TPPブロック経済圏と日本の未来


「24の分野っていうのはいろんな分野があります。医療とかそういった分野もあれば、農業もあり、そういった問題をひとつをきちっと集めて議論していく。それから、特に、この問題は、外交、安全保障といった観点からの検討も必要だと思います。」
谷垣禎一自民党総裁 於:10/15 テレビ東京

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1.ブロック化する世界

10月20日、野田首相はNHKの番組で、TPP交渉参加問題について「一定の時期に結論は出さないといけない。完全にルールが決まってから入るとハードルが高くなる可能性がある」と早期結論の重要性を強調した。

TPP問題については、様々な意見があるけれど、外交安保の側面から検討してみたい。

10月20日、元外交官の佐藤優氏と民主党の原口元総務相は、ニコニコ生放送で対談し、例外品目を作らない自由貿易協定であるTPP締結への動きに関して、両者とも「いま世界は帝国主義的な体制に戻ろうとしている」と語っている。

そこで佐藤氏は、北朝鮮の金正日総書記が、10月19日、ロシアのイタル・タス通信のインタビューに応じ、「日本との国交正常化に向けては、日本が過去に起こしてきた犯罪に対して完全な総括をすること。その総括に向けて日本が歩みを始め、北朝鮮に対する敵視政策をやめるならば、関係の正常化を行う」とコメントしたことを取り上げ、金正日総書記は、TPPで日本とアメリカの提携が強化することは、中国をにらんだ動きだと捉え、中国と一緒に包囲されたら困るということで、ロシアへの接近など逃げ出す道を考えている、と指摘する。

確かに、TPPのような例外を設けない自由貿易協定が、ある程度以上の経済力を持つ国々で締結されれば、強力な自由貿易圏を生むことになるから、TPP域内がそのままブロック経済圏になる可能性は高い。

増してや、今のTPP交渉に、世界最大の経済大国のアメリカが噛んでいるとなれば尚更、ここにもし日本が参加するとなると、環太平洋に巨大なブロック経済圏ができる。

TPPは、当初のシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4加盟国に続いて、アメリカ、オーストラリア、ベトナム、ペルーが参加を表明し、交渉に臨み、次いで、マレーシア、コロンビア、カナダも参加の意向を明らかにしていたのだけれど、カナダについては、酪農分野の例外を主張したため、参加を断られている。

この徹底した例外を認めないTPP規定の厳しさは、逆に言えば、TPP域内の国々を域外の国々から保護するということを意味してる。要するに、自由貿易協定といいながら、ブロック経済圏の色合いを帯びている。

このブロック経済という流れは、なにもTPPだけではなくて、先日、北京を訪問したロシアのプーチン首相は、ロシアのWTO加盟について、「交渉の枠内での基本的諸問題は解決された。残っているのは、政治面での問題に限られる。ロシアのWTO加盟の見通しに関する私の見方は、全体としてポジティヴなものだが、繰り返し言うが、それは一定期間、ロシア経済の個々の部門を守る義務的なスタンダード合意があるという条件下での話しだ。」と、保護主義的色合いを帯びた発言をしている。

何より、「EUも中国もブロックする三日月」で触れたけれど、ユーラシア連合構想を打ち出していること自体、あの三日月地域をブロック経済圏にしようと目論んでいるのだと見ることもできる。

佐藤氏によれば、TPPは中国包囲網の一環にもなるということだけれど、中国は日本がTPPに参加するのを嫌がっているフシがある。

産経新聞の阿比留氏によると、中国は表向きには言わないものの、官邸に中国公使が目的も明かさずに来たり、中国大使館関係者があちこちに出没したり、日本の政界に対して、かなりTPP反対の働きかけをしているという。

これが本当かどうかは別としても、今年の5月22日の日中韓首脳会合において、中国の温家宝首相は、日中韓3カ国によるFTA交渉の準備段階と位置付けられる共同研究を1年前倒しして、今年中に終えることに合意している。

これは、TPPを牽制するための動きで、経済産業省幹部によれば、「TPP拡大交渉に参加していない日韓と自由貿易関係を築けば、両国が中国を重視していると国際社会にアピールできる。この政治的な意味合いは大きい」という見方がある。これは、相当程度当たっている。

FTAは、特定の国や地域とのあいだでかかる関税や企業への規制を取り払い、物やサービスの流通を自由に行えるようにするという意味では、TPPと似ているけれど、例外規定を設けることが許されているから、特定分野を例外扱いとすることで、任意の国内産業を保護することができる。

特に、中国は、世界銀行から、外資に対する規制が最も多い国の一つと指摘されているし、割安な人民元レートを維持しているけれど、たとえ、日中韓FTAを結んだとしても、それらについては例外だと主張して、一向に手をつけない可能性がある。

特に低い人民元レートについては、10月14日、アメリカのクリントン国務長官が、ニューヨーク経済クラブで開かれた産業界トップらとの会合で、人民元の為替を操作する中国政府の政策を、中国側のこのような作為は世界貿易体制を翻弄していると批判し、有効な対応を講じるには国際的な連盟を設立すべきとも提言している。

この中国に対して有効な対応となる"国際的な連盟"なるものが何かは分からないけれど、やりようによっては、TPPを環太平洋のブロック経済同盟として、参加しない域外の国に対して、とんでもない関税をかけることだってやろうと思えばできてしまう。

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2.中国がTPPに参加できない理由

では、中国はTPPに参加すればそれで済むのかといえば、それも難しい。

TPPで議論されている24の分野というのは次のとおり。
  1.主席交渉官協議
  2.市場アクセス(工業)
  3.市場アクセス(繊維・衣料品)
  4.市場アクセス(農業)
  5.原産地規制
  6.貿易円滑化
  7.SPS(衛生植物検疫)
  8.TBT(貿易上の技術的障害)
  9.貿易救済措置(セーフガード等)
  10.政府調達
  11.知的財産権
  12.競争政策
  13.サービス(越境サービス<クロスボーダー>)
  14.サービス(電気通信)
  15.サービス(商用関係者の一時入国)
  16.サービス(金融)
  17.サービス(e-commerce<電子商取引>)
  18.投資
  19.環境
  20.労働
  21.制度的事項
  22.紛争解決
  23.協力
  24.分野横断的事項

これらの中で、あおぞら銀行金融法人部門所属の前川氏は、2011年9月5日に「TPPに潜む危険性」と題したレポートで、「投資」分野に最も危険だと述べている。該当部分を以下に引用する。

TPP交渉の中でアメリカが最も強く導入を主張し、尚且つ最も危険性を孕んでいるであろうと筆者が考えているのは、「投資」分野における①「収用と補償」条項と、②「投資家vs国家の紛争解決」条項である。

①「収用と補償」条項についてであるが、「収用」とは政府が民間企業を国有化したり、資産を強制的に接収したりすることを意味し、「補償」とは、外資系企業が「収用」により被った損失の代償を求めることである。ここで問題となるのは、この「収用」の範囲が広すぎることである。

一般に「間接収用」と呼ばれる概念であるが、TPPにおいては、政府が直接的に資産を接収したり、物理的な損害を与えていなくとも、現地国政府の法律や規制により外資系企業の営利活動が制約された場合、「収用」と同様の措置とみなして損害賠償を請求できてしまうことになる。

そして、その損害賠償の具体的手段として用意されているのが、②「投資家vs国家の紛争解決」条項、通称「ISD条項」(Investor-State Disupute)である。これは、「収用」により何らかの損失を被った外資が相手国政府を訴えることができるとする条項であるが、訴訟の場は国際投資紛争解決センターなどの第三者機関であり、そこで数名の仲裁人が判断を下すのだが、審理は一切非公開、判定は強制力を持つが、不服の場合でも上訴不可、判定基準は被告となった相手国の政策妥当性・必要性ではなく、「外資が公正な競争を阻害されたか否か」の一点である。

NAFTA(北米自由貿易協定)でISD条項を受諾してしまったカナダは実際に外資がカナダ政府に訴訟を起こす事例が発生している(ガソリンに添加物として使用されていたMMTメチルシクロペンタジェイニールマンガントリカルボニル)という神経性有毒物質を規制した法律を「差別的である」としてアメリカの燃料メーカーがカナダ政府に対して3億5千万ドルの損害賠償を請求したケース等。)

日本がTPPに参加した暁には、国民の生命・財産を護るための必要な規制が前述のような形で否定され、損害賠償を請求されるケースが出てくるおそれがある。
あおぞら銀行「TPPに潜む危険性」より引用


前川氏はこのレポートでTPPはメリット以上にデメリットが多く想定され、現段階でTPP参加交渉を決定するのは拙速であり、ISD条項のような悪影響が強いと懸念される部分にも十分着目した議論を行う必要がある、と結論付けている。

日本においてさえ、デメリットが多いというISD条項が中国に適用されたらどうなるかなんていうまでもない。中国がこれまでやっていた、外資の投資規制やら何やら、片っ端からISD条項のターゲットにされる可能性がある。

何せISD条項の判定基準は「外資が公正な競争を阻害されたか否か」の一点のみ。だから、自分に都合よく、追加課税したり、不当に拘束したりしようものなら、たちまち訴えられてしまう公算が高い。

ついこの間も、重慶市のウォルマートが豚肉販売で、中国の独自食品規格(緑色食品)を違反したとして、市内のウォルマート13店舗がすべて閉鎖され、数人の従業員が拘束されている

つまり、中国にとって、TPPというのは、参加しなければ、世界から除け者になり、参加したら、今度は自身の我儘を言えなくさせ、完全自由化を飲まされるという、行くも地獄、引くも地獄の罠。

それに加えて、親中国と思っていたミャンマーが離れ、パキスタンもインドとの連携を強めつつある。ロシアはロシアでユーラシア連合を立ち上げて独自ブロック経済圏を作ろうとしている。

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3.環太平洋ブロック経済圏が成立する条件

こんな状況で、日本がTPPに参加して、環太平洋ブロック経済圏を作られてしまったら、中国は相当苦しくなる。今までのように、ASEANやアメリカ、日本が中国製品を買ってくれるのなら兎も角、TPPに参加してないだろ、とエンガチョされたら、息の根は止まらないまでも、呼吸困難くらいにはなる。

ただ、TPPが中国に対する経済包囲網の一環として働くためには、条件がある。それは、極端な話、ASEAN諸国が、中国なしでも経済発展できるくらいの後ろ盾が必要になる、ということ。

ASEANの加盟国は現在、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの10ヶ国で人口は5億8717万人。だけどGDPは1兆8436億ドルで日本の三分の一程度。

EUやNAFTAは人口は5億210万人と4億5千万人とASEANと同程度だけれど、GDPはそれぞれ16兆2503億ドル、17兆1961億ドルと10倍近くある。

逆にいうと、ASEANは、それだけ成長の余地があるともいえ、投資のチャンスに溢れているとも言える。

中国としては、南シナ海などの資源獲得やこれからの経済発展を考えると、ASEAN諸国には影響力を行使したい。それもアメリカの介入なしで。

南シナ海を最良の戦場とする中国」で触れたけれど、中国は、アメリカに介入させずに、ASEAN諸国を我が物にしようと、南シナ海は「最良の」戦場とまで言って、武力行使に言及した。ところがそれが、却って周辺諸国を警戒させ、TPPを後押しする形なってしまった。今や日本までもがTPP参加の意思を示し始め、武器輸出三原則を見直そうとしている。

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こうなると、中国は、包囲網を作らせないために、懐柔するか強硬でいくかの選択を迫られることになる。

懐柔というのは、ASEAN諸国にこれまで以上に投資を行って、TPPに入っても大して得にならないと思わせることで、従来通り中国資本の影響下に置く、すなわち、TPPを骨抜きにする方法になるし、強硬というのは、ASEANとの貿易を絞って日干しにすることで、TPPに入ると酷い目に遭うぞと脅してTPPから脱退させて、中国と付き合うように仕向ける方法。

だけど、前者を行うためには、TPP以上の恩恵をASEAN諸国に与えなければならないし、後者を行うためには、ASEANが音を上げるまで、自分もTPPを敵に回すという我慢比べを強いられる。

この時、ASEAN諸国の輸出産品をど~んと買ってやって、中国なんぞなくてもやっていける大国がTPPに参加していれば、ASEAN諸国としても、中国と対立したときの保険になるし、その国が強大な軍事力を持っていれば尚の事いい。

そんな国はどこかというと、これはもう、アメリカ以外にない。

ただ、アメリカは経済的苦境にあり、虎の子の軍事力すら削減対象になっている状態だから、いつまでもアメリカにおんぶに抱っこというわけにはいかない。そのとき、最低でも、経済面でバックアップしてくれる存在があれば、TPPは環太平洋ブロック経済圏として、かなり強力な存在になる。

となると、その財布として日本がアテにされるのは、もう火を見るより明らか。

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4.日本語という「ファイアー・ウォール」

万が一、日本がTPPに参加した場合、当然のことながら、農産物はもとより、24分野全てに影響が出てくる。原則として、TPPは100%フリーの自由化なのだから、いままで保護されていたものは、一切保護されなくなって、完全に近い市場原理だけが働くことになる。

それを阻止するものは、あおぞら銀行の前川氏のレポートで警告されているISD条項によって、ほぼ排除されることになる。

だから、もしも、TPPから身を護るものがあるとすれば、それはTPPそのものに依拠したものに成らざるを得ない。

どんなに完全100%フリーの市場であっても、物やサービスを買うのはお客様。いくら安かろうか何だろうが、お客が選ばなければそれまで。市場原理によって排斥される。だから、100%市場原理に拠って、完全に公平な競争をしたとしてもなお、日本産品や日本のサービスが国内でバカスカ売れるのなら、被害は最小限に抑えられる。

ただ、普通に考えた場合、TPPに参加すると、サービスも含めた日本産品の価格競争力が低下することはまず避けられないから、それ以外で勝負するしかない。

価格で勝負できないとなると、あとは質。

日本製品の質の高さは、世界で認められているところだけれど、如何せん、日本製品は途上国にとっては値段が高すぎる。いくら物が良くたって、自分が餓えてまで買う人はいないから、付加価値の低いものとなると、やっぱり安売り勝負になる。これでは勝てない。

これは、これまでにも、中国産の安い日用品なんかが大量に出回って、国産が駆逐されていって経験したこと。これがTPPになって、人やサービスの自由化によって、同じことが起こるのではないかと言われている。要するに、日本人の雇用が失われるのではないか、ということ。

これは、理屈からいえばそのとおり。

ただ、唯一、市場原理の名の下に、そうしたTPPの波に対する防壁となりうるものがある。それは日本語。

日本で日本語が通じないことは100%有りえないけれど、逆に英語や中国語が同じくらい通じるかというと全然そんなことはない。街中に英語や漢字の看板が立ち並んでいるにも関わらず、余程の店でない限り、外国語は通じないケースが殆ど。

これは、日本で働く外国人、とりわけサービス業で働こうとするときなど、日本語が喋れないとほぼ雇用されるチャンスはないということを意味してる。

今でも、コンビニやファミレスの店員さんで外国人のバイトがいることは珍しくないけれど、彼らは一様に日本語を喋っている。勿論、イントネーションでどこの国出身であるかの推測はつくけれど、サービスの質そのものが低下しない限り、外国人であることを問題視されることはない。その意味では公平であると言える。

だから、今でも、外国人にとって、日本で働くということは、日本語、ひいては日本文化を十二分に理解しないと、つまり、半日本人化しないと務まらないくらいの目に見えない壁、ファイアーウォールがあるとはいえないか。

それが、TPP参加後に海外から流入すると予想される、人やサービスに対する強固な防壁になり得る可能性はある。




5.ASEANを日本化せよ

その意味で、筆者は、あおぞら銀行の前川氏が問題視するISD条項で、この日本語というファイアーウォールが訴えられる対象になるのかならないのかが一番の鍵になると考えている。

「日本はTPPに則って市場を完全に開放しています。日本に参入した外資が、日本語を使えないあまりに公正な競争を阻害されたというのはお門違いです。なぜなら、消費者が日常では、日本語しか使わないからです。貴方達は市場原理によって退場を余儀なくされただけなのです。」

こういうロジックが通用するかどうか。

これが通用するのであれば、TPPに参加したとしても、ある程度被害は食い止められる可能性はある。だけど、日本で日本語しか使えないのは不公平である。日本人のほうが英語を使えるようにすべきである、となったらどうなるか。すなわち、日本語が非関税障壁と見做されたらどうなるか、という問題。

実は、TPPには、関税だけでなく、非関税障壁の撤廃というものも盛り込まれていて、もしも、日本人が日本語を使うことそのものが、非関税障壁とみなされたら、ISD条項によって訴えられてしまうことになる。

そんな極端な、と思うかもしれないけれど、純粋のTPPのロジックだけを追っていくなら、そういうことになってしまう。

民主党の川内博史議員は、「TPPは、貿易ではなく、【非関税障壁の撤廃】にこそ、その目的がある。国民生活を守る為に定められている法律や規制、技術基準、規格、表示など、あらゆる分野において米国の利害関係者、即ち米国企業が影響力を、正式な会議の場で行使できるようになる。資本の論理そのものになる。公正さが全く無くなる」と、ツイッターで指摘している。



その国の文化にとって、母国語は切っても切り離せないもの。

おそらく、TPPの問題も突き詰めていえば、TPPの主旨である自由と公正が、相手国の文化・風習を、その国民の意思と関わりなく踏み潰してまでも適用すべきものかどうか、ということに行き当たるのではないかと思う。

その意味では、他国との交流や商売の媒介となるもの、即ち、言語や貨幣といったもので、デファクト・スタンダードを握っている側が、既に交渉のスタート時点で圧倒的に有利な立場にあると言える。そこを無視して押し通しても尚、国益があると判断できるかどうか。そこがポイントになる。

筆者としては、百歩譲って、商品や公文書に日本語と英語の併記まではよいとしても、日常会話にまで日本語以外の公用語を使わないと、買い物すら満足にできない日本になるのはどうかと思う。

そんな事をするくらいなら、ドラえもんではないけれど、「翻訳こんにゃく」のような、その場でタイムラグなしで翻訳する機械を開発して、普及してからにしてくれと言いたくなる。

ただ、逆に、TPPに参加することで、日本以外の他国を日本化させてしまう可能性もなくはない。今や、日本文化は多くの国に迎え入れられ真似される存在にまでなっている。禅や和食、ファッション、J-POP、アニメ・漫画など一部のものは、世界最高峰にあるといっていい。

それによって、世界とはいわないまでもASEANを半日本化することができれば、すなわち、日本語が非関税障壁だという前に、自分達から日本語をマスターしてから日本にやってくるようになれば、それこそTPPは"お化け"で済んでくれるかもしれない。

だけど、現実問題、ASEANが半日本化することはあっても、アメリカが日本化することは考えにくい。たとえ、部分的には有り得たとしても、全部日本化することはまず有り得ないし、アメリカで日本語が公用語化することはもっと有り得ない。

日本がTPPに参加するかどうかは、世界レベルでみると、確かに日本の安全保障に深くかかわってくる問題であると同時に、日本そのものの有り方を変えてしまう可能性も秘めている。

であればこそ、尚の事、国民にオープンな議論を行って、日本の将来に責任を持った判断を下すべきだと思う。

単に"TPPお化け"だといって済まされる問題じゃない。




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画像TPP交渉参加、完全にルールが決まってからではハードルが高くなる=野田首相 2011年 10月 20日 22:16

 [東京 20日 ロイター] 野田佳彦首相は20日夜のNHK番組で、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加問題について「一定の時期に結論は出さないといけない。完全にルールが決まってから入るとハードルが高くなる可能性がある」と述べ、交渉参加に前向きの姿勢を示した。

 21日に閣議決定する予定の2011年度第3次補正予算案については、東日本大震災からの本格復興を力強く推進する予算となると強調。ねじれ国会でも、法案提出前から与野党で協議を重ねており、「速やかに成立出来ると期待している」と述べ、早期成立に自信を示した。

URL:http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK064165420111020



画像「世界は帝国主義的な体制に戻ろうとしている」 原口一博と佐藤優、TPPに警鐘 ニコニコニュース(オリジナル) 2011年10月21日(金)20時09分配信

 作家で元外交官の佐藤優氏と民主党の原口一博元総務相は2011年10月20日、ニコニコ生放送「平和~子どもたちの澄んだ瞳を守るために」で対談し、例外品目を作らない自由貿易協定であるTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)締結への動きに関して、両者とも「いま世界は帝国主義的な体制に戻ろうとしている」と語った。

 北朝鮮の金正日総書記は19日、ロシア国営通信であるイタル・タス通信のインタビューに応じた。佐藤氏によると、「日本との国交正常化に向けては、日本が過去に起こしてきた犯罪に対して完全な総括をすること。その総括に向けて日本が歩みを始め、北朝鮮に対する敵視政策をやめるならば、関係の正常化を行う」という"かつてないほどのゆるいメッセージ"だという。佐藤氏は、金総書記がこのようなメッセージを発した背景について「大きな与件が変化している」と語る。

「TPPの動きが始まった。TPPで日本とアメリカの提携が強化するということは、中国をにらんだ動きだと(北朝鮮は考えている)。そうすると北朝鮮は中国と一緒に包囲されたら困るということで、逃げ出す道(ロシアへの接近)を考えている」
 TPP締結の動きが、北朝鮮に焦燥感を生んでいるという。原口氏も、このTPP締結の動きは「よその国に対して恐怖感を生み出している」と話す。

「TPPはよく日本の中では自由経済・農業と工業の問題だと言われていますが、実はそうじゃない。ブロック化なんです。ブロックの中において、今すごく帝国主義的な動き。リーダーが変わる時はどちらかというとナショナリスティックに動く。そして自分の国さえ良ければいいという形になっていく。そこでアメリカと日本を中心としたブロックを作って、囲い込んでいこうと。よその国から見ると、自分たちの国がはじかれるという恐怖感をそこに生んでいる」
と、日本が太平洋戦争に突入するキッカケともされる、1929年の世界恐慌以降の欧米先進諸国による帝国主義・ブロック経済と同じような動きが現代にもあると述べた。

 佐藤氏も、「自由貿易ならばWTO(世界貿易機関)という体制を強化していけば良いのに、なぜ一種の関税同盟でありブロックであるTPPを結ぶのか」と疑問を呈し、EU(欧州連合)やロシアのプーチン首相がユーラシア同盟創設を提唱していることを挙げ、

「着実にいま世界はブロック経済化している。1930年代の帝国主義的な体制に戻ろうとしている」
と原口氏に同意した。

URL:http://news.nicovideo.jp/watch/nw133245



画像中国、日中韓FTAに前向き TPP牽制 両にらみ日本、足踏みも 2011.5.25 05:00

 米国が主導する環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の拡大交渉が進展するなか、中国が自由貿易拡大に歩み寄るそぶりを見せ始めた。中国の狙いはTPPの牽制(けんせい)で、日中韓3カ国の自由貿易協定(FTA)にも協力姿勢を示す。日本政府はTPPを軸足に日中韓FTAもにらむ全方位交渉を目指すが、国内農業問題の解決見通しが立たないなか、どちらの交渉からも取り残される懸念もある。

 中国の温家宝首相は22日の日中韓首脳会合で、3カ国によるFTA交渉の準備段階である共同研究を1年前倒しし、今年中に終えることに合意してみせた。巨大市場を持ち、先進国への市場開放に消極的だった中国が変心したかに見える決断だ。

 中国は米国主導のTPPを「意識している」(政府関係者)。米、豪州などTPP拡大交渉に参加する9カ国が中国抜きの自由貿易の枠組みに向けて前進しているからだ。

 ある経済産業省幹部は「TPP拡大交渉に参加していない日韓と自由貿易関係を築けば、両国が中国を重視していると国際社会にアピールできる。この政治的な意味合いは大きい」と、中国の軟化の背景を分析する。

 ただ、国内には「中国とのFTAが意味のあるものになるか疑問」(関係者)との見方も強い。外資系企業の国内投資を規制し、割安な人民元レートを維持する中国が日中韓FTAに意欲を見せたとしても、それらの制度を見直す公算は小さい。

 このため政府はTPPを最優先の課題として取り組みながら、日中韓FTAについても研究を進める方針だ。

 日中韓FTAの先には、東南アジア諸国連合(ASEAN)に日中韓とインド、豪州、ニュージーランドを加えた東アジア包括的経済連携(ASEAN+6)がある。浦田秀次郎・早稲田大学大学院教授は「TPPはもちろん、ASEAN+6も日本にとっては重要なゴール。TPPを意識する中国に対して、日本が積極的に経済連携を働きかけるぐらいの戦略を持つべきだ」と話す。

 ただし、日本は東日本大震災後、自由貿易推進で打撃を受ける農業をどのようにサポートするかの議論がストップ。TPP交渉参加の判断時期も従来の6月から先送りした。政府内には「日本は各国から決断を求められているのに決断できていない。TPPと日中韓FTAのどちらも進めることができない心配もある」との声も出ている。(小雲規生)

URL:http://www.sankeibiz.jp/macro/news/110525/mca1105250500002-n1.htm



画像物事をあまり単純化するのはよくありませんが、TPPについて 2011/10/19 09:58

 ただいま、ちょっと韓国に来ていまして(野田佳彦首相の同行取材)、時間がないので簡単に記します。いま話題のTPPの是非についてですが、これについて少し思うところを述べます。

 TPPに一定の賛意や理解を示すと、よく「米国のポチ」であるとか、米国に取り込まれるという批判を受けます。まるで「踏み絵」のようで、なんだかなあと感じているのです。ただ、相手がある外交では常に最善は望めず、次善、さらにその次であっても選ばないといけないときがあると思います。

 で実際、TPPには米国の思惑が当然、反映されているわけです。当然、自国の利益が最優先であるのは当然だし、強欲で利己的な部分もあるでしょう。ただ、それでもそれは一面的なものではなくて、やはり多様な考えや意図が背後にあるのだろうと考えるわけです。

 その中で、私が特に関心を覚えることの一つが、これが対中国の政策であるという点です。中国とどう向き合うかは、これからの世界で最も大きな課題の一つだと考えます。その中で米国にしてみれば、これからますます台頭していく中国に対し、日本や東南アジアを巻き込む形で牽制、対抗していこうという動きがTPPでもあるわけです。で、これは日本にとってどうでしょうか。

 現に、中国は表向きははっきりと言いませんが、日本の政界にはかなりTPP反対の働きかけをしているようです。先日は官邸にも中国の公使が目的も明かさずに来ていました。中国大使館関係者があちこちに出没していると聞きます。

 また、TPPに反対・慎重論を展開している政治家(これもいろいろですが)の中に、東アジア共同体が必然だといまだに言っている鳩山由紀夫元首相ら親中派グループがいることを思うと、TPPにただ反対することは、中国を利することでもあるのだろうなと愚考します。

 私自身は、まがりなりにも唯一の同盟国と、我が国に何百発もの弾道ミサイルの照準を向けている国とどちらを選ぶかといえば、言うまでもありません。もちろん、本来はまず二国間協定が望ましいとかいろいろあるし、ことはそう単純なものではありませんが、そういう視点もあっていいかなと。

 もうそろそろ青瓦台に行かなければならないので、とりあえずここまでとします。

URL:http://abirur.iza.ne.jp/blog/entry/2480462/

この記事へのコメント

  • 世襲利権自民党は暴力団を必要悪と考えてきた

    自民党の谷垣禎一総裁は22日、同党の田中和徳元財務副大臣の政治団体が
    暴力団系企業から40万円を受領していたことについて「どういうことか聞いてみる」と述べ、
    事実関係を調査する考えを示した。都内で記者団の質問に答えた。

    産經新聞 http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111022/crm11102212420008-n1.htm
    2015年08月10日 15:26
  • 日比野

    ス内パーさん。
    >…賠償合戦になる覚悟はありますかね?
    ここなんですよね。まかり間違って賠償合戦になると、最後には体力がある方が勝ちますし、示談になってもデファクトスタンダード寄りで決着する可能性が高いですし…。

    今のように、情報も少なく、非関税障壁の線引きが不明確のまま、TPPに突っ込むのはちとリスクが高い。

    逆に日本語が非関税障壁扱いにならないのであれば、日本国内を日本語で護りつつ、ASEANを日本化(日本の地域覇権化)するチャンスが来ると思いますね。ただ、同時に、日本も移民受入などの新しい局面を迎えることになりますけども。
    2015年08月10日 15:26
  • ももりん

    お尋ねします。
    主要国の農産品の関税率ですが、日本が11.7%でかなり低いかのようにみえますが、いつのデータでしょうか。
    コメの関税化を入れた直近の日本の農産品の平均関税率(単純平均)は21.0%で、EUの13.5%、中国の15.6%より高く、WTOが試算している120か国・地域の平均(15.3%)をも上回っています。
    2015年08月10日 15:26
  • 八目山人

    何故カナダは何か条件を付けたなどという、他愛も無い理由ではじき出されたのでしょう。それなら日本が条件を付けたら参加拒否とならないと可笑しいでしょう。

    アメリカが豪州から牛肉を無関税で輸入するなんてことが考えられますか?アメリカの圧力団体が黙っていない。
    カナダ・韓国を蹴飛ばし、オーストラリアを入れたことに目を向けると、アメリカは「TPP以前に結ばれているFTAの方が優先される」なんて条項を入れると思う。
    2015年08月10日 15:26
  • ス内パー

    ふむ。
    もしアメリカが日本語を非関税障壁扱いするならアメリカにたいしてタイやマレーシア、日本が次々に「英語が使えないというだけでアメリカの市場に参入出来ないのはおかしい」「日本語を(ダガログ語を)(ポルトガル語を)使えるようにしろ」と反撃し、それが通って賠償合戦になる覚悟はありますかね?
    もし英語に~というアメリカの要請だけが通るならTPPの公平性(笑)となって瓦解するでしょうねー。

    アメリカの一般人(非ウォール街)にとってもTPPって毒ですしティーパーティーあたりに教えたら案外炎上すると思いますよ。
    2015年08月10日 15:26
  • ちび・むぎ・みみ・はな

    参考記事で佐藤氏が触れていたが, 世の中にはWTO
    があるということを真面目に考えないと TPPを
    正しく評価できないと思う. WTO には沢山の
    過激な提案条項があって, TPP はそれらの過激な
    条項を含めて出来たものと理解している.
    だから, 思想として WTO と TPP は基本は一緒.

    世界がブロック経済に向かうとの認識は不正確で,
    世界は米国主導のグローバリゼーションを反省して,
    自国の自主権や利益を重視する方向に向かっている,
    と考えるべきだろう.

    であれば, 今後は国と国の話し合いで関係を作って
    行く, 日本の得意な分野だ. なぜなら, 日本と関係
    を作って損をした国はないから. TPP なき世界こそ
    日本の特徴が活かせる舞台だと思う. なんせ,
    日本が何もしなくとも日本語を勉強する若者が
    出てくるのだからね.

    もう一つ, 支那の存在も TPP の無意味さの一つの
    証拠だと思う. WTO に加盟したと言うだけで
    あれほど輸出で稼いだのだから. TPP に加盟しないと
    貿易ができないと言うのはおかしい.
    2015年08月10日 15:26
  • 白なまず

    日本語が作る日本文化がファイアーウォール!?
    日本の商品は類似種類の豊富さ高品質の点に注目すると、米国の巨大資本による統合化が進み出てくる商品の品数の少なさに十分対向できるのではないか、ひょっとして、TPPで米国が日本へ輸出を増やしたいと目論んでいても、結局は日本の商品が米国のマーケットに並ぶ事になるのか?、、、成るような気はするし、ならないような気もする。しかし、こだわりのある商品では原材料は何でも良いわけではなく、水にすら拘らないと再現できない商品や料理なんかもあるので、日本文化が作る日本の商品はさらに隠れたファイアーウォールがあるのかもしれない。
    それから、普天間問題はTPPを日本に飲ませる為のシナリオで鳩が捨て石になり、缶がTPPにからませて、民主党を押したマスコミのバックに居るユダヤが描いた結果のTPP参加のすえ、日本が米国を占領してしまったら、本当におかしな話になりそうですね。
    2015年08月10日 15:26
  • とおる

    「”TPPお化け”という事実で無いものを事実として誤解している人がいる」というような発言が民主党首脳からありましたが、「普天間基地を辺野古に移設する」と出来るかどうかも疑わしい”辺野古お化け"が跋扈している不思議さ。
    2015年08月10日 15:26

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