自民党と幸福実現党の連携戦略


今日は、ちょっと趣向を変えて、政界の未来の形について考えてみたいと思います。

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1.無党派は自民党政権に戻したいとは思っていない

居座りを続ける菅首相ですけれども、それを引きずり降ろせない民主党の支持率が下がり続けています。7月29日には、民主党の小沢氏が「その場その場の無責任な思いつきを言って受けだけを狙う発言をする人がいて、民主党の人気を悪くしている」と、それを認めた発言をしていますね。

まぁ、民主党の支持が落ちるのは、それだけではなくて、度重なる民主党の失政も大きく影響しているかと思いますけれども、その割には自民党の支持が大きく伸びたかといえば、そういうわけでもありません。

以下は、フジテレビの報道2001での世論調査で各政党支持率を調査した結果の5月から7月までの3ヵ月の推移ですけれども、直近で民主党の支持率は15%、自民党は27%程度です。

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確かにこれだけみると、自民党が民主党に対してダブルスコアに近い差をつけてはいるのですけれども、もう少し前の支持率を見てみますと昔からそうだったことが分かります。次に2004年から2006年に掛けて支持率のグラフを引用します。

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この時期の支持率は、自民が20%から30%程度、民主が10%から15%程度の支持率で、今の支持率と殆ど変わってないのですね。つまり、政権交代前の状態になっているということです。これは同時に両党の素の実力というか、組織票というか、核となる部分の支持がそのまま見えているんだと思うんですね。

ここで注目したいのは、報道2001での世論調査でもはっきり見えているのですけれども、民主党の支持率と無党派(まだ決めていない)の支持率が丁度反対の動きを示していることです。つまり、無党派の割合が減るときには、民主党の支持率が上がり、無党派の割合が増えるときは、民主党の支持率が減る動きをしているということですね。

だから、民主党の支持基盤、素の力が、今も2004年や2006年当時の15%程度だとするならば、それ以上の支持率があった時期は、無党派が一時的に靡いていただけの可能性が高いと思われるのですね。

ですから、昨今の民主党の支持率低下は、いわゆる無党派の支持が離れただけであって、民主党の自滅の意味合いが強いといっていいと思います。

まぁ、この無党派の民主党離れは、現政権の現状をみれば仕方ないことだと思いますね。

けれども、この離れてしまった無党派が、自民を支持するかと思えばそうでもなく、また、みんなの党に流れているわけでもないことは、注意すべきかもしれません。要するに様子見に徹している。

今や無党派層は35%にもなり、民主はおろか、自民の支持率も大きく超えているのが現状です。ですから、選挙の時に如何に無党派を取り込むことができるか、というのはやはり無視できないファクターだと思うんですね。

ここまで民主党がバカをやっているのに、無党派が自民を支持しないということは、自民の政治、いわゆる55年体制に戻したくないのか、まだ民主や他の政党に、改革の望みを持っているのか、或いはその両方ということになるのではないかと思います。

もしも、無党派を中心として、有権者が自民党政治に心底戻したくないと思っているとするのなら、自民党が、彼らの支持を得るためには、自民党が旧来の自民党から脱却し、それをアピールするしかありません。




2.党内政権交代は出来ない時代

ただ、傍目から見ていると、自民党は、"自民ネットサポーターズクラブ"を設立したように、ネットをツールにして無党派層を取り込もうという動きがあることはあるのですけれども、肝心の組織そのものが変わっていない。何か組織として耐用年数が過ぎている感じすらするのですね。

やはり、しがらみが多いのではないかと思います。自民党は地方組織から積み上げていく形で、そういった組織はしっかりしているのですけれども、それがまた足枷にもなっているようにも見えますね。

自民党は長らく国民政党として政権を担ってきて、保守右派から中間、左派まで幅広くウイングを広げて支持を集めてきた歴史がありますけれども、その一方で、政権交代しない代わりに、支持が集まらなくなった自民党総裁を非主流派が降ろして「党内政権交代」するという、派閥のダイナミズムがあり、そこで政策を転換していく柔軟さを持っていました。

けれども、55年体制を否定するということは、そうした「党内政権交代」的なやり方は出来ないということを意味します。

そうなると、何か行き詰って、政策を変えたり、改革しなければいけない場合には、本当に政権交代するしかなくなってしまうのですけれども、それを今回、民主党にやらせてみて、見事に失敗しているわけです。

要するに、自民党以外に政権を任せられる政党が存在しなかった、または育てることができていなかったというのが根本にある問題なのだと思います。

本当は野党が野党であるうちに政権を獲った時のための勉強なり準備なりしておかなければならなかった筈なのですけれども、少なくとも、民主党にはそれが出来ていなかったということですね。

政権交代後しばらくのうちは、国民も多少民主党がドジを踏んでも、政権党として育てなくちゃいけないから、と多少は我慢していてくれたのですけれども、ここまでやらかしてくれると、もう堪忍袋の尾が切れた、とまぁ、こうした状態なのではないかと思います。

ですから、次の衆院選で、民主、自民以外で無党派の支持を集める政党があったとしても、そこがきちんと国家運営できる力を持っていないと、あっという間に支持を失うことになるでしょうね。要するに、野党であるうちにどこまで力を蓄え、準備できているかが勝負になるということです。




3.政策をアウトソーシングする

また、自民は自民で、先程言ったような、組織を中々変えていけないという現実に苦しんでいます。つまり、右も左も取り込んだまま、結局身動きできないように見えるのですね。

この右も左も抱えたままの組織のデメリットは、おそらく政策立案時に大きく現れてくるのではないかと思います。つまり、右派の意見、左派の意見、それらを党内で調整した上で、最終的に取りまとめ政策として打ち出すのですけれども、当然それには時間がかかりますし、何より、世間から、そうしたやり方自身が、密室だなんだと嫌がられてきたのですね。

本当は、そのあたりをマスコミがちゃんと報道すれば大分緩和されるのだ思いますけれども、流れとしては、そのあたりをもう少しオープン化といいますか、見える化する必要があるとは思います。

ただ、そうしたことを行う策の一つとして、政策集団若しくは政党のアウトソーシングという方法が考えられます。

アウトソーシングとは、たとえば、企業や行政の業務のうち専門的なものについて、それをより得意とする外部の企業等に委託することで、要するに外注のことです。

自民党が自身の政策決定において右から左まで抱えている今の在り方を時代が否定するのであれば、その部分をアウトソースして、他所の政党に受け持って貰うのです。

たとえば、自民と公明についていえば、今は、互いに選挙協力する関係にありますけれども、政権を獲った場合には、おそらく自公連立政権になる可能性が高いですから、政策も連立協議をしたうえで、互いの意見を取り入れた形での政権運営になる筈ですね。

政党としては自民と公明と別れていて、それぞれの主張する政策も違うのですけれども、いざ与党となった場合には協議して政策が纏まっていく。この構造自体は、旧来の自民党内で右派、左派と派閥間での党内調整をして政策決定をしていたものと殆ど変りません。

要するに、自公政権という枠で見た場合には、政策について自民党が、公明党にその一部アウトソーシングしていると見ることができるということです。

まぁ、平たく言えば、「野党間政策連携」ということになるかと思いますけれども、それを予め打ち出して、更に、そうして体制を敷いておけば、自民党自身は政党としての自民党を打ち出しておけると同時に、右も左も取り込むための政策の部分を他の野党に受け持って貰うことができます。

要は右寄り、左寄りの政策をそれぞれ見える化しながら、更に大きく連携を取って、取り込んでいく。こういう手があるかもしれません。

この政策のアウトソーシングは、見方によっては、他の政党の政策を所謂「国内外圧」として使うやり方に近いのかもしれません。要するに、自党の主張と異なる政策を出している政党と連携すれば、仮に、そちらの方向に政策転換するにしても、オープンに動くことができるということです。一種の保険みたいなものですね。




4.自民党と幸福実現党との政策連携

さて、では、自民にとって、どの政党と政策連携をとる余地があるか。

勿論、あまりにも自分と主張の合わない政党ですと、連携も何もありませんから論外としても、出来るなら、自分が言いたくてもあまり言えないことを言ってくれて、尚且つ、選挙であまり脅威にならない政党であれば都合がよいわけです。

そうすれば、選挙で議席を減らすことなく、かつ、ウイングを広くとった政策をもアウトソーシング的に持つことができますね。そんな政党があるのか。

そういう意味で該当する政党があるとすれば、おそらく幸福実現党になると思います。

幸福実現党は憲法改正や、首相公選制など、自民党でも中々言えないことを堂々と主張しています。自民党も元々は、自主憲法制定を党是にしていた筈ですから、幸福実現党と政策連携を獲れば、その部分をアウトソーシングしたことになりますね。

また、幸福実現党は、原発政策についても、今の流れに逆らって、堂々と原発推進を訴えていますから、この部分もアウトソーシングして貰えば、自民党としても原発削減と原発推進の二股をかけることになり、何かあってもどちらにも対応できるという保険にもなります。

一方、幸福実現党にとっても、自民との政策連携は悪い話ではありません。幸福実現党についてはマスコミは表立って取り上げたりしませんけれども、その打ち出す政策は他の政党にパクられているとも聞きます。高速道路無料化にしても、大本は幸福実現党にあったとも言われています。

幸福実現党に関する、世間というかマスコミの扱いというのは、どこか、よってたかって、幸福実現党を宗教の枠内に押し込めよう、押し込めようとしているように見えるんですね。そこから出てくるな。政治に口だすな、という感じで何とか地下に埋めておこうとしている。政策提言はパクって利用するけれども、表には出させない、そんな感じですね。

ですから、幸福実現党としては、そこから打ち破らないといけない。




5.赤壁の戦いに備えて

仮に、幸福実現党が自民と政策連携を取ることが出来た場合、幸福実現党は党員を自民に丁稚奉公的に送り込んで、国会内外勉強会に等に参加させればいいと思いますね。そうして、実際に官僚を使いこなせる力を養っておく。そうしたことが大事だと思いますね。

幸福実現党の弱点は、実際に国政を動かすだけの力があるとは、国民から思われていないことにあります。まぁ新しい政党で、国会議員経験者もいないのですから当たり前といえば当たり前なのですけれども、ただ、このまま何もしないでいて、次の選挙で議席を取るのは難しい。少なくとも、議員として通用すると信頼されるだけのものがないと厳しいと思います。

幸福実現党からみれば、自民との政策連携は、まぁ、三国志でいうと、赤壁の戦いで呉に劉備軍として合流するような関係に近いかもしれません。或いは、自民が言えない政策を言って、補完する関係であるという意味では、武器と食料を融通しあった、薩長連合なのかもしれません。

ただ、最大野党の自民党と、議員が一人もいない幸福実現党とでは、政治的な力関係がもう全然違いますから、現状からみればもう有り得ない案でしょう。普通であれば、自民も鼻で笑って相手にしないと思います。少なくとも自民党が政権与党であれば、まず在りえない。

けれども、今は、自民党が野党で体制を作り直さないといけないという事情がありますし、幸福実現党に孔明とか龍馬ばりの人物がいれば、もしかしたら、何とかなるかもしれません。そうして、総選挙に備えておくことが大事だと思いますね。

そういう意味だと、早々の解散総選挙がなく、民主が自分のところで政権たらい回しに入る場合は、逆にその時間を利用して、今からその仕込みに入っていいようにも思います。

まぁ、表の顔は自民でいいんですよ。自民に"呉"になっていただいて、谷垣さんなり、石破さんなりに、孫権なり周瑜なりになってもらって、裏で孔明ばりに、幸福実現党が未来ビジョンと政策を立てて連携する。どうせ今でも、政策をパクられているのなら、正式に連携することで、本家はこっちだといえますよね。

幸福実現党も、本気で政権を狙うのであれば、自民党と政策連携しながら、自民内部の勉強会なり何なりにどんどん参加して、官僚と面通ししながら、実地で官僚を使いこなす力を養うべきでしょうね。そろそろそんな時期だと思います。

そうしておいて、将来的に、幸福実現党に党としての信用がつけば、自民からみんなの党に移ったように、幸福実現党に移る議員も出てくることも可能性としては有り得ます。だから、その為の受け入れ態勢というか、柔軟性を持っておく必要があると思いますね。

たとえば、去年、大江康弘参院議員が一度幸福実現党に入って、1年たたずに離れていきましたけれども、ああしたことの無いように、幸福実現党内でも、オープンな議論と、もっと異質なものでも受け入れる度量が要るかと思いますね。

幸福実現党は、党首がよく交替しているようですけれども、党首選挙をやったという話は寡聞にして聞きません。まぁ、報道されないだけで、実はやっているのかもしれませんけれども、宗教政党とはいえ、そうした世間ズレした部分のところですね。ここの辺りはもう少し考えていただきたいところです。

幸福実現党が登場した当時は、宗教政党が政権を獲ったら、何か独裁して弾圧するのじゃないかという不安の声があったように記憶していますけれども、これは、もう今の民主党、特に菅政権がやっていることですね。ですから、宗教政党だから問題があるというよりは、政党としての自浄能力であるとか、オープンな議論が出来るとか、国民の声を真摯に聞く姿勢があるか、とかそうした基本的なものが備わっているかどうかだと思うんですね。

ですから、幸福実現党が蜀のように勢力を伸ばせるかどうかは、たとえば、自民との連携で、"普通の"国民政党としての力をつけて、有権者から信頼を得られるかどうかなのだと思います。

また、自民は自民で、生き残りを計るのであれば、これまでのように政権運営党としての側面からもう少し政党としての側面を出して、政権運営の部分は他党にアウトソーシングする形で連携する方法を考えてもいいのかもしれません。

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この記事へのコメント

  • 白なまず

    お題とは無関係ですが気になったので、太陽黒点の様子からすると今週末8/6日(旧暦7月7日)あたりで地震災害の可能性(アノマリー)がありますのでお気をつけください。

    【swc宇宙天気情報センター】
    http://swc.nict.go.jp/sunspot/
    2015年08月10日 15:27
  • opera

    結局、日本政治の問題点は、地方組織の硬直化よりも支持基盤の老朽化ではないでしょうか(無党派層の増加はその当然の帰結でしょう)。
     とくに自民党は、業種や地域、世代を越えた新しい支持基盤の獲得が必要不可欠です。
     この点で、J-NSCは、単に無党派層の取り込みというだけでなく、新しい支持基盤の獲得への模索だと考えるべきかもしれません。

     ボトムアップ式の意思決定は、一見すると時間がかかって非効率のように思われがちですが、政策の執行段階まで含めると、内政に関する限り、むしろかなり効率が良いのです(この点を指摘して、欧米の政権交代型の民主政治よりも優れているとしたEUの報告書もありました)。

     また」、意思決定過程の透明性については、少なくとも80年代までは、政・官・財(業界団体)間でどのような政策調整が行なわれていたのかが、マスコミを通じて詳細に報道されていたことが指摘されています。マスコミの劣化は、とくに90年代以降、世代交代により急激に進行したとも言われていますね。
     さらに、密室政治批判は、とくに特定の問題を有力者に一任する場合に生じるので、できるだけ公開の討論を通じて政策決定
    2015年08月10日 15:27
  • 日比野

    この間、民主が自民と大連立を組んで生き残りを計ろうとした動きもありましたけれども、あれだって、自民と一緒になれば、国民がとりあえず安心するだろうという読みがあったからだと思います。それだけ55年体制での自民の実績は確固たるものだということです。

    確かに、Operaさんの指摘するように、民主党の失敗で二大政党制は大きく後退したとみてよいかと思いますし、戻せるものなら中選挙区制にしたほうが良いとは思いますけれども、小選挙区になってしまった以上、この現状で考えられる手を考えるべきで、そのためにはやはり、自民を補完する保守政党がないと駄目だと思います。

    そうなると、やはり、目先の利益でフラフラしない政党に対して、自民にある意味後見人になって貰って鍛えてもらって、自民の補完政党を準備しておけないかと考えた次第です。

    まぁ、政策のアウトソーシングであれば、立ち上がれ日本でも、みんなの党でもいいのですけれども、彼らは元々自民から分裂していった勢力ですから、ある意味で、アウトソーシングは済んでいるともいえるわけです。

    ただ、政策の将来性や国防を重視した主張、及び自民の脅威にならないだろう弱小政
    2015年08月10日 15:27
  • sdi

    幸福実現党というのはちょっと予想外です。実のところ「幸福実現党」が次の総選挙での取得議席によると考えます。旧自民党内の左派を代替要員を党外に求めるなら「みんなの党」あたりが適任だと思っていますが、獲得議席如何によっては「みんなの党」をすてて「幸福実現党」という選択肢もありでしょう。この場合、公明党はじめ他の宗教団体の支持層との調整にかかる労力に見合うものを、政策集団および国会内党派として「幸福実現党」がもっているかですね。個々の人材のそれではなく、党組織全体としての能力が問われることになります。
    2015年08月10日 15:27
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    幸福実現党?!
    これは随分と思い切った提案.
    ただバックボーンに宗教があると言うのは公明党の
    影響もあって全くネガティブの気がする.
    それなら「立ち上がれ日本」でも同じ気がする.
    もっとも, 「立ち上がれ日本」と自民党の因縁を
    解決しなければならない.

    自民党自身は若い世代の支持を取り込む必要がある.
    だから, ストレートな政策を出すべきではないか.
    苦渋の選択とか平均をとった政策とかでは若い人の
    ハートは掴めないと思う. 例えば, 石原幹事長の
    半島に気を使うやり方なぞは若い人には理解できない.
    とすれば, やはり執行部の人選かと思うのだが,
    嘘付党と同様に, ここを変えるのが難しい.

    英国でサッチャーを推した政治家はやはり凄い.
    日本のために死ねる政治家がもう少し必要だ.
    2015年08月10日 15:27
  • かめを愛する者

    昨日もEEZ内で中国船がなにやら調査をしていたようですが、参院選で沖縄の自民候補が普天間の県外移設を言い出してからは、中国の脅威から国を守ってくれる政党はなくなってしまった、と危惧しています。
    唯一、国を守る主張をしているのが幸福実現党ですが、国民からみると危なっかしくて任せられない、というのが現状なのでしょう。この状態を打破するのには、このエントリーはとてもよい考えだと思いました。自民党の心ある人にとっても、マスコミ向けに「幸福実現党がうるさいから」というポーズをとりながら、憲法改正、空母建造、核武装などをすすめればよい、ということですよね。
    2015年08月10日 15:27

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