日米首脳会談 ~野田首相となら仕事ができるか?

 
「I can do business with him.(野田首相となら仕事ができる)」
オバマ大統領 於:日米首脳会談後

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9月21日、ニューヨークを訪問中の野田首相は、国連本部でオバマ大統領と初会談を行った。

会談では、オバマ大統領から、普天間問題、TPP参加問題、米産牛肉輸入問題などなど、懸案事項を次々と挙げられ、その具体的な進展を求められた。

野田首相は会談に先立ち、まず信頼関係の構築を最優先し、「トモダチの絆」を演出したいという期待があったようなのだけれど、そんなこちらの都合だけで事が運ぶ訳がない。

特に、普天間問題に関しては、「結果を求める時期が近づいている」なんて言われたところをみると、相当に念を押されたことが伺える。

野田首相の初外遊と高いハードル」のエントリーで「面と向かって話すことで、人柄が伝わり、信頼"できそうだ"と思って貰える可能性はあるけれど、本当に信頼を得るためには、約束したことをちゃんとやるかどうかにかかっており、野田首相の外遊は、最初にして最大の難関になる」と述べたけれど、やはりその通りの会談になったようだ。

オバマ大統領が「野田首相となら仕事ができる」と語ったのであれば、本当にやってくれるかどうかを注視することになる。

尤も、アメリカ側も要求全てを100%やってきてくれることまでは期待していないとは思うけれど、優先的にやってほしいことはやはりある。

それは、日米首脳会談に先立って行われた、日米外相会談などを見れば、ある程度推測がつく。9月19日にニューヨークで行われた、日米外相会談の中でアメリカが日本に対して要求した項目はおおよそ次のとおり。
1)普天間移設
  グアム移転費の承認に厳しい米議会の現状がある。早期に具体的な進展を期待する。

2)環太平洋連携協定(TPP)参加
  アジア・太平洋地域での経済統合の重要性を強調。

3)ハーグ条約
  この問題は米政府の関心事項だ。

4)米国産牛肉輸入問題
  科学的見地や国際的基準に基づく解決を望む。

とまぁ、この4項目。

これら4項目のうち、1)、3)、4)については、8月に来日したバイデン副大統領も日本側に要求していたそうだから、特にこれら3つは優先度が高いと思われる。

この中で、3)のハーグ条約というのは、「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」といって、親権を持つ親から子供を拉致したり、子供を隠して親権行使を妨害した場合に、子供をきちんと元の場所に(強制的に)戻してやるという国際条約で、2011年7月現在、86カ国が加盟している。今では、国際社会の標準ルールとして認知され、批准国は増加しつつあり、日本も2011年5月20日に加盟が閣議決定されている。

親権を持つ親から子供を拉致するなんてケースがあるのかというと、例えば、国際結婚した日本人妻が、夫から家庭内暴力(DV)を受け、それから逃げるために、自分の子供を連れて帰国するケースなんかがそれにあたる。

これには、子供の親である権利、すなわち親権は、父にも母にもあるという前提(共同親権)があって、それを母親が勝手に子供を連れ帰ってしまうと、その共同親権を片方が侵害することになってしまう。



2010年2月2日、アメリカのキャンベル国務次官補は、都内で記者会見した際、この問題について「大半は米国内で離婚して共同親権が確立しており、これは『誘拐』だ」と述べているし、今年8月に来日したバイデン副大統領も、時事通信の単独インタビューで 「日本国籍を有する人がアメリカから夫のDVなどを理由にアメリカ国籍の子供を勝手に日本へ連れ帰る例が増加している。愛する人を 関係者の意思に反して外国へ連れ去る行為は 少し方向性が違うが北朝鮮拉致問題も同様のものと言える。日本も国際的な価値観を順守してハーグ条約に早期に加盟するべきだ。」と語ったそうだから、向こうの感覚では、離婚しても勝手に子供を連れ帰るのは「拉致」と同じと捉えられているのは間違いないだろう。

ところが、日本では、共同親権というのは、婚姻中だけと定められており、離婚した場合は単独親権にしなければならない。

プリンストン日本語学校高等部主任で、ジャーナリストの冷泉彰彦氏は、この件に対する日本の法制上の問題を指摘する。以下に引用する。
(1)子供の親権は一方の親が持つ(共同親権の制度がない)
(2)親権のない親の面会権が十分保証されていない(親権のある方の親が拒否すると強制できない)
(3)養育費の支払いが遅滞した場合に財産を差し押さえられない
(4)慣習上、親権のない方の親が再婚した場合は面会権を放棄する
(5)慣習上、余程の事がない限り母親の親権が優先される

冷泉氏によれば、これら5つの理由から、日本はハーグ条約はを批准できないという。

確かに、こうした法制上、慣習上の違いがあれば、相当に議論を重ねた上で、ようやく法制度が変えられるかどうかの話になるように思うのだけれど、本気でやろうと思えば、それこそ通年国会ででもして議論する必要があるのではないか。

一部には、ハーグ条約を批准すると外国に返さなければならない子供も200人以上いるという話もあるそうだから、十分な議論なしで強硬したりなんかしたら、相当問題になる可能性もあると思うけれど、今年5月に加盟を閣議決定している以上、何らかの形で批准まで持っていくのだろう。

それに、これらの問題を別にして、オバマ大統領の「21世紀に適した日米同盟にしていきたい」という発言は注目に値する。

なぜなら、この発言の裏を返せば、「今の日米同盟の有り方は時代に即していない」ということになるから。つまり、日米同盟の見直しをもそこには含まれていることを忘れてはいけない。

21世紀に適した日米同盟というものが、昨今話題になっている、アメリカの"オフショア・バランシング戦略"に沿ったものだと仮定するのなら、それは、アメリカが東アジアに対する軍事プレゼンスの削減を意味することになる。

いよいよ日本も、戦後60年体制から大きく国の有り方を見直す時期を迎えたといえる。国防を含めた真剣な議論が望まれる。


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画像日米首脳会談要旨 オバマ大統領「21世紀に適した日米同盟を」 2011.9.23 00:12

 野田佳彦首相とオバマ米大統領が21日午後(日本時間22日未明)、ニューヨークで行った日米首脳会談の主な内容は以下の通り。

  【日米同盟】

 オバマ大統領 日本はわが国のすばらしい同盟国だ。(東日本大震災による)恐ろしい津波被害からの復興などの支援にいかなる努力も惜しまない。21世紀に適した日米同盟にしていきたい。

 野田佳彦首相 トモダチ作戦などの支援に心から感謝する。最優先課題は大震災の復興と福島第1原発事故の収束だが、その前からある内政、外政の懸案を一つ一つ解決していくことが政権の使命だ。日米同盟は日本外交の基軸との信念は揺るぎないものになった。安全保障、経済、文化・人的交流の3本柱を中心に同盟を深化・発展させたい。

 【普天間飛行場移設】

 首相 (沖縄県名護市辺野古へ移設する)日米合意にのっとり、沖縄の負担軽減を図りながら、沖縄の理解を得られるよう全力を尽くしていく。

 大統領 進展に期待する。結論を求める時期が近づいている。

 【経済情勢】

 大統領 日米両国には、経済成長や雇用創出などの作業もある。

 首相 一番心配しているのは、世界経済が後退する懸念だ。日米両国は経済成長と財政健全化を両立させ、多国間の枠組みを通じて連携、協力することが大切だ。

 【環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉参加】

 首相 議論を積み重ね、できるだけ早い時期に結論を出したい。

 【北朝鮮】

 両首脳 日米韓の緊密な連携を維持していくことで一致。南北対話や米朝対話などを通じて北朝鮮の具体的な行動を引き出していくことの重要性を確認。

 首相 今後とも拉致問題解決への協力を願いたい。

 (ニューヨーク 今堀守通)

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110923/plc11092300140001-n1.htm



画像日米首脳会談、オバマ大統領「結果求める時期近い」 普天間進展強く迫る 2011.9.22 22:59

 【ニューヨーク=今堀守通】国連総会出席のためニューヨークを訪問中の野田佳彦首相は21日午後(日本時間22日未明)、国連本部でオバマ米大統領と初めて会談した。大統領は米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題について「結果を求める時期が近づいている」と具体的な進展を強く求めた。

 首相は昨年5月の日米合意の履行に向け、沖縄県民の理解が得られるように全力を挙げると表明。大統領は「進展に期待する」と念を押した。

 首相は「日米同盟が日本外交の基軸だとの信念は東日本大震災の支援を受け揺るぎないものになった」と述べ、安全保障、経済、文化・人的交流の3本柱を中心に「日米同盟を深化させたい」と表明。「内政、外政のさまざまな懸案を一つ一つ解決していくのが政権の使命だ」と述べた。

 これに対し、大統領は、日米間の懸案として普天間問題や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加問題などを提起。首相はTPPについて「しっかりと議論を積み重ねてできるだけ早い時期に結論を出したい」と述べた。

 経済問題では、日米双方が経済成長と財政健全化を果たすことが「世界経済の安定に貢献する」との認識で一致。欧州債務問題でも連携を確認した。

 北朝鮮問題では、日米韓3カ国の緊密な連携を維持することで一致。当面は南北対話や米朝対話などを通じて北朝鮮から具体的な行動を引き出すことが重要だとの方針を確認した。

URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110922/plc11092223000019-n1.htm



画像米大統領:「彼となら仕事できる」…「実務的」首相に好感

 【ニューヨーク高塚保】オバマ米大統領が野田佳彦首相との初の首脳会談後、「I can do business with him.(野田首相となら仕事ができる)」と語っていたことが、大統領周辺から日本側に伝わった。首相の同行筋が22日、記者団に明らかにした。

 大統領は「実務的」(外務省幹部)と言われ、同様に実務的な首相に対して好感を抱いたようだ。ただ、会談では米軍普天間飛行場の移設問題で、大統領が「結果を求める時期が近い」と迫るなど、早速難問が突きつけられた。首相に具体的な成果を求める米側の圧力が今後強まりそうだ。

毎日新聞 2011年9月23日 21時00分

URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110924k0000m010068000c.html



画像日米外相会談要旨

 【ニューヨーク時事】19日午後(日本時間20日早朝)に行われた、玄葉光一郎外相とクリントン米国務長官の会談の要旨は次の通り。
 【同盟深化】
 外相 野田政権において日米同盟が外交の基軸だ。アジア・太平洋地域は不安定要因が存在しており、(日米同盟は)平和と安定のための公共財だ。一層の深化・発展に取り組んでいきたい。
 長官 東日本大震災で大変苦しい状況にある中、日本がグローバルな問題に関与し、指導力を発揮していることを評価する。
 外相 適切な時期にワシントンを訪問したい。
 長官 歓迎する。
 【普天間移設】
 外相 普天間飛行場移設、在沖縄海兵隊グアム移転を含む在日米軍再編は引き続き日米合意に沿って着実に進めていきたい。ただ、沖縄の状況は依然厳しい。負担軽減へさらなる努力をお願いしたい。
 長官 (グアム移転費の承認に厳しい米議会の現状に触れ)早期に具体的な進展を期待する。
 【環太平洋連携協定(TPP)参加】
 外相 しっかり検討し、できるだけ早期に結論を出したい。
 長官 アジア・太平洋地域での経済統合の重要性を強調。
 【福島第1原発事故】
 外相 来年後半に国際原子力機関(IAEA)とともに原子力安全に関する閣僚級国際会議を日本で開催する。被災地で開催するのも一案だ。
 【ハーグ条約】
 外相 国内法の整備を進めている。
 長官 この問題は米政府の関心事項だ。
 【米国産牛肉輸入問題】
 外相 双方が受け入れ可能な解決に向けて議論を続けたい。
 長官 科学的見地や国際的基準に基づく解決を望む。
 【北朝鮮】
 両外相 北朝鮮から核放棄への具体的な行動を引き出すため、当面は米朝や南北など2者の対話を進めていくことが重要との認識で一致。
 外相 拉致問題で引き続き支援してほしい。(2011/09/20-12:46)

URL:http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2011092000349



画像ハーグ条約:国内法整備、来月諮問 加盟へ、あす閣議了解--法務省

 国際結婚が破綻した夫婦間の子供の扱いを定めた「ハーグ条約」について、法務省は6月にも、司法手続きなどを定める国内法整備を法制審議会(法相の諮問機関)に諮問する方向で最終調整に入った。20日に条約加盟の方針が閣議了解される見通しとなり、同省が必要な法案策定に着手する。早ければ年明けにも答申を得て、来年の通常国会への法案提出を見込んでいる。

 条約加盟を巡っては、外交交渉に当たる中央当局を政府のどこに設置するかや条約を担保する国内法整備の論点整理などが今後の課題。民事の基本的な手続きを定める立法が必要となるため、法制審での議論が不可欠と判断した模様だ。条約加盟国同士では子供を元の国に返還するのが原則だが、児童虐待が疑われるケースなど、返還拒否が求められるケースも想定される。条約は、子供を肉体的・精神的危難にさらす場合に拒否できるとしているが、拒否の判断は厳しく行われている実情もあり、拒否規定制定が主な論点になるとみられる。【石川淳一】

URL:http://mainichi.jp/life/edu/child/archive/news/2011/05/20110519ddm002010098000c.html

この記事へのコメント

  • 日韓共存の時代

    在日コリアンと川崎市民の国際親善交流イベント「第8回KAWASAKI大交流祭」が10月2日(日)、
    川崎区桜本の川崎朝鮮初級学校で開催される。時間は午前10時~午後3時(雨天決行)。

     会場では、チヂミやキムチ、トッポギなどの本場コリアンフードをはじめ、
    テコンドー演武やチマチョゴリを着ての記念撮影など朝鮮半島の文化が堪能できる。
    他にも「海賊戦隊ゴーカイジャー」の催し(1回目11時・2回目午後2時)や
    川崎区出身の3姉妹ユニット「ちょっきんず」のライブなどが行われる。

     高級ホテル宿泊券付ソウルペア旅行券のほか、
    豪華景品が当たる大抽選会などの多彩なイベントが目白押し。
    家族で1日楽しめる内容となっている。

    タウンニュース http://www.townnews.co.jp/0206/2011/09/23/118690.html
    2015年08月10日 15:26
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    どうだろう.

    オバマ大統領の優先順位一番はTPPだと思う.

    普天間は日本国内状況を見れば嘘付党政権である
    限りは無理なのは明らか.
    牛肉に関しては, オバマ大統領のバックに農業資本
    があるようには思えない. (良く分からんが.)
    ハーグ条約はオバマ大統領個人としての意識は
    高いかも知れないが, 米国の状況を考えると
    再選にはあまり寄与しない.

    国債が馬鹿売れの米国では資本投資対象がない.
    だから, 米国資本にとってはTPPが最大の関心.
    増税首相と増税大統領, 表に出ないところで
    考えているのではないか.
    2015年08月10日 15:26

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