人口拡大と萌え(日本を富ます方法 その2)

 
昨日の続きです。

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前のエントリーはこちらを参照ください。
お金と人を加速する(日本を富ます方法 その1)



3.生産人口の増やし方

GDPを拡大させる方法には、大きく二つの方向性があります。それは、時間軸と空間軸です。前回のエントリーで、GDPを拡大するのに、お金と人の流通速度を上げるという話をしましたけれども、これはお金の流れるスピードを速くすることで、GDPを拡大する方法ですから、時間軸を使ったGDP拡大策にあたります。

では、空間軸を使ったGDP拡大策とは何であるか。

それはもう、ずばり、人口を増やすことですね。

生きていくためには、当然食わなければならないですし、生活必需品は欠かせません。人口が一人増えることで最低限の需要が生まれてくるわけです。需要があれば、生産力が有る限り、それを満たすための供給がなされて、生産と消費が伸びますから、必然的に税収も増えることになります。

そして、可能であれば、その増やす人口は、生産人口であることが一番望ましいですね。生産人口とは文字通り、労働力の中核をなす15歳以上65歳未満の人口層のことですけれども、この層はいわゆる働いている層ですから、仕事を通じて付加価値を生んでいき、同時に消費もしてくれるわけです。ですから、ここが増えると自動的にGDPも拡大するのですね。この辺りは「デフレの正体」を書いた藻谷浩介氏が指摘しているとおりです。

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人口が増えれば、GDPが拡大し、税収が増える。税収が増えれば政府もいろんなことができますし、年金の問題も解決方向に向かいます。これが空間軸を使ったGDP拡大策に相当します。

人口を増やすとなると、まず考えるのは子供を沢山つくるとか、移民を増やすとかになるのですけれども、そのほかの方法もないことはありません。それは、これまで生産人口に入れていない人を生産人口として組み込むということです。

たとえば、女性の社会進出などもその一つでしょう。もし、社会に進出して、働いているのが男性だけだとすると、生産人口は全人口の半分くらいにしかならないのですけれども、女性も社会で働くとなると、それだけ生産人口は増えることになります。ですから、女性の社会進出を推進するのは、一番手っ取り早い、生産人口拡大策になります。

だから、女性の社会進出なんかは、政府の側からすると、生産と消費の拡大手段でもあり、同時に税金の払い手を増やす手段に見えるはずですね。

今現在の日本の労働力率は、男性が7割、女性が5割くらいだと思いますけれども、女性人口の半数くらいは、もうすでに、生産人口のうちに入っていて、GDP拡大策に貢献しているというわけです。

けれども、既に女性の労働力率が5割ということは、残りも5割ということですけれども、伸びしろという意味では、西欧諸国と比べればまだ多少は残されているといえるのかもしれません。

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また、この生産人口を拡大してゆく、という観点に立てば、ロボットなんかも生産人口の中に入れようとすれば、入れられるかもしれませんね。

GDPの定義に従えば、ロボットだって、人間並みとはいかないまでも、財やサービスの供給に一役買っていることは間違いないでしょうから、ロボットも生産人口に入れてしまう。そういう考えだって、理屈の上では成り立ちますね。

現在、農業などは人気がなく若い人が就労しないために、外国人を受け入れて雇っているところも沢山ありますけれども、もしも、そのあたりがロボットで肩代わりできるのなら、機械化をどんどん進めるというのも一つの手だと思います。

まぁ、ロボットといっても、不気味の谷を越えて人間そっくりの外観を持ち、人の代わりに農作業も全部できて、ただ感情だけが制御されているクローン人間のようなものまでは、まだ無理でしょうけれども、農業生産に特化するのであれば、別に人型ロボットでなくてもよいわけです。

農業のロボット化というのは、これは要するに、植物工場で野菜を生産することと殆ど同じですから、考えようによっては、国が植物工場を建てて、農家に格安で支給する代わりに、「生産棚1台あたり何円」という具合に税金を取ることだってできますね。外国人を雇う金より安くあがるのなら、可能性はあるかもしれません。




4.日本に来る外国人を"日本人化"させる

ただ、それでも、国の人口の総数が変わらないままだと、いくら女性参加を促しても限界がありますし、ロボットは生産はしてくれても、電気やガソリン以外に、消費してくれるものはあまりありません。

ですから、やはり、最終的には、人口そのものを増やしていくことを考えるべきだと思います。人口が増えると消費も自然と増えるのですから、その方向で政策を考えるべきだと思いますね。

まぁ、中国並みに人口14億とはいいませんけれども、アメリカくらいの人口、つまり、日本の人口が3億人くらいになれば、日本はアメリカの肩代わりすることだって出来るわけです。

それに、中国の脅威とか北朝鮮のなんちゃらとかありますけれども、たとえば、日本の人口が2億、3億になっていったら、世界も日本ともっと取引したくなるでしょうし、極端な話、中国の2倍、3倍のGDPがあれば、世界は中国より日本を重視するようになります。

人口そのものを増やすためには、人口増大政策、手っ取り早いのは移民なんでしょうけれども、移民について、一番ネックになっているのは、恐らくモラルの問題だろうと思います。

今回の震災でも世界が被災者のモラルの高さを絶賛していましたけれども、その日本人のモラルの高さが、逆に移民を受け入れる際の障害になっている部分もあると思います。

要するに、震災にあっても狼狽えたり、増してや暴動など起こすこと全然ない民度を要求して、さらに、普通に日本語を話せる外国人なら移民として受け入れてもいい、そんなところがあるようにも思うんですね。

ただ、それは現実としては、外国人にとって限りなく高いハードルだと思います。それこそもう、聖人君子でないと日本には住めないのか、と思うかもしれません。

だから、そのあたりのハードルをどう越えさせるかですね。ハードルを低くできないのであれば、彼らをして飛び越えさせる方法も準備しておいたほうがよいと思います。

それに、移民を受け入れて、彼らをうまく日本人化させることは、日本にとってはいい方向に働きます。というのも、外国人に日本的価値観を身につけていただくことは、自然との共生、共存文化を身に着けていただくことになりますし、潜在的な日本の味方を増やすことにもなるからです。今回の震災でも、台湾から桁違いの義援金をいただいていますね。親日国を地味に増やしておくことは、悪いことではありません。



まぁ、最近では、中国からの侵略を警戒するというのもあるかと思いますけれども、アキバに来る中国人を"萌え"させて頭の中を日本人にしてしまうという手もあると思います。

ですから、世界を日本人化させるということは、日本にとっては安全保障の一環にもなるということです。

これをもっと進めれば、たとえば、世界の文化や宗教を習合できるような何かが日本にあれば、日本人化することで、宗教、価値観のレベルで理解と統合が進むことにもなりますから、日本人化することイコール世界が平和になることに繋がっていくことも可能性としては有り得ます。

けれども、日本的価値観は、統合というよりは、建て増し型で相手の価値観をそのままで丸呑みしてくっつけていく形なので、そこからさらに一歩踏み出すためには、互いの文化・宗教を架橋する理論なりなんなりがないと難しいのではないかと考えています。つまり、昔の単なる神仏習合のような、何々菩薩が何々大明神だったというものだけでは不十分ではないかということですね。

たとえば、イスラム教では、ムハンマドに啓示を与えたジブリールはキリスト教の天使ガブリエルとされています。これもある種の神仏習合だといえると思うのですけれども、あのとおり、両者は衝突していますから、出来るかどうかは別として、やはり、教義レベルでの統合でないと難しいのではないかと思います。日本の場合は、受け入れ元の神道に教義がないため、なんでもそのまま受け入れ可能でした。パソコンでいえば、ソフトではなくてOS、いわばウインドウズみたいなものですね。

それでも、世界がアメリカ化するのと中国化するのと、日本化するのと、どれが良いのかを考えると、身びいきの勝手な発言を許していただけるのなら、やはり世界が日本化したほうが争いは少なくなると思いますね。

だから、日本がGDPと人口の拡大政策をとることは、国内の問題を解決するのみならず、世界にもよい影響を与えるのではないかと思います。

明日に続きます。




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この記事へのコメント

  • とおる

    「GDPを上げるために人口を増やす(移民を入れる)」というのは、移民国家の米国ですら、無制限に移民を入れてないことを、どう考えますか?
    そんなに素晴らしいことなら、移民でも難民でも不法入国でも、米国は認めればいいのに。
    2015年08月10日 15:27
  • opera

    趣味で様々な経済関連ブログの記事を読んだり経済指標を調べたりしているのですが、人口の増減と経済成長とは必ずしも連動しないということは、国際比較からも明らかだと思っていました。典型例は、毎年数十万単位で人口が減少していたロシアが年率数%の高度成長をしていた事例等がそうで、資源バブルのお陰だと言えばそれまでですが、いずれにせよ、人口が増えても必ずしも思ったようには経済成長に結びつかないのも確かです。
     また、「デフレの正体」が一種のトンデモ説であることは、少なくともネット上では周知されていることだと思っていました。
    *菅原晃氏による『デフレの正体』批判リンク集
    http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20110105/1294211696
     実際に、現実を見て考えれば、人口が増えないから経済成長しないのではなく、デフレで経済成長が押さえ込まれているから、将来の見通しが立たず、子供が増えないという方が正確ではないでしょうか。

     さらに、外国人の積極的な受け入れは、経済的にも社会的にも採算が取れないことは、近年のヨーロッパの状況を見れば明らかです(英・独・仏ともに移
    2015年08月10日 15:27
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    人口を増やせば消費者が増えるからGDPが向上する
    と言う議論だが, 現在のような高い生産効率の社会
    で人口が増えた場合, 人々は何をもって政経を立てる
    のだろうか. 生産効率の上昇と人口の減少は不可分の
    ものである気がする. 江戸時代, 食糧の生産効率は
    上昇していったが, 社会の変化が少ない地域では
    人口は減少傾向にあった. 地方の人口が明らかに増加
    傾向に移るのは交通システムの整備と外国貿易による
    新規市場分野の出現によるようだ. 要は, 人間, 仕事
    が大事で, 仕事が増えれば人口が増え, 仕事が停滞
    すれば, 食糧はあっても, 人口も停滞すると言う話.

    従って, 東北のインフラ復興や東海地方の沿岸の
    防災設備の拡充を大規模に行なえば, 少なくとも
    数十年は必要なので, 人口は上昇傾向に転じるだろう.

    外国人をどうするか? 日本人になる人は入れれば良い.
    日本に今までの生活を持ち込みたい人には御遠慮願う.
    単なる理想論で日本を日本でなくする危険を侵すこと
    はない. 日本だけが、という論があることは承知するが,
    日本らしさを残すことは世界に対する大きな貢献でも
    あると考えても
    2015年08月10日 15:27
  • 日比野

    とおるさん。コメントありがとうございます。

    別に私は、無制限の移民をすべしと言った積もりはないのですけれども・・・。

    移民の際には、彼らをして日本人化させる努力が必要になるというのが主旨です。記事でも、日本人化させるという、外国人にとって高いハードルをどう飛び越えさせるかが課題であって、ハードルを低くしろとは言ってないです。というか「ハードルが下げられないのではあれば」と、下げられないのが前提で文章を書いた積もりです。ハードルを下げるのが多分無理なことは、もう明らかに予想できますしね。

    飛鳥・奈良時代には大量の渡来人が日本にやってきましたけれども、当時の彼らは大陸の知識人階級でした。それに倣うのなら、日本の移民政策としては、知識人階層中心で受け入れるということになりますし、また、同時に、日本にくる外国人には、日本人化しやすい環境を整えてゆく。現実的には、そんなところではないかと思いますね。ただ、受け入れ基準はそれなりにしっかりしないと後々大変になるかと…。

    なので、アメリカが無制限に移民を入れてないことについては、それはそうでしょうねとしかいいようがないですね。
    2015年08月10日 15:27
  • 八目山人

    日本の場合、生産年齢人口の減少というよりは、老人(90,100歳を超えて寝たきりとか)人口がどんどん大きくなっていくという事が問題なのじゃないか。
    年金も彼等はそれほど収めずに、10何倍も貰っている。小泉改革で下げようとしたら、年よりは死ねというのかと逆襲されて政権を失った。
    かといって死んでもらうわけにも行かず、悩ましい問題です。
    2015年08月10日 15:27

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