
「夏を迎えるごとに北極海は氷が減っている。大気と海洋の温暖化によって氷圏がどんどん縮小し、盛夏の氷面積は70年代末と比べて2~3割も少ない」ノルウェー極地研究所・アリルド・スンドフィヨード氏
ロシアのプーチン首相は9月23日までに、「北極海航路」をスエズ運河に比肩する「世界的な大動脈」に発展させる方針を示し、インフラ整備に力を入れるよう関係当局に発破をかけたとの報道がある。
「北極海航路」とは、その名のとおり北極海、即ち、北極を中心としてユーラシア大陸と北米大陸に囲まれた海を通って、太平洋と大西洋を結ぶ航路のこと。ユーラシア大陸のロシア沿いを通る航路を「北東航路」、北米大陸のカナダ沿いを通る航路を「北西航路」と呼ぶ。
勿論、航路とはいうものの、そこはそれ北極海だから、基本的にこの海域は、海氷や流氷などに覆われているのだけれど、その氷は、冬には凍って拡大し、夏には解けて縮小するという季節変化を繰り返している。
海氷や流氷などに覆われている海は、普通の船では航行できない。だけど、近年、夏の間のおよそ2ヵ月間に限っては、氷が融けて、航行できるようになった。これは、地球温暖化の影響だと言われている。
要するに、北極海航路は、期間限定の航路ということになるのだけれど、2008年9月には、衛星観測史上初(1978年から開始)の、北東航路と北西航路の両側の海氷が消滅が確認されていて、2010年8月には、ロシア最大の海運会社ソフコムフロートの大型タンカーが、北東航路を通航して、軽質原油コンデンセート7万トンをロシアのムルマンスク港から中国まで輸送している。
夏の北極海の海氷面積は、ここ数年、年々小さくなっていて、2011年7月の平均海氷域面積は703万k㎡で、これまでの最小であった2007年をわずかに下回り、7月としての最小面積を更新した。特に、今年の海氷は、ロシア側の融解が進んでいるらしく、8月8日には、ロシア沿岸付近に残っていた海氷が融解して、北東航路が全面開通した。北東航路の開通は昨年に続き2年連続で、史上4度目だという。これまでの開通開始時期は8月下旬から9月中旬頃だったというから、8月初旬の開通が如何に早いか分かろうというもの。
それでも、流氷がなく、スムーズに航行できる時期は、1年のうちたったの1ヶ月か、おおくても1ヶ月半で、それ以外の時期は砕氷船が必要になる。
普通の砕氷船は、自重で氷を割って航行するのだけれど、砕氷によって前方が阻まれ、船体が停止したときは、一度、後進して後ろへ下がり、改めて全力前進して氷を砕いて進む。これを何度も繰り返して航路を開く方法を「ラミング(Ramming)」又は「チャージング(Charging)」と呼ぶ。
ところが、この従来方式だと、タンカーが上下に大きく揺れてしまって、石油を運ぶには適さないことから、ロシアは、石油と天然ガスの輸送専用に、設計・製造した、砕氷できる石油タンカーを所有している。
この砕氷タンカーは、マイナス45℃の環境においても低温脆性の影響の少ない特殊な鋼板を使用していて、薄く鋭い艦首形状を持っている。これによって氷を押し砕いて進むのではなく、氷を左右に切断して航行し、後退したり止まることなく、厚さ1.7mの氷を砕くことができるという。また、船首と船尾の位置を変えずに、スクリューを前後に向きを変えて回転させることで、そのまま後方に進むことができるようになっているという。
では、なぜ、北極海航路なのかというと、理由は3つある。
1)ヨーロッパ又はアメリカ東海岸と、東アジアを結ぶ航路の、航海距離が大幅に短縮される
2)海賊が出ない
3)北極海に眠る資源を輸送しやすい
まず、1)の航路短縮についてだけれど、例えば、イギリスのフェリックストゥと韓国のプサンを結ぶ航路は、現状のスエズ運河経由では約10700海里であるところ、北極海経由では約7400海里と、30%も短くなる。
距離が短いということは、当然、航海日数も短くなるわけで、ある試算では、最大で約16日、平均で約3日半、航海日数が短くなるという。また、距離が短いということは、船足を落として、減速航海しても、これまでと同じ日数で到着できることを意味する。仮に、北極海経由ではない、現状の航海日数を使って、北極海航路で輸送したと仮定すると、船速はおよそ、2~4ノット落とすことができるという。
一般に、一定時間を航海するのに必要な燃料消費量は、「速力の3乗」に比例し、一定距離を航海するのに必要な消費量は、「速力の2乗」に比例するとされているから、日数はそのままで、船足を落として、燃料をぐっと減らすことだってできる。上記の例では、2~4ノット遅くするだけで、燃料は約40~50%も減らすことができるそうだ。
2)の海賊が出ないについては、もう説明の必要はないだろう。もともと、これまで殆ど航海していなかったから襲う船がなかったというのは勿論だけれど、流氷のことを考えると襲う方だってリスクがある。今のマラッカ海峡やソマリア沖で多発する海賊被害を考えるとこの安全性は魅力的。
3)の北極海に眠る資源については、現在、北極海には原油や天然ガスなどの資源がかなりあると見られていて、各国で開発競争が進んでいる。今年の1月26日のダボス会議の席上で、イギリス石油大手BPと、ロシア最大の国営石油会社ロスネフチの両首脳が、北極海の資源開発の協力を戦略的に進めると発表している。
ロシアは、2010年11月に北極海のノバヤゼムリャ島沖の開発権を16億ルーブル(約44億円)以上で取得していて、この区域には、原油4970万トン、天然ガス1.8兆立方メートルの埋蔵が見込まれている。
ロスネフチは、北極海のノバヤゼムリャ島沖に権利を持つ、三つの石油・天然ガス鉱区をBPと共同開発し、資本提携も進める合意文書に1月14日に署名していて、北極大陸棚を開発する合弁会社(ロスネフチ67%、BP33%出資)を設立し、「北極技術センター」もロシア北西のサンクトペテルブルクとムルマンスクに創設するという。
プーチン首相は、共同開発への投資総額は数百億ドル規模になるとし、北極大陸棚の資源埋蔵量については「原油50億トン、天然ガスは10兆立方メートルに及ぶ」として、共同開発会社には税優遇措置を適用すると明言している。
また、今年の春には、ノルウェー最北部の漁港ハンメルフェスト沿岸にあるメルケア島で、「世界最北」といわれる液化天然ガス(LNG)基地が本格生産を始めている。肝心のガス田は、メルケア島から、さらに北西約140キロのバレンツ海沖合にあり、真冬には、気温マイナス20度を下回るという厳しい環境のため、すべて無人となっていて、海上には操業プラットフォームなど何もない。ガスは、水深約350メートルの海底ガス井に採掘装置を据えつけて、約143キロのパイプラインでガスをメルケア島に送り、ここで液化処理される。将来は北極海からベーリング海峡を抜けて太平洋に出て日本などにも輸出することを想定しているという。
ロシアは現在、北極海航路での伴走に必要な砕氷船を10隻運用していて、更に2020年までに3隻の原子力砕氷船と6隻の電気推進砕氷船を建造する計画で、プーチン首相は、この計画のために2014年までに380億ルーブル(約900億円)を支出することを明らかにしている。
遅ればせながら、日本も、グリーンランド北東部沖の海底油田の開発に向けて、油田を掘る企業を決める来年の入札に参加する。この油田は、水深100~500メートルの大陸棚にあって、面積は約5万平方キロ。グリーンランド自治政府はこの海域のうち、3万平方キロ分の鉱区について、来年初めに発表・入札を実施する。
日本からは、独立行政法人「石油天然ガス・金属鉱物資源機構」(旧石油開発公団)、国際石油開発帝石、出光興産、住友商事などが出資して、設立した「グリーンランド石油開発」。入札結果が出るのは、来年12月中旬以降とみられるのだけれど、落札企業は、約76%の権益を得て、採掘が順調にいけば、10年後の生産を目指す計画だという。
このように、日本も、北極海航路にも着目して、この方面からのエネルギー安全保障政策を推進する必要があるだろう。


【モスクワ=遠藤良介】ロシアのプーチン首相は23日までに、自国沿岸の北極海を横断する「北極海航路」をスエズ運河に比肩する「世界的な大動脈」に発展させる方針を示し、インフラ整備に力を入れるよう関係当局に発破をかけた。地球温暖化で北極海の海氷が減少、夏季の航行が比較的容易になったのに伴い、北極海航路は欧州とアジアを結ぶ最短ルートとして国内外の関心を集めている。
プーチン氏は22日、北西部アルハンゲリスクで行われた国際会議で「北極海航路はコストや安全性などの点で伝統的な航路に対抗しうるようになる」と発言。同航路では欧州北部-東アジアの航行距離をスエズ運河経由に比べて3分の1ほど短縮でき、「利用する国や企業には大きなメリットがある」と強調した。
北極海航路は旧ソ連が軍事目的で開拓したものの、ソ連崩壊後は市場経済化の混乱とともに壊滅的に衰退。ただ、北極海の海氷減少を受けて大型タンカーや貨物船を実験的に運航するケースが増えており、今年の同航路での輸送量は70万トンに達する見通しだ。
ロシアとしては、北極圏での石油・天然ガス開発をにらみ、この航路をアジア地域への主要な資源輸送経路とする狙いもある。
ロシアは現在、北極海航路での伴走に必要な砕氷船を10隻運用しており、政権は2020年までにさらに3隻の原子力砕氷船と6隻の電気推進砕氷船を建造する計画。プーチン氏はこのために14年までに380億ルーブル(約900億円)を支出することを明らかにした。
北極海航路をめぐっては、夏場の数カ月間しか航行できないことや砕氷船の利用によるコスト高といった問題点が指摘されるほか、通信網の構築や沿岸部の港湾整備など安全面の課題も山積している。
URL:http://sankei.jp.msn.com/world/news/110923/erp11092320510009-n1.htm

豊富な天然資源が眠る北極海の石油・天然ガス開発に向けて、英石油大手BPとロシア最大の国営石油会社ロスネフチが手を結んだ。昨年4月に米南部沖メキシコ湾で大規模な原油流出事故を起こして経営立て直しを迫られるBPが、未開発の北極大陸棚に将来性を見込み、気候や自然条件の厳しい北極開発に本格進出するロシアを技術的にも支援していく構図だ。
26日にスイス・ダボスで開幕した世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)。世界の目が集まる舞台で、両社の首脳は資源開発の協力を戦略的に進めると発表した。14日には、ロスネフチが北極海のノバヤゼムリャ島沖に権利を持つ三つの石油・天然ガス鉱区をBPと共同開発し、資本提携も進める合意文書に署名したばかりだった。
ロスネフチがBPの株式の5%を保有し、BPもロスネフチの株式の9.5%を取得する。額はそれぞれ約78億ドル(約6400億円)で、「グローバルな戦略同盟」(ロシア有力紙コメルサント)となる。北極大陸棚を開発する合弁会社(ロスネフチ67%、BP33%出資)を設立し、「北極技術センター」もロシア北西のサンクトペテルブルクとムルマンスクに創設する。
ロシアのプーチン首相は、共同開発への投資総額は数百億ドル規模になるとし、北極大陸棚の資源埋蔵量については「原油50億トン、天然ガスは10兆立方メートルに及ぶ」と指摘。共同開発会社には税優遇措置を適用すると明言した。
BPのダドリー最高経営責任者(CEO)も「大きな可能性を秘める北極開発には最新の技術が必要だ。ロシアへの投資状況にもいい影響を与える」と期待を表明している。
同紙によると、ともに米石油大手のシェブロンやエクソンモービルも提携対象にあがったが、BPが選ばれた。BPが交渉を加速したのは、原油流出事故で米アラスカでの開発計画を失ったためとも指摘されている。
ノバヤゼムリャ島沖の開発権は昨年11月にロシアが16億ルーブル(約44億円)以上で取得。原油4970万トン、天然ガス1.8兆立方メートルの埋蔵が見込まれ、探索投資額は14億~20億ドルとされる。原油の生産開始は5~10年後という。
一方、メキシコ湾で原油流出事故を起こしたBPと、ロシアの石油大手ユコス(破産)の資産を引き継いだロスネフチとの提携には、「病んだ巨人の結婚」(ロシア独立新聞)との指摘がある。
ユコスの元所有者は、プーチン首相の政敵で服役中の元石油王ホドルコフスキー氏。昨年末の新たな刑事判決で2017年まで収監が延長され、欧米が「経済への政治介入だ」と問題視している。原油流出事故でBPは最大600億ドル(約5兆円)の賠償や罰金などを背負い、資産価値は低下した。
ただ、今回の提携でBPの株価がアップしたという。実体経済を握るプーチン首相の支援表明が好感を呼んだようだ。米調査会社によると、ロシア関連の株式・債権ファンドへの人気も高まり、資金流入額も大幅に増加した。
石油ガス・アナリストのクルチーヒン氏は「プーチン首相は原油流出事故で困窮しているBPを利用した。ロスネフチは北極大陸棚の自力開発のための技術や財政が不足していた。今回、BPの一部がロシア国有になったともいえる」と指摘している。
■プーチン首相「50年後は主要な交通要衝」
今回のBPとロスネフチの提携は、ロシアの北極圏進出が本格化してきたことの証しだ。
2008年9月の安全保障会議で、メドベージェフ大統領は「最優先課題は北極を21世紀のロシアの資源基盤に変えることだ」と言明。昨年9月にモスクワ大学で開かれた国際北極フォーラムでは、プーチン首相は「50年後には北極は主要な交通要衝の一つになる」と述べ、経済成長や投資呼び込みの新たな拠点にする考えを表明していた。
政府は昨年10月、2020年までの北極圏発展戦略をまとめたが、策定は予定より遅れた。世界経済危機を機に打ち出した経済の「現代化」に伴い、戦略の見直しを進めたからだ。エクスペルト誌によると、世界経済の中心点が欧米からアジアにシフトしている変化を見据え、北極海航路の開拓などを盛り込んだ。エネルギー供給など、中国をはじめとするアジア太平洋地域の比重は増す一方にある。
その実現への第一歩が、ロシアの大型タンカーによる昨夏の実験航海だった。北欧に近いムルマンスク港から砕氷船を伴って初めて北極海を横断し、約10日でロシア東端への到達に成功した。地球温暖化で海氷が減少傾向にあり、北極海が重要ルートになる可能性を秘める。ムルマンスクから上海に航行する場合、スエズ運河経由なら42日かかるが、北極海経由なら20日で済むとの試算もある。燃料代も通行料も節約できる。
インフラ、技術、専門家の養成などロシアの課題は多い。BPとの提携には、北極開発を経済「現代化」の弾みにしたいとの思惑もみえる。(モスクワ=副島英樹)
◇
〈ロシアと北極圏〉 07年夏、ロシアの有人潜水艇が北極点の深さ約4300メートルの海底にチタン製の国旗を立て、資源獲得競争に絡む北極圏の領有権論争が過熱。ロシアのほか、米国、カナダ、ノルウェー、デンマーク(自治領グリーンランドを領有)が自国沿岸から200カイリを排他的経済水域として資源開発権を持つが、国連海洋法条約で資源開発権を主張できる大陸棚の認定の絡みから、境界線は未画定のままになっている。
URL:http://www.asahi.com/business/topics/economy/TKY201101290377.html
この記事へのコメント
東北人は先人の教訓をよく身につけるべきである
三陸海岸地域にある津波避難の格言である。「命てんでんこ」とも言う。地震=津波の際、「親兄弟をかまわず、命からがらてんでんばらばらに逃げろ」との伝承は、古来から幾度もの津波襲来を受けてきた先人が、我々に残した厳しい格言である。
1896年の明治三陸地震、1933年の昭和三陸地震などにおいて、この格言の下にどれだけの人々の命が救われたことだろうか。
ちび・むぎ・みみ・はな
年々の変化や, 10年単位の小変動がある.
一つの補助的な経路ということでしょう.
大きな山が噴火すれば, すぐに2, 3年は
冷温化します.
ところで, トリウム原発, これも色々と
技術的問題を抱えていそうですな.
春九千(chunjiuqien@infoseek.
中華人民共和国の皆様
大韓民国の皆様
朝鮮民主主義人民共和国の皆様
日本政府による北方領土返還に御助力いただけませんでしょうか?
過去の経緯から、皆様方が日本のことを快く思っておられないことは百も承知しております。
しかし、
日本人の一人であるこの私、春九千がこのようなことを申し上げることはおこがましいことは、重々承知の上で申し上げますが、
蒋介石総統はかつて、次のようにおっしゃられたではありませんか。
もしも、皆様の御助力により北方領土返還を達成することが出来ましたら、
日本人は未来永劫その御恩を忘れることは無いでしょう。
クマのプータロー
韓国が東京裁判史観という自主独立国家となったから・
欧州金融不安を受けたウォン安回避に向け、韓国への資金支援枠を現行の130億ドル
(約1兆円)から700億ドル(約5兆3900億円)に拡大することで合意した。中断している
経済連携協定(EPA)締結交渉については早期再開を目指した実務協議の加速で一致した。
共同電によると、首相は未来志向の関係強化策の一環として「朝鮮王室儀軌」など朝鮮半島
由来の図書計1205冊のうち5冊を引き渡した。一方で、首相は江戸時代の外交文書
「対馬宗家文書」原本など韓国側が所有する日本由来の関連図書への閲覧などアクセスの
改善を要請した。
http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/10/20/kiji/K20111020001853810.html
・野田佳彦首相は19日午前、韓国・ソウルの青瓦台(大統領府)で李明博大統領と約1時間20分間、
会談した。両首脳は通貨危機の際に外貨を融通しあう日韓通貨スワップの枠を現行の130億ドル
(約1兆