10シーベルトとサリー

   
福島第一原発の1、2号機原子炉建屋の間にある屋外排気筒の底部で、1時間当たり10Sv以上の放射線量が計測されたと発表された。

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10Sv以上というのは、それ以上測る計測器がないためだそうなのだけれど、通常、4Svで50%が、7 Svで99%の人が死亡すると言われているから、10Sv/hとは大変な数値。

計測されたのは、1、2号機の主排気筒の地面近くにある、ベントの際に気体が通る「非常用ガス処理系」の配管が主排気筒につながるところで測定された。

これは、付近の瓦礫の撤去により放射線量がどれくらい下がったかを調べるために、この配管の表面を外側から測定したところ、測定上限の10Sv/hを示し、実際はそれ以上あると見られ、菅の内部はもっと高い可能性があるという。

東電は、半径3メートル以内を立ち入り禁止にしたそうなのだけれど、放射線量は距離の自乗に反比例するから、仮に、配管表面から10cmのところで10Sv/hあったとして、そこから3m離れると、距離は30倍になるから、線量は30の自乗で900分の1、即ち、11.1mSv程度になる。これくらいの線量なら注意すれば大丈夫なのかもしれないけれど、それでも近づけば、致死量になるほどの線量が出ていることには変わりない。当然ながら、厳重な管理が求められる。

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ただ、問題の配管は主排気筒を経由して、外部につながっているから、外部環境への放出の心配があるのだけれど、現在この非常用ガス処理系の装置は停止していて、中に気体は流れないからその心配はない、と東電はコメントしている。だけど、もし、何らかの原因で配管が破断したり、穴が開いたりするようなことがあれば、大惨事にも繋がりかねない。

無論、東電は、この配管について、高線量の原因を調査すると共に、放射線対策として遮蔽材などを置くそうなのだけれど、万全の対策が必要であることは言うまでもない。

また、高線量の場所はこの配管だけではなくて、1号機の原子炉建屋2階で、5シーベルト/h以上計測されたというから、今後も更に、同じような高線量の場所が見つかる可能性がある。

何故今頃になって、こんなことが発表されるのかと思わないでもないけれど、おそらく、これまでは、原子炉の冷却と汚染水の処理に全力を傾けていて、修理の瓦礫の撤去や詳しい線量の調査にまで手が回っていなかったのではないかと思う。

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その原子炉冷却に使用した汚染水の浄化システムについては、6月17日夜から運転を開始したものの、当初はトラブル続き。たとえば、除染装置が運転後5時間で停止したり、水漏れしたり散々だったのだけれど、なんとか稼働にまでこぎつけている。

汚染水の処理は、次の順でなされる。
1)油を取る     (東芝製:油分離装置)
2)セシウムを取る (米キュリオン製:セシウム吸着装置)
3)汚染物質を吸着(仏アレバ製:除染装置)
4)塩分を除去   (日立等:塩分除去装置)

このように、色んな会社の装置を無理矢理繋げるシステムで、しかも4号機横に設置された除染システムで淡水化した水をぐるりと大回りさせて、1号機へと戻すという構造になっている。

循環系の全長は実に4キロメートルにも及び、440基のタンクを使うというから、急拵えとはいえ、ちょっと心配にはなる。よくこれで動かしているものだと感心する。

しかもこの循環システムは、ただ1系統しかないため、先に述べた4つの装置のうち、どれか一つでも止まってしまったら、全部のシステムを止めなくてはいけないという弱点を抱えている。

これが、システム全体の稼働率を押し下げる原因のひとつにもなっていて、6月17日から7月26日までの稼働率は63%と目標の70%を下回っていた。

だけど、ここまで無理くり度たっぷりのシステムを考えると、むしろ、7%程度の低下ですんでいると考えるべきかもしれない。

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そんなおり、東京電力は8月1日に、新たに追加するセシウム吸着装置の通水試験を開始すると発表した。5日ほど試験を行い、問題なければ、本格稼働に移る予定だという。

この新たなセシウム吸着装置は、「サリー(Simplified Active Water Retrieve and Recovery System)」といい、アメリカのショー社が基本設計を行い、東芝とIHIが制作したもので、セシウム吸着塔は、直径1.4m、高さ3.6mの円筒形の容器。

吸着塔内部にはゼオライトとチタンケイ酸塩が詰めこまれており、これが5段直列に繋がる構造を持つ。処理能力は1,200t/日。しかも、この「サリー」には、汚染水を送り込むポンプが2台用意されていて、1台が壊れても、もう1台によって、そのまま処理を継続できるというのが強み。

この装置により、放射性物質は100万分の1まで軽減できるとされている。

もし、この「サリー」がさしたる故障もなく、評判通りの性能を発揮して、アレバの吸着装置よりも全然良いともなれば、流石日本製だ、ということになる。世界に対するアピールにもなる。

福島の原発事故は残念なことではあるけれど、この機会を生かして、原発事故収束と放射能汚染を除去するノウハウを蓄えて欲しい。

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画像福島第1 最高の放射線 排気筒底部で1万ミリシーベルト

 東京電力は1日、福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)1、2号機の原子炉建屋の間にある屋外の排気筒の底部で、これまでで最高の1時間当たり10シーベルト(1万ミリシーベルト)以上の放射線量が計測されたと発表しました。作業員3人が、長さ3メートルの棒の先に付けた測定器で測定し、作業員は1時間当たり最大4ミリシーベルトを被ばくしました。同原発に10シーベルト以上を測る計測器がないため、放射線量の正確な値はわからないといいます。

 高線量が計測されたのは、1、2号機の主排気筒の地面近くの配管。3月12日に1号機の原子炉格納容器の蒸気を逃がすベント(排気)を行った際に使用されており、東電は、そのときに流れ込んで残った放射性物質が原因ではないかと推測しています。

 これまで水素爆発によって敷地内に散乱した高線量のがれきなどを撤去してきましたが、原子炉建屋内でも計測されたことがない高い放射線量が屋外で見つかったことになります。

 10シーベルトは、作業員の被ばく限度を1分半で超える値。東電は、数メートルの範囲を立ち入り禁止にし、放射線を低減する遮蔽(しゃへい)材などを置くなどの対策をとるといいます。

URL:http://www.jcp.or.jp/akahata/aik11/2011-08-02/2011080201_03_1.html


画像東芝、汚染水処理装置稼働へ 海外頼みもトラブル続き… 2011.7.15 05:00

 東芝は14日、東京電力福島第1原子力発電所向けに開発した汚染水処理装置を製造している京浜事業所(横浜市)の現場を公開した。福島第1原発では米キュリオンや仏アレバの処理装置が既に稼働しているが、水漏れなどのトラブルが相次いでいる。東芝の新装置は、故障時のバックアップや廃水処理のスピードアップに活用される予定。

 東芝の汚水処理装置「サリー」は、米エンジニアリング大手ショーグループの基本設計を基に東芝、IHIが製造。この日から東芝は現地に関連機器の搬送を始めており、今後3週間をめどに据え付けを完了。8月上旬の稼働を目指す。

 装置は、放射性セシウムを吸収する性質を持つ「吸着材」を詰めたタンク内に汚染水を通し、セシウムを取り除く仕組み。現地では7基のタンクを直列に並べる予定で、水がすべてのタンクを通過すると放射能濃度が100万分の1以下に下がるという。

 サリーはキュリオン製汚水処理装置と同じ原理だが、水をくみ上げるポンプの数がより少ないため、「電源トラブルによる運転停止などのリスクが低い」(東芝の畠沢守・原子力福島復旧技術部長)。また、吸着材も、キュリオン製装置の素材に比べ5倍近い量の汚染物質をため込むことが可能で、装置の交換頻度が少なくて済む。

URL:http://www.sankeibiz.jp/business/news/110715/bsc1107150503000-n1.htm

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