お金と人を加速する(日本を富ます方法 その1)
今回は久々に全3回のシリーズエントリーです。今回は、国を富ますことについて考えてみたいと思います。
1.GDP拡大による財政再建
先日、消費税増税と社会保障の一体改革について、政府は「10年代半ばまでにおおむね10%」などと増税を示唆する案を提示しました。内容を見る限り、政府は、支出を減らして、増税して財政再建を進める方向にいきたいようですけれども、デフレ期の増税など、はっきりいって、経済全体を収縮する方向にしか向かいません。なぜなら可処分所得が減り、消費が冷え込むからです。
これでも財政再建はできるかもしれませんけれども、そうした場合、国民は貧乏になるだけですね。なぜそういう質素倹約、身を縮こませる方向ばかりにいくのでしょうか。
今の政府の年間予算は、税収は40兆円、国債発行等が50兆円の計90兆円程度ですけれども、この国債発行額が政府の借金として扱われ、それが積みあがって、900兆円とかなんとかいって、これを減らそう減らそうとしているのですね。
財政再建といっても、要するに政府の赤字が減って、収入と支出のバランスが取れればいいだけなのですから、支出以上に収入があれば、別に支出を減らさなくてもよい訳です。それにはどうするか。
例えば、今の税収40兆円、国債発行50兆円に対して、毎年10兆円づつ返済しようと考えたとします。すると、年間予算90兆円として、国債発行をゼロにして、かつ毎年10兆円返済しようとするには税収が100兆円くらい必要になります。
その為には、税収を3倍くらいにしないといけないのですけれども、その方法には2通り考えられます。ひとつは税率を上げる方法ですし、もうひとつはGDPを増大させてしてしまう方法です。ところが政府は前者の方向でばかり財政再建をしようとしているのですね。
不景気のときに税金を上げると、消費が冷え込みますから、当然のことながら税収は減ります。すると、また税金を上げないといけなくなる。悪循環ですね。それだと具合が悪いということで、政治家の給料を減らします、公務員の給与も1割カットしますとかやろうとするのですけれども、そうすると、更に環をかけて消費を冷え込ませてしまいます。
消費が冷え込むと、物が売れなくなるので、企業も生産を抑える方向にいきます。したがって、設備投資もなくなって、供給力も減ることになります。つまり、不景気時の増税は、生産も消費も同時に減らすことになるのですね。
GDPの定義は、「ある一定期間に生み出された付加価値(売上高 - 仕入れ)の総額=国内で作り出された財とサービスの合計」ですから、生産も消費も減ってしまえば、当然、GDPは下がってしまいます。
政府が増税して、歳入を増やそうとしても、やはり限度があります。収入以上に課税することはできないのですから、必然的に政府は"改革"と称して、歳出を減らすことをしようとするのですけれども、民主党政権になってから、鳴り物入りで初めた、事業仕分けでも削減できたのは1兆円かせいぜい2兆円くらいのものでしたね。
予算の無駄をなくすといって、あの程度しかできないのであれば、小手先の歳出削減で、財政再建など到底無理なことは明らかです。どうしてもやるのであれば、それこそ、明治の廃藩置県ではありませんけれども、省庁を丸ごと解体して民営化する、"廃省置民"くらいでないと駄目ではないかと思いますね。
ですから、予算の縮小均衡による財政再建には、余程の政治力というか実行力が必要になります。それこそ血を見る覚悟が必要でしょう。
だから、歳費削減一辺倒ではなく、GDPを拡大する方向、税収を増やす方向での政策も進めていくべきだと思いますね。
2.お金と人の流通速度を上げる
GDPを拡大してゆくためには、国内で作り出された財とサービスの合計を増やしていかなければなりません。その為には、どうすればよいか。
ひとつには、お金の流れを良くする。お金を使いやすくする、という方法があります。つまり、お金の回転速度、流通速度を上げるということですね。お金の流通速度があがれば、売上がそれだけ増えるわけですから、GDPも増加しますし、売上が上がれば、儲けも増えて、税収も上がるというわけです。
たとえば、Aさんが、朝リンゴを買って、果物屋のBさんに105円払ったとします。この日にリンゴがこれだけしか売れなかったとしたら、100円が売り上げで、5円が消費税ですね。ここで、リンゴを売ったBさんが、その100円を握りしめて、昼に八百屋のCさんに50円のキャベツを買ったとすると、今度は新たに50円の売り上げと2.5円の消費税が発生します。BさんとCさんのそれぞれの売り上げを足すと、150円になりますね。
これは、最初にAさんが払った105円が、その日のうちに150円の売り上げに化けたことを意味します。同じ105円でも、1回売買しただけと、2回売買したのとでは、2回売買のほうがトータルでみた売り上げが大きくなります。要するに、取引回数が多くなればなるほど、すなわち、お金の流通速度が上がれば上がるほど、GDPは拡大するというわけです。
この、お金の流通速度を上げる方法にはいろいろとあるかと思いますけれども、たとえば、ゲゼル通貨のように時間と共に減価してゆく貨幣、これを使うという方法もある。使わずに取っておくと、どんどん安くなるお金、タンス預金も長年ほったらかしにしてしまうとタダになってしまう。そんなお金はみんなさっさと使ってしまいますね。それが結果として、GDPを押し上げます。
まぁ、こんな例は適切かどうかわかりませんけれど、例えば今の500円玉には2種類あって、今流通しているほとんどの500円玉は少し銅色がかった新500円玉なのですけれども、昔の500円玉はもう少し白っぽくて、淵のギザギザがないタイプです。
なぜ、500円玉が変わったかというと、一時期、偽造500円玉が流通して、特に自販機等で偽造500円玉が識別できなかったからですね。そこで、合金比率を代えて、更に、偽造しにくい斜めのギザギザをフチにいれた新500円を作ったのですけれども、たまに旧500円が手元にくることがあります。
筆者は、旧500円は偽造されやすいのと、自販機で使えないことから、手持ちにするのを嫌って、手に入ったら、すぐ使ったりしていたのですけれども、これなんか、減価はしないものの手元に置いておきたくないという意味では、ゲゼル的な通貨だと思います。また、自販機で使えないという、使用可能な場所が限定されているという意味では地域通貨的でもありますね。
だから、逆説的になりますけれども、旧500円玉の流通量を少し増やしてやれば、その分だけ500円玉の流通速度は上がると思います。今の自販機では旧500円玉は受け付けませんから、自販機を騙すために作られた、変造500ウォン硬貨のようなものは流通しないでしょう。あれは、見た目で偽造だとわかりますから店先では使えません。
また、貨幣の流通速度を上げられないのであれば、逆に、貨幣を使う側、すなわち、人の流通速度、移動速度をスピードアップしてしまうという方法も考えられます。
たとえば、東京・博多間の移動に6時間かかるとします。そして、博多の人が東京に会議か何かで出張して、夜7時くらいに仕事を終えたとしても、その日のうちに帰るのは大変ですから、出張先で1泊してから博多に戻るケースも多いはずです。
それが半分の3時間になったとすると、日帰りが可能になってきますから、その分沢山仕事ができるわけですね。一日あたりの仕事量が増えれば、その分、生産も拡大することになりますし、移動時間が短縮されれば、余暇の使い方ももっと積極的になると思われます。
たとえば、もしも、一家に1台「どこでもドア」があれば、となりの家に行く感覚で、世界中どこにでも行けることになりますから、経済活動は相当活発になると思いますね。
要するに、ゲゼル貨幣のように、減価する通貨を使うことで、貨幣の流通速度を上げなくても、人の移動スピードを上げることで、同じような効果は期待できるということです。
ですから、緊縮財政をして、GDPを減らすことで財政再建をする方法もありますけれども、GDPを増やすことで、税収を増やす。それで財政再建をする方法もっと考えるべきだと思いますね。
明日に続きます。
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この記事へのコメント
Θ
こちらへ来ました。
もうコメントしてもつたわらないかな?
ゲゼル貨幣は、どうやって減価させるんですか?
減価させた分は、どうなりますか?
自分の考えは、貨幣自体に課税して
それを皆に配ればよいと思います。
そうすることで富の偏りを改善し
また、利潤を追及しなくても暮らしていけるようになるのではと。
課税の方法は、
貨幣は、債権(国債)では発行しないで
刷り増すだけで増やしていくやり方で説明した場合
◆単純な分数計算
◆貨幣の総量を1とする
・分母=今ある貨幣の総量
・分子の総計は、貨幣の総量
・貨幣価値は、分子=手持ちの通貨額とし
分母=今ある貨幣の総量
刷り増した後の貨幣価値は、
・分母=今ある貨幣の総量+刷り増した貨幣
・分子の総計は、貨幣の総量
・貨幣価値は、分子=手持ちの通貨額とし
分母=今ある貨幣の総量+刷り増した貨幣
とする貨幣の価値にすればいいのです。
こうすれば、金利を発生させることなく刷り増した分が税金となります。
物価を刷り増した貨幣に応じた分上げれは成立すると思います。
(タンス預金にも有効)
上手くつたわれば幸いですが
日比野
>豊かな国にするのであれば, 国が豊かと国民が感じるのはどんな時かを知る必要がある.
国家と幸福感の関係については、去年の12月に2つのシリーズ記事で検討したことがあります。↓
国民総生産と国民総幸福量 (国家と幸福感について 前編) http://t.co/8Fi3IuI
幸福度は国家の発展に連動する (国家と幸福感について 後編) http://t.co/6X7YFHk
やはり、個人の幸福度は国家の発展に連動しているのだと思うんですね。どんな状況でも、幸福の種を見つけられる人にとっては、GDPはあまり関係ないのかもしれませんけれども、経済発展によって、幸福の種を提供できる面はあるかと思います。問題はその種を花開かせるのは、その人個人に拠るのだということなのでしょうね。
ちび・むぎ・みみ・はな
国民の皆が仕事に打ち込んで幸福感を感じること
になるだろう. GDP は一つの数量的指標だが, 一時の
様に輸出拡大で GDP が維持しても国民の幸福感が
減少するようでは意味がない.
やはり, 「日本人の幸福感」と言うものを良くわきまえ
て考える必要があるだろう.
最近, 大学でも技術英語の見直しが始まっているのだが,
いわゆる英語屋さんの授業は, ソツはなくても, 面白く
ないのに対し, 人間の心理学をベースにした人の授業は
我々にも面白かった. 人を対象とするのであれば, 人を
知れ, と.
だから, 豊かな国にするのであれば, 国が豊かと国民が
感じるのはどんな時かを知る必要がある.
こたつがめ