昨日の続きです。今日のエントリーが最終回になります。
前のエントリーはこちらを参照ください。
「お金と人を加速する(日本を富ます方法 その1) 」
「人口拡大と萌え(日本を富ます方法 その2)」
5.成長する意思とビジョン
『仮に今の貨幣価値で1000兆円の積立金ができ、それを年利5%で運用すれば、50兆円の国家収入が得られます。昭和54年度予算は40兆円弱と予想されますから、これをすべてまかなってなお10兆円余りのある額です。 そうすれば、国民から1円の税金を取る必要のない「無税国家」となり、さらに進んで、余りの10兆円を国民に分配しうる「収益分配国家」になるともいえましょう。』松下幸之助 於:週刊ポスト1979年1月5日号
GDPを拡大することで税収を増やそうとするためには、基本的に黒字企業を増やさなくてはなりません。赤字企業が多いと、全体の法人課税金額が目減りしてしまい、税収が伸びないからです。
それに、会社が黒字になるということは、新規開発や研究、設備投資にお金がかけられるということですから、イノベーションがかかるということですね。ただ、今の世では、今日明日ですぐ新製品なんて作れませんから、数年単位で開発量産までの時間が必要になります。
折角新製品を開発しても、そのとき不景気になっていたら、売りたくても売れませんから、企業は、数年先の景気動向を予測しながら、商品の開発計画を立てることになります。だから、本当は、政府はその後押しをしなければいけない。
つまり、黒字の会社が増えてきたときにこそ、数年先も景気は大丈夫だという安心感を政府は与えるべきだと思うんですね。景気がよいときほど、それを持続させる努力をしなくちゃいけない。儲けを肯定しなくちゃいけないと思うんです。
松下幸之助は、「無税国家論」を提唱していましたけれども、冒頭の発言にあるように、1000兆円の積立金を年利5%で運用するということは、それだけ将来性のある部門に投資してリターンを得るとか、手持ちの資産価値を高める努力をするとか、要するに、GDPを拡大していくことなんですね。
たとえば、政府が作ったハコモノだって、時代に合わせて利便を図り、多くの人はそれを利用するものであれば、そのハコモノを機縁として、財とサービスが生まれ、結果的にGDPを後押しします。
よく、ハコモノが不良資産化していると言われますけれども、要するに、これは、そのハコモノが財とサービスを生まない使い方、使われ方をしているだけであって、一言でいえば「運用できていない」ということだと思います。
ハコモノなどを資産として運用するだけの才覚が役人に無いのであれば、役人よりは商才があると思われる民間にお願いすることは自然なことだと思いますし、そのために、いわゆる「小さな政府」を目指すのは合理的な選択だと思います。
実は、松下幸之助氏存命時の1979年ごろと、今の税収を比較すると、大体40兆円くらいで、殆ど変わっていません。けれども、予算規模自体は倍になっているんですね。
予算規模が倍になっているということは、1979年当時と比べて、GDPがそれだけ拡大しているということです。1980年から2010年にかけての名目、実質GDPですけれども、1980年の名目GDPがおよそ243兆円、実質GDPで284兆円だったところ、2010年は、名目GDPで479兆円、実質GDPで540兆円と、ほぼ倍になっていますから、GDPが倍になって、予算規模も倍になったということですね。
政府は、よく赤字国債を取りあげ、政府の借金が900兆円だなんだといいますけれども、では、一体、その借金はどこへいったのか。
下の図は、個人金融資産残高と国債発行額の推移をグラフにしたものなのですけれども、たとえば、1991年から2010年の期間に発行された国債発行額の合計は529兆円くらいです。
確かに借金としてみれば物凄い額です。ところが同じ期間に、個人金融資産額が1000兆円から1489兆円超と、489兆円増えています。つまり、政府がこの期間に借金した額に殆ど相当する分、国民資産が増えたということですね。そして、国債発行額の90%は国内で消化されています。
実際は、政府が発行した国債で、高速道路を作ったり、空港をつくったり、インフラ整備やその他いろいろ投資して、たとえハコモノとはいえ資産を作っていますし、更に、過去何十年かの貿易黒字で蓄えた富もあるわけです。
政府は国の資産を少しも公開しませんから、どれくらいあるかわかりませんけれども、2010年の民主党代表選で小沢氏が、財源として、国の資産の証券化構想をぶちあげていて、そこでは、「600兆円の国の資産のうち200兆円ぐらいは証券化できるといわれている。十分、我々の主張する財源は捻出できる」と発言していましたから、600兆円は国の資産があると仮定すると、差し引きの純負債は、900兆円から600兆円を引いて、300兆円くらいなものですね。
国家予算を家計に例える愚はよく指摘されることですけれども、あえて家計に例えてみると、一家の父親が政府、母親や子供を国民だとすると、ちょうど、1400兆円くらいある母親のへそくりや子供の貯金から、父親が900兆円借りて、商売なり畑を耕すなりしていることにあたるかと思います。
それに、父親とて、借りたヘソクリを、競馬ですったとか、酒を飲んでパアにしたというわけではなく、真面目に畑を耕し、水路を作り、トラクターなどの設備を整えていって、しっかり稼いできたわけです。
要するに、借金といっても、一家の中で金のやりとりが行なわれているだけに過ぎず、外からみれば、別に、他人様から借金をしているわけでもなく、なんともないように見えると思うんですね。
筆者としては、600兆円を担保にして、900兆円借りているというのは、そんなに危険なことだとは思えませんし、むしろ、事業拡大のために、まだ借りる余地があるのではないかと思います。そして、その資金で、将来性があり、生産的な事業に投資して、将来大きなリターンを得る。更なる国益を追及する。それが普通だと思います。
金と人の流通速度を上げるにせよ、人口を増やすにせよ、そこには、未来への希望、明るいビジョンと、足元の確たる政策の2つが必要です。
日本には、それらを構想し、実現するだけの余力が十分にあります。
だから、あとは、発展していこう、成長していこうという意思とビジョンだけだと思いますね。
6.共有される未来イメージの力
松下幸之助がいう年利5%の運用するためには、それだけの「成長性」が見込まれる産業ということですから、そうした産業を興していかなくてはなりません。
では、成長が見込まれる産業というのは、逆にいえば、これまで手つかずでほったらかしにされていた部門ということもでもありますから、そちらに投資してみるのもアリだと思います。
具体的には、防衛産業、海洋開発、宇宙開発など、です。特に宇宙開発は防衛産業とリンクする部分が多いですから、同時に開発できる部分も多いはずですね。特に、今のように、国防を強化すべき時期であればこそ、尚更、投資を考えるべきだと思いますね。
新しい製品、イノベーションを起こす、という意味では、日本は世界に対して有利な部分を沢山持っています。もちろん、経済力や、画期的な発明を生む頭脳や技術があることは言うまでもないのですけれども、筆者はそれ以上に、国民に広く、未来ビジョンが普及している面が大きいのではないかと思うんですね。
たとえば、ドラえもんのひみつ道具を現実化することができれば、世界は一変すると思います。どこでもドアでも開発しようものなら、それこそ、次元を越えたイノベーションです。まぁ、実際にそこまでは行かなくても、現実にできそうなものを商品化することで、日本のGDPはもっと伸びるはずです。
携帯電話を商品化しただけで、あれだけの市場を生んだのです。昔の黒電話と携帯電話を比べたら、線があるかないかの違いしかありません。だけど、たったそれだけの違いで、携帯電話というひとつの市場を生み出したのです。ですから、ドラえもんの道具を商品化できたら、それこそ、物凄い市場が立ち上がる可能性がありますね。
では、なぜ、未来ビジョンが普及しているのが大事なのかといえば、それは、多くの人々の頭脳が生かせるからです。今の時代は、何か画期的な商品を作ろうとしても、中々一人では出来ません。なぜなら、多方面に渡って、様々な技術を集積してひとつの商品が出来上がっているからです。パソコンひとつにしても、CPUだけあればできるわけでもなく、液晶技術や省電力技術など、様々な技術が使われています。
要するに、一人の天才がいるくらいでは、中々、イノベーションを起こすことは難しいということですね。
たとえば、ひとつの画期的な製品を生み出すために、100人の研究者と100人の技術者がいるとしましょう。この場合、画期的な新製品を生み出すためには、彼らを集めて製品開発プロジェクトを立ち上げなければなりません。けれども、現実にそこまで大がかりなプロジェクトは中々難しい。それ以前に、どんな製品が画期的なのかといったアイデアから考えなければなりません。
けれども、マンガの世界とはいえ、ドラえもんの道具は、どれも夢があり、画期的なものばかりです。これらが現実のものになるだけで、大きなイノベーションがかかります。このとき、ドラえもんの道具という製品イメージが、国民の大多数に共有されていれば、いつかどこかで誰かが、ドラえもんの道具そのものとまではいかないまでも、その一部を担う発明なり、発見なり、開発なりするかもしれないのですね。
そして、こうした細かい発見や新技術が集まることで、本当にドラえもんの道具が現実になるかもしれない。要するに、同じ製品イメージを共有する頭脳が集まって、ネットワークを組み、データを共有していくことで、新製品の開発確率が高まるのではないか、ということです。これならば、大天才が居なくても作れてしまう可能性がある。
ドラえもんの道具といえば、大人から子供までみんな知っている。あまりマイナーな道具は知られていないでしょうけれども、「どこでもドア」や「たけコプター」ともなれば、どんな商品なのか説明の必要がありません。要するに、単語レベルで、道具の概念、コンセプトが国民の大多数に理解され、共有されているのですね。
だから、同じイメージを国民の多くが共有できている社会でもある日本は、物凄いポテンシャルを秘めていると思うんですね。
また、未来イメージは、何もドラえもんだけとは限りません、アニメ、マンガの世界は未来イメージで一杯です。日本で、宇宙戦艦ヤマトやガンダムを知らない人は殆どいないでしょう。空想であっても未来イメージがここまで広く浸透していると、実物大のガンダムがお台場に登場したように、誰かがそれを作ってしまう可能性もあるということを意味しているし、また、それらを受け入れてしまう余地がある、市場が出来あがる余地があるということです。
いくら、ドラえもんの道具やガンダムを現実につくれたとしても、それらが広く世の中に知られていなければ、ただの趣味で終わってしまいます。ですから、お台場ガンダムをつくって、尚且つ、それが観光地化してしまう日本は、市場としての、相当なポテンシャルを持っていると思います。
政府も、それくらいの構想を掲げて、研究開発投資を促していく。それくらいのものがあっていい。本気になった日本はとてつもない力を発揮できると思います。
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この記事へのコメント
納得
健康に深刻な問題が発生すると述べている。実際にチェルノブイリの近くでは、昆虫やクモの個体数が減り、鳥の脳の大きさが小さく
なったことが明らかとなっていると語った。
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=0901&f=national_0901_034.shtml
至急
東日本大震災の被害を受けた日本の宮城県仙台市若林区の仮設住宅を慰問し、被災者を
励ました。
鄭長官は「震災で犠牲になった方々のご冥福をお祈りする。大災害の中で毅然
(きぜん)と対処し、困難を克服していく日本の皆さんの姿に感動した」とし、一日も
早い復旧を願うと述べた。
また、仮設住宅の集会所に設置するテレビとDVDプレーヤー、「官廷女官チャン
グムの誓い」「善徳女王」「シークレットガーデン」など韓流ドラマのDVD、
タオル150セットなどを贈った。
続いて、仙台市役所を訪れ、震災による被害状況について説明を受けたほか、日本
観光庁の溝畑宏長官とともに東北6県の県庁所在地の代表的な祭りが競演する「東北
六魂祭」の会場も訪れた。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2011/07/17/0200000000AJP20110717000200882.HTML
保守は、「官廷女官チャングムの誓い」「善徳女王」「シークレットガーデン」などの韓流ドラ
もう手遅れです
高濃度の放射性セシウムが検出され、肉牛に与えられたことが20日、明らかになった。
「前沢牛」などのブランドを誇る畜産県だけに、畜産農家からは
「原発事故の影響がここまで及ぶのか」といった悲鳴が上がった。
一方、農林水産省は稲わらの流通状況を調査するよう全国に通知したが、
稲わらは個人間の取引も多く、実態はつかみにくい。
汚染された疑いのある稲わらを全国に出荷していた宮城県。
登米市の稲作農家の男性は、近所の肥育農家1軒に3ヘクタール分の稲わらを提供し、
代わりに堆肥をもらっている。加美町の稲作農家の男性は、
親類の畜産農家に3ヘクタール分のわらを提供しているが、金銭のやりとりはなく、
「謝礼程度に肉をもらうだけ」と話す。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110721-OYT1T00190.htm
ちび・むぎ・みみ・はな
> 要するに、GDPを拡大していくこと
資産は静的なものであるのに対してGDPは動的な
ものだから, 資産価値とGDPは分けて考える
のが良いと思う.
> それらが広く世の中に知られていなければ、
> ただの趣味で終わってしまいます。
現在の日本の問題は, 国内価値を矮少化して
国際的価値, つまりグローバルな価値を偏重
しているところにあるのではないだろうか.
ドラえもんが米国で受けようがどうでも良い
ことで, 要はドラえもんグッズが国内で沢山
出回るようになれば会社は儲かる. 海外でも
売ろうとすれば, 支那のような無法国の
偽物作りと喧嘩をしなければならない. 大きな
会社なら可能だが, 小さな会社では無理.
だから, 日本の多くの企業は日本で勝負する
のがもっとも利益が上がる.
インフラ建設なども国内価値. これを国際
競争入札にして国際的価値にする必要はない.
我々は日本経団連のグローバリズムに毒され
過ぎているのかも知れない.