福島産米とモンモリロナイト

 
9月9日、福島県は収穫前の米を対象に放射性物質を検査する予備調査の結果を初めて公表した。

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1.福島産米の含有セシウム

これは、福島県が、県産米の安全性の確認と消費者への的確な情報提供を行うために実施している放射性物質調査の一環で、調査は「早期出荷米」と「一般米」に分けて行われている。

一般米については、収穫前の段階で、予め放射性物質濃度の傾向を把握して調査の精度を高めるための「予備調査」と、収穫後の段階で、放射性物質濃度を測定し出荷制限の要否を判断するための「本調査」の二段階とし、実施地域は、食用として出荷することを目的に稲を作付けしている全市町村を対象としている。

対象地域は大きく、土壌中の放射性セシウム濃度が1000Bq/Kg以上であった市町村と、空間放射線量率が0.1uSv/hを超える市町村と、これら以外に県が指定する地域の3つの区分で行われている。

調査する試料は、収穫1週間前の前後3日間の、立毛中の稲を坪刈りして、脱穀・乾燥・調製した玄米を用いて行う。

今回公表された予備調査では、これらのうち、空間放射線量率が0.1uSv/hを超える市町村である、棚倉町と塙町で、棚倉町の玄米から、セシウム134が44Bq/Kg、セシウム137が54Bq/Kgの計98Bq/Kg、塙町の玄米からはセシウム134が14Bq/Kg検出された。

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これらの2つの町は、福島第一原発から南西の茨城県県境に位置していて、調査対象としては、空間放射線量率が0.1uSv/hを超える市町村として区分されている地域。こちらでセシウムが検出されたことになる。

筆者は、検出されるとしたら、土壌中の放射性セシウム濃度が1000Bq/Kg以上であった市町村からと思っていたので、多少意外な感じを受けたのだけれど、9月3日に、棚倉町の山林で採取した野生のチチタケから、国の暫定規制値を大幅に上回る2万8000ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表されているから、もしかしたら、これらの地域がホットスポット的に土壌汚染されている可能性はある。

福島県では、この予備調査の他に、「早期出荷米」の調査を行っているけれど、これは、農業者又は集荷・販売業者から申請があった場所の米を対象に行なったもので、同じく、収穫・乾燥・調製された玄米を調査している。

その結果、いくつかの玄米から、20Bq/Kg程度の放射性セシウムが検出されたのだけれど、それらについては白米に精米してから再び測定している。その結果をまとめたものを次に示す。

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とまぁ、見事に、白米にすると、放射性セシウムは検出限界以下にまで下がっていることが分かる。

8月6日のエントリー 「『怪しいお米セシウムさん』はどれくらい怪しいのか」で玄米中のセシウム137は白米に精米するだけで、6割ほど除去されてしまうという過去の研究結果を紹介したことがあるけれど、棚倉町の玄米から98ベクレル検出されたといっても、白米に精製したときに、どれくらい減っているかにより注目すべきかと思う。

もしも、精米後5Bq/Kg程度にまでセシウム137が減っているのであれば、おおよそ1963年程度の汚染に留まっているといえるのではないかと思う。ただし、セシウム134については、1960年代のデータには出ていないので、その分は考慮する必要はあるだろう。




2.粘土を喰べる

土壌から放射性セシウムを100%除去する方法開発」のエントリーで、粘土はその構造からセシウムをよく吸着する性質があると紹介したことがある。

まぁ、これはただの思いつきなので、軽く流していただきたいのだけれど、もしも、セシウムを吸着する2:1型鉱物型の"喰べられる"粘土があれば、それを経口摂取することで、体内のセシウムを吸着・排出してくれるというような上手い話はないのだろうか。

通常、人体に取り込まれたセシウムが代謝されて排出されるまで100日から200日かかると言われているけれど、、セシウムはカリウムと同じ一価の陽イオンで、人体中では、カリウムと非常に良く似た振る舞いをすることが、動物実験のデータなどから知られている。

カリウムは細胞の中に多く、外には少ない陽イオンなのだけれど、身体に取り込まれたカリウムは、腸肝循環といって、腸から吸収され肝臓に廻り、また腸に戻るというサイクルを描いて循環している。

したがって、セシウムもカリウムと同じ動きをすると仮定すると、セシウムも腸から吸収され肝臓に廻り、また腸に戻るということになる。

もしも、このとき、セシウムが粘土に吸着されていれば、その分体内にセシウムを取り込む量は少なくなる筈。つまり、食事の間に、"喰べられる"粘土を少し取ることで、内部被曝が減らせるということはないのかだろうか。

勿論、粘土は、確かにセシウムを吸着するけれど、人体に必要なカリウムも吸着してしまう。けれども、主要粘土鉱物のひとつである、モンモリロナイトは、特にセシウムイオンを吸着する力が強く、その吸着力はカリウムやアンモニウムイオンより強いという。

だから、モンモリロナイトを多く含んだ、"喰べられる"粘土があれば、それを喰べることで、或いは、人体へのセシウムイオンの吸収を妨げてくれるかもしれない。

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実は、粘土を喰べるという習慣は、有史以来、様々なところにあって、たとえば、アメリカ先住民は、伝統的に毒性のあるドングリに粘土を混ぜてから、パンにして摂取していたし、イタリアのサルディニアでもドングリのパンを作るのに粘土が使われてきた。

また、アメリカ南西部の先住民やペルーのインディオらも有毒なアルカロイドを含むジャガイモを粘土と一緒に食べており、オーストラリアのアボリジニ達も、やはり有毒なアルカロイドを含むハエモドルム属の植物の根を粘土とともに食べていた。

これらも、粘土が、ドングリやジャガイモなどの渋みや毒を吸収して取り除いていたからだと考えられ、古代ギリシアの医学者ガレノスが、粘土を薬剤として利用していたことが記録されている。

宇宙飛行士のように長時間無重力状態で生活すると、骨からカルシウムが抜けていくことが知られているけれど、1960年代に、NASAは、その対策として、効率的にカルシウムを摂取できる方法を研究した。いくつもの実験が行われた結果、最も効率の良いカルシウム源はなんと粘土という結論に達した。

その研究では、全食事量の10%までは粘土を混ぜても問題なく、最も効率的にカルシウムを維持するためには、1~4%程度粘土を混ぜるとよいという結果が得られたそうだ。

勿論、どんな粘土でもよいというわけではなくて、NASAが宇宙飛行士に与えた粘土は、粘土の中でも極めて小さい1um以下の粒子で構成された、モンモリロナイトを主成分としたカルシウム・モンモリロナイトなのだそうだ。

前述したように、モンモリロナイトはカリウムよりもセシウムを吸着する能力が強いから、もしかしたらセシウムによる内部被曝の除去に効果を発揮するかもしれない。

モンモリロナイトによる、セシウム除去効果のあるなしについて、何処かで研究されることがないか、少し期待したりしている。



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画像コメの予備調査始まる=98ベクレルのセシウム検出-福島

 福島県は9日、収穫前のコメを対象に放射性物質を検査する予備調査の結果を初めて公表した。放射性セシウムは最高で1キロ当たり98ベクレル検出された。県は予備調査に続き、15日ごろから収穫後のコメを対象とした本調査に着手。本調査で国の暫定規制値(500ベクレル)を下回れば、コメの出荷を認める。
 9日に結果が公表されたのは喜多方市や西会津町など6市町村の51地点で採取した「こしひかり」「あきたこまち」「ひとめぼれ」など7品種の玄米。棚倉町と塙町のそれぞれ1地点のコメからセシウムが検出された。(2011/09/09-21:38)

URL:http://www.jiji.com/jc/eqa?g=eqa&k=2011090900936

この記事へのコメント

  • ちび・むぎ・みみ・はな

    セシウムは水に良く溶けると言うので,
    内部被曝はあまり問題にならないのではなかろうか.
    問題なのは蓄積性のものだろう.

    玄米と白米のセシウム検出結果は面白い.
    一つは, 限界付近での検出のように見えること.
    もう一つは, 水分の多かった所, つまり,
    周囲の植物細胞の部分に大部分があると言うこと.
    豆類や根菜類ではどうなのだろうか.

    この結果から言えば, いずれも通常の流通経路に
    乗せてもOKに思えるのだが,
    検出されたと言って騒ぐ人はいるのだろうな.
    2015年08月10日 15:26

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