野田人事が定めてゆくもの

 
野田首相の評判がよい。

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1.首から上の質が「アレ」とは違う

まぁ、前の首相が「アレ」であっただけに、普通でいるだけでも評判は上がるとは思うけれど、特に財界は野田首相を手放しで褒め称えている。

8月29日、経団連の米倉会長は野田首相誕生について、「ジャパンドリームの実現だ」とし、菅前首相とは、「首から上の質が違う」とまで言い切った。その上で、党役員人事を「挙党態勢を人事で示している」として評価している。

また、小沢派の川内博史議員は「挙党態勢に向けたバランスの取れた、大変よくお考えになられた人事である」とのべ好印象を伝えているし、小沢氏への処分方針に反発して、民主党会派からの離脱を宣言していた、比例選出の衆院議員16人は、「野田新首相は党内融和を図っている」として、31日に、輿石幹事長に離脱願の撤回を申し入れ、了承された。

これらをみても、人事ひとつでこれだけ変わるのかというくらい雰囲気が変わった。これなら「アレ」だった人とは「首から上の質が違う」と言うのも頷ける。

これは、逆にいえば、如何に「アレ」だった人が酷かったかの裏返しでもある。

更に、野田首相は、政府と党の方針の一元化を図るために、政府の政策決定にあたって、原則として党の政調会長の了承を必要とする方針を打ち出し、その会長に前原氏を当てた。

この方針によって、前原氏は、政府・与党内の政策調整と与野党協議に専念することになった。党内では輿石氏を始めとする小沢派と調整をし、更に与野党協議で野党とも政策協議をすることになるから、前原氏は、たとえ嫌なことであっても、物事を最後までやり遂げる使命を「定められて」しまったといえる。

これは、同時に、前原氏の最初こそ威勢がいいものの、あとで尻つぼみになるという、言いっ放し、やりっぱなしの癖が矯正される可能性を意味するから、前原氏が政調会長を最後までやり遂げるられるのであれば、化けるとまでは言わないけれど、そうした欠点が補整されるかもしれない。

果たして、野田首相がそこまで計算して、前原氏を政調会長に当てたのかどうか分からないけれど、結果として絶妙な人事になっているように見える。

政策的に対立する人物同士を政調会長と幹事長に当てて、党内の政策調整をさせる。非常に危うい諸刃の剣的なところもあるのだけれど、少なくとも、菅政権のときのように、執行部が勝手に党の方針を決めて暴走するようなことは無くなるだろう。

これでようやく党内でも「まともな議論」が行われるようになる。やっと、民主党も普通の政党に近づいていきそうな感すらある。まだ、役員人事と政策決定方針を決めただけ。たった2日でここまで変わる。早くも野田首相の一字である「定」が威力を発揮し始めているようにも思えてくる。

やはり、これまでの民主党が無茶苦茶過ぎたのだろう。麻生元総理の言葉を借りれば、「自民が50年かかって出来なかったことを民主党は2年で証明した」けれど、菅氏が450日かけても出来なかった党内融和を、野田首相は2日でやってのけた。尤も菅氏は党内融和などやる気もなかっただろうけれども。




2.「足して2で割る」手法の欠点

さて、バラバラだった民主党が、がらりと変わって纏まってくると、野党の自公も、対決姿勢は取りづらくなる。

野田首相は首班指名を終えた30日の午後に国会内で、各党の党首へ就任のあいさつを行ったが、同席した国会議員、職員まで一人一人に自分の後頭部が見えるまで、深々と頭を下げて回ったという。

国民新党の亀井代表は、「あんたいい顔になるもんだな…オーラが出てきたよ」と声をかけたそうだし、日本の片山虎之助参院幹事長は記者団に対して、「やりづらいなあ。あそこまで低姿勢で丁寧な口ぶりだと攻めようがなくなってしまう」と語っている。

こうした野田首相の態度は、菅氏とはまるっきり正反対であるから、野党の対応も柔らかくなってくる可能性は十分にある。

このまま、党内融和が成功して、民主党が党として「定まって」きたとしても、やはり問題は野田氏が政策を実際に進めていけるのかということになるのだけれど、昨日エントリーした「野田首相の一字」でも指摘したようにおそらく「足して2で割る」方式で進めていくのではないかと思われる。

ただ、この「足して2で割る」方式は、意見集約しやすい反面、2つのデメリットがある。

ひとつは双方の顔を立てるため、余計に金を使いがちになってしまうということ。もうひとつは、どうしても対立がなくならない問題は、結局先送りになるということ。

たとえば、子ども手当を例にとってみると、既に、前政権で子ども手当は廃止して児童手当にすると3党合意で取り付けられているけれど、これをそのまま守ると民主党マニフェストを見直すことになる。

これを足して2で割ることなんて出来るのか。

民主党の子ども手当は、15歳以下の子供を扶養する保護者等に対し手当を支給する制度で、それまでの児童手当との違いは、支給年齢が小学生までから中学生までに拡大したこと、所得制限が無いこと、支給額が月5千円乃至1万円から、1万円乃至1万五千円へと増額されていることくらい。だから、現金を支給するという意味では、額は違えど、変わらない。

だけど、子ども手当の理念は「社会全体で子育てを支援する」というものだから、支援という枠で考えれば、保育所の拡充とかでもいいわけだし、所得制限は付けますが、支給額は変えないというやり方もある。

また、児童手当では地方公共団体が財源を一部負担していたけれど、それを当初言っていたように、全額国費負担にします、とか別の部分で民主党案を反映させることで、マニフェストで謳った理念はそのままで、3党合意も守ります、と、ちょっと言い訳じみた、「足して2で割る」解決策もなくはない。

ただ、このやり方は往々にして金がかかる。児童手当を復活させて財源圧縮を図っても、保育園拡充したら、そちらに予算を回さなければいけなくなる。

要するに、対立する双方の主張をどちらも聞こうとしたら、互いにぶつからない領域に分けて、両方採用してしまえば、双方の顔は立つ。その代り金は余分にかかる。

だから、「足して2で割る」をやりすぎると、どんどんバラマキになっていって、最後には財源をどうするかの問題に行き当たる。必然的に増税志向になってゆく。

また、逆に、財源の手当てがつかず、双方の主張がぶつかってどちらも折れない場合は、どうにもならなくなって、結局先送りするしかない。

消費税増税にしても、今は反発が大きくて、すぐにも出来そうにないとなれば、3年後とか5年後にもう一度考えるとかなんとかいって、先送りすることは十分考えられる。

だから、野田政権は、たとえ党内融和や野党対策を上手くやれたとしても、「足して2で割る」手法である限り、構造的に大きな改革は難しくなるし、どうしてもやりたければ解散しかない。

だから、野田政権中に、それだけの争点、すなわち、双方の主張がぶつかってどちらも折れないテーマが出てくるかどうか。それが解散の引き金になると思う。




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画像「菅氏とは首から上の質が違う」 経団連会長、野田新代表を手放しで歓迎 2011.8.29 19:40

 経団連の米倉弘昌会長は29日、民主党の新代表に野田佳彦財務相が選出されたことについて、「お若いのでもう少し待たなくてはと思っていた。ジャパンドリームの実現だ」と手放しで歓迎し、「民主党の先生方は最終的に非常にいい結論を出された」と評価した。

 米倉会長は野田代表について「かねてから税制・社会保障に通じた非常に安定した行動力のある政治リーダーだと思っていた」と明かした。菅直人前代表との違いを聞かれ、「要するに首から上の質が違う」と言及、野田氏はきちんと政策を立案し、野党とも協議していける人物との見方を強調した。

 ねじれ国会の下での政策運営について、米倉会長は「大連立でも緩やかな協調でも、どんな形でもいいから挙国一致体制で望んでもらいたい」と注文。野田代表に「1年以上、最終的には次の選挙まで務めきってほしい」と要望した。

 個別政策では「まずは早期の震災復興だ。できる限り本年度予算の組み替えをやり、不足する場合には期限を区切って復興国債を発行し、財源には経済的なインパクトがニュートラルな消費税を使ってやっていくべきだ」と語った。

URL:http://www.sankeibiz.jp/business/news/110829/bsg1108291943001-n1.htm



画像野田次期首相、党3役人事に続き閣僚人事に注目集まる 地元では「どじょう弁当」登場へ

党内人事で挙党態勢をアピールした野田次期首相だが、注目の閣僚人事はどのような顔ぶれとなるのか。
そんな、野田次期首相の「好き」と「嫌い」を探った。
次の首相に選出されてから一夜、民主党の両院議員総会で、野田次期首相は「皆様のこぞってのご支援に、あらためて御礼を申し上げます。ありがとうございました」と述べた。
一堂に会した民主党の議員を前に、深々と頭を下げた。
よく見れば、着席の時も、さらに「ガンバロー」コールを終えたあとにも、深々とお辞儀していた。
腰の低い立ち回りが印象的な「ドジョウ宰相」のスタート。
そんな野田次期首相のもう1つの特徴といえば、食いしん坊ぶりで、「わたしはおなかの周りが85cmを超えたメタボリックの注意が必要な男でありますが」、「サンマの話をしていたら、腹が減ってきちゃった」などと、過去の取材でも垣間見せていた。
そんな野田次期首相の食を陰で支えていたのは、熱々のお弁当だった。
千葉・船橋市の地元事務所の近所にある「デリカフーズ ハマモト」では、選挙中は、毎日弁当を届けていたという。
店主は「(野田次期首相は)食べてくれますね、きれいに。『いつもおいしいのをありがとう』とか、よく言ってくれますね」と話した。
さらには、ポロシャツにジーパン姿の野田次期首相が1人でふらりと訪れ、弁当を買っていったこともあるという。
そんな縁から、急きょ「野田総理どじょう弁当」の販売を決定し、31日はその試作品作りを行っていた。
店内では「どうしよう」、「ドジョウはあんまり意識しなくていいんじゃないの。ただ、ボリューム感ある野田さんの顔を想像してやった方が」といった会話がされていた。
野田次期首相の好物というハンバーグやマーボナス、アコウダイの南蛮漬けなどを盛りつけた。
さらに、店の人は「ドジョウみたいなノリを、こうやってくっつけて」と話した。
野田次期首相らしい、ボリューム満点のお弁当が完成した。
メニューに多少の変更の可能性はあり、販売日程は未定だという。
店の人は「(野田次期首相は)何でも食べてくれる人だからね。これが嫌いだから入れないでくれというのも、聞いたことがないしね」と話した。
食べ物の好き嫌いがないという野田次期首相。
一方、31日にお披露目した党3役人事でも、小沢氏に近い輿石氏、盟友の前原氏、そして鳩山氏に近い平野氏と、好き嫌いなく配置した。
代表選直後、「党内に深い溝がある」と言っていた川内博史議員は、「挙党態勢に向けたバランスの取れた、大変よくお考えになられた人事である」と述べた。
そんな党内融和人事の効果は早くも出ていて、菅・岡田執行部に反発し、会派離脱届を出していた「16人の会」のメンバーが、離脱届の撤回を申し出た。
また、注目の閣僚人事は、女房役の官房長官には、野田氏側近の藤村幹事長代理や岡田前幹事長、さらに川端前文科相らの名前が浮上している。
また、岡田氏は、財務相など、ほかの重要閣僚への起用も検討されているほか、平野復興担当相と細野原発担当相の再任が有力となっている。

URL:http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00206555.html



画像野田さんなら…小沢系16人組が会派離脱願撤回

 民主党の小沢一郎元代表への処分方針に反発し、同党会派からの離脱願を提出していた比例選出衆院議員16人は31日、「野田新首相は党内融和を図っている」として輿石幹事長に離脱願の撤回を申し入れた。

 代表者の渡辺浩一郎衆院議員が国会内で輿石氏に会って伝え、輿石氏も了承した。

 16人は2月に離脱願を提出したが、受理されないままになっていた。16人は3月の2011年度予算案採決を欠席し、代表者の渡辺氏が6か月間の党員資格停止処分を受けた。また、笠原多見子、川島智太郎、三輪信昭の3氏は6月の内閣不信任決議案の採決を欠席・棄権し、3か月の党員資格停止処分を受けた。

(2011年8月31日19時53分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110831-OYT1T00896.htm?from=y10



画像攻めづらい?苦労人の野田さん、徹底した低姿勢

 厚みのある両手で相手の手をしっかり握り、相手に自分の後頭部が見えるまで、深々と頭を下げる――。

 これが、野田新首相流のあいさつだ。

 首相指名選挙を終えた30日午後。野田氏は国会内で、各党の党首へ就任のあいさつを行ったが、同席した国会議員、職員まで一人一人に頭を下げて回った。

 千葉県船橋市で、政治とは無縁の家庭に生まれた。「地盤も看板もカバンもない」状況で、県議、国会議員となったが、1996年の落選で3年8か月もの浪人生活を送った。野田氏の徹底した低姿勢は、これまでの労苦と無関係ではない。

 だが、海千山千の各党の党首らは、野田氏に注文や批判を浴びせた。

 国民新党の亀井代表は、「あんた(首相になると)いい顔になるもんだな」「オーラが出てきたよ」と持ち上げ、野田氏も「元々、いい顔じゃないんで」と恐縮する場面があったが、これより前の与党党首会談では、「あんたは『増税』というレッテルを貼られ過ぎだ」「財務省にどっぷり(漬かっている)という印象をあんたはもたれているぞ」と容赦なかった。

 野田氏は「その通りです」と繰り返すだけだった。

 社民党の福島党首も、野田氏が29日の代表選の投票前演説で、自らを「ドジョウ」に例えたことを引き合いに、「『ドジョウ』は原発嫌いだと思いますよ。しっかり脱原発をやってくださいよ」と訴え、原子力発電所の再稼働に理解を示す野田氏を強くけん制した。

 野田氏に続き、退任のあいさつに訪れた菅首相には、「脱原発、一緒にやりましょう。いつでも(社民党の)党首に」と上機嫌で歓迎したのとは対照的だった。

 ただ、野田氏の誠意が伝わった党幹部もいた。たちあがれ日本の片山虎之助参院幹事長は記者団に、「やりづらいなあ。あそこまで低姿勢で丁寧な口ぶりだと攻めようがなくなってしまう」と苦笑交じりに語った。

 低姿勢は各党との連携強化のうえで大事な要素だが、政治を前に進めることにつながるかが焦点となる。野田氏の本領が問われるのはまさにこれからだ。

(2011年8月31日00時06分 読売新聞)

URL:http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110830-OYT1T00968.htm

この記事へのコメント

  • とおる

    民団(在日韓国人の団体)と韓国大使館の評判も良いようで。

    ・韓国民団の選挙協力に感謝する、民主党野田佳彦議員 - YouTube
     http://www.youtube.com/watch?v=3k79ozsd_-8
    2015年08月10日 15:27
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    経団連はヒトデナシが居なくなってヤレヤレとの
    御祝儀でしょうな.
    増税を主張している首相を歓迎する筈がないし,
    マニフェストがナンタラカンタラで
    嘘付党であることが明白になっている.
    掃いて捨てるほどいる議員の中で,
    出てくる人間は変わらないのに,
    御祝儀ムードが満ち満ちているのは前途多難の予感.
    ヒトデナシのヒトデナシ振りに幻惑されたが,
    そもそも根底の問題は何も変わっていない.
    2015年08月10日 15:27

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