
8月29日、紀尾井町のホテルニューオータニでおこなわれた民主党代表選は、当初の下馬評を覆して、野田氏が新代表に決定した。
午後から始まった、一回目投票結果は次のとおり。
海江田氏:143
野田氏 :102
前原氏 :74
鹿野氏 :52
馬淵氏 :24
どの候補も過半数に届かず決選投票となった。
29日の朝、国会内で開かれた菅グループの会合で座長の江田法相は 「決選投票になったら、『非海江田』で票を集中させたい」と30人の出席者に呼びかけた。また、野田、前原両陣営には「決選投票では野田、前原両氏のいずれか上位となった候補に投票する」ように事前に打診し、了解を取り付けていた。
その結果で3位の前原氏は野田氏支援に回ることになったのだけれど、これは海江田陣営でも想定内のこと。問題は中間派の鹿野氏と馬淵氏の票が何処に行くかということだった。
馬淵氏は29日朝の決起集会で、決選投票になれば、政策の近い海江田氏に投票すると伝えていた。その裏には、推薦人20人を集めることに苦労していた馬淵氏が小沢グループから推薦人を借りたという事情も囁かれている。
一方、鹿野氏はというと、海江田陣営と野田グループ双方からアプローチを受けていた。けれど、その中身は全然違っていた。野田氏の選対本部長を務めた藤村幹事長代理は29日の朝に鹿野氏の選対本部長である大畠国土交通相に決選投票での「野田、前原、鹿野連合」の実現を要請したのに対して、海江田陣営内の小沢グループが鹿野陣営幹部曰く「すさまじい『引きはがし』を始めた。議員が何人か、全く顔を出さなくなった。ポストで釣っているのか何か分からないが、うちを狙い撃ちにしている」というくらい、えげつない多数派工作を行なった。
これは、1回目の投票で鹿野氏が2位に食い込む可能性が出てきたことを受け、下手をすれば鹿野氏に反・小沢票が固まってしまうことを恐れ、1回目の投票で当選を決めるという作戦に変更したことが背景にある。
元々、鹿野陣営には小沢グループの議員も多かったのだけれど、この小沢グループによる「引きはがし」に対しうる反発もあって、野田グループからの「野田、前原、鹿野連合」の要請を受け入れる素地が出来ていたようだ。反発した鹿野陣営は決選投票での海江田氏支持に違和感を抱き、対応を鹿野氏らに一任し、その結果、決選投票になった場合、「鹿野氏が上着のスーツを着たままなら1位の候補に投票、上着を脱いだら2位の候補に投票」というサインが決められのだという。
ということで、鹿野氏への票は野田氏に、馬淵氏への票は海江田氏にそれぞれ流れることになったのだけど、決選投票の結果は大体その通りとなった。
野田氏 :215(野田102+前原74+鹿野52=228 :-13)
海江田氏:177(海江田143+馬淵24=167 :+10)
これで、野田氏の代表が決まった。
この結果は、小沢氏・鳩山氏側にとっては少なからずショックだろう。元々、小沢・鳩山グループに近い鹿野氏を敵に回してしまったことが致命傷となった形。また、野田氏が一回目の投票で100票以上集めたことも大きかったと思われる。
これは、海江田氏が一回目で票を積み上げられなかったとも言えるのだけれど、あるいは、28日に海江田氏がマニフェストの主要政策見直しに関する民主、自民、公明の3党合意を再考するなんて信じがたい発言をしてしまった辺りから狂いが始まったのかもしれない。
今回で鹿野氏のグループを敵に回してしまった小沢氏は致命傷を受けてしまった。鹿野氏を味方に付けられなかったことで、来年秋の代表選に小沢氏が出馬したとしても、勝てる可能性は低くなった。今回の実績を持って、鹿野氏と馬淵氏が出馬すれば、また票が割れてしまう。
逆に、主流派にしてみれば、今回の結果で、前原氏を温存することができた。党内の評判は悪いけれど、世間受けは良いから、来年秋の代表選まで大人しくしていれば、また担ぎ出すチャンスがある。
また、次期首相になるであろう野田氏だって、そこそこ無難にやることができれば、来年の代表選でも勝てるチャンスが出てくる。何せ、決選投票で野田氏が獲得した215票は曲りなりにも野田氏への支持票だし、反・小沢票でもある。だから、1年で大きく切り崩されない限り、チャンスは十分。
これで、小沢氏の求心力は低下することは避けられない。来年秋の代表選の出馬に備えて、力を蓄えようとしても、まず党員資格停止を解除して貰わなくちゃいけないし、それには例の裁判のケリを着けなくちゃいけない。
また、野田氏がそれなりにやれば野田氏の再選があるだろうし、解散総選挙を睨めば前原氏に禅譲するプランだってある。
あと、今回NHKが決選投票寸前に、鹿野氏が野田財務大臣投票を指示して、馬淵氏は海江田氏以外に投票するように指令したと報道したことについて、後で、馬淵氏は海江田氏に投票すると指示していたと誤報していたとの問題が持ち上がっている。
これが意図的だったのかどうかは分からない。
とかく、小沢氏はメディアに敵視され、時に理不尽にまで叩かれたりしてきたけれど、結局こういうことが何度も起こってしまうから、小沢グループの面々や小沢氏の支持者をして「NHKが誤報さえしなければ」といった未練を生んで、次こそは、と小沢氏に対する一縷の望みを繋いでしまうという具合に逆効果になってしまっていないか。
むしろ、正々堂々とタイマンで戦って、小沢氏が完膚なきまでに敗北してしまえば、氏の求心力はぐっと下がってしまうだろうけれど、民主党にとってはその方がよかったかもしれない。
小沢グループを党内に抱えている限り、党内の火種は絶えることはない。

この記事へのコメント
sdi
一年続くことだけが目標ですからね。
ちび・むぎ・みみ・はな
優秀な人材を気に入らないからと言って
弾き出すのだから仕方がない.
我慢していれば小池百合子は今も居たかも.
皆に共通する政治的目標を持つのか,
自分が大将になりたいのか, が大局を決定.
嘘付党は人生の真理を早送りで現出する.
首相が財務省の傀儡であっても,
嘘付党でも 1/3程は増税反対強行派.
自民党も始めに復興と基本指針を決めたばかり.
増税反対は国民の支持も得られるから, さて.
とおる
almanos