8月11日の衆院本会議で特例公債法案が民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、参院に送付された。参院では19日から審議に入り、24日には参院を通過し、法案成立の見込み。
これで、菅首相の退陣3条件の成立まで、再生エネルギー特別措置法案を残すのみとなった。
御存知のとおり、再生エネルギー特別措置法案とは、再生可能エネルギーの利用拡大を推進するため、再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を一定の期間・価格で電気事業者が買い取ることを義務付ける法律。
法案の原案はこちらにあるのだけれど、気になる部分について一部引用する。
第三条 経済産業大臣は、毎年度、当該年度の開始前に、電気事業者が次条第一項の規定により行う再生可能エネルギー電気の調達につき、経済産業省令で定める再生可能エネルギー発電設備の区分ごとに、当該再生可能エネルギー電気の一キロワット時当たりの価格(以下「調達価格」という。)及びその調達価格による調達に係る期間(以下「調達期間」という。)を定めなければならない
第三条 5項 経済産業大臣は、調達価格等を定めようとするときは、総合資源エネルギー調査会の意見を聴かなけばならない。
第三条 7項 経済産業大臣は、物価その他の経済事情に著しい変動が生じ、又は生ずるおそれがある場合において、特に必要があると認めるときは、調達価格等を改定することができる
気になる部分というのは、この第三条で、「経済産業大臣は、毎年度、再生可能エネルギー電気の一キロワット時当たりの価格及び調達に係る期間を定めなければならない」という部分。
要するに、経産大臣が毎年、買い取り価格を決めることが出来るようになっていて、言葉は悪いけれど、やろうと思えば、いくらでも好き勝手な値段にすることができてしまう。伊地方、5項で価格を決めるときには、総合資源エネルギー調査会なるものの意見を聞かなければならないとなっているけれど、この委員会が価格の決定権を持っているわけではないし、この項について罰則条項があるわけではないから、経産大臣が、意見を聴くだけ聴いて、全く無視した価格設定としてとしても、それを止める手段がない。
更に、毎年買い取り価格を決めることとは別に、7項で必要に応じて買い取り価格を改定できるとなっているから、要するに、経産大臣は、自分の好きな時に、好きな買い取り価格を決めて、それを義務として電力会社に買い取らせることができるということ。
この買い取り価格の問題については、色んな方が指摘していて、たとえば、経済学者の池田信夫氏は、電力買取コスト及び電力安定化コストは電気料金に上乗せされるから、仮に1000万世帯に太陽光パネルを設置したら、電気料金は2倍以上になるだろうと指摘している。
今現在の家庭用太陽光パネルの1kWあたりの予想年間発電量をおよそ1000kWh/1kWとして、仮に5kWのシステムを導入したとすると、年間発電量は5000kWh。オール電化ではない一般家庭の年間消費電力が、約4000kwhと言われているから、太陽光パネルを設置した家庭は電気代がタダになって、毎年1000kW分の電気を買い取って貰えることになる。
今の電気代は1kWhあたり大体22円だから、太陽光パネルを設置した家庭は、年間で4000kwh×22円=8.8万円の電気代がタダになる計算。更に余剰電力である1000kWhを買い取って貰うとすると、仮に1kWhあたり40円で買い取ってもらって、約4万円の収入になる。すなわち合計して年間12~13万円くらい電気代がお得になるのだけれど、太陽光パネルの設置費用は1kWあたり大体60万円くらいだから、5kWのシステムだと300万円もする。
つまり、5kWの太陽光発電システムを設置しても、設置費用を回収するだけで20年以上かかる計算になる。だから、太陽光パネルを設置した一般家庭にしてみれば、1kWhあたり40円で、20年買い取り続けて貰っても割が合うかどうかの話になる。まぁ、実際は設置に対する補助金があって、1kWシステムあたり、4~5万程度でる筈だから、5kWシステムで20~25万、すなわち、大体2年分くらいの足しにはなるけれど、20年が10年に短縮されるくらいの補助ではない。
今回の再生エネ法では、経産大臣が毎年買い取り価格や買い取り期間を決めることになっているから、そもそも40円/kwhで買い取ってもらえるかも分からないし、いつまで買い取ってもらえるかも分からない。
それに、自民・公明両党が出している再生エネ法の修正案では、施行3年後に見直しを「必ず実施する」としているから、修正案が通れば、たとえば3年後に、買い取り価格の大幅な引き下げや、買い取り期間の短縮だって十分考えられる。
そもそも、再生エネ法の施行に伴う電気料金の値上げについては、産業界が猛反対しているから、3年後に見直しされる公算は高いと見る。
因みに、自公の修正案では、施行後3年間は「促進期間」として発電事業者に優遇策を実施する、としているから、穿った見方をすれば、再生エネ法を可決しても、3年間は電力会社への優遇策を実施するから電気料金の値上げをしないようにさせておいて、3年後の法案見直しで、電気料金を値上げしなくてよいくらいにまで買い取り価格をうんと引き下げて、事実上の骨抜き法案にすることだってできると思う。
自公の修正案の主なものは次のとおり。
(1)買い取り価格決定は経済産業相に委ねるのではなく、国会への報告や中立的な第三者機関の設置が必要
(2)価格決定に際しての関係閣僚による協議
(3)多くの電力を消費する産業への負担を二割程度軽減
(4)被災地住民に対する配慮
とまぁ、原案のような経産大臣の独断専行による買取価格と買取期間の決定ができないように縛りを掛けている。
以上のことから、今回の再生エネ法は、菅降ろしをしたい民主党執行部が自公の修正案をベースに飲む可能性が高い上に、修正案で可決するのであれば、3年後に骨抜き法案になるのではないかと思う。
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首相退陣条件の一つ、特例公債法案が衆院可決へ
菅首相の退陣条件の一つで、赤字国債の発行を可能にする特例公債法案は11日午後の衆院本会議で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、参院に送付される。
民主、自民両党は参院で19日に審議入りする方針で合意しており、24日にも成立する見通しだ。
赤字国債の発行額は、2011年度予算の歳入の約4割を占める。特例公債法案は当初予算と同様に、3月末までに成立させるのが通例だが、自民、公明両党が子ども手当など民主党の主要政策の見直しを成立の協力条件に位置づけたため、審議が大幅に遅れていた。
同法案が成立しなければ、10月以降には財源が底をつき、政府は予算執行を抑制せざるを得なくなるところだったが、こうした事態は回避されることになった。民主党の斎藤勁国会対策委員長代理は11日午前、記者団に「市場に安心感を与える。国内外の株価が非常に不安定な状況の中で、喜ばしいことだ」と語った。
(2011年8月11日11時14分 読売新聞)
URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110811-OYT1T00413.htm
再生エネ法案 きょうにも合意 2011年8月11日 朝刊
太陽光などで発電した電力の全量買い取りを定める再生エネルギー特別措置法案をめぐって、民主、自民、公明三党は十一日中に修正合意した上で、十二日に衆院を通過させたい考えだ。自民、公明両党は電力買い取り価格の決定過程の透明化などを求めている。民主党も同法案を退陣条件とする菅直人首相の辞任を最優先させるため、要求を基本的に受け入れる構えだ。
自民、公明両党は十日、民主党との政調会長会談に続き実務者協議を行い、民主党に対して共同で要求する修正項目をすり合わせた。自公両党は(1)買い取り価格決定は経済産業相に委ねるのではなく、国会への報告や中立的な第三者機関(仮称・調達価格等算定委員会)の設置が必要(2)価格決定に際しての関係閣僚による協議(3)多くの電力を消費する産業への負担を二割程度軽減(4)被災地住民に対する配慮-などを修正点として取り上げている。
これに対し、民主党の玄葉光一郎政調会長は会談後、第三者機関の設置について「柔軟に対応した方がいい」と記者団に容認姿勢を示した。
一方、多くの電力を消費する鉄鋼産業などへの負担軽減では、軽減を受けられる企業や産業の線引きをめぐり、自民党が「業種でくくるのではなく、電気の消費量や電気料金が占める割合を加味してきめ細かに設定すべきだ」(石破茂政調会長)と提案。国会関与の在り方なども含め、十一日の三党実務者協議で詰めるべき課題となった。
公明党の石井啓一政調会長は会談後、十一日中の合意見通しについて「民主党が譲歩すればまとまる」と述べ、民主党側に「丸のみ」を迫った。
民主党は自公両党の要求に対し、法案修正できない部分については、法案の付則や付帯決議に盛り込むほか、首相答弁で応じていく方針だ。
URL:http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2011081102000026.html
自民、再生エネ法修正案を了承、午後にも3党協議へ 菅首相の退陣3条件整う 2011.8.10 10:41
自民党の総合エネルギー政策特命委員会(委員長・山本一太参院政審会長)は10日午前、菅直人首相が退陣3条件の1つとして挙げる再生エネルギー特別措置法案の修正案を了承した。午後にも民主、自民、公明3党の政策実務者による修正協議に入り、週内の衆院通過、月末までの成立を目指す。修正協議が合意すれば、菅首相の退陣3条件が全て整うことになる。
修正案では、太陽光や風力など再生可能エネルギーの買い取り制度の導入促進を図るため同法案を恒久法と位置付けた上で、施行後3年間は「促進期間」として発電事業者に優遇策を実施する。
ただ、制度導入に伴う電気料金の高騰なども懸念されることから、政府のエネルギー基本計画の見直しや制度の実施状況を踏まえ、施行3年後に同法見直しを「必ず実施する」とした。
焦点の買い取り価格の決定については「中立的な第三者機関などが透明な手続きで行う」と規定した。鉄鋼業界など電力消費型産業には負担軽減措置も実施するほか、電気料金高騰を抑えるため、発送電の分離や石油石炭税の活用などを検討することも挙げた。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110810/stt11081010430002-n1.htm
3党再生エネ法修正協議が中断 衆院通過、19日にずれ込みも 2011.8.11 11:42
再生エネルギー特別措置法案をめぐる民主、自民、公明3党の実務者協議は11日午前、民主党の実務者がそろわなかったため協議を途中で中断した。民主党は同日中に3党で修正合意を行いたい考えだが、自公両党は「民主党の対応は不誠実だ」と反発しており、協議再開のめどは立っていない。
3党は10日の政調会長会談で、12日に法案を衆院通過させる方針を確認していた。民主党側の対応を受け、自民党の佐藤勉国対委員長代理は11日午前の記者会見で同法案の衆院通過は19日になるとの見通しを示した。
中断前の実務者協議では、自公両党が再生エネルギーの買い取り価格を第三者機関「調達価格等算定委員会」の意見を元に決定することや鉄鋼業界など電力消費型産業への負担軽減措置を導入することなど柱とした修正案を提示した。
修正案には、制度導入に伴う電気料金の高騰を抑止するため、政府のエネルギー基本計画見直し時や少なくとも3年ごとに内容を見直し、平成33年3月末までに抜本改正するとの規定も盛り込んだ。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110811/stt11081111430004-n1.htm
再生エネ法案 「利益35%吹き飛ぶ」産業界猛反発 2011.7.30 23:14
電気料金の値上がりを伴う再生エネルギー特別措置法案に、産業界は反発している。生産コスト増につながり、国際競争力を低下させるだけでなく、企業の体力を奪うためで、電力依存度の高い業種を対象外にする議論も浮上している。
政府は電気料金値上げについて、「1キロワット時当たり0・5円を超えないように運用する」(海江田万里経済産業相)と説明する。現在、産業用の平均は13・8円で、0・5円の値上げは約3・6%に相当する。
だが、産業界は菅直人首相が目指す「2020年代の早い時期に再生可能エネルギー比率を20%にする」目標を達成しようとすれば、想定よりも買い取り価格は高くなり、2円程度の値上げが必要と試算する。
この場合、鉄スクラップを溶かすために大量の電気を使う電炉業界では「経常利益の35%が吹き飛ぶ」(鉄鋼業界首脳)。同様に電力依存度が高い化学業界も、「電気料金の安い韓国企業との競合で不利。断熱材開発などで環境に貢献しているのに、技術開発の遅れにつながる」(大手幹部)と不安視する。
東日本大震災からの復興を急ぐ中で、経団連の米倉弘昌会長は「雇用を守り、成長を実現することを考えれば、制度導入は一時ストップすべきだ」と批判。ドイツは、電力依存度の高い企業を値上げの対象外にしており、専門家も、「国が省エネ技術開発を支援するなどの仕組みが必要だ」(一橋大大学院の山内弘隆教授)と指摘する。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110730/plc11073023160026-n1.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
ヒトデナシ一人に退場願うためにこんなものを
成立させるのはおかしい. 嘘付党がおかしいのは
はなから分かっているが, 自民党がこんなものに
乗るとは世も末だ.
自民党も一部の議員は積極的に活動している
ことが伝わっているが, 自民党多数派の議員は
現在何をやっているのだろうか?
嘘付党の議員が何もやっていないのは分かるが,
自民党多数派の動きが分からないのは残念なことだ.
各部会で粛々と作業は進めているのだろうが,
いきなり総選挙に突入した場合のことを考えると
心許ない.
ぽんた