民主党とシャドウ・キャビネット
11月21日、菅前首相は都内で開かれた民主党国会議員のパーティーの挨拶で、「政権というのは4年の単位でみてもらいたい」と、政権の成果を衆院の任期で評価してほしいとし、「私を含む最初の2年は問題提起をして方向性は出せた。それが一つひとつ動いている」と述べた。
報道では、これらの発言は、野田首相がTPPや社会保障と税の一体改革に取り組んでいるのは菅政権の成果だとして、汚名を返上したいとの思いがあったとみられるとしているけれど、最初の2年が問題提起だなんて、言い訳にしか聞こえない。
問題提起なんて、野党のうちにできること。与党になって初めて問題提起するなんて、あなた方は野党時代に国会で何をしていたのか。
与党は国政を担って、問題を解決しなくちゃいけない本番。問題提起なんてのんびりしたことをやっている間に国が亡ぶことだってある。
イギリスの政治体制として有名な制度として「影の内閣」というものがあるけれど、これは、二大政党制において、野党の政権担当能力を醸成する目的として組織される。
イギリスでは野党第1党の党首が影の首相に就任し、党所属国会議員から影の閣僚を任命して影の内閣を組織する。イギリス保守党の場合は、影の内閣の閣僚たちの人選は党首に一任される一方、イギリス労働党の場合は、所属議員たちの選挙によって決められている。
影の内閣は政府・与党の内閣と対する組織として存在し、健全な議会政治においては、政権交代と野党の政策立案能力が必須であるという考えの基、影の内閣は公職とされ、運営には予算がついて、議会内に影の内閣専用の執務室が設けられ、公用車の使用権も与えられる。
イギリス議会の議場は、議長を挟んで左に与党が、右に野党が座り、左右の議席の最前列に座るのが内閣と「影の内閣」の閣僚たちで、彼らは「フロント・ベンチャー」と呼ばれ、後ろに座っている新人議員などは「バック・ベンチャー」と呼ばれる。
「影の内閣」の起源は、19世紀末から20世紀初頭にかけて、野党になったイギリス保守党の幹部たちが定期的に会合したものといわれているのだけれど、「影の内閣」は、内閣同様に定期的な会議を開いて、党の政策や議会対策、次の総選挙に備えた活動方針を決定する。日本でいえば、どちらかといえば、より党執行部に近い役割といえる。
イギリスのように、ここまで、与党と野党が正対して、議論するという政治文化があれば、「影の内閣」というのもなるほどと頷けるものがあるし、特に、影の首相から任命される保守党が政権獲得した時には「影の内閣」の閣僚がそのまま正式な閣僚になることが多いから、「影の内閣」はそれなりの重みを持っていると言える。
(※尤も、イギリスでも労働党の「影の内閣」の閣僚は選挙で選ばれるため、党首とそりが合わない人もいて、政権獲得時に閣僚にならない人も結構いるそうだ。)
日本でも、1990年代以降、野党第1党が、イギリスの影の内閣を模した政策立案機関が組織され、民主党も1999年から「ネクストキャビネット(次の内閣)」を設けていて、当時、鳩山氏などは、ネクストキャビネットを「真の内閣の予行演習」と位置付けていた。
だけど、2009年8月の総選挙で、実際に民主党が政権を奪取して、鳩山内閣が発足したとき、「ネクストキャビネット(次の内閣)」のメンバーで入閣したのは、20人中6人だけだったことを考えると、イギリスのような政治文化がない日本で「影の内閣」というシステムだけ真似たとしても、果たしてどこまで野党の政権担当能力を醸成しえるのかは疑問が残る。
実際、民主党が政権与党について2年たったけれど、民主党が政権担当能力を持っていなかったことは、もう誰の目にも明らか。
菅氏は、政権というのは4年の任期で評価してほしいなどと言っているけれど、実際、民主党のやろうとしていることは、消費税増税もそうだけれど、マニフェスト違反ばかり。
いくら民主党が4年の任期で見てくれと言ったとしても、マニフェストに書いてないことをやることは、国民との契約違反になるのだから、リコールされても文句は言えない筈。
11月22日、自民党の石原幹事長は福岡市で開かれた「毎日・世論フォーラム」で講演し、政府が来年3月末までの国会提出を目指す消費増税法案について、野田佳彦首相が衆院解散・総選挙を約束するのと引き換えに自民、公明両党が法案成立に協力する「話し合い解散」の可能性に言及した。
2009年の衆院選での民主党の政策集では、消費税について「現行の5%を維持」としたうえで、将来的な税率引き上げについて「引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化する」と記されているから、民主党がマニフェストを守る気があるのなら、解散総選挙をしなければいけない。
自民党の石原幹事長は想定される解散時期として、(1)同法案提出時(2)来年の通常国会会期末(3)来年9月の民主党代表選後―の3パターンを挙げ、「これくらいしか選択肢はないのではないか」と述べている。
いずれにせよ、来年は解散圧力がかかることは間違いないだろう。
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菅前首相、政権は4年単位で評価を 産経新聞 11月21日(月)22時48分配信
「政権というのは4年の単位でみてもらいたい」
民主党の菅直人前首相は21日夜、都内で開かれた民主党国会議員のパーティーであいさつし、政権の成果を衆院の任期で評価してほしいと述べた。
菅氏は続けて「私を含む最初の2年は問題提起をして方向性は出せた。それが一つひとつ動いている」とも述べた。
菅政権は、最後は与党内からも「居座り」という批判を浴びて短命に終わった。野田佳彦首相が環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や社会保障と税の一体改革の課題に取り組んでいるのは菅政権の成果だと暗に訴えることで、汚名を返上したいとの思いがあったとみられる。
URL:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111121-00000614-san-pol
石原自民幹事長:「話し合い解散」に言及
自民党の石原伸晃幹事長は22日、福岡市で開かれた「毎日・世論フォーラム」(毎日新聞社主催)で講演し、政府が来年3月末までの国会提出を目指す消費増税法案について、野田佳彦首相が衆院解散・総選挙を約束するのと引き換えに自民、公明両党が法案成立に協力する「話し合い解散」の可能性に言及した。
石原氏は「信念を持ってどうしてもやりたいということで、首相と自民党の谷垣禎一総裁、公明党の山口那津男代表が話し合って『よし』ということになれば、法案を通して選挙ということもあるかもしれない」と指摘。一方で「(首相に)そういう意思はなさそうだ」とも述べた。
石原氏はそのほかの解散時期として、来年6月の通常国会会期末前後と9月の民主党代表選で首相が再選した場合を挙げ「この三つくらいしか首相に選択肢はない」と語った。
また、昨年の参院選で自民党が消費税率を10%に引き上げる公約を掲げたことを念頭に「野田首相らが民主党を割ってでも消費税を10%にするんだと言い、私たちも割れるかもしれないが、自民党もそうやるんだと言えば、新しい政治体制ができるかもしれない」と述べ、消費増税を巡って政界再編に発展する可能性もあるとの見方を示した。【念佛明奈】
毎日新聞 2011年11月22日 21時53分(最終更新 11月23日 1時01分)
URL:http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111123k0000m010099000c.html
この記事へのコメント
ちび・むぎ・みみ・はな
協調の石原幹事長に言われるようになってはおしまい.
とおる
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