「今後は財政難で政権与党が苦しい時代が続く。与党になれば苦しいことをようやく民主党議員が分かってくれて政権交代はよかった」小泉純一郎元総理 於:9/5 大手町・サンケイプラザ
8月6日、野田首相は、事務次官が出席する各府省連絡会議を週1回の定例にするなど、機能強化を決めた。
また、重要政策の決定にあたり、政調会長の事前承認に加えて、新設する「政府・民主三役会議」の承認も条件とすることを決めた。この会議には、輿石幹事長や平野国対委員長ら他の党幹部も参加するから、政策決定への党の関与が一段と強くなる。これは、自民党が政策決定において、党幹部らからなる総務会の了承を得ることが条件だったから、より自民に近づいたと指摘されている。
野田首相は、子ども手当の見直しを含む3党合意を守るという立場を既に明らかにしているから、これで、政策のみならず、その決定についても民主党は自民党化した。
鳩山元首相の「友愛」を掲げた理想主義も駄目。菅前首相の人気取りに走ったポピュリズムも駄目。あっちフラフラ、こっちフラフラした挙句、結局なんのことはない、自民党の合意形成型の政治に戻っただけ。
そんな結論に至るまで、丸二年以上も費やしてしまったことになる。
まぁ、試行錯誤する中でより良い結論を求めていくという姿勢は、勿論、悪いことではないけれど、そんなものは野党のうちにやっておくべきものであって、与党になってから、始めて国政を預かる"練習"をされては堪ったものじゃない。
小泉元総理は昨年、ある講演会で次のように述べている。次に引用する。
政権交代があって、まだ1年と少しです。これほどひどい状態になるとは思わなかった。しかし、しかしですよ、みなさん、私はまだ民主党には政権を担ってほしいと思っている。菅さんの後をたらい回しにしてもいいから、与党の責任の重大さをかみしめてもらいたい。
これまでは野党もマスコミも何かあれば、『それは自民党が悪い。与党が悪い』と言えば済むと思っていた。政権党の責任を追及していれば、それでよかった。ところが、実際に野党である民主党が政権を取ってみたら、もっとひどくなったわけですから、世間もマスコミも政権を持つ政党の責任の重さを実感したと思います…
目標を決め、政策を実現したら、次は違う問題が出てくる。つまり、政治の難しさとは計画を立てた時とはまったく違う状況が出てくることにある。だから、政治家はつねに問題に直面している。しかし、そこから逃げてはいけない。
問題をきちんと見て、それを解決していくのが政治家なんです。問題を解決するには国民から信頼されなくてはならない。そして、国民が政治家を信頼するかどうかは、自分の言った言葉を守るかどうかです。政治家はつねにそこを問われている
そして、冒頭に引用したように、9月5日、同じく小泉元総理は、大手町・サンケイプラザで行われたシンポジウムで、民主も与党の苦しみわかったはずだと批判した。
小泉元総理がいうように、民主政権が、震災復興、円高対策など山積する難問を前にして、与党の責任と苦しみを分かったのであれば、その点だけは政権交代に意味があったのかもしれないけれど、そのために失ったものは決して小さなものじゃない。
以前から指摘しているように、野田政権は、前の菅政権が無茶苦茶にしたものを修復するという、マイナスからのスタートを余儀なくされている。特に、国民の信頼を大きく損なっていることは間違いない。
だから、野田首相や閣僚は、今以上に自分の言葉に責任を持ち、「自分の言った言葉を守らなくちゃならない」。
だけど、閣僚が「軽い」発言をする癖は直っていない。この間も小宮山洋子厚生労働相がたばこ税を引き上げて1箱当たりの価格を700円にすべきだとの考えを示したけれど、安住財務相は、個人的な見解、所管は私だ」と不快感を表明し、早くもというか、またかというか、閣内不一致している。
かといって、野田首相が、ビシッと閣僚を纏めるかといえば、そうでもなく、特にこれといったメッセージもない。野田首相は、財務省時代も、円高で介入するかと見られたときでも「注視する」と動かなかったことが多かった。
どこかの化粧品で、薬液が一滴一滴抽出されるのを見守るのが仕事だなんていうCMがあったけれど、あれは、「見守ること」自身が、やるべき工程の一つとしてやっているのであって、何をやっていいか分からず茫然と見ているわけじゃない。
閣内不一致を起こしているのであれば、それを抑え、閣僚を纏めるよう、野田首相なり藤村官房長官なり動かなければならないと思うのだけれど、藤村官房長官は小宮山厚労相のたばこ増税発言に対して、「個人的な思いを述べられた」と否定したにも関わらず、当の小宮山厚労相は、「個人的意見というより、厚労省を代表して申し述べた意見」と譲らない。まだ閣僚をグリップできてない。
そして、野田首相は就任以来ぶら下がり会見に応じていない。失言を恐れているのか、それとも話すことがないのか分からないけれど、言った言葉を守るかどうか以前に、その言葉が言えないのなら、信頼回復への道は険しい。
13日から始まる臨時国会での、野田首相の所信表明の内容をみれば、ある程度それが分かるのかもしれない。
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野田政権:政策決定…政府・民主三役会議の承認も条件
野田佳彦首相は6日、重要政策の決定にあたり、政調会長の事前承認に加え、新設する「政府・民主三役会議」の承認も条件とすることを決めた。三役会議には民主党の輿石東幹事長や平野博文国対委員長ら他の党幹部も参加するため、政策決定への党の関与が一層強まる見通し。自民党の政策決定は政調での決定後、党幹部や有力議員約30人で作る「総務会」の了承が必要で、野田政権の政策決定はより自民党方式に近づくことになる。
野田首相が6日、首相官邸で輿石氏、前原誠司政調会長らと協議し、政策決定の枠組みを決めた。政府・民主三役会議の「三役」は幹事長、政調会長、国対委員長を指し、首相と輿石、前原両氏に加え、藤村修官房長官、平野氏、樽床伸二幹事長代行の計6人で構成。これまでの「政府・民主首脳会議」を衣替えする。
野田政権は政府提出法案を巡り、前原氏や仙谷由人政調会長代行らで作る「政調幹部会」で事前承認する手続きを整えつつある。ただ、政策調査会のメンバーだけが閣議決定に影響力を持つため、党内では「前原政調会長が『裏総理』になってしまう」(党幹部)との懸念があった。
このため、政調幹部会の上に組織を新設し、政権の政策決定に他の党幹部の関与を認めることにした。樽床氏は首相との協議後、「政調会でまとまった政策についての意見を、政府・民主三役会議であらかた決して、党役員会に報告して(正式に)決定することで合意した」と記者団に説明した。
一方、自民党からは、民主党政権の方針転換に批判が相次いでいる。自民党の町村信孝元官房長官は4日のフジテレビの番組で「政策決定に政調の了承が必要な自民党に対し、民主党は『権力の二重構造』と批判してきた。あの時の批判は一体何だったのか。本当に不可思議だ」と皮肉った。【野口武則、横田愛】
毎日新聞 2011年9月6日 22時30分
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20110907k0000m010110000c.html
「民主も与党の苦しみわかったはず」小泉元首相が皮肉混じりに批判 2011.9.5 19:48
小泉純一郎元首相は5日、東京・大手町のサンケイプラザで開かれた日本取締役協会主催のシンポジウムで講演し、民主党政権について「今後は財政難で政権与党が苦しい時代が続く。与党になれば苦しいことをようやく民主党議員が分かってくれて政権交代はよかった」と述べ、マニフェスト(政権公約)見直しに苦慮する現状を皮肉混じりに批判した。
小泉氏は、民主党がマニフェストに掲げた高速道路無料化について「一切税金を投入しない制度で民営化したのに、民主党は無料にしてしまった。どうやって道路公団の借金を返すのか。税金で自動車を使わない人にも負担をとらせる制度だ」と批判。「民主党は政権を取れば、16兆円の財源なんて簡単に出せると言った。見直さないでやってもらいたい」と強調した。
また、民主党内に根強い日米中「正三角形」論に対しても「中国は経済的にもっとも重要な国だが(相互の)安全が確保されていない限り、いかなる政策も進められない。あれだけの戦争をして領土を全部返した米国と、沖縄・尖閣諸島を自分の領土だと主張している中国と同じ関係でいいという議論は私はとらない」と語り、日米同盟堅持の重要性を力説した。
また、脱原発依存を進め、再生可能エネルギー拡大により国内の技術革新を後押しすべきだとし、「民主党も自民党も原発依存度を下げていこうというのが多数派であり、脱原発で解散しようという首相がどこかにいたが、争点にならない」と指摘した。
小泉氏が報道陣の前で講演するのは昨年7月以来。
URL:http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110905/plc11090519530016-n1.htm
たばこ税めぐり“閣内不一致” 2011.9.6 20:01
小宮山洋子厚生労働相がたばこ税を引き上げて1箱当たりの価格を700円にすべきだとの考えを示したことをめぐり、閣内不一致の様相が強まっている。
安住淳財務相は6日の閣議後会見で小宮山厚労相の発言について「個人的な見解。ご高説は承るが、所管は私だ」と不快感を表明。「税という点でいうと、たばこだけを抜き出して議論するのはバランスを欠く」と否定的な見解を示した。
たばこ税の大幅増税は販売減を招いて、逆に税収減にもつながる懸念があり、財務省は消極的。こうした同省の姿勢を安住財務相は代弁した形だ。藤村修官房長官も同日の会見で「(厚労相発言は)就任直後であって個人的な思いを述べたと思う」と述べ、引き上げには慎重な姿勢を示した。
これに対し、小宮山厚労相は同日、「個人的意見というより、厚労省を代表して述べた意見」と強調した。
URL:http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110906/fnc11090620040016-n1.htm
この記事へのコメント
opera
麻生元総理も講演で言っていたように、民主党には「綱領」と「総務会」に該当する組織が無い。自民党の総務会は、政党としての意思決定機関で、地方等からの情報を集約し各部会において専門的な問題を検討した上で政党としての基本政策を決めるところですが、民主党にこれに対応する組織は存在しない。
謂わば、脳と心臓が無いのに手足だけが勝手に動くようなもので、閣僚のスタンドプレーや閣内不一致は当然の帰結でしょう。新設する「政府・民主三役会議」も、有力者だけで勝手に民主党の基本政策を決めていた従来のやり方を制度化しただけで、自民党の総務会に匹敵する役割を担うのは無理です。せいぜい表面的な党内融和と責任転嫁に利用できる程度でしょう。
それにしても、小泉氏は一時的にせよ自民党の総務会を形骸化させ自民党政治を混乱させた人で、民主党はその政治手法の出来の悪い弟子筋に当たることを考えると、実に皮肉な状況です。
almanos
とおる
・「党への政策一元化」へ。
・「内閣の政策放棄」へ。
・「内閣は党を見守る」へ。
ちび・むぎ・みみ・はな
賛同しているのではないか.
グローバリズムと競争原理による財政再建は小泉時代
のテーマで, それが現在に続くデフレを重症化させた.
タイトルの言葉は小泉氏だからこそ出た言葉だと思う.