ミドリムシが餓えを解決する(藻が拓く未来 後編)
昨日のエントリーの続きです。
3.みどりラーメン
また、藻の有効利用は、油だけじゃない。食べ物にも使われている。
東京大学の近くにある「山手らーめん 安庵」では、今年の7月中旬から、ミドリムシを使った「みどりラーメン」を売り出している。
ミドリムシと聞けばギョッとするかもしれないけれど、ミドリムシは「虫」ではなくて、微細藻類に分類される藻の一種で、ワカメの仲間。
ミドリムシは、鞭毛運動をする動物的性質を持つと同時に、植物として光合成を行う、動物と植物の両方の性質を持っている単細胞生物で、体長はわずか0.03~0.05ミリ。
だけど、必須アミノ酸やビタミン類など59 種類の栄養素を持っていて、人間が生きていくうえで必要な栄養素の殆どを持っているという。
この「みどりラーメン」は、2005年に食用ミドリムシを世界で初めて大量培養することに成功した、東京大学発のベンチャー企業のユーグレナ社とのコラボで3カ月かけて開発したそうだ。
肝心のお味は、意外とさっぱりしているそうで、緑のスープにはバジルの風味があり、味としてはラーメンというよりは、どちらかと言えばパスタに近い印象とのレポートもある。
ラーメン店の店長曰く、材料にバジルを使うことで、ミドリムシ粉末の味が前面に出すぎないように工夫を重ねたとのこと。お客さんからも「おいしいね」と言われることもあるそうだ。
食用ミドリムシを開発したユーグレナ社は、ラーメン以外にもミドリムシを含有した「ミドリムシクッキー」も開発し、2010年6月から販売している。
4.ミドリムシの大量生産への道筋
ユーグレナ社がミドリムシの大量培養に成功するまでは、食品、医療・医薬品、炭素固定などの目的でNASAをはじめとする様々な機関で研究されてきたのだけれど、ミドリムシは雑菌などに弱く、屋外での大量生産は困難とされてきた。
なぜかというと、植物は自分から動くことができないので、外敵から"逃げる"ということが出来ない。そこで、植物は自分の身を守るため、細胞壁を厚く、すなわち固くすることで身を守ってる。
一方、動物は、自分が動くことで餌をとったり、外敵から逃げたりすることができるのだけれど、そのとき、植物のように細胞が固くすると動き難いので、細胞を柔らかい細胞膜で覆う性質を持っている。
だけど、ミドリムシは植物であるにも関わらず、鞭毛を持って動くことができ、普通の植物のように固い細胞壁を持たず、柔らかい細胞膜で覆われている。そのため、外敵からの進入に弱く、雑菌に脆いという弱点があった。したがって、各研究機関でもミドリムシの増殖は専らクリーンルームで行なわれることが多かった。
だけど、ユーグレナ社はクリーンルームではなくて、他の雑菌が繁殖しにくい環境をつくることで大量生産できないかと考えた。
ミドリムシは二酸化炭素濃度が高いほど、生育スピードが上がるという性質があり、他の雑菌が生きられない高濃度の二酸化炭素の中でも生育することができる。ユーグレナ社はここに着目した。
ユーグレナ社は40%という高濃度の二酸化炭素環境をつくり、そこでミドリムシを培養することで、雑菌の問題を解決した。
そして、ミドリムシの生育に必要な、強い日差しと綺麗な水そして温暖な気候という、屋外での培養に最適な環境として、石垣島を選び、培養に成功した。現在は、石垣島の直径30メートルのクロレラ培養用のプールを改造してミドリムシの生産を行なっている。
また、ミドリムシは3日で4倍という驚異的なスピードで増殖する。10mlの液体の中のおよそ5000万匹のミドリムシを攪拌して光合成させると、1ヶ月後には、14万リットル、およそ700兆匹にまで増えるというから、食糧生産という意味ではこの繁殖力は心強い。
更に、ユーグレナ社はミドリムシの光合成を利用して、地球温暖化防止に関する事業にも乗り出している。
ミドリムシは、光合成の効率が高く、100平方メートルの大きさのプールでミドリムシを培養すると、2万平方メートルの土地に植林したときと同等の二酸化炭素固定効果があるそうだ。
2009年には、沖縄電力の協力のもと、火力発電所の排出ガスを用いてミドリムシを培養する実験を行い生育に成功し、二酸化炭素削減にミドリムシが一役買っていることを確認している。
ユーグレナ社の出雲社長は、18歳のとき、バングラディシュを訪れ、その風景と人々の貧しさにショックを覚え「地球に住んでいる人がみんな元気で健康にいられるためにはどうすればいいのか」との問題意識を持ったのだという。栄養不足で死亡する子供を見て、栄養素の塊のようなものがあれば、助かるのではないか、と。
その点、ミドリムシは、光合成を行なうために、高タンパクでも増殖に必要なコストが小さい部分に着目し、開発を進めてきたのだそうだ。
ユーグレナ社は最終的に、ミドリムシを使った食料対策と環境対策を海外に広めていきたいという。
こうした新技術によって、食糧問題が解決するのは実に素晴らしいことだし、そうした事実ももっと多くの人々に知ってもらって、ニーズを増やしていくことも、これらの技術を普及する上で役立つに違いない。
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食用微生物がたっぷり入ったラーメンを食べてみた 2011年7月28日
淡水でごく普通に生息している微生物の「ミドリムシ(学術名:ユーグレナ)」。小学校の理科の授業で、お馴染みの生物なのだが、これをたっぷり使ったラーメンが登場し、話題を呼んでいる。
そのラーメンとは、山手ラーメン安庵の本郷店限定で提供されている「みどりラーメン」だ。その名に相応しくスープの色は緑色をしている。お味のほどはいかに!?
東京・文京区にあるこのお店は、東京大学からも程近い。みどりラーメンは、その東大発のベンチャー企業「ユーグレナ社」がお店とコラボレーションして誕生したのだとか。
ミドリムシとは、実は「虫」ではなく、藻の一種で微細藻類に分類される。体長はわずか0.03~0.05ミリと言われている。当然ながら目視することはできない。小さいながらも59種類もの栄養素を持ち、未来の食材として注目されているのだ。
実際にお店に行き、みどりラーメンを食べてみた。まず見た目はスープが緑色をしている以外は、通常のラーメンと変わらない。スープを一口飲んでみると、濃いバジルの風味を感じる。そして麺はコシがあり、しっかりとした歯ごたえだ。全体的に想像した以上にさっぱりとしている。味としてはラーメンというよりも、どちらかと言えばパスタに近い印象さえ受ける。
粉ワサビと抹茶も入っているためか、後味に若干の苦味を感じた。
ちなみにお店は平日11時30分から営業を行っている。スープがなくなり次第営業終了で、最近はこのみどりラーメンが話題になっているために、早めにお店が閉まることもあるそうだ。行ってみたいという方は、念のため一度お店に電話をしておいた方が良いのではないだろうか。
URL:http://rocketnews24.com/2011/07/28/116122/
この記事へのコメント
settsua
ドラえもんのアニマルプラネットという映画で、動物の星に食料生産工場がありそこでの原料はすべて水と空気と太陽光という設定があったのを思い出しました。
だんだんと藤子F先生の世界が現実化しているのだと感じます。