デクシア破綻とギリシャ危機

 
今日は、ギリシャ危機についてです。
 
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1.デクシア破綻

10月10日、EUの金融大手デクシアが破綻した。

デクシア(Dexia)は、1996年にベルギー系のCredit Communal de Belgiqueと、フランス系のCredit Local de Franceが合併して設立された公的金融機関で、ベルギーに本拠を置くヨーロッパ有数の金融グループ。

ベルギー、フランス、ルクセンブルク、トルコで商業銀行を営む他に、地方公共団体への融資を行なっている。

日本でも、2006年11月に銀行免許を取得し、12月に東京支店を開いていた。デクシア・グループの総資産は、2005年12月現在で約73兆円。

日本の4大メガバンクの総資産は、三菱UFJグループが204兆円、みずほグループが156兆円、三井住友グループが138兆円、りそなグループが41兆円くらいだから、メガバンクに迫る大手が破綻したということ。

デクシアは、ヨーロッパ国債を多く保有しているのだけれど、昨今の欧州危機で、ギリシャ国債が大暴落中で、その煽りを受けて、莫大な損失を抱えていた。

デクシアは2010年末時点で、ギリシャ国債を34.6億ユーロ、イタリア国債を約158億ユーロ保有し、それに加えて、ポルトガル、アイルランド、スペインの国債も持っていて、それら5カ国、所謂"PIIGS"の合計国債保有額は、218.4億ユーロにも及ぶ。無茶苦茶大雑把に1ユーロ100円とすると、ギリシア国債を3460億円、PIIGS全体では2兆1840億円の国債を保有していることになる。

因みに"PIIGS"とは、ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの5カ国の頭文字をそれぞれくっつけて、「Pig(豚)」と掛けた呼び名で、その理由は、EU内で財政状況が悪いことに拠る。

デクシアの破綻を受けて、ドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ仏大統領が、10月9日、ベルリンで会談して、デクシアのほか、経営不安が広がるほかの欧州の銀行も資本を増強、経営体力を高める必要があるとして、金融不安の拡大を食い止める対応策を協議したようだ。

会談後の会見で、メルケル首相は「資本注入の準備がある」と述べたことから、投資家の不安感は一応は後退していると見られている。

デクシアは950億ユーロ(約9兆7000億円)に上るとみられる不良債権を本体から切り離して、フランス、ベルギー、ルクセンブルクから政府保証を受けることで合意していて、ベルギー政府はデクシアの国内銀行部門を40億ユーロで取得し、一時国有化する予定だという。

また、カタールの政府系投資グループも、デクシアのルクセンブルク法人の買収を検討していると、ルクセンブルクのフリーデン財務相が明らかにしている。

ということで、デクシアグループは早くも解体に向けての処理が始まっている。

ただ、デクシアはEUによる資産査定、いわゆる"ストレステスト"に合格していたのにも関わらず、今回の破綻となり、ストレステストの基準が不十分だったことが明らかになった。従って、デクシア以外で、ストレステストに合格した金融機関でも、本当に大丈夫なのかといった再チェックなり何なりの対策が取られる可能性はある。




2.ギリシャ危機

さて、デクシアの破綻処理がうまくいったとしても、それで万事解決というわけじゃない。デクシア以外にも"PIIGS"の国債を保有するEUの大手金融機関はあるし、何より、ギリシャのデフォルト危機が去ったわけじゃない。

ギリシャは人口1100万人の小さな国で、GDPは3500億ユーロ。主な産業は観光業とはなっているのだけれど、就労人数をいうと、公務員が一番多く、100万人も居る。十人にひとりが公務員。日本の公務員数が地方公務員合わせても400万人で、25人に一人の割合であることと較べると随分多い。

ギリシャのGDP3500億ユーロ(36.40兆円)というのは、日本でいうと丁度、大阪府に相当する。

大阪府は人口886万人でGDPは38兆円。要するに大阪府の人口を25%増しにしたのがギリシャ。そこに100万人の公務員がいる。大阪府の職員数が8万8千人であることを考えると、異常に多い。

まぁ、これでも、ギリシャの財政がきちんと回るのなら良いのかもしれないけれど、58歳から年金支給をしている上に、ギリシャ人は所得を過少申告する傾向あるという。

たとえば、小売店などは、レシートを発行すると税金を納めなければならないので、お客に、割引するからと言って、レシートを発行しなかったりするらしい。

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こんなことを続けていれば、赤字になるのも当たり前で、2009年の財政赤字は対GDP比で12.7%で、"対外"債務はGDPの1.6倍にもなっている。

これまで、ギリシャ国債は、EU主要国の金融機関が大量に保有していて、デクレアもそのひとつだったのだけれど、2010年の5月に200億ユーロの償還期限がきたものが払えず、あわや債務不履行(デフォルト)と思われたのが、EUとIMFの緊急融資でなんとか回避した経緯がある。

さすがのギリシャ政府も緊縮財政策をとらざるを得ず、たばことアルコール税、付加価値税の引き上げや公務員給与の削減などの措置を発表した。更に、2014年までに公的部門の雇用を12万人削減する予定で、ギリシャ国民に対しては、昨年の所得の2~5%に相当する「連帯」税を新たに設けることとしている。

だけど、その肝心のギリシャの公務員には、労働組合なるものがあり、これが強くて、中々政府の思惑どうりの事が運ばない。2010年にギリシャ政府が公務員の賃金凍結、年金支給開始年齢の引き上げなどの財政再建策を発表した時など、ギリシャの公務員労働組合が約50万人のストライキに突入し、官公庁、学校、病院から鉄道、バス、すべての空港を全面ストップさせたというから、相当なもの。

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3.EFSF拡大

だけど、いくらストやデモをやったところで、ギリシャ国債の償還期限が伸びるわけじゃない。年内に償還期限がくるものが約2兆円くらいある。
☆ギリシャの国債償還期限
10月14日 短期国債 20億ユーロ償還期限
10月21日 短期国債 20億ユーロ償還期限
11月11日 短期国債 20億ユーロ償還期限
11月18日 短期国債 16億ユーロ償還期限
12月16日 短期国債 20億ユーロ償還期限
12月19日 国債 11億7000万ユーロ償還期限
12月22日 国債 9億8000万ユーロ償還期限
12月23日 短期国債 20億ユーロ償還期限
12月29日 国債 52億3000万ユーロ償還期限
12月30日 国債 7億1000万ユーロ償還期限

これはギリシャでの話だけれど、他にもPIIGSに名を連ねている国を中心に財政破綻懸念国が他にもあるのが今のEU。

無理矢理日本に例えるならば、ドイツにあたる東京が黒字で、そのほかの県は軒並みプラマイゼロか、赤字財政で、大阪とか他の何県かが財政破綻しそうな状態。そして、その対応に、各県の知事が雁首つき合わせてどうしようか、と毎日のように相談している姿になろうかと思う。

11月11日、スロバキアがEFSFの拡充策について否決したとの報道があった。これは、スロバキアの左派の野党「道標(スメル、Smer)」が、内閣改造又は、首相の辞任を条件に支持するとの立場から棄権に回ったためで、ラディツォバー首相率いる内閣は退陣し、再議決ののち可決される見通しだという。

スロバキアの内閣が退陣してまで、可決しなければならない、EFSFとは何か。

EFSFとは欧州金融安定ファシリティの略で、ヨーロッパ周辺国を救済するために、EU各国が資金を持ち寄って立ち上げた救済ファンドのこと。

これは、例の2010年5月のギリシャ救済の時に設置された基金で、本部をルクセンブルクに置いて、欧州投資銀行(EIB)が資金管理業務と運営支援を行う。EFSFは、2500億ユーロ(26兆円)の加盟国保証付きの欧州金融安定化債を発行できる枠を持っていた。

だけど、今年になって、一段とユーロ危機が深刻化したことで、融資規模を拡大する必要に迫られ、4400億ユーロ(45兆円)へと融資枠拡大の承認を進めていた。

これはEU加盟17カ国全ての議会承認が無いと駄目という決まりがあるため、どの国もなんとか可決をしようとしていて、最後に残ったのが、先のスロバキア。

たとえ、今回EFSFの枠が拡大されたとしても、単に融資できるというだけのことで、ギリシャの借金が消えるわけじゃないから、苦しい事には変わりない。

EUはEUで、ギリシャにデフォルトされてしまうと、他の豚(PIIGS)に飛び火する可能性があり、そうなると、欧州全部が燃え上がってしまう。

EUの危機はまだまだ続く。




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この記事へのコメント

  • sdi

    >今回EFSFの枠が拡大されたとしても、単に融資できるというだけのことで、ギリシャの借金が消えるわけじゃないから、苦しい事には変わりない。

    仮にギリシャをなんとか、形だけでもデフォルトせずにすませたとしても他のEU諸国の借金がきえてなくなるわけでもなし。返って、さらに巨大な危機に直面するだけのような。
    世間はPIIGS諸国にばかり目がいってますが、PIIGS以外の通貨同盟加盟国も結構ヤバイとおもいます。ベネルクス三国なんてその筆頭でしょう。とくに自国の政府が機能停止寸前のベルギーは厳重監視ですね。
    2015年08月10日 15:26
  • 米国が作った国内法でA級戦犯を無罪にした因果

    民主党の前原誠司政調会長は13日の記者会見で、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加
    問題について「世界ナンバーワンの経済大国である米国と経済連携を結んでいくかが極めて
    重要なテーマだ」と述べた。日米連携強化の観点からTPP参加が必要との認識を示した。

    米上下両院が韓国との自由貿易協定(FTA)の実施法案を可決したことに関しては「(日本製品の)
    競争力低下に危惧を持たざるを得ない」と指摘した。岡田克也前幹事長も講演で「思い切って
    国を開かないと、日本は終わりだ。背を向けた議論は将来を閉ざしてしまう」と強調した。

    政府・民主党は11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議までにTPP交渉参加問題で
    方向性を出す予定。

    http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E3E1E2E0828DE3E1E3E2E0E2E3E38297EAE2E2E2;at=DGXZZO0195166008122009000000
    2015年08月10日 15:26

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