
8月30日午後の衆院本会議で、野田氏は首班指名を受け、晴れて第95代首相となった。
1.泥鰌人事の裏の意図
野田首相は早速役員人事に着手。幹事長に輿石参院議員会長、政調会長に前原氏を起用した。また、国対委員長には平野氏、幹事長代理に樽床氏を指名した。
ここで注目に値するのは、やはり幹事長に輿石氏を起用したこと。これは非常に大きな意味を持っている。野田政権の要石と言っていい。勿論、輿石氏は小沢氏に近い人物としてよく知られている。
今回の代表選を巡って、小沢氏は幹事長を狙っていたとも言われている。もちろん解散に備えて、党の金庫を握れば、選挙を差配することができる。
その幹事長職を、主流派の野田氏が代表選に勝ったにも関わらず、小沢グループに差し出した。党の実権を小沢グループに投げた。
事実上、この幹事長人事を持って、野田政権は固まった。最大の急所を押さえた。野田氏の完全勝利といっていいほど。
輿石氏を幹事長に据えるということは、小沢グループを政権サイドに取り込むということ。それは表向きには、挙党態勢を整えるという意味なのだけれど、その奥にはもう一段の深い意味がある。
それは、小沢氏が一番欲しがった幹事長を差し出す代わりに、3党合意を進める、即ち、マニフェスト見直し路線でいくという意思表示を野田首相がしたということ。
これは同時に、小沢氏にマニフェストという「名分」と幹事長という「実権」のどちらを取るかの二者択一を迫るという意味合いがあった。
幹事長を受けたら、小沢氏は選挙屋であり、選挙のためにマニフェストを捨てることも辞さない、国民生活第一なんて言っていたのは嘘っぱちとなって、これまでの主張の正統性が薄れてしまう。
また、幹事長を断っていたら、これもまた、挙党態勢だと、あれほど言っていたくせに、自ら断ったことになるから、これもまた、従来の主張の正統性を失うことになる。
つまり、どっちを選ぶにせよ、詰んでいる。
一度は断った輿石氏は、再びの要請に応じ、幹事長を承諾した。小沢氏は名より実を選んだ、いや、選ばされてしまったと言った方がいいのかもしれない。
強いて言えば、輿石氏が幹事長を固辞して、小沢グループから幹事長が出せなければ、いつまでも党内野党を抱え込むことになるから、不安要素が残る。政権運営における禍根となる。それを輿石氏を幹事長にすることで潰した。
更に、国対委員長に平野氏を据えることで、鳩山グループの取り込みもしている。つまり、党と国会運営の実権と責任を小沢、鳩山グループに持たせることで、党内野党の動きに制約を掛けた。
つまり、3党合意を下敷きにしないと、ねじれ国会は一歩も進まない現実を逆手にとって、党内野党のスタンスを持っている小沢・鳩山グループの幹部をそれぞれ党と国会の要職に据えることで、自分達の主張を抑えないと国会が進まないようにしたということ。
また、これは、野田首相の"党よりも国会運営を優先する"という宣言でもある。これは評価できる。
これで政策的に小沢氏の居場所はなくなった。
こうしてみると、野田首相は、党内野党を、敵にすることなく正攻法で潰したことになる。意外と強かかもしれない。
2.野田首相の一字
ただ、こうした敵を作らないやり方は、言葉は悪いけれど、八方美人になり易く、ぶっちゃけて言えば、「足して2で割る」政治になるのではないかと思われる。
おそらくは、党内の意見を聞き、自公の意見も聞き、そして足して2で割ったところを落としどころに持ってくる。そんなやり方。
まぁ、それでも人の話を聞く分だけ、菅氏より100倍マシだし、また、自分の主張に拘って反発を招くような真似もしない分マシ。
だから、傍目には、非常に、「無難」かつ、「つまらない」政治に見えるだろうけれど、一言でいえば、菅首相時代のポピュリスト政権から、足して2で割るリアリスト政権に変わると思う。
野田氏は、一応保守派だと見られていて、中国・韓国が警戒の意を示しているけれど、実際は足して2で割りまくって、無難に事を進めるはず。
今回の代表選でも、野田氏は、当初増税を口にしていたものの、党内の反発が強いとみるやトーンダウンしていったのだけど、また支持が集まってくるとみたら、また増税を言い始めた。
要するに、いつもアクセルとブレーキペダルに足を乗っけていて、状況に合わせて、踏んだり緩めたりしてバランスを取っていたということ。
だから、首相になってからも同じやり方をするとすれば、慎重に様子を伺いながら、アクセルとブレーキを絶えず調整して、「足して2で割る」走行をする筈。
その意味からいくと、野田首相の行動原理を表す一字は、「定」。
これは、「足して2で割る」政治で、物事の方針なり、流れを「定めて」いく。レールを引いていく。それは、アクセルとブレーキを絶えず調整して「定速」で進んだ結果、静々と決まってゆく。そうした政権になるのではないかと思う。
ただ、ここで注意すべきは、民主党、特に主流派の首脳達が、"左翼脳"であるために、いくら野田首相が保守派であったとしても、左翼と足して2で割られる結果、中道以上の右には行けない可能性が高いだろうということ。
平時であれば、このやり方でも政権運営していけるとは思うけれど、今は震災復興、経済危機、その他諸々、いわば国難の最中にある。それを「足して2で割る」定速政治で乗り越えていけるのか。行く先は平坦な道じゃない。


[東京 30日 ロイター] 野田佳彦新首相(民主党代表)は30日夜、民主党幹事長に内定した輿石東参院議員会長ら党役員と相次ぎ会談した後、今回の役員人事について「党を挙げての態勢を作って、国民のためしゃにむに働く。そういう政治を実現していく」ことが狙いだと述べた。野田氏はあすの両院議員総会に人事案を提案する。
野田氏は、輿石氏を幹事長に据えたことについて「参院をよくまとめている」と、同氏の求心力やリーダーシップを評価したと説明。「衆院を含め、全体的にまとめる力があると思う」と述べた。
政調会長とした前原誠司前外相に関しては「政策の意思決定に強い問題意識を持っていた。この分野で辣腕を振るってほしい」と述べ、きょうの前原氏との会談で、今後政府が意思決定をする際は、政調会長の了解を原則とする方針で合意したことも明らかにした。「党の意見を踏まえた政策意思決定をしていきたい」という。
国対委員長に内定した平野博文元官房長官は「与野党関係を含め、よく仕事をしてもらえる実務家」、幹事長代理の樽床伸二元国対委員長は、輿石氏の補佐役として「党内の縦横斜め、縦横無尽にいろいろ情報を持って人望がある」と評した。
役員人事を決めるにあたり、党内グループへの配慮を問われた野田氏は「評価は任せるが、私なりの適材適所で選んだつもり」と説明。自民・公明との3党合意に関しては「守っていくと代表選で主張したし、それぞれの党にもそういう意思を伝えた。こうした基本的な点は(役員間で)理解を得られている」と述べた。
(ロイターニュース 基太村真司;編集 宮崎亜巳)
URL:http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK049707720110830
この記事へのコメント
知ったかぶり
すぐに化けの皮がはがれると思うし
アホ
放射性物質を凝縮、沈殿する仏アレバ製の装置で水漏れがあり、装置の半分を
停止したと発表した。
漏れた汚染水の量は不明。環境中への流出はないとしている。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20110831-OYT1T00912.htm
しんじられまへんな。
どうせ施設内の地下へ染み込んでいるんだし正直に言っちゃえよ。
誰一人信じていません。
フクシマは永遠に被爆土地です。
とおる
党内論議をしても、賛成が多数派でしょうから、党内多数派に反する事を代表がするのは困難。
何がしたくて民主党に入ったのやら。