南シナ海がキナ臭くなってきました…。
1.武器輸出三原則の見直し
榛葉賀津也元副防衛相を座長とする民主党防衛部門会議は10月13日、原則すべての武器輸出を禁じる「武器輸出三原則」の見直しを政府に求める方針を改めて確認した。
内容は、武器輸出を例外的に認める基準は次のとおり。
1)完成品の海外移転は平和構築や人道目的に限定
2)国際共同開発・生産の対象国は抑制的に
3)相手国との間で第三国移転の基準と体制整備
の3点。
2010年1月14日のエントリー「武器輸出3原則の見直し発言について」でも触れたけれど、元々、この武器輸出三原則の見直しについては、2009年から話が上がっていて、前麻生政権下での有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」の最終報告(2009.8)の中で、武器輸出3原則の例外事項が提唱されているし、昨年12月には、民主党の党常任幹事会は、三原則見直しを盛り込んだ「防衛計画の大綱(防衛大綱)見直しに関する提言」を了承していた。
だけど、民主党内の護憲派や政権運営への協力を期待していた社民党が反発したため、当時の菅政権は防衛大綱での明記を見送っていたという経緯がある。
今回の民主党防衛部門会議による「武器輸出三原則」の見直し提言について、野田首相は、14日、「新防衛大綱に書いてある通りだ。平和国家の理念を堅持しながら、そのあり方については、具体的な不断の検討は必要だ」として、見直しに前向きな考えを示している。
一方、同じく14日に、藤村官房長官は記者会見で、武器輸出三原則について「政府として何か今、変更するということではない」と、現時点での見直し論議には否定的な見解を示している。
首相と官房長官でそれぞれ正反対の発言をしていることになるのだけれど、党内に護憲派を抱え、菅政権時に、防衛大綱に明記できなかったことを考えると、首相と官房長官でそれぞれ別の意見を言うことで、どちらも敵にせず、どっちにもいける両天秤のスタンスを取っているのかもしれない。
それ以前に、主義主張がバラバラの民主党が、外交安保で意見を一致させるのは難しい。武器輸出三原則の見直しは必要だと思うけれど、実現となると相当な手腕が要るだろう。
とはいえ、今の時期、国防を充実させることは必要なこと。なぜなら、いよいよ中国がその野望を剥き出しにしてきたから。
2.南シナ海は「最良の」戦場
これは、別に尖閣での中国船の挑発の話ではなくて、もっとはっきりしたもの。中国政府の機関誌である「人民日報」は9月29日に、「南中国海での武力行使の機は熟した」という記事を掲載し、南シナ海での武力行使を恐れるなと主張している。
くだんの記事によると、戦争は、フィリピンとベトナムに狙いを定め、攻撃範囲を限定すべきだという。小規模な戦争数回行うことで、大戦争を回避しつつ、大国の介入を防ぐ、すなわち、"鶏を見せしめに殺して猿を戒める"という懲罰戦争を目的に据えている。
南シナ海で小規模戦争を行うことで、この海域は一面火の海となり、この海域の石油掘削基地は被害を受ける。そのとき最も痛手を負うのは、欧米の石油・天然ガス会社であり、彼らは必然的に撤退するはずだ。ゆえに、南シナ海は中国にとって「最良の」戦場なのだ、と人民日報はいう。
「スタンダード・ブルー」のエントリーでA2/AD戦略について述べたけれど、これは、中国のA2/AD戦略に則ったものであり、アメリカその他の介入を防ぎつつ、自国の影響下の領域を広げようとしている。
ここでポイントになるのは、仮に中国とターゲットにされているフィリピンとベトナムが戦争になったとしても、それを、中国とフィリピン及びベトナムとの二国間問題として扱うか、それとも地域各国全体の問題として扱うかという点。
防衛研究所の主任研究官の飯田将史氏によれば、「中国が協調路線をとり、『論争棚上げ、共同開発』を主張している間に、東南アジア諸国はスプラトリー周辺海域における資源開発を進展させ、中国の海洋権益を蚕食しているという被害者意識がある」と指摘している。
つまり、中国は、南シナ海の領有権問題は、中国と関係諸国との二国間問題であり、その解決は二国間の交渉によるべきだという立場であるのに対して、東南アジア諸国は、問題を中国とASEAN の交渉にのせることを目指す「ASEAN 化」や、アメリカや日本といった域外大国による問題への関与を強める「国際化」を図っている、と飯田氏は述べている。
まぁ、被害者意識を持つのは勝手だけれど、だからといって、南シナ海の領有権問題は、中国と関係諸国との二国間問題が是とされることにはならない。なぜなら、既に中国は自分で南シナ海での武力行使に言及してしまっているから。
くだんの人民日報の記事では、次のように述べている。
「南中国海では現在、戦争のポテンシャルエネルギーが高まっている。中国は地域協力・開発の主導者の姿勢で、より優遇的な条件で欧米の石油会社と競争し、石油・天然ガス開発に参加すると同時に、わが国の海域を侵犯する石油採掘活動に対しては、「まず礼を尽くし、うまくいかない場合は武力に訴える」方式で制止すべきだ。小規模な戦争を恐れてはならない。」人民日報 2011.9.29「専門家:南中国海での武力行使の機は熟した」より
礼を尽くし、うまくいかない場合は武力に訴えるとはっきり言っている。大国と小国で、二国間交渉をやると、大国の意が通ってしまうのが普通。なぜなら、バックに軍事力という裏付けがあるから。
だから小国は自身の交渉力を担保するために、他国や大国と連携して、軍事力の均衡を図る。ASEAN諸国にとってみれば、南シナ海の領有権問題を周辺国を巻き込んで、"ASEAN化"するのは当然の選択。
3.東アジア海洋フォーラム
9月27日、日本政府は、11月中旬にインドネシアで開かれる東アジア首脳会議(EAS)で、海上安全保障問題を協議する「東アジア海洋フォーラム」(仮称)の新設を目指す方針を固めたとの報道がある。
これは、東アジア首脳会議の下部組織として設けられるもので、南沙諸島(スプラトリー諸島)問題を抱える南シナ海や、尖閣諸島の問題を抱える東シナ海などにおける安全の確保について協議する場。
外務省によると、政府高官や専門家で構成され、国際法規順守や航行の自由など海上安全保障に関する原則を協議し、中国の自制的行動を求めることになるという。
東アジア首脳会議には、日中韓、ASEAN、インド、オーストラリアなどが参加するのだけれど、今回、アメリカとロシアが初出席することで、国際的な影響力が高まると言われている。
この東アジア海洋フォーラムの提案には、当然中国は面白く思っておらず、「EASの根本理念は、地域の平和と発展を促すことで、問題を拡大・激化する場ではない。日本の行動は地域の国際関係の安定と平和的発展に不利で、完全に突飛な考えでしかない」と、清華大学国際問題研究所の劉江永教授のコメントを介して、強く反発している。
特に、「いわゆる『航行の自由』の問題については米国がでっちあげ、日本は他人の主張をまねているにすぎない」と強調するに至っては、相当痛いところを突かれたとみる。おそらく、シーレーンを抑える狙いがあるのではないか。
シーレーンを抑えて、石油の輸送を支配下に置けば、周辺諸国は思うがままにコントロールできる。だから、中国にとっては、その一番の障害となるアメリカの介入(接近)を阻み、周辺国を連携させずに分断させておくことが、一番大事になる。
劉教授は、「中国が本当に航行の自由を妨害した例があるなら、日本はそれを指摘できるが、ないのにでたらめを言うべきではない」といっているけれど、今年3月に、中国の船舶2隻が、フィリピンの石油探査船の活動を妨害し、ベトナム国営石油会社ペトロベトナムの探査船が使っているケーブルを切断したこと。更には、フィリピン漁船に対して、中国海軍が発砲したことは妨害ではないというのか。
やはり、言っていることと、やっていることが違うと信頼には程遠い。
いよいよ、戦争が近くなってきたと自覚し、そのための備えが必要な時が迫っている。


野田佳彦首相は14日、武器と関連技術の輸出を原則禁止する武器輸出三原則に関し「(昨年12月の)新防衛大綱に書いてある通りだ。平和国家の理念を堅持しながら、そのあり方については、具体的な不断の検討は必要だ」と述べ、見直しに前向きな考えを示した。視察先の横浜市で記者団に語った。民主党の前原誠司政調会長は武器の共同開発・生産への参加を可能にするため見直しを主張しており、首相発言はこれを事実上容認したとみられる。
民主党は13日の防衛部門会議で見直しを政府に求める方針を確認した。首相は「党で議論していることは承知しているし、参考にしたい」と述べ、党内情勢を踏まえて判断する意向も示した。
ただ、11月に予定されているオバマ米大統領との会談の際に見直しを表明するとの見方については、「事実ではない」と明確に否定した。民主党内には異論があり、政権が連携を模索する公明党でも見直しへの反対論が根強いことから、首相は表明する時期を慎重に見極める考えとみられる。武器開発は開発・製造コストの高騰から、国際共同開発・生産が主流になっている。しかし、日本は三原則が制約となり、米国などが行っているF35の共同開発に加われなかった。このため、年末に決める次期主力戦闘機(FX)も、他国から購入せざるを得ず、割高になるとの指摘がある。【朝日弘行、中島和哉】
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111015ddm002010066000c.html

日本政府は27日、11月中旬にインドネシアで開かれる東アジア首脳会議(EAS)で、海上安全保障問題を協議する「東アジア海洋フォーラム」(仮称)の新設を目指す方針を固めたと読売新聞が伝えた。清華大学国際問題研究所教授で日本問題に詳しい劉江永氏は、日本のこの行動は局部の問題を全体に誇大化する危険な行動であり、外交上大人気ない行為でもあると指摘する。
日本はEAS参加国に理解を求め、首脳会議で採択する共同声明にフォーラム新設を明記したい考えだ。海洋活動の拡大を続ける中国と周辺国の摩擦が続く南中国海や釣魚島(日本名・尖閣諸島)のある東中国海などを念頭に、中国をけん制する狙いがあると同紙は報じた。
EASは中国、日本、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)、インド、オーストラリアなどが参加。EASの国際的な影響力が高まっていることから今回米国、ロシアも出席する。
日本外務省によると、新組織はEASの下部組織として設け、政府高官や専門家で構成。同組織ははまた、中国に「自制的」行動を求め、国際法規順守、航行の自由など海上安全保障に関する原則を協議するという。
日本のこの行動の意図について、劉教授は「中日の海洋問題の争いは長く続いているが、今回の行動は国際パートナーを抱きこんで中国に対抗し、東アジアに中国を制約する態勢をつくる意図がある。また、釣魚島などの問題にかこつけて中国と他国との問題を煽り立てている」と説明する。
劉教授はまた、「EASの特徴は不定期的な首脳会議で、東アジアの国だけが参加するわけではない」とし、「EASの根本理念は、地域の平和と発展を促すことで、問題を拡大・激化する場ではない。日本の行動は地域の国際関係の安定と平和的発展に不利で、完全に突飛な考えでしかない」と言及。
劉教授は、いわゆる「航行の自由」の問題については米国がでっちあげ、日本は他人の主張をまねているにすぎないと強調。中国が本当に航行の自由を妨害した例があるなら、日本はそれを指摘できるが、ないのにでたらめを言うべきではない。海洋航行の自由については、大国である中国は航行の自由を妨害するどころか、それに貢献し、責任を担っているという。
中日間の論争は両国間の局部の問題であって全体的な大問題ではない。EASでこれを提唱するなら、ロシアと日本の領土問題についても議論すべきではないのか?また、ASEAN10カ国の大部分は中国と領土問題はない。日本のこの行動は局部の問題を全体に誇大化する危険な行動であり、外交上大人気ない行為でもあると劉教授は補足した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年9月29日
URL:http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2011-09/29/content_23520036.htm
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
解析では東支那海で支那は日本と事を構える
可能性が強いから米国は日本をバックアップせよ
という話がありますな.
米軍も相当にオバマ大統領の脳天気加減に
危機感を持っているのではないだろうか.
米国の一番の心配は日本・支那の軍事衝突だから
人民解放軍はベトナム, フィリピンと誤魔化した
のかも知れない.
いずれにしても, 人民解放軍の一部は戦争を
始めたくて仕方がない. まるで, 第二次上海事変
における支那軍のようだ.