8m、基準排水量6万1351t、速力は最大32ノット。

特に魅力的なのは、災害救助艦としてのパフォーマンスで、現役時代は乗員数5500人。部屋数2400以上、手術室および治療室6、病院ベッド数65、医師4人、その他、床屋、郵便局など、小さな町に匹敵するインフラを備え、食事も1万7千食以上、一日あたりの供給蒸留水は144万4000リットルと申し分ない。

また、搭載できる艦載機は56機、ヘリが15機、最大で90機搭載可能だから、災害救助艦としてみれば、まるで、救助機能付の避難所、いや町というべきで、災害時の救助に関してこれほど力を発揮するものはない。実際、先の大震災でも「トモダチ作戦」により派遣されたアメリカ空母「ドナルド・レーガン」は被災者の救助に多大な貢献をしている。

また、キティホークの動力は原子力ではなくて通常動力だから、原子力に対するアレルギーが垣間見えつつある日本にとっても受け入れやすいだろう。もっとも艦齢が50年にもなる老朽艦だから、「横須賀・三浦半島を元気にするプロジェクト」側でも、使用期限として、10年程度と見積もっているようだ。

このプランは非常に面白いと思う。



近年、各国で、空母を新たに配備したり増強したりする動きが相次いでいる。中国は旧ソ連製の空母ワリヤーグを改造した空母を近く完成させるし、インドなども空母を増強してる。

日本もそろそろ真剣に空母、それも正規空母の導入を考えるべき時期にきていると思う。現在、海自が保有する「ひゅうが型護衛艦」16DDHは設計時点で固定翼機の運用は考慮されていないヘリ搭載型だし、次期護衛艦である22DDHにしても、ひゅうが型より大型化した多目的空母とはいえ、排水量3万トンたらずの軽空母級。中国の「ワリヤーグ」空母の排水量5万トンクラスとは規模が違う。

だから、余計に排水量6万トンクラスの正規空母級の「キティホーク」を日本が保有するともなれば、その「政治的」インパクトは計り知れない。おそらく保有するだけで、中国に対する抑止力のみならず、周辺の東南アジア諸国に対しての安全保障上の大きなメッセージになる。

ただ、購入費や維持費の問題が相当発生するし、アメリカ政府および米軍との折衝等の問題も予想されるのだけれど、今、アメリカは巨額の財政赤字に苦しんでいるから、たとえば、日本が保有する米国債の利息をそれに充てればいい。

日本は2011年3月現在で、9079億ドルにも及ぶ米国債を持っているけれど、そこからの利息収入は、米国債の金利を3.5%として、大体317.7億ドル、1ドル80円でも、およそ2兆5千億円になる。年間でこれだけ収入があれば、キティホーク1艦どころか、新造空母を造ってもお釣りがくる。

いっそのこと、アメリカ軍マレン統合参謀本部議長あたりに「サッカー女子Wカップ決勝でなでしこが勝って世界一になったことだし、日米同盟を再考して、東アジアの安全保障に日本も一役買うことにしたいから、米国債の利子支払いを減額する代わりにキティホークを売ってくれ。できればF4Fの後継として、F18スーパーホーネットでもオマケに付けてくれればなおのこと有難い。キティホークの使用期限として向こう10年程度を考えているが、その間、米国債の利息支払いは1%にして貰って構わない。」という交渉くらいしてはどうか。

中国の空母が完成しようかというこの時期になって、今から空母を新造したって間に合わない。ならば、たとえ10年でも、すでにあるアメリカ退役空母を買って、運用ノウハウなりを身に付けながら、抑止力を発揮して貰ったほうがよっぽどいい。

以前「タクティカル・ポリスシーパワー」のエントリーで、海上専門の警備保障会社を立ち上げて、そこに、退役イージス艦や潜水艦を払い下げるとか、タンカーを改造して空母にしてしまうとかしたらどうか、と述べたことがあるけれど、自衛隊が空母を持つことに世論が拒否感を示すなら、それこそ横須賀にキティホークを買ってもらって、新たに立ち上げた海上専門の警備保障会社に一年のうち何ヶ月かをレンタルする手だってある。

アメリカにデフォルトされて、米国債を紙くず化されるくらいなら、今のうちに、米国債を利用して買えるものはどんどん買っておいていいと思うし、老朽艦とて「日本」が保有するということは、魔改造されてどんな新鋭艦に化けるかもわからないと各国に警戒される可能性だってある。

新造正規空母を持つより、時間も金も節約できる近々の安全保障政策として考えてみる余地はあると思う。




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この記事へのコメント

  • 日比野

    sdiさん。
    >膨大なマンパワーが必要だということは頭に入れて置いてください。
    もちろん承知の上で言っています。それについてのエントリーもしたことがあります。

    これは日本が正規空母を持つ意思があるという政治的意味合いが大きいということと、やはり将来を考えると正規空母を動かせるくらいのマンパワーを養っておく必要があると考えるからです。

    今から5年~10年かけて、キティホークを動かせるくらいのマンパワーと実績を積めば、それこそ、実用性の高い軽空母クラスを3~4隻運用できる力が持てる筈ですからね。

    3000人の乗員をどう確保するかという問題は依然残りますけれども、いずれは直面する問題です。

    スペインやイタリアが破綻して尚且つ、軽空母を貸してくれればいいですけれども絶対という保証はない。万が一貸してくれるにしても、当然同じことは中国も考える筈で、札束任せ、または資源・市場をチラつかせて分捕りにくることは十分考えられます。

    それよりは、世界最強の同盟国を持っていることを生かして、使えるものはなんでも生かしていくことも考えたほうがよいかと思います。
    2015年08月10日 15:27
  • 白なまず

    物資の積載輸送能力は相当なものでしょうから、道路、鉄道が被災し使用できない時や離島への郵便、宅急便等の物資輸送を基本業務とし、そこに海上保安官や自衛隊の分隊を常駐させ非常時には自衛隊または保安官に権限が変わるような運用ができると、普段は働くおじさんでイザとなったら正義の味方になれるといいんでしょうね。
    2015年08月10日 15:27
  • ひゅうが

    アメリカも中国の事考えるなら日本に空母売っても良いんじゃない!
    払い下げ空母や艦艇などタダで日本に譲り日本が改良する様にしてくれたら良いのにね!
    解体するにも費用かかるしね!
    アメリカのミサイル艦艇オークション1万円から出ていた位だから日本が買えば良いのにね!
    2015年08月10日 15:27
  • 黒騎士

    キティホークより、今期退役する英国のアーク・ロイヤル買った方か
    安上がりのような気がします。
    シーハリアーもいっぱい余ってますし。
    対費用効果なら、こっちの方が高いと思います。
    2015年08月10日 15:27
  • sdi

    空母「キティホーク」の乗員内訳は、固有乗員2930名、航空要員2480名、司令部要員70名なので「艦」として運用するのに大体3000人弱の乗組員を必要とします。「こんごう」型は300名。これは固有乗員と思われますので、人件費だけでざっと「こんごう」10隻分になります。丸々3000人必要か、という議論はあるでしょうが10万トンの「艦」を維持運用するのにそれほど膨大なマンパワーが必要だということは頭に入れて置いてください。
    本当に引き取って「救援船」として生かすなら、機関部の運用コストとメンテナンスコストを筆頭に膨大な費用負担(特に人件費)を覚悟する必要があるでしょう。なにしろ、可動状態を維持しなくてはならなのですから。この手のプランを立てる方々が忘れがちなのは「機械は動かさずに放置すると本当に動かなくなる」ということです。大規模救難艦として非常時に備えるなら、国内の場合、災害発生後24時間以内に出動し最低でも72時間以内に現地に到着して活動を開始するくらいの即応性が求められます(この数値は先の震災での陸自第四師団の実績値)。そしてそのような即応性を確保するにはモスボールのような保管方法で
    2015年08月10日 15:27
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    米国空母はカタパルトが魅力的.
    日本には電磁カタパルトの基本技術もあるから
    キティホークのカタパルトとレーダを独自に改修すれば
    世界的にもトップレベルの戦力になると思う.

    マンパワー: 軍隊はデフレ時代の絶好の労働力バッファ
    2015年08月10日 15:27

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