「総理と質疑をやるのは、これで7回目になります。いつも申し上げますが、この時間は私の時間ではない。貴方の時間でもない。この1時間は主権者である国民のものです。是非逃げないで答弁して貰いたい。論点をはぐらかさないで貰いたい。どうでもいいことを延々と言わないで貰いたい。それは、この時間は主権者たる国民の時間だからです。その事をまず申し上げておきます。」石破茂 於:7/6 衆議院予算委員会
7月6日、気合の入った前置きで始まった、衆議院の予算委員会での石破氏の質疑。
ツイッターなどを見ていると、一部では、ねちねちした質疑だ、とか、嫌らしいな、とかいう意見もあったようだけれど、おおむね、評価する意見が大半だったとの印象を受けている。
筆者としても、あの質疑は、中々よかったと思っている。なぜなら、質問において「世界観」が含まれていたから。
ここでいう「世界観」とは、戦略の7階層でいうところの最上位に位置する概念を意味し、「人生観、歴史観、地理感覚、心、ビジョン等」を指す。
以前、「小泉進次郎議員の質疑について解析する」において、世界観から質問せよ、と指摘したことがある。今回の石破氏の質疑には、この世界観を問う部分が含まれていた。
たとえば、最初の質問で、先の参院選について、その意義とは何かと質問していた。参院選の意義そのものを聞き、菅首相の参院選に対する世界観を問うていた。
それに対して、菅首相はいつものとおり、制度の話、即ち戦略の7階層の下から2番目の戦術レベルでの答弁をぐちゃぐちゃと言った挙句、何も答えられなかった。そこで石破氏は、先の参院選の意義は「菅民主党の是非を問うた」と定義し、その結果は、菅政権を正せというのが、その答えだとした。菅首相はそれに反論しなかった。
石破氏は次に、民主主義とは何かを質問した。菅首相がかつて「民主主義とは政権交代可能な独裁だ」と言ったことを取り上げて、今もそうなのかを質した。これも世界観レベルの質問。
これに対して、菅首相はアメリカが何だとぐちゃぐちゃといった挙句、それを認めた。
石破氏は、この最初の2つの質問で、民主主義における国民の意思、即ち「菅政権の否定」という国民の「世界観」と、菅首相の認識している民主主義とは独裁であるという「世界観」を浮き彫りにした。
それを前置きにして、「自分の顔を見たくなければ、2次補正、公債特例法案、再生エネルギーの3法案を通せ」という発言は、総理にあるまじき発言で真摯さに欠けると指摘し、菅首相が自分から辞めるとは一言も発言していないと言った以上、3法案を通しても退陣することを意味しないとして、2度目のペテンの可能性に釘を刺してゆく。
そして、内閣不信任案などは一国会の一度だけという、いわゆる"一事不再議"の原則について、成文化されていない理由は、これまで全く違う事態が生じた場合、成文化されていると対応できないから慣例となっていると指摘。ゆえに、状況が変われば、それは例外にあたるから、再提出できると論を展開する。
石破氏は、この、"一事不再議"が成文化されていない理由は何かと菅首相に質問していたけれど、これは一事不再議の"法の精神"を問うという意味で、きわめて世界観レベルに近い質問だったと思う。
勿論、菅首相は"一事不再議"の原則について、何故、慣例であるのか、なぜ、成文化されていないかについて答えられず、議会をスムーズに進めるためのルールだと、またもや戦術レベルの答えを繰り返すだけだった。
本来、菅首相は、この段階で世界観を示すなり、きちんと反論しておかないと駄目だったのだけれど、無論、そんなことは期待できるはずもなく、言われるがままフルボッコされた。
石破氏が、「一事不再議が慣例である理由は状況の変化が想定されているからだ」という世界観を提示したのに対して、菅首相の「議会をスムーズに進めるためのルールだ」という戦術レベルの答弁は、全く答えにはなっていないから、拒否する理由を自ら消してしまったことになる。
だから、もし、石破氏が、今回の質疑の目的が不信任案再提出のための地固めなのであれば、この時点で十分にその目的は、達成されたと思われる。
国民は内閣総辞職または総選挙を望んでいる。それは近々の世論調査でも明らか。今回の質疑で、自民党は、不信任案再提出の準備を着々と進めつつある、と見る。
ただ、2度目の再提出されたとしても、可決するかどうかは微妙なところ。民主党の渡部恒三最高顧問は名古屋市内での講演で、不信任案が再提出されれば賛成すると答えているけれど、前回の民主党の両院総会での体たらくもあるし、みんなの党の渡辺代表は、結束して賛成に回るパワーは感じられないとして、再否決される見通しを述べている。
もちろん、不信任案が可決したとしても、菅首相が解散に打って出る可能性も当然ある。
今日、石破氏によって、国会に大きな楔が打たれた。あとは提出時期を巡って、じわじわと周辺を固めていくだろう。具体的には、前回の不信任案提出時とは状況が変わったのだ、と内外に認知させていくと同時に、不信任案同調への民主党内への切り崩し等々、水面下で激しい争いがあると思われる。
今後の動きから目を離せない。
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自民:内閣不信任案再提出も 石破氏「一事不再議の例外」
自民党の石破茂政調会長は6日の衆院予算委員会で、復興担当相の新設や浜田和幸参院議員(自民党を除名)を総務政務官に引き抜いたことで「内閣は大きく変わった」として、今国会に内閣不信任決議案を再提出する可能性に言及した。ただ、不信任案は6月2日に民主党などの反対多数で否決されており、「一事不再議」の壁が立ちはだかる。ルール破りを辞さない奇策には、菅直人首相を退陣に追い込めない自民党のいらだちも透けてみえる。
石破氏は質問で「1回否決した後で、全く違う事態が生じたときに、二度と取り上げてはならないというのは本来の趣旨ではない」と強調。一事不再議の例外として内閣不信任案の再提出は可能という見方を示した。
一事不再議の基準は明確でなく、「理由を変えれば再提出できるかどうかはグレーゾーン」(衆院事務局スタッフ)だが、実際には与党が多数を占める議院運営委員会で却下されるため、内閣不信任案が同一会期中に2回採決された例は過去にない。
自民党は11年度第2次補正予算案の早期成立に協力する方針。「政策置き去り」という批判を恐れ、再生可能エネルギー固定価格買い取り法案や特例公債法案の審議もいたずらに引き延ばせない状況だ。しかし、この「退陣3条件」が整った後も首相が居座れば、対抗手段を失う。内閣不信任案の再提出は、その場合の「最後の手段」で、与野党を超えて首相への退陣圧力が強まる中、民主党の同調が見込めるのではないかという計算もある。
一方、菅首相は「一日でも長く首相の座にいたいと見えるかもしれないが、まだまだ震災の渦中だから、次の段階までやるべきことをやっておきたい」と答弁し、石破氏の追及をかわした。【岡崎大輔】
【ことば】一事不再議
国会運営の効率性を担保するため、同一会期中は、一度議決された案件と同じ案件は再び審議しないという原則。国会法に規定はなく、慣例として認められている。ただ、何が「議決された案件と同じ案件」に当たるかは明確でなく、実際の線引きはその時々の政治判断に委ねられる。
毎日新聞 2011年7月6日 22時00分(最終更新 7月6日 22時12分)
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110707k0000m010102000c.html?toprank=onehour
この記事へのコメント
sdi
・「法律にやってはいけない、と書いてないことはやっていい」がモットーの民主党と同じレベルに自民党が堕ちてしまう。
・2回目の不信任案が秘訣されたらどうする?。こんどこそ本当に打つ手はない。民主党ないの反主流派のへたれぶりは周知の事実。
・複数回提出の不信任案が可決されて、内閣総辞職または解散総選挙となれば現状では民主党の下野はほぼ確実。すくなくとも過半数確保はできない。そうなったら、彼らはためらわずに国会会期中に2度どころか、3回、4回と不信任案を提出して議事進行を麻痺させる挙に出るのはほぼ確実
almanos
opera
この点で焦点となるのが、管首相の拉致容疑者親族関連団体への6250万円の献金問題です(詳細な情報があれば、日比野さんにも追求して頂きたいのですが)。これがなぜ問題なのか、今一つハッキリしない点もありますが、2007年当時は、アメリカが北朝鮮の香港・マカオ経由の資金ルートを遮断して締め上げていた時期で、管氏等の献金はそれを迂回するため(在日朝鮮人→菅氏等の政治団体→北朝鮮)のマネーロンダリングだったのではないかという疑惑が国際的に指摘されています。現在、NHKなどの大手メディアは「報道しない自由」を絶賛発動中ですが、日本が普通の国であれば、そうするのが当然と思われるほどの国家的不祥事です。自民党はこれを追求する構えのようですが、現実にはどう扱うのか、暫く見守りたいと思っています。
「ど」の字
ここまで私利私欲だけで日本を滅茶苦茶にした為政者は、日本史上例が無いです。
もう、何を言うのもいやになります。
今すぐ死んで欲しい。
何をやっても辞めようとしないだろうから、もう政治家や首相を辞めろとは言わない。
死ね、菅直人。