無能と真摯さと繁栄と

 
「森井大臣はこの事件を厚生省創設以来の危機ととらえて、どこかへ消えてしまった薬害エイズに関する資料を探し、毎日少しでも時間があると省内を歩いて回っていた。大臣の真摯な姿勢に打たれ、ヘタをすれば自分たちを不利な立場に追い込みかねない官僚たちも次第に協力するようになった。当時、荒賀泰太薬務局長は、仕事を終え、退庁を示すランプをつけた後で局内を探し回っていた。」
小泉元総理秘書官 飯島勲 プレジデント2011.7.4号より

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7月2、3日に行われた、毎日新聞の世論調査によると、菅首相の退陣について、「できるだけ早くやめるべきだ」が44%。「8月中にやめるべきだ」が27%と、合わせて71%が会期中の退陣を求めているという結果となった。

また、同じく、7月2、3日に行われた、朝日系列のANNの世論調査でも菅首相の退陣時期について、「すぐにやめるべき」が33%、「国会会期末の8月31日まで」が36%と合わせて69%とこれも7割近くが会期中の退陣を求めてる。

これまであれほど菅首相を擁護していた毎日新聞、朝日でも、この結果ということは、本当に国民の我慢も限度にきているということなのだろう。

まぁ、支持率が1%になっても辞めないといった御仁のことだから、内閣支持率などどうでもよいかもしれないけれど、少なくとも、菅首相が居座る限り、国会はウンともスンとも動かない。

浜田和幸総務政務官を自民党から「一本釣り」した件といい、松本龍震災復興担当相が宮城県庁を訪れた際の恫喝発言といい、菅首相自ら手掛けたものは、何かと問題を起こす。

その一方、海江田経産大臣の浜岡原発停止前の事前折衝と根回しの上、ようやく上手く纏まりかけた案件は、横から掻っ攫って自分の手柄にする。

こんな御仁が上司では、「百害あって一利なし」だとか「感動した 菅どうした」と陰口を言われても仕方がない。

お前の手柄は俺のもの。俺の失敗はお前のせい。

一体、どこのジャイアンかと思うこの性格は、どうやら昔からこうだったようだ。

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プレジデントの7/4号に掲載されている、小泉元総理の秘書官だった飯島勲氏の記事によれば、1996年の薬害エイズ訴訟問題で、行政の過ちを証明する資料、いわゆる“郡司ファイル”が出てきた件でも、その捜索を始め、官僚たちを動かしたのは、前任者の森井忠良厚生大臣だった。

だけど、新しく厚生大臣になった菅氏は、出てきたファイルを分析しなければと、官僚が持ってきたのを取り上げ、内容を分析することもなく、記者会見で「官僚がずっと隠していたものが、私が就任したから見つかった」などと発言したのが事の顛末だったという。

飯島勲氏の記事が本当であれば、官僚が自分達が不利になるかもしれない資料を探し回ったのは、前任の森井厚生大臣の真摯さであって、菅氏の狡さではない。

リーダーは才能はなくとも「真摯さ」だけは持っていなければならないといったドラッガーはやはり正しい。

無能でも有能でもその足元に「真摯さ」がなければ、他人は使えない。ましてや優秀な官僚であれば尚の事。

6月21日にワシントンで開かれた、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2は、中国の海洋進出を警戒し、日米両国と価値観を共有する、インドを含むアジア太平洋各国と連携した対中包囲網の構築を打ち出している。

これは、自民党議員ですら、「対中戦略でかなり踏み込んだ」と評価するほどの出来栄えで、民主党なのになぜ、と思ったのだけれど、どうやら、菅首相はこの件には手を出さずにいたらしく、そのお蔭で纏まったのが実情のようだ。

しかも、この構想は、かつての安倍元総理の「価値観外交」、麻生元総理の「自由と繁栄の弧」を彷彿させるもので、当時の自公政権下で構想に携わった外務省幹部たちが主導して進めたようだ。

だから、その意味では、民主党の政治主導ではなく、ましてや菅首相のリーダーシップでもなく、安倍、麻生元総理の遺産が身を結んだものだといえる。

「自由と繁栄の弧」構想の復活については、昨年の尖閣沖衝突事件後の2010年9月28日にエントリーした「ASEAN諸国のアメリカシフトと見直される自由と繁栄の弧」で、自由と繁栄の弧が見直されるのではないかと述べたのだけれど、やはりその動きになってきた。

だけど、こうした動きが、菅首相が口を出さなかったから上手くいったのであれば、それは菅首相が口を出すことが、国政の障害になっていること以外の何物でもないことを示している。

「無能な働き者は害悪である」
ハンス・フォン・ゼークト




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画像全国世論調査:首相退陣「できるだけ早く」44%

菅内閣支持率の推移 毎日新聞は2、3両日、全国世論調査を実施した。菅直人首相が退陣の意向を表明しながら、退陣時期を明言していないことについて「明確にすべきだ」との回答が62%に達し、「明確にする必要はない」(30%)を大きく上回った。菅首相の退陣時期については「できるだけ早くやめるべきだ」が44%。「8月中にやめるべきだ」(27%)と合わせると、早期退陣を求める回答が7割を超え、退陣時期を先送りする首相の政治姿勢への批判が強まっている。

 菅首相は退陣の条件として、(1)11年度第2次補正予算案(2)赤字国債を発行するための特例公債法案(3)再生可能エネルギー固定価格買い取り法案--の成立を挙げているが、具体的な退陣時期を示していない。「できるだけ長く続けてほしい」との回答が18%にとどまる一方、退陣時期を「明確にすべきだ」は民主党支持層でも52%に上り、支持政党なし層では63%に及んだ。

 内閣支持率は19%で、6月の前回調査から5ポイント下落。不支持率は56%(前回比1ポイント減)でほぼ横ばいだった。支持率は菅内閣で過去最低だった今年2月の19%に並んだ。内閣支持率は東日本大震災後、5月に27%となるなど一時的に上昇していたが、「退陣間際」と指摘されていた震災前の水準に戻った。

 自民党の浜田和幸参院議員を引き抜き、総務政務官に任命した人事をめぐっては、「適切でない」との回答が55%を占め、「適切だ」は31%にとどまった。参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」解消のため、国民新党の亀井静香代表らが仕掛けた引き抜き劇だったが、評価されていない。

 民主党の支持率は13%(前回比2ポイント減)で政権交代後最低となり、安倍政権時代の07年2月の数字に並んだ。ただ、自民党の支持率も前回から1ポイント下落して16%にとどまっており、政権批判の受け皿になり切れていない。

 一方、「支持政党はない」は54%に達し、97年に始めた現行の電話調査方式で最高を更新した。【田中成之】

 東日本大震災による被害が大きかった岩手、宮城、福島3県の一部地域は、今回の調査対象に含まれておりません。

毎日新聞 2011年7月3日 22時12分(最終更新 7月4日 0時18分)

URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110704k0000m010100000c.html



画像7割が「会期内退陣を」人事も評価せず 世論調査(07/04 11:47)

 菅総理大臣が先週に行った人事に早くも暗雲が垂れ込めています。自民党の中から「一本釣り」された浜田政務官。ANNがこの週末に行った世論調査で、この浜田政務官への一本釣りについて、およそ6割の人が「評価しない」と答えたことが分かりました。

 調査は2日と3日に行いました。菅内閣の支持率は20.7%で、前回の調査に比べて4.5ポイント下がりました。不支持は62.4%で、再び6割を超えています。一方、菅総理が先週に行った人事について、45%が「評価しない」と答えています。特に自民党の浜田参議院議員を一本釣りしたことには、59%の人が「評価しない」と答えていて、厳しい評価を受けています。また、退陣時期を明確にしない菅総理ですが、いつまで政権を担当することが良いか聞いたところ、「すぐに辞める」「来月末」と答えた人が合わせて7割近くに上り、今の国会の会期内の退陣を求めていることが分かりました。

URL:http://news.tv-asahi.co.jp/ann/news/web/html/210704009.html



画像「首相不在」で外交成果が挙がるという皮肉 2011.7.3 12:00

 米ワシントンで6月21日に行われた外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が示した共同発表は、「外交敗北」の連続だった民主党政権にしてはなかなかの出来映えだった。軍事力を伴った海洋活動を活発化させる中国への危機感を踏まえ、日米両国と価値観を共有するアジア太平洋各国と連携した対中包囲網の構築を打ち出したからだ。

 自民党の国会議員も「対中戦略でかなり踏み込んだ点は評価できる」と舌を巻く内容だが、菅直人首相が日米同盟のさらなる深化を打ち出した今回の発表で主導権を発揮した形成はなく、「首相が口を出さなかったからうまくいった」との皮肉さえ聞こえてくる。

 「より深化し、拡大する日米同盟に向けて 50年間のパートナーシップの基盤の上に」と題した共同発表のメーンは、6年ぶりに策定した共通戦略目標にある。日米が共通で取り組む24項目の課題を列挙し、その中の1つに「地域の安全保障環境を不安定にし得る軍事上の能力を追求・獲得しないよう促す」との項目を盛り込んだ。

 普通に読むと何を対象にした記述なのか不明な文章だが、外務省筋は「中国のことを書いた項目だ」と明言する。共同発表では、宇宙やサイバー空間の脅威への対処や、「航行の自由を保護し、安全で確実なシーレーンを確保」とも記した。これも中国への牽制であることは自明の理だ。

 さらに注目すべきは、地域の不安定要因となっている中国を念頭に、以前から安全保障上のつながりが強い日米豪、日米韓との枠組みに「日米印」の連携強化を加えた点だ。日米両国と東南アジア諸国連合(ASEAN)との安全保障面での協力強化も明記した。南シナ海での海洋権益確保のために軍艦まで派遣する野放図な中国の振る舞いに対し、周辺国が結束して対処する姿勢を鮮明にしたわけだ。

 この話は、どこかで聞いたことがある。平成18年の安倍晋三政権下で麻生太郎外相が提唱した「価値観外交」であり、「自由と繁栄の弧」構想そっくりなのだ。

 バルト諸国からインド亜大陸や東南アジアを通って東は北東アジアまで弧を描くようにして民主主義、自由、人権、法の支配、市場経済といった普遍的な価値を共有する国々との連携を深める構想で、安倍内閣の重要な外交方針だった。用語こそ使っていないが、中身は共同発表の趣旨とほぼ同じで、安倍首相退陣とともに消えた構想が4年ぶりに復活したことになる。

 2プラス2では、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設先を自公政権時代に合意していた同県名護市辺野古に2本の滑走路を配置したV字形とすることでも正式に合意したが、回帰は普天間移設だけではなかった。

 復活に向けて動いたのが、自公政権下で構想に携わった外務省幹部たちだった。共同発表に向けた作業が始まったのは鳩山政権だった昨年1月。普天間問題の混迷に焦点があたり、外務官僚には苦難の時代だった。鳩山政権は移設先を「少なくとも県外」と訴え、実現が極めて困難な公約を掲げて誕生した。いたずらに時間を費やしただけでなく、沖縄県側の希望は失望に変わって態度を硬直化させ、代償は今も尾を引く。

 政治主導の暴走を横目に、外務官僚はグローバルな観点から着々と「自由と繁栄の弧」構想を進め、ようやく日米間での明文化に成功した。共同発表の内容は、仮に日本で政権交代が起きても次の政権に引き継がれるのが原則だ。それだけ重い合意事項といえる。

 菅首相は、鳩山内閣の副総理として普天間問題の混迷を苦々しく見ていた。その反動から、首相就任後は一貫して日米同盟重視路線を強調してきた。就任前から「外交は苦手」と公言してきたこともあり、外務官僚が自由に活動できる素地はあった。

 だが、どんなに立派な目標を定めても、実行しなければ意味がない。米国は6月25日のハワイでの米中高官協議で、中国の海洋活動について「緊張の沈静化を求める」とさっそく言及した。

 翻って菅政権はどうか。沖縄・尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件やロシアのメドベージェフ大統領の北方領土訪問といった攻勢にふがいない醜態をさらし、共同発表の実践は汚名返上の好機だが、すでに退陣を表明した菅首相にその資格があるはずもない。それでも松本剛明外相は3日、中国に向けて出発する。尖閣事件以来初めての閣僚の中国訪問だ。4日に北京で行われる日中外相会談で2プラス2の成果をどこまで相手に突きつけることができるか。アジアの各国も注目している。

 2プラス2が政治主導の形骸化が奏功した皮肉な例だとすれば、東日本大震災の政治主導不在は人災といえるだろう。6月のある日、初めて岩手、宮城両県の三陸沿岸地域を訪れ、その思いをさらに強くした。

 強烈な異臭とともにビルの5階近くまで積まれたがれきの山もあった。機材がフル回転し、がれき撤去という復興への槌音がさぞ響いているのだろうと思いきや、沿岸の被災地での作業はまばらで、かつてにぎわいをいみせていただろう市街地の跡地は不思議な静寂に包まれていた。

 菅首相は「退陣表明」後の6月9日の国会答弁で「がれき処理は8月中に生活地域から搬出することを目標に頑張っている」と述べた。まさか延命のためにわざとがれき処理を遅らせているわけでもないだろうが、このままでは半永久的に菅首相存続なのかとも勘ぐりたくなる。

 これだけ大規模な災害では、さすがの官僚集団もまとめるリーダーがいなければ能力を発揮できない。こちらは首相不在という政治主導の喪失の影響は大きいと痛感した。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110703/plc11070312010010-n1.htm

この記事へのコメント

  • mayo5

    なんで菅が大臣になってすぐに出てきたのか、ずうっと不思議に思っていました。おかしいなと思いながら、全く調べていなかった自分です。
    ・・と言いながら、ここに書かれていることを検証なく信じてしまう自分なんですが
    2015年08月10日 15:27
  • sdi

    プレジデントの記事、全く知りませんでした。前任者の手柄を横取りしたわけですか。
    薬害エイズ資料発見のエピソードで、いまだに空き缶殿を「真の政治家」と賞賛する人はかなり居ます。しかも、その範囲は広くリベラルな方々に留まりません。まあ、そんな人たちにこの記事を提示しても信じないでしょうね。
    2015年08月10日 15:27
  • opera

    「無能な働き者は害悪である」  ハンス・フォン・ゼークト

    「そういう奴はさっさと軍隊から追い出すか銃殺にすべきだ。
     なぜなら間違った命令でも延々と続けてしまい、気が付いたときには取り返しがつかなくなってしまうからだ。」

     後半部分も引用して欲しかったw まさに、今の日本の状況そのままですね。
    2015年08月10日 15:27
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    凄い. ヒトデナシ殿は既に犯罪者ですな.
    プレジデントの記事を読んでみましょう.

    国民公認無能力者がトップで国は動いている.
    ドライバー不在で車が動くようなもの.
    流石日本と言うのか, 危ないというのか.
    2015年08月10日 15:27

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