ヒマワリ除染効果なし

 
農林水産省が福島県と共同で行っている除染の実証実験結果が公開された。

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これは、8月21日のエントリー、「粘土でセシウム除染」でも少し触れたけれど、除染の手法として「表土剥離など物理的手法」、「吸着剤の使用など化学的手法」、「植物栽培など生物学的手法」の大きく3つの手法それぞれについて研究を進めていたものの、現時点での取りまとめ報告になる。

最初の「表土剥離など物理的手法」の実証実験についてだけれど、これは、飯舘村飯樋の水田などで行われた。

まず、農業用トラクタにバーチカル・ハローと呼ばれる、砕土用農機を取り付け、水田表面を4~5cmほど浅く砕土したあと、リアブレード(排土板)に付け替え、砕いた表土を5~10m毎に削り取り、集積した。

その結果、水田の表土を約4cm削り取ることで、土壌の放射性セシウム濃度が10,370Bq/kg から2,599Bq/kgへと3分の1以下にまで低下し、土壌表面の空間線量率も、7.14μSv/hから3.39μSv/hと半分になった。

また、マグネシウム系固化剤を水と混合した溶液を吹き付け、表土を固めてから剥ぎ取る方法でも、土壌の放射性セシウムの濃度は、9,090Bq/kg から1,671Bq/kgに大幅に低下。表面線量率も、7.76μSv/hから3.57μSv/hへと半減している。

更に、芝の剥ぎ取り機を使って、草と一緒に表土を剥ぎ取る方法では、13,630Bq/kgが5cmの剥ぎ取りで177Bq/Kgへと激減する結果となった。

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次に、「吸着剤の使用など化学的手法」についてだけれど、これも飯館村の水田で行われた。

まず、表土剥ぎ取りと同じく、田んぼをバーチカルハローで表層約2cmを攪拌した後、水を入れて浅代かきを実施。そして、濁水をポンプでくみ出して、不純物などを沈降されるときなどに用いられる沈砂地へ出して、そこに凝集剤を投入することで、放射性物質の固液分離を行った。

その結果、田んぼ土壌の放射性セシウムの濃度は、15,254 Bq/kg から9,689 Bq/kg へ低減し、空間線量率も、7.55 μSv/h から6.48 μSv/h へ低減した。

最後に「植物栽培など生物学的手法」なのだけれど、これは飯舘村二枚橋地区、川俣町山木屋地区、福島県農業総合センターで行われた。

これらの土壌に、ヒマワリ、アマランサス、ケナフなどの種を撒いて、その成長過程で、放射性物質をどれくらい取り込むかどうかの実験。種は5月下旬に撒かれていて、7月終わりから8月頭に掛けて開花していた。

その結果は、ヒマワリは茎葉で52 Bq/kg、根で148 Bq/kgを吸収した。だけど土壌のセシウム濃度は、7,715 Bq/kgだから、ヒマワリが吸収してくれたのは、たった0.7%くらいで、殆ど効果はなかった。

これらの結果から農水省は、除染方法としては、表土を削ることが一番効果があると結論づけている。筆者としては、種さえ撒いておけば、あとは自然任せにでき、安上がりな方法である、植物による除染方法に期待していた部分があったのだけれど、効果がないのでは仕方がない。表土を削る方法を第一に考えるべきだろう。

だけど、表土を削る除染は、当然のことながら、削った汚染土が大量に発生してしまう。実験結果では10aあたり大体30~40立方メートルほど排土がでるという。ドラム缶一本当たりの要領が、およそ0.2立方メートルだから、10a、即ち300坪(一反)の表土を削り取って除染するだけで、ドラム缶150~200本の汚染土が出ることになる。

まぁ、吸着剤を使って放射性物質を分離される方法にすれば、排土の量は10分の1くらいにまで減るようなのだけれど、それでも300坪あたり1.2~1.5tは出てしまうし、水を入れて撹拌、沈砂地での分離などの手間を考えるとこの方法ばかりは使いにくい。

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放射性物質の除染について話し合う環境省の「環境回復検討会」のメンバーである、森口祐一東京大教授が、年間の追加被曝線量を1ミリシーベルト以下に抑える目安として、6月下旬に測定された空間線量のマップから1uSv/h以上の分布域を抜き出したところ、対象地域は実に2千平方キロに及ぶことが分かったという。

もしその地域全てに対して、表土を深さ5cmまで剥ぎ取ると、その体積は約1億立方メートルになるという。これは、東京ドーム80個分で、丁度、東京23区内の廃棄物の埋め立て地、約370ヘクタールに匹敵する大変な量。

ならば、いっそのこと、削った表土を瓦礫と一緒に、福島県の沖合かどこかに埋め立ててしまって、新しく土地を造成してしまったらどうか。勿論、汚染土はコンクリートの箱につめて、放射能が漏れないようにすればいい。

先の農水省の実証実験でも、表土削り取り試験によって生じた、放射性セシウム濃度が実に約5万Bq/kgにも及ぶ排土を詰めたフレコンバッグを、試作したコンクリート製容器に封入して、放射線が遮蔽されるか確認しているのだけれど、壁厚15cm、1.5m角のコンクリートの箱に封入することで、放射線量が90~94%減衰したそうだから、もう一工夫すれば、このコンクリ箱をそのまま埋め立てに使えないか。

そして、新しくできた埋め立て地に、たとえば、「土壌から放射性セシウムを100%除去する方法開発」のエントリーで紹介したような、汚染された土壌を、低濃度の硝酸や硫酸の水溶液で洗浄したあと、その水溶液をプルシアンブルーナノ粒子吸着材で回収するといった、高精度の除染が可能な大規模除染設備工場を建設して、何年かかけて、コンクリ箱を取り出しては、中の土を除染するとか。

もちろん費用はとんでもない額になるだろうけれど、逆にいえば、デフレ脱却のための、超大規模公共事業と考えることだってできる。

困難を逆手にとって、デフレから脱却する。そんな考えもあっていいと思う。



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画像【原発】ヒマワリの除染効果ほとんどなし 農水省(09/15 11:50)

土の中の放射性物質を取り除く効果があると期待されていたヒマワリですが、農林水産省の実証実験で、土に含まれる放射性セシウムの濃度の2000分の1しか吸収しなかったことが分かりました。効果があったのは表面の土を削る方法で、セシウム濃度が97%下がったケースもありました。

 実験は、5月下旬以降、飯舘村など福島県内の6カ所で行われました。ヒマワリの吸収率が2000分の1と極めて低いことから、農水省は「除染効果は小さく、普及の段階にない」と結論づけました。ヒマワリの除染効果に期待して、福島にヒマワリの種を送るといった動きが各地で広がっていました。一方、土壌の表面を削るやり方では、表面から4センチ削るとセシウム濃度は75%低下しました。さらに、専用の機械で牧草や草ごと3センチ削った場合は97%下がりました。

URL:http://news.tv-asahi.co.jp/news/web/html/210915019.html



画像除染対象、福島全土の7分の1 専門家が最大値試算

 東京電力福島第一原発事故に伴い、放射性物質の除染対象になる可能性のある地域は、最大で福島県全体の7分の1に当たる約2千平方キロに及ぶことが専門家の試算で分かった。除染土壌の体積は東京ドーム80杯分に相当する1億立方メートルに上る計算だ。中間貯蔵施設の規模と建設費に影響することから、政府は今後、除染地域の絞り込みや技術開発などによる大幅な減量化を迫られそうだ。

 森口祐一東京大教授(環境システム工学)が試算した。森口教授は、除染の考え方や手順などを盛り込んだ除染基準をまとめるために環境省が14日に初会合を開いた有識者による「環境回復検討会」のメンバー。

 森口教授によると、年間の追加被曝(ひばく)線量を1ミリシーベルト以下に抑える目安として、毎時1マイクロシーベルト以上の分布域を、6月下旬に測定された空間線量のマップから抜き出した。警戒区域と計画的避難区域計1100平方キロを含む約2千平方キロにのぼった。その全体を、セシウムをほぼ除去できるとされる深さ約5センチまではぎ取ると、体積は約1億立方メートルになる。

URL:http://www.asahi.com/national/update/0915/TKY201109140739.html?ref=rss

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    そうですね.

    この際, 日本が放射能洗浄のノウハウを貯めて
    世界に(商売として)貢献すれば良い.

    もう一つ, 微量セシウムの影響をもっと徹底的
    に調べるのも必要だろう. 現在の指針は単純な
    外挿だから科学的には信用ならん.
    2015年08月10日 15:26
  • 白なまず

    >農林水産省が福岡県と共同で行っている除染の実証実験結果が公開された。
    タイトル行なんで、、、福岡は福島の間違いですよね。
    2015年08月10日 15:26
  • フクシマの農産物を安全だと思い込んで食べる保守

    環境省は15日、東北や関東を中心とした16都県の産業廃棄物焼却施設約650カ所のうち
    計110カ所をサンプル調査した結果、岩手、福島、千葉3県の計6カ所で焼却灰やばいじんから
    1キログラム当たり8千ベクレルを超す放射性セシウムを検出したと発表した。最高値は
    福島県内の施設のばいじんで同14万4200ベクレル。

    8千ベクレル超の放射性セシウムが検出された施設は、岩手1カ所(2万3千ベクレル)、
    福島4カ所(1万800~14万4200ベクレル)、千葉1カ所(1万1500ベクレル)。同省は
    「屋外で保管していた木くずなどを焼却したことが主な原因」としている。

    このほか千ベクレル超8千ベクレル以下の施設が27カ所、100ベクレル超千ベクレル以下が44カ所、
    100ベクレル以下が33カ所だった。

    同省は今後、8千ベクレルを超えた施設の焼却物の内容を詳しく調査。今回の調査対象以外でも高い濃度が
    予想される施設の追加調査や、焼却灰の保管や埋め立てが適切な方法で行われているかの点検を各都県に
    要請する。

    各施設の8千ベクレルを超える焼却灰は放射線の遮蔽しゃへいなどを行っ
    2015年08月10日 15:26
  • 日比野

    白なまずさん。m(__)m
    訂正しました。
    2015年08月10日 15:26

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