「増税は必要ないという議論の中で、例えば、日銀がすべて国債を引き受ければいいという議論もありました。しかし、そういった議論には私は到底賛成できないわけで、やはり、そこは節度を持って考えなければいけないと思います。」
1.東日本大震災の復興基本方針
先月29日、政府の復興対策本部は、東日本大震災の復興基本方針を正式決定した。復興期間は今後10年として、当初5年を集中復興期間と位置づけして、19兆円程度を投入する方針。
これは、阪神大震災で10年間に11兆6千億円、当初5年間で9兆2千億円を投じたことを参考にしたためで、このうち6兆円は、平成23年度の第1次、第2次補正予算で手当て済。残り13兆円は第3次補正予算以降に盛り込む見込み。
だけど、その3次以降の13兆円の確保策は「歳出の削減、国有財産売却のほか、特別会計、公務員人件費等の見直しやさらなる税外収入の確保および時限的な税制措置で確保する」とし、内容を明示していない。これは、民主党内で増税反対論が噴出したためで、当初、基幹税を中心とした臨時増税と歳出削減などで財源を確保する方針だったのが、増税と明記できなくなったようだ。
復興基本方針の中身は、「復興特区制度」の創設や使い勝手のよい交付金等、国からの支援の部分と、民間の力による復興として、民間の資金・ノウハウを活用したファンドや官民連携(PPP)IやNPO、ボランティア等の「新しい公共」の担い手による復興のための活動の促進などを骨子としている。
ただ、筆者が注目したいのは、やはり、福島原発事故の苦しむ福島県に対する復興案。
今回の復興基本方針では、福島県に、「世界をリードする医薬品・医療機器の研究開発拠点」や「再生可能エネルギーの世界最先端の研究拠点」を整備し、また、自宅を失った被災者には「災害公営住宅」を提供し、希望する入居者には将来的に売却する構想が盛り込まれている。
この、福島県に再生エネルギーなどの最先端の研究機関を整備したり、「災害公営住宅」を提供したりする部分については、以前「東日本復興への未来ビジョン」や「続・東日本復興への未来ビジョン」でエントリーしたものと似たような内容であり、福島の復興には役立つのではないかと思う。
ただ、財源の部分が詰められなかったのは残念であり、これは次の政権での課題になると思われる。仮に、9月以降も菅政権が続くようなら、3次補正を巡って政局に使われる可能性もあるから、復興をいち早く行いたいのであれば、やはり菅首相の速やかな退陣は避けて通れないだろう。
2.放射コンクリートの低減技術と超伝導ケーブル
放射能汚染問題や、再生エネルギーにしても、新しい技術をマスコミがぽつぽつ紹介している。たとえば、清水建設は、近い将来の原発の廃炉に備えて、世界初となる放射化コンクリートの放射能低減化技術を開発している。
放射化とは、もともとは放射能が無い物質が、他の放射性物質等から発生する放射線を受ける事によって、自分が放射性物質になってしまうこと。
一般的な、110万kWの沸騰水型原子炉(BWR)を解体する場合、1基あたり2千立法メートルを超す放射化コンクリートが発生すると言われている。
これは、25mプール3杯分(1杯約660㎡)にあたる量で、これほどの量の放射性廃棄物を処理するとなると、とても大変。
コンクリートがなぜ放射化するのかというと、コンクリート内の鉄筋、いわゆる骨材の中に極微量に含まれる、ユーロピウム(Eu)とコバルト(Co)原子に中性子が当たって、吸収されることで放射化するから。
通常、原子炉や加速器の遮蔽体コンクリートには約10数ppmのコバルトや約1ppmのユーロピウムが含まれていて、中性子がこれらの元素に吸収されると、半減期5.27年のコバルト60や、半減期13.54年のユーロピウム152、及び半減期8.59年のユーロピウム154が生成される。
そこで、清水建設は、放射化コンクリートを数ミリの大きさに粉砕して、約120℃の硝酸に24時間浸すことで、骨材中のユーロピウムやコバルトなどの金属を溶出させることで分離する技術を開発した。
金属が溶出した硝酸にアルカリを加えてpHを7~8にしてやれば、ユーロピウムやコバルトは金属塩となって析出されるので、それを濾過することで放射性ユーロピウム、放射性コバルトを回収することができるという。
この技術によって、放射性廃棄物となるコンクリート量を約1/100に削減できるそうだから、確かに福島原発だけでなく、放射化したコンクリート瓦礫や骨材等の放射能除去技術として活用できると思われる。
また、電気の送電についても、超電導ケーブルの実証実験が計画されている。これは、今年の秋に、横浜市の東京電力旭変電所で、実際の電力網に超電導ケーブルを繋いで、信頼性や耐久性をテストするもの。。距離は250メートルと短いものの、超伝導ケーブルを実使用する実験。
超伝導ケーブルについては、「超伝導直流送電」のエントリーで、紹介したけれど、今秋の東電の実証実験は、直流ではなく、交流での実験なのだけれど、交流でも超伝導ケーブルだと損失は少なくなるので、この実験が成功すれば、更なる低損失での送電に道が開けることになる。注目したい。
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増税、規模・期間明示せず 政府、復興方針を正式決定
政府の復興対策本部(本部長・菅直人首相)は29日、東日本大震災の復興基本方針を正式決定した。復興期間は今後10年とし、当初5年を集中復興期間と位置づけて19兆円程度を投入。基幹税を中心とした臨時増税と歳出削減などで財源を確保する方針を示した。だが、民主党内で増税反対論が噴出したため増税の規模や実施期間は明記せず、閣議決定もしなかった。
首相は29日夜の記者会見で「本格復興に向けて政策の全体像を示すものだ。復興債を発行し、償還財源も責任を持って確保する。第3次補正予算など復興への取り組みを本格化する」と述べた。
29日までに党に示した最終段階の案は、復興財源として今年度中に復興債を発行▽復興債の償還財源として10兆円程度を臨時増税で確保▽所得税や法人税など基幹税を中心に付加的な定率増税を検討▽増税期間は「5年間を基本に最長10年間」――などとしていた。
だが、29日に正式決定した案は、復興債の発行以外は具体的な数値をほとんど示さず、3次補正を編成する9月前後に決定を先送りした。
復旧・復興の事業規模は10年間で「少なくとも23兆円程度」、当初5年間は「少なくとも19兆円程度」としたが、1次補正と2次補正の分(計約6兆円)をのぞく13兆円程度の確保策は「歳出の削減、国有財産売却のほか、特別会計、公務員人件費等の見直しやさらなる税外収入の確保および時限的な税制措置で確保する」とし、内訳を明示しなかった。復興債の償還期間も「集中復興期間および復興期間を踏まえて検討する」との文言にとどめた。
URL:http://www.asahi.com/politics/update/0729/TKY201107290650.html?ref=reca
福島に再生エネルギー研究集約…復興方針最終案 読売新聞 7月27日(水)3時3分配信
東日本大震災の復興に向け、政府が今月末に取りまとめる復興基本方針の最終案が26日、明らかになった。
原発被害に苦しむ福島県に、医療や再生可能エネルギーにかかわる研究開発の拠点を整備し、政府系研究機関の関連部門の進出を進めることで復興を後押しする考えを打ち出した。住宅の再建が難しい被災者には、低家賃の「災害公営住宅」を提供することも盛り込んだ。政府は29日にも復興対策本部を開き、方針を正式決定する。
最終案では、原子力災害の復旧・復興について「国が責任を持って対応する」と明記。放射性物質に汚染された土壌の除染や災害廃棄物の最終処分については、「必要な措置を講じる」とした。また、福島県に「世界をリードする医薬品・医療機器の研究開発拠点」や「再生可能エネルギーの世界最先端の研究拠点」を整備し、関連産業の集積を目指す考えを示した。自宅を失った被災者には「災害公営住宅」を提供し、希望する入居者には将来的に売却する構想も盛り込んだ。 最終更新:7月27日(水)3時3分
URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110726-00001253-yom-pol
2010.03.02 世界初、放射化コンクリートの放射能低減化技術を開発
―放射性廃棄物量を約1/100に削減―
清水建設(株)<社長 宮本洋一>はこのほど、近い将来本格化する原子力発電所の廃炉・解体に備え、世界で初めて放射化コンクリートの放射能低減化技術を開発、その実用化にメドをつけました。この技術を採用することにより、放射性廃棄物となるコンクリート量を約1/100に削減できる見込みです。
現在、日本国内では54基の原子炉が稼動中ですが、初期に建設された原子炉は寿命を迎えつつあります。すでに、日本初の商業用原子力発電所である日本原子力発電(株)東海発電所では廃炉計画が進められており、建設会社では当社だけが参画しています。
廃炉の大きな課題は、解体時に発生する大量の放射性廃棄物を削減することです。例えば、国の廃炉スタディのモデルになっている110万kWの原子炉(BWR型)を解体する場合、1基あたり2千m3を超す放射化コンクリートが発生し、想定では全量を放射性廃棄物として埋設処分することになっています。そこで当社は、放射性廃棄物となるコンクリート量を削減するための技術開発に取り組み、8年の歳月をかけて実用化のメドをつけたものです。
コンクリートが放射性廃棄物になる原因は、骨材中にごく微量に含まれるユーロピウム(Eu)とコバルト(Co)という原子(金属)に中性子が当たって放射化することにあります。当社はそこに着目し、EuとCoを放射化コンクリートから効果的に除去する技術開発に取り組んできました。実用化のメドをつけた除去技術は、放射化コンクリートの硝酸処理です。この技術は、コンクリートの放射化特性を評価する技術や汚染土壌の処理技術の開発で培った当社のノウハウがベースになっています。
具体的な処理方法は、まず、放射化コンクリートを数ミリの大きさに粉砕し、それを約120℃の硝酸に24時間浸します。すると骨材中のEuやCoをはじめとする様々な金属が硝酸中に溶出します。溶出した金属は、硝酸中にアルカリを加えて中和していく段階で、それぞれ特定のpH(ペーハー)の値になると金属塩となって析出されます。EuとCoは、pHが7~8になると析出されるので、それらをろ過して回収し放射性廃棄物として埋設処分します。硝酸処理後のコンクリートは、EuとCoの含有量が従前の1/10以下となり、放射性物質として扱う必要がなくなるため、骨材は再利用、鉄やアルミニウムを含む塩化物は一般廃棄物として処分できます。
硝酸処理により、次のメリットを享受できます。
1.放射性廃棄物の量を従来の約1/100に削減できます。110万kWの原子炉(BWR型)を解体する場合、放射性廃棄物量が約2千m3減り、わずか約20m3で済む見込みです。
2.放射性廃棄物最終処分場の新設・増設需要を抑制できるので、社会コストの低減にも寄与できます。
3.EuとCoをほとんど含まない硝酸処理後の骨材は放射化しにくいため、原子力発電所のコンクリートに再利用することで、将来の廃炉コストをさらに削減できることになります。
当社は今後、放射化コンクリートの放射能低減化技術を関係各方面に提案し、原子力発電所の廃炉・解体工事の受注に結び付けていく考えです。
以 上
≪参考≫
※廃炉に対する社内体制
原子力・火力本部(本部長 専務執行役員・真木浩之)と技術研究所が連携して、廃炉に関する技術開発に取り組んでいます。また、放射線対応の一連の技術開発については、東北大学名誉教授の中村尚司先生の指導を受けています。
URL:http://www.shimz.co.jp/news_release/2010/770.html
「地球電力網」日の出前 超電導ケーブル実用化へ
超電導送電ケーブルを地球に張り巡らし、砂漠に設置した太陽光発電所や強風地域の風力発電所と都市を結んで電気を供給する-。こんな壮大な計画が今、注目を集めている。名付けて「ジェネシス計画」。実は20年以上も前に、日本発で提唱されていたものだ。実用化に向けての技術がようやく出そろってきた今、東日本大震災と原発事故で日本はエネルギー戦略の根本的な再構築を迫られている。技術者たちが長年温めてきた夢物語は、そんな現代ニッポンの救世主になるか。
「ようやく、最終段階に駒が進む」。東京・芝浦の住友電気工業東京本社で、材料技術研究開発本部の超電導担当技師長を務める佐藤謙一フェローは、感慨深げにつぶやいた。
佐藤氏は、今年秋にも東京電力旭変電所(横浜市)で行われる超電導ケーブルの実証実験に携わっている。距離は約250メートルと短いが、超電導ケーブルを実際の電力網につなぎ、信頼性や耐久性をテストする。超電導ケーブルが日本の一般電力網に組み込まれるのは初めてだ。
現在、送電線には主に銅が材料として使われているが、超電導ケーブルを使えば、発電した電力を100%に近い状態で住宅などに送れるようになる。
住友電工は1980年代後半から超電導ケーブルの開発を進めてきたが、当初は数アンペア程度とごくわずかな電流しか流せないなど、実用化には大きな壁があった。そこからコツコツと技術革新を積み重ね、ようやく送電網として使った場合に流れる電力に耐えられるレベルにまで到達した。
そして、超電導ケーブルの実用化によって一気に実現の可能性が出てくるのが、それまで単なる夢物語としかみなされていなかったジェネシス計画だ。
聖書の「創世記」の名を冠したこの計画は、太陽光発電システムをはじめとした再生可能エネルギーの拠点を全世界に分散設置し、超電導ケーブルで結んで地球規模の電力供給ネットワークを構築するという構想。日本の太陽電池のパイオニアとされる三洋電機元社長の桑野幸徳氏が、89年に提唱した。
計画によると、世界中にある砂漠の総面積の約4%に太陽光発電システムを敷き詰めただけで全人類が必要とするエネルギーをまかなうことができる。システムを全世界に分散設置すれば、昼夜問わず24時間安定した発電・電力供給が可能になる。
ただ、最大の難問は電力を運ぶケーブルだった。発電システムから電気の消費地までをつなぐケーブルの距離が長くなればなるほど、抵抗による電力損失が大きくなる。逆にいえば、超電導ケーブルが実用化されれば、地球規模の電力供給網を構築しようというジェネシス計画自体の実現も夢ではなくなる。
◇
■「中長期のエネルギー像描け」
佐藤氏は「最初に計画を聞いたときはスケールの大きさに驚いた。しかし、超電導ケーブルの技術進展をみれば、計画は実現に向けて着実に前へ進んでいる」と話す。
桑野氏は現在、太陽光発電技術研究組合(PVTEC)の理事長を務める。日本がエネルギー問題と真剣に向き合わざるを得なくなった震災後、計画についての問い合わせが各方面から相次いでいるとしたうえで、「太陽光発電と超電導ケーブルは日本企業が先端を行く技術。今後のエネルギー供給網として活用を検討する必要がある」と強調する。
世界に目を転じても、たとえば欧州ではサハラ砂漠に建設した太陽熱発電所から送電するプロジェクト「デザーテック・インダストリアル・イニシアチブ(DII)」が始動している。今後、超電導ケーブルの存在感が高まることは確実で、経済産業省は、超電導関連の市場規模を、2020年に世界で約2兆8000億円に達すると予測。有望分野の一つに掲げている。
ただ、まだまだ価格が高いほか、稼働実績も少なく、完全な実用化に向けては課題も数多く残る。電力量の急激な変化や、落雷事故などを含めた過酷な環境でも耐えられるかを証明するためには、今秋からの実証実験が大きな役割を果たす。だが、実験の実施そのものが震災の影響で遅れる可能性もある。
桑野氏は「目先の電力確保だけでなく中長期を見据えたエネルギー像を描くことが重要だ」と指摘する。20年以上夢物語だったジェネシス計画が、危機に直面する日本にとって救世主になれるかどうか。それは、たゆみない技術開発に加え、夢を現実に変えるスケールの大きさがこの国に備わっているかどうかの試金石ともなる。(三塚聖平)
URL:http://www.sankeibiz.jp/business/news/110725/bsc1107250500004-n1.htm
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