「新政権の最重要の課題は、良い統治と汚職のない政府をつくるために共に働くことである。そのために、連邦政府、州・地域政府は透明で、説明責任を有し、憲法と法律に基づいた仕事をしなくてはならない。国民の声を尊重し、全ての国民が参加できるようにしなければならない。政府の仕事は迅速、かつ効果的でなければならない」テイン・セイン ミャンマー大統領 於:2011.3.31 施政方針演説
1.ミャンマーの民主化と中国離れ
長らく、軍事政権が続いていたミャンマーは、2011年3月30日に、テイン・セインを首班とする新政権が発足してからというもの、民主化の流れが一段と加速している。
最初の3ヶ月こそ、大きな動きはなかったものの、7月になってから、民主化勢力や少数民族武装勢力などに対する柔軟姿勢が目立つようになった。
たとえば、ミャンマー独立の英雄であるアウンサン将軍が暗殺された日であり、その後、国民殉難の日として休日とされてきた7月19日の政府主催の式典に、アウンサン将軍の長女であり、軍事政権化では、自宅軟禁下に置かれていた、アウンサン・スーチー氏の参加が9年ぶりに許された。
続いて、7月25日には、スーチー氏とアウンチー労働相がヤンゴンで会談、共同声明を発表し、その3日後には、スーチー氏はテインセイン大統領と少数民族武装勢力に停戦を求める書簡を出している。
スーチー氏とアウンチー労働相は、8月12日に再び会談し、両者が国の安定と発展のために協力していくこと、両者は対立姿勢をとらないこと、そして両者が話し合いを続けていくことを確認するプレス・リリースを出した。そして、19日には、スーチー氏とテインセイン大統領の会談が実現した。
会談が行われた部屋には、アウンサン将軍の写真が飾られていたと伝えられており、その後、スーチー氏は「大統領は本気で改革をしようとしている」と語り、大統領が進めようとしている改革を後押しすべきだという発言を繰り返すようになった。
また、ミャンマー新政権はメディアに対する規制も緩和し始め、政治以外の芸術やスポーツなどの分野の定期刊行物について事前検閲を廃止し、8月16日以降は、反政府的な報道スタンスをとる海外メディアを非難する文言を国営新聞に掲載することを禁じている。
更には、インターネット等も解放され、反政府系サイトへの接続が可能となり、動画投稿サイトのユーチューブも見られるようになった。
そして、8月22日から始まった第1回通常国会の模様は国内外のメディアに公開され、これまでミャンマーへ入れなかった多くの海外メディアが取材に入って来るようになっている。
そして、ここにきて、ミャンマーの中国離れを思わせる動きが相次いでいる。
例えば、9月25日に明らかになった、日本とのレアアース共同開発や、9月30日に、国民の反対を理由に大統領命令が出された、中国のエネルギー大手である中国電力投資集団の支援を受けている総工費36億ドルの巨大ダム計画の中止。更には、インドとの貿易額を2015年迄に30億ドル相当まで拡大させる意向の表明などがそう。
これまでミャンマーは軍事独裁政権であったことから、欧米諸国はミャンマー製品の輸入禁止や、新規海外直接投資禁止などの経済制裁を行っていて、特にアメリカの経済制裁はミャンマー国内のみならず、アメリカに睨まれるのを恐れる他国の投資を抑制させ、経済発展が停滞していた。
今月になって、ミャンマー問題を担当するアメリカのミッチェル特別代表は、ミャンマー政府に対して、法制度を改めて、野党の政治参加に道を開くなど求め、「民主化への幅広い行動が示されれば、アメリカ政府としても前向きな対応を検討する」と、経済制裁を見直す可能性を示唆している。
具体的には、欧米諸国は、経済制裁を解除する条件として、2000人以上にのぼる政治犯全員の釈放を求めているのだけれど、10月12日には、テイン・セイン大統領の恩赦による受刑者6359人の釈放も始まっていて、これが評価されれば、経済制裁が解除される可能性もある。
だから、今のミャンマーが民主化に活路を求め、中国から離れたがっているのも十分有り得る話。
2.全てのパイプはカザフとパキスタンに通ず
現在、中東の石油やガスを中国国内に送るパイプラインには、天然ガスが1ルートと原油が1ルートの計2ルートがある。
原油のパイプラインは、カザフスタンのアタスから、ウイグル自治区(東トルキスタン)へと引かれており、2006年7月から稼動。設計ベースの輸送能力は2,000万トン/年で、カザフスタン東部の原油とカザフスタン西部のカスピ海沿岸の原油が供給され、2010年の中国への供給量は991.93万トンとなっている。
また、天然ガスは、トルクメニスタンから、ウズベキスタン、カザフスタンを通るパイプラインが引かれていて、カザフスタンのコルガスから、これまたウイグル自治区(東トルキスタン)に送られている。
天然ガスのパイプラインは、2009年末に運用開始していて、設計ベースでの輸送能力400億立法メートル/年、現在の輸送能力は150億立法メートル/年、2011年中に能力は300億立法メートル/年に増強される予定で、2011年の契約上の輸入量は170億立法メートルにも及ぶ。
また、これ以外に計画中のルートがある。
まず、天然ガスについては、ロシアのガスプロムによる、西シベリアの天然ガスをアルタイルートで供給するパイプラインと、イランの天然ガスをパキスタンを経由してタシュクルガンルートで運ぶパイプラインの2つがある。
前者については、昨年9月27日に中ロ間で基本合意が交わされたのだけれど、当初2011年7月までにガス価格を決定されるところが見送りとなった。
後者については、昨年6月に、イランとパキスタンとの間で、ガスパイプライン建設の正式合意がなされている。これは、ペルシャ湾のイランの大型ガス田で産出するガスを、2014年よりパキスタンに日量2,100万立法メートルを供給するパイプラインで、総事業費70億ドル、総延長1,900㎞のプロジェクト。
中国はこのパイプラインに便乗して、増強・延長し、イランの天然ガスを輸入しようと目論んでいる。
次に原油についてだけれど、これまた、パキスタンのグワダル港からパキスタンを南北に縦断して、ウイグル自治区に供給するルートと、ミャンマーのチャウッピュー湾から崑崙に運ぶ2つのルートがある。
こちらの方は、中東からの原油をタンカーでシーレーンに沿って、ぐるっと回らずに持ってくるルートとして開発している。
その理由として、アメリカ海軍が優勢なマラッカ海峡などの海域を通らずに、つまり、アメリカの関与を極力排除した環境でのシーレーンを確保したいのではないかという見方がある。
というのは、国際変動研究所の西恭之・主任研究員によると、中国に石油を運んでいるタンカーの80%は、日本など他の国の海運会社からリースしたものであり、もし中国がアメリカと事を構えることになって、アメリカが、中国にタンカーをリースしている海運会社の船をアメリカに入港させないなどの制裁措置をとった場合に、軒並みリース会社がアメリカ側について、中国へ石油を一切運ばなくなるだろうと考えられるから。
この見方が正しければ、中国が、中東やロシア、又は、パキスタンやミャンマー経由でのパイプライン建設に力をいれるのは十分な理由があることになる。
現在、陸路に限ってみれば、中東の石油と天然ガスは、カザフスタン経由のパイプラインで中国へ送られているけれど、「EUも中国もブロックする三日月」のエントリーで述べたように、プーチン首相のユーラシア連合構想が実現して、カザフスタンがロシアの強い影響下に置かれることになると、ここからのエネルギー供給はロシアの意のままになりかねない。
だから、中国にとっては、余計にパキスタン及びミャンマー経由での原油・天然ガス供給が重要になるのだけれど、今や、そのミャンマーが中国離れを起こしている上に、もしも、パキスタンまでもが中国離れを起こしてしまったら、エネルギー供給が不安定化してしまう。それ以前に、ミャンマー経由のパイプラインも2010年10月に着工して、開通は2013年の予定だし、パキスタン経由のパイプラインもまだ計画段階。実際にガスや石油が送られてきているわけじゃない。
日本の東アジア海洋フォーラムの提案に、中国があれほど、むきになって反論するところを見ると、日本がASEAN支援に乗り出したことで、ミャンマーは勿論のこと、パキスタンを含む周辺国がそちらに靡くことを恐れているのではないか。
中国は意外と焦っているのかもしれない。


ミャンマー問題を担当するアメリカ政府の代表は、ミャンマー政府が、民主化運動のリーダー、アウン・サン・スー・チーさんが率いる野党の政治参加に道を開くなど、民主化が進展すれば、経済制裁を見直す可能性を示唆しました。
ミャンマー政府は、今月、旧軍事政権に批判的とされた政治犯を含め、服役中の6300人を超える受刑者に恩赦を与え、順次、釈放を始めています。この動きについて、先月、現地を訪れたアメリカのミッチェル特別代表は17日、記者会見で「民主化に向けた改革が軌道に乗ったのかどうかを見極めたい」と述べ、すべての政治犯が無条件で釈放されるかどうか慎重に見守る姿勢を示しました。去年、20年ぶりに行われたミャンマーの総選挙では、民主化運動のリーダー、アウン・サン・スー・チーさんが率いるNLD=国民民主連盟は事実上排除され、今も党として活動できない状態が続いています。ミッチェル特別代表は、ミャンマー政府に対して、法制度を改めて、NLDの党としての再登録を可能にするなど野党の政治参加に道を開くよう求めました。そのうえで、「民主化への幅広い行動が示されれば、アメリカ政府としても前向きな対応を検討する」と述べ、ミャンマー製品の輸入禁止や投資の規制などの経済制裁を見直す可能性を示唆しました。
URL:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111018/t10013341881000.html
この記事へのコメント
JAが農産物の安全神話を出した結果・・
計17店で店頭の魚介類60点を購入して放射性物質の有無を調べた結果、
半数以上の34点で微量の放射性セシウムが検出されたことが19日、
同団体への取材で分かった。
最大値は埼玉県内の店で売られていた茨城県産ワカサギの1キログラム当たり
88ベクレルだった。
いずれも国の暫定基準値の同500ベクレルを大幅に下回り、残り26点は
不検出だった。
グリーンピースは
「調査した全5社の幅広い商品でセシウムが確認された。
(基準値以下なら)安全と思う人もいれば、子どもに食べさせたくないと
考える人もいるだろう。小売店は独自に検査し結果を店頭で示してほしい」
と指摘。
ソースは
http://www.chunichi.co.jp/s/article/2011101901000762.html